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第五章 ~ゲームに無かった展開だから遠慮しないで歯向かう~
シルシがあっても欲しいものは手に入らない・4 $フィロウ$
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困ってからの神頼みが叶うわけない。
せっかくイグゥと二人で甘い物を食べに行ったのに、お兄さんの同僚と、イグゥの幼馴染みって人が現れて。
自分の名前が分かったイグゥは、慌てた感じで店を出て行っちゃった。
美味しいスイーツが目の前にあっても、ここにイグゥが居ないんじゃ意味が無い。
この二人と同じテーブルを囲む理由も無い。
それでもボクは席を立たなかった。
お腹の中の、もっと奥から。イライラしたものが込み上げて来る。
どうしても今、そこにいる男……イグゥがビリーって呼ぶからボクもそう呼ぼうかな……に、何か言わなきゃ気が済まない。
おかしいな? ボクはこんなに気の強い性格じゃないのに。
ビリーはわざとらしく上目遣いでボクを睨み付けてる。
その隣でカシュ……お兄さんの同僚の人……が困ったような微笑を浮かべてる。
「イグゥったら……ケーキ、一口も食べないで行っちゃった。せめて一口、食べて行けば良かったのに。……ねぇ?」
「え……っと、そうだね?」
困り眉になってるカシュがか弱くて、ボクは苛立ちが少し落ち着く。
周囲の様子を窺ってみれば、他の客がこっちに注目してる様子も分かった。
だからさっさと食べて店を出るツモリになったのに。
ボクの気遣いをビリーは木っ端微塵にした。
イグゥとの時間を邪魔した事を詫びようとしたカシュを止めたんだ。
「カシュ、謝る必要無い。デートの相手、放って帰らない。……イグゥは。」
お前はデートの相手じゃない。
ハッキリ言われた気がした。
完全に喧嘩を売られてるよね? そう思っていいよね?
……ぅううん? 違ってても買うけどねっ。
こんな、イグゥを助けてあげられるのが分かってて、それなのに知らない振りをしてた男なんかに。いくら幼馴染みだからって、引く気は無いからっ。
アクセサリをジャラジャラ付けて、浮付いた格好して……どうせ全部、ネコに貢がせた物なんでしょ。その顔で、これまで相当モテて来たんだろうけど。
ボクには通用しないからっ。
「キミ、さ……。今更になって幼馴染み面するんだ?」
イグゥが一緒だったから何も言わずに我慢出来てただけ。
彼が居なくなって、もう抑えが利かなくなってる。
「随分と薄情な幼馴染みだね。あの人の事、見覚えないって言ったんだろ?」
それから、ボクの口からはビリーを責める言葉がいっぱい出て来た。
カシュが恋人を庇おうとするのさえ利用して。言ってる自分が驚くぐらい、ボクは饒舌にビリーを責めた。
不意に目が痛くなる。それに、熱い。
だいぶ興奮しちゃったみたい。
もしかしたら、シルシが浮かんじゃってるかも。気を……付けなきゃ……。
「キミが、見覚え無いなんて言わずに、素直に名前を教えていれば。イグゥは、自分の名前が分からなくて余計な苦労をする事は無かったんだよ? お兄さんが心配する程、困ったりしなくて良かったんだ。」
「そう? 困ってる、ようには…」
「幼馴染みがどれだけ分かってるか知らないけど。イグゥだから大丈夫。って、決め付けてない? 困ってるように見えないから、本当に困ってないって言い切るの?」
困ってるように見えないから、って。なにそれ。
ねぇキミさ、イグゥの事が好きなんじゃないのかい? それともカシュの誤解? 気の所為?
だったらカシュが「ずっと好きな人」って言った時に否定しといてよ。
「名前、決めたら良かったのに。」
養育所から出る子が新しい名前を決めるのは良くある話。
ビリーが言うのはそういう事。だけど。
元々の名前がちゃんとあって、新しい名前に替えるかどうかを、選べるのと。
自分の名前が分かんなくて、これからの名前を、決めるしか無いのとは。
違うんだよ? ……全然、違うんだよっ?
「忘れたのは自分の名前だけじゃないんだ。住んでた養育所も、近くにある村とかも全部。」
「問題、無い…」
「帰りたい場所に帰れない事が、問題無いの? 誰か大事な人とか、居たかも知れないのに? 名前や名称の他にも、何か忘れてるかも知れないって、……それを忘れてる事すら気付けてないのかも知れないのに?」
「帰りたかった、かな?」
「自分が住んでた所だよ? 帰りたいと思うのは普通じゃない? ……それとも。帰りたくないって思うような、嫌な記憶しか無い場所だったの?」
嫌な記憶さえ、ボクには無いけどね!
