せっかくBLゲームに転生したのにモブだったけど前向きに生きる!

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第五章 ~ゲームに無かった展開だから遠慮しないで歯向かう~

オレの名前を聞いてくれ

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豪華で煌びやかな娼館にオレは足を踏み入れる。
とりあえず開いてて良かった。……コンビニじゃないけどさ。

店内は店員さんばっかり。掃除をしてたり、商品を搬入してたり、対応してたり。
単に扉が開いてたってだけで、お店としてはまだ準備中だったみたいだ。


オレは手近にいた人に声を掛けて、ユーグと会いたいって伝えた。オーナーって呼ばなかったのは、商売関係じゃなくて個人的な用件だってアピールだ。
話し掛けた人が別な人を呼んで、その人が他の人のトコまで連れてってくれた。

「失礼ですが、オーナーと一緒にお墓参りをされた方でしょうか?」
「あ、うん。一緒に、ウェネットの…」
「ようこそ、お越し下さいました。オーナーから申し付けられております。」

随分とカッチリした感じで対応されたぞ。
てっきり「あー、話は聞いてるよー」くらいかと思ってたのに。
ちゃんと話を通してくれてたんだな、ユーグ。
この店員さんの態度だとどんな説明を受けてたのかサッパリ分かんないけど、そこを突っ込んで聞いて居た堪れなくなったら嫌だから黙っとこう。



案内されるオレ。
関係者以外立入禁止な区域に設置されたエレベーターで上階へと移動する。

王都の神殿のよりは小さいけど、個人のお店にあると思ったら凄いよな。




たぶんだけど最上階。
華やかじゃないけど高級感の漂う扉の向こう側に、ユーグがいた。


「まさか、こんなに早く訪ねてくれるとは。……嬉しいよ。」

大きな執務机を背後にして。ちょっぴり接待風な笑顔のユーグが、オレを部屋へと招き入れてくれる。
オーナー執務室なのに、室内にはテーブルとソファの応接セットだけでなく、お洒落なバーカウンターのようなものまで設置されてた。
なんと、ユーグのストレス解消法の一つで、カクテル作りをするんだってさ。
ここはユーグの自宅じゃないけど、寝泊まりも出来るように寝室も浴室も備えてあるそうだ。


何か飲み物を用意するって言うユーグに、お酒じゃないものを頼んだ。
お昼にもなってない時間帯だし、ちゃんと真面目に話さなきゃならないからな。



室内のどこに座ってもいいって言われたオレは、物珍しさから、バーカウンターを選んだ。背の高いスツールに腰掛けて、実は結構ウキウキしてる。
店員さんが冷たい珈琲を持って来てくれた。
縦長のグラスがシックなカウンターに置かれるのって、凄い格好良い。

はしゃぐ子供を見守るような笑顔で、ユーグが隣のスツールを使う。
両肘をカウンターに。指を伸ばして組んだ両手の上に顎を置いて、オレへと視線を流して来るユーグ。


「もっと……何日も来てくれないかと、思っていた。」
「ゃ、あの。むしろ、早過ぎてゴメン。」

会えない時間で自分のことを考えて貰う、とか。そういう駆け引きとか全然、出来ないオレだから。する気も無いけど。
ルサーからも「早めに顔合わせしたい」って言われてるしなぁ。

「いいや? 早い分には嬉しい限りだ。ずっと……何日経ったら会いに行こうか、どのタイミングでまた声を掛けようかと。そんな事を考えていたんだ。」
「オレの所為で不安にさせてたな。」
「私が勝手に考えていただけの事だ。キミは気にしなくていい。それより……。」

ユーグは一旦そこで言葉を区切った。
覗き込むような目線で、そこはかとなく、言い難そうな雰囲気。

「あの後……。大丈夫、だったのか……?」

もしかしたらオレからの『返事』を催促するのかと思ったけど。
ユーグの口から出たのは気遣う言葉だった。
オレが一緒に暮らしてるルサーに家を追い出された。って状況までしか知らないから、心配してくれてたんだ。


ルサーに許して貰えた。って、ちゃんと言わなきゃな。
それと、オレの名前とか、他にも……。


「心配させてゴメン。えっと、……ルサーに許して貰えて。仲直り、出来た。」
「……そうか。私としては少々残念だが、それは良かったな。」
「それから、オレの名前を思い出した。」
「……っ!」

ユーグは目を見開く。
組んでた手をカウンター上に置いて、オレへと向き直った。
その手に、オレの手を重ねる。
オレに触られた肌がピクッて反応する。


「ユーグに伝えたいんだ。オレの名前。」
「……ん。」
「オレの名前は、イグザ。愛称は、イグゥで……養育所では皆、そう呼んでたから、愛称の方が呼ばれ慣れてはいる、かな。」

早い内に話さなきゃタイミングを逃す、って分かったからな。
これから何を話すにしても、まずはオレの名前を、だろ。


ユーグはオレが全部言い終わるのを待って、ふぅっと息を吐いた。

「名前が分かったのか。……いい名前、だな。」
「ん、ありがと。」
「キミは、どちらで呼ばれたい?」
「えぇ~、どっちがいいかなぁ。」


ちょっと想像してみる。ユーグの唇から零れる、オレを呼ぶ声を。
想像上のユーグがオレを、優しく「イグゥ」って呼んだり、凛々しく「イグザ」って呼んだりしてくれる。ドッチも違ってドッチもイイ。

でも想像するのはこの辺にしとかなきゃ。
何故って? どちらのユーグもオレを呼んだ後、エッチな雰囲気で誘って来るから。
イグゥって呼んで甘えた感じのユーグが左側から、イグザって囁く大人っぽいユーグが右側から、オレにしな垂れ掛かってる。
もう、ね。オレ、自分の妄想でユーグにナニをさせてるんだっ。
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