せっかくBLゲームに転生したのにモブだったけど前向きに生きる!

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第五章 ~ゲームに無かった展開だから遠慮しないで歯向かう~

まさか本気で言ってるなんて思わなかったから

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「何だ……? 呼ぶまでは部屋に近寄るなと言っておいたのに……。」

スツールの座面を回転させて、扉の方へと身体を向けるユーグ。
整った眉が不機嫌そうに吊り上がった。クレーム対応もまともに出来ないのか、って雰囲気だ。


扉を叩く音は忙しない。
凄く焦ってるような雰囲気が出てる。

「オーナー、大変ですっ。オーナーっ!」
「一体何事だ! 来客中だぞ!」

語気も荒めに返しながら、ユーグは立ち上がった。扉の方へと歩き出す。
オレは一緒に行っても仕方ないから、腰掛けたままでそっちの方を向くだけにした。



「あのっ、オーナーにお客様が……! 金獅子のハーレムの方が!」


聞こえた瞬間。
ユーグの足が止まった。

一瞬、オレの方を振り返って、ユーグはすぐに扉へと顔を戻す。
扉の外から聞こえた、ほんの短い言葉で。明らかに顔色が悪くなってた。


金獅子のハーレムと聞いて。
ユーグの胸中は穏やかじゃないだろう。
オレも。メリクルに言われた話が頭に浮かび上がる。

消滅じゃなくて休止状態のハーレム。このタイミングでの訪問。
……早過ぎるだろ!


慌ててオレがスツールから下りるのと同時に、ユーグが扉を開けた。
焦り顔の店員さんが立ってた。

「金獅子のハーレム、だと……?」
「は、はいっ。オーナーは来客中だと、そのっ、お伝えしたのですが……あっ!」

説明しようとする店員さんを、誰かが押し退けた。


室内へ強引に入って、ユーグさえも無視して。


自分ちみたいに遠慮なく、ズカズカやって来るのは。




「やあっぱり、ココに居たかあぁっ!」
「め……メリクルぅっ?」

一直線にオレの元へ来たのは、怒り顔のメリクル。
ビックリして声が裏返ったオレの胸倉を掴んで来た。

「ぐぉおらあぁぁっっ、イグゥ~~~っっ! テメェ、朝九時にっ! 兵舎の中庭に集合っつったろがあぁっ!」

至近距離から思いっ切り怒鳴られた。
しかも、力一杯の巻き舌でゴロツキ風に。

……そう言えば、エステードさんちで、そんな感じの台詞言われたっけ。すっかり頭から抜け落ちてたけどさ。


「すっぽかす、たぁ……イイ度胸してんな、おいいっ!」
「え~、だって本気だとは思わなかったもん……。」
「俺は都合のイイ時はいつだって本気だ。」
「それ、微妙に酷いな、メリクル。」

怒ってるっぽいメリクルはまだオレの胸倉を掴んでる。
滅茶苦茶怒鳴られた割に、それ程はキツく絞められてないから放っとくけど。


それはそうとして……。

「……もしかしてメリクル、待ってたのか?」
「俺が呼んでんだから当たり前だろぉがっ。」
「あぁ……それはゴメン。すっかり記憶から消えててさ。」
「ご免じゃねぇわ。お前を探してリッカの家に行ったわ。」
「えぇぇ……。」

うわぁ、メリクルってば。朝っぱらから家に押し掛けたのか。
迷惑掛けたなぁ。リッカは仕事柄、夜が遅いだろうに。ひょっとしたらリッカ、まだ寝てたかも知れないぞ。
たぶんオレが家で洗濯してる頃、辺りかな。
約束した……ツモリになってた……オレが来ないからって。メリクルも、そこまでしてオレを探さなくてもいいじゃないか。
ハーレムで若守様って呼ばれてるような役職なのに、ヒマなのか? ヒマを持て余してるのか?



視界の端っこで、顔色の戻ったユーグが店員さんを下がらせるのが見えた。
扉を閉めて戻って来るけど、気を遣ってるのか、ユーグは近寄って来ない。


オレは別に、ここでメリクルに話なんか無い。
さっさと帰って貰いたいぞ。昨日と逆の立場だ。
正直に「帰ってくれ」って頼んだら怒るかな。ちょっと会話したら満足して帰ってくれないかな。ダメかな。

「メリクル、リッカの家に行ったんだ……。ズルい。」
「狡くねぇわ、イグゥだって行った事はあんだろが。」
「だって……! ね、寝起きのリッカ、見たんだろ? ズルイ!」
「お前はエステードの寝起きどころじゃねぇ姿を見てんだろが。」
「え、なんで今ここでエステードさんの名前が出て来るんだ?」
「逆に聞くけど、なんでアイツの名前が出ねぇと思えんだよ?」
「さぁ、分かんない。」
「脊髄で答えんなや!」

だって本当に分かんないぞ。
え、何? オレがエステードさんの潮吹き姿を見たから、メリクルがリッカの寝起き姿を見て、それで痛み分けって話になるのか? そういう問題?


今一つシックリ来ないオレに向けて、メリクルはビシッて指を突き付けた。
ヒト様を指差ししちゃダメ、って養育所で教わったハズなのに。

「とにかく、な。イグゥだって色々やらかしてんだから、俺が寝起きのリッカを叩き起こしても文句言うな。」
「寝起きは既に『起きてる』状態だから、それを更に『叩き起こす』は無くない?」
「グっ……!」

頭痛が痛い。みたいで気になったから。
つい脊髄反射で言っちゃったんだけど。


声を詰まらせたメリクルの顔がほんのり赤らむ。

「……そういう理屈っぽいの、お兄ちゃんは嫌いだぞ?」
「そうだな。誰にでも間違い……あだだっ!」

言葉を遮るようにメリクルがオレの額を指で小突き回した。
そして何故か、オレの飲み掛けの冷たい珈琲を一気に呷る。

「あー、ムカ付くわぁ~、腹立つわぁ~。しばらくクチ聞いてやんねぇからな。」

ヘソを曲げたメリクル。
デジャヴな感じでズカズカ、オレから遠ざかってく。



「あぁそうだ、……イグゥ?」

扉を開けて。
そのまま出てくかと思ったメリクルが振り返る。

「お前が何をどこまで話す気かは知らねぇけど、せっかくだから、あの話もしてやれば?」
「え゛……。」
「お前から教えてやれよ。じゃあな。」



こうして……。
嵐のようにやって来たメリクルは、ワケが分かんないまま、急に帰ってった。
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