……って言葉はギリギリ飲み込んだ。
あぁ……気を付けなきゃって思ったのに。
声を荒げるのだけは我慢出来てるけど、責め立てるのが止まらない。
てっきり、イグゥの事でライバル視してるからだと思ってたけど、何だかそれだけじゃないみたいで。
……もしかして、これ。あぁ、そうか……。
タチ同士がやたら衝突し合う。凶暴性が出るって言うか。……こういう事なんだ。
ボクは何となく理解した。
ふと視線を感じると。
カシュが何か言いたげな顔で。それでも黙ったままボクを見てる。
バッチリ目が合ったのを考えれば、カシュはボクの瞳を見たんだな。
やっぱり天守のシルシが浮かんだらしい。
カシュが黙ってくれてる内に、ボクはその場から立ち去った。
せっかくイグゥと二人で甘い物を食べに行ったのに、お兄さんの同僚と、イグゥの幼馴染みって人が現れて。
自分の名前が分かったイグゥは、慌てた感じで店を出て行っちゃった。
美味しいスイーツが目の前にあっても、ここにイグゥが居ないんじゃ意味が無い。
この二人と同じテーブルを囲む理由も無い。
それでもボクは席を立たなかった。
お腹の中の、もっと奥から。イライラしたものが込み上げて来る。
どうしても今、そこにいる男……イグゥがビリーって呼ぶからボクもそう呼ぼうかな……に、何か言わなきゃ気が済まない。
おかしいな? ボクはこんなに気の強い性格じゃないのに。
ビリーはわざとらしく上目遣いでボクを睨み付けてる。
その隣でカシュ……お兄さんの同僚の人……が困ったような微笑を浮かべてる。
「イグゥったら……ケーキ、一口も食べないで行っちゃった。せめて一口、食べて行けば良かったのに。……ねぇ?」
「え……っと、そうだね?」
困り眉になってるカシュがか弱くて、ボクは苛立ちが少し落ち着く。
周囲の様子を窺ってみれば、他の客がこっちに注目してる様子も分かった。
だからさっさと食べて店を出るツモリになったのに。
ボクの気遣いをビリーは木っ端微塵にした。
イグゥとの時間を邪魔した事を詫びようとしたカシュを止めたんだ。
「カシュ、謝る必要無い。デートの相手、放って帰らない。……イグゥは。」
お前はデートの相手じゃない。
ハッキリ言われた気がした。
完全に喧嘩を売られてるよね? そう思っていいよね?
……ぅううん? 違ってても買うけどねっ。
こんな、イグゥを助けてあげられるのが分かってて、それなのに知らない振りをしてた男なんかに。いくら幼馴染みだからって、引く気は無いからっ。
アクセサリをジャラジャラ付けて、浮付いた格好して……どうせ全部、ネコに貢がせた物なんでしょ。その顔で、これまで相当モテて来たんだろうけど。
ボクには通用しないからっ。
「キミ、さ……。今更になって幼馴染み面するんだ?」
イグゥが一緒だったから何も言わずに我慢出来てただけ。
彼が居なくなって、もう抑えが利かなくなってる。
「随分と薄情な幼馴染みだね。あの人の事、見覚えないって言ったんだろ?」
それから、ボクの口からはビリーを責める言葉がいっぱい出て来た。
カシュが恋人を庇おうとするのさえ利用して。言ってる自分が驚くぐらい、ボクは饒舌にビリーを責めた。
不意に目が痛くなる。それに、熱い。
だいぶ興奮しちゃったみたい。
もしかしたら、シルシが浮かんじゃってるかも。気を……付けなきゃ……。
「キミが、見覚え無いなんて言わずに、素直に名前を教えていれば。イグゥは、自分の名前が分からなくて余計な苦労をする事は無かったんだよ? お兄さんが心配する程、困ったりしなくて良かったんだ。」
「そう? 困ってる、ようには…」
「幼馴染みがどれだけ分かってるか知らないけど。イグゥだから大丈夫。って、決め付けてない? 困ってるように見えないから、本当に困ってないって言い切るの?」
困ってるように見えないから、って。なにそれ。
ねぇキミさ、イグゥの事が好きなんじゃないのかい? それともカシュの誤解? 気の所為?
だったらカシュが「ずっと好きな人」って言った時に否定しといてよ。
「名前、決めたら良かったのに。」
養育所から出る子が新しい名前を決めるのは良くある話。
ビリーが言うのはそういう事。だけど。
元々の名前がちゃんとあって、新しい名前に替えるかどうかを、選べるのと。
自分の名前が分かんなくて、これからの名前を、決めるしか無いのとは。
違うんだよ? ……全然、違うんだよっ?
「忘れたのは自分の名前だけじゃないんだ。住んでた養育所も、近くにある村とかも全部。」
「問題、無い…」
「帰りたい場所に帰れない事が、問題無いの? 誰か大事な人とか、居たかも知れないのに? 名前や名称の他にも、何か忘れてるかも知れないって、……それを忘れてる事すら気付けてないのかも知れないのに?」
「帰りたかった、かな?」
「自分が住んでた所だよ? 帰りたいと思うのは普通じゃない? ……それとも。帰りたくないって思うような、嫌な記憶しか無い場所だったの?」
嫌な記憶さえ、ボクには無いけどね!
……って言葉はギリギリ飲み込んだ。
あぁ……気を付けなきゃって思ったのに。
声を荒げるのだけは我慢出来てるけど、責め立てるのが止まらない。
てっきり、イグゥの事でライバル視してるからだと思ってたけど、何だかそれだけじゃないみたいで。
……もしかして、これ。あぁ、そうか……。
タチ同士がやたら衝突し合う。凶暴性が出るって言うか。……こういう事なんだ。
ボクは何となく理解した。
ふと視線を感じると。
カシュが何か言いたげな顔で。それでも黙ったままボクを見てる。
バッチリ目が合ったのを考えれば、カシュはボクの瞳を見たんだな。
やっぱり天守のシルシが浮かんだらしい。
カシュが黙ってくれてる内に、ボクはその場から立ち去った。
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~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
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※第32話を少し修正しました。
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