せっかくBLゲームに転生したのにモブだったけど前向きに生きる!

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第五章 ~ゲームに無かった展開だから遠慮しないで歯向かう~

シルシがあっても欲しいものは手に入らない・6 $フィロウ$

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更に次の日。またボクは朝から町へと出掛けてた。
今日は昨日と違うトコ。

もういい加減、何の成果も無いんだから止めればいいのに。って思わないでもないけど。
部屋に引き篭もってたって、それこそ何にもならないし。傍から見てもハーレム作りが一歩も進まないのが明らかになっちゃうし。
何より。自分の身体……瞳孔のシルシに急かされてるのか知らないけど、家でジッとしてられないんだ。


今日こそは発熱しない。三日連続はダメ。
その為には適度に水分や食べ物を補修しとかないと。

町を散策しながらボクは要所ごとに、子供のいる屋台から飲食物を買った。
屋台には子供がいる事が多い。大人が一緒の場合も、子供だけの場合もある。養育所にいる子供達に社会経験を積ませる為、何処の町でもこうした『お手伝い』が推奨されてるから。
ボクが領主見習い的な立場で、領主が仕事をする場に顔を出せるのも、そういう文化が背景にある。



飲み物を売ってる屋台の前にある、椅子代わりに置いた箱に腰掛ける。
注文を聞きに来た『お手伝い』の子供に果実水を頼んだ時に、ちょっとした違和感って言うか、いつもと違う感じがして。
ボクは大人に話し掛けた。子供には……泣かれる事もあるから。

「あの子……いつから?」
「ん? あぁ、あいつは一昨日からだ。ここには三人ぐらい来てるんだが、その内の一人が他の町に住んでる夫夫(ふうふ)に貰われてってよぉ。良かったなぁ。」
「……そう。それは良かったね。何処に行ったのかな。」
「どっかは知らんが、元気で暮らせりゃいいよな。」

行き先を尋ねるような言い方をしたけど、分かると思って聞いたんじゃない。
きっと今回も『誰も知らない』んだろうと思って一応確認しただけ。



誰かに引き取られるのであれ、年齢制限であれ、養育所から出る子は……この町に残る子以外は、何処に行ったのか誰も知らない。
誰かに貰われてく子が何処に行くのか。それを養育所が町に報告する義務は無いから。
行き先について明らかにした記録を残すのも義務じゃない。だから養育所によってマチマチらしくて。
この町の養育所では三年分くらい残ってるらしい。中身を見せては貰えないけど。

子供の行き先はセンセイ達だけが知ってる。

そういうもんだって皆、思ってるみたい。
それまで関りのあった人達や、同じ養育所にいる他の子達にも大雑把な説明しか無くても、それに何かを思ったりはしてないようだ。
きっとモヤモヤしてるのはボクだけ。

子供を貰いに来る人達がどんなツモリで来てるのか確認してるのかな。
貰われてった後の子が元気に暮らせそうか、そういう審査ってしてるのかな。
同じ夫夫が一年に何度も、あるいは同じような時期に複数の養育所に、子供を貰いに来たりしてないのかな。そういうのって確認しないのかな。
そんな所が気になるのも、きっとボクだけ、なんだろう。


ボクには子供の頃の記憶が殆ど無いから。


街道を泣きながら歩いてたボクを領主が見付けて、家に連れ帰ってくれたらしい。その頃の記憶でさえ、ボクにはもう曖昧にしか残ってないけど。
保護された当時からボクは何も覚えてなくて。
フィロウって名前は家族で話し合って付けてくれた。
年齢は、ボクの受け答えとか、身体の……その、成熟具合とかでの推定年齢だ。

恐らく十歳くらい、って判定されたボクが領主の子になれたのは奇跡だよね。
殆どの子が赤ん坊や幼児の頃から一緒に育ってる養育所に、推定十歳の、しかも記憶の無いボクが交じっても上手くやれないのは明らかだったから。


もしボクが普通に養育所で育ってれば、きっとボクの中で『養育所に関する常識』も育ったんだろうけど。
そうじゃないボクは。
領主になったら、養育所のそういう所を……。


……って。何やってるんだろう、ボク。
領主の後を継げない可能性の方が高いのに、まだそんな事を考えてるなんて。




   *   *   *




娼館エリアでイグゥを見付けた。
大きくて派手な店に躊躇なく入ってった。


なんでだろう? イグゥを見掛けるたびに、声を掛けにくい感じなんだけど。娼館の前を歩いてるならともかく、入る所で呼び止めるなんて出来ないよ。
それにしても何の用事? わざわざネコ娼夫を買いに来たとしても、まだ開店前。
まさか、まさかイグゥ。タチ娼夫として働く気?

そんなまさか……あ、でも。
イグゥなら売れそう。幾らかな……、ってもう!


今日は発熱しないって決めたのに。

気付いたら瞳に熱が溜まってる。
見知らぬ客がイグゥを買う所を想像して。



慌ててその場から離れた。
最近ボクは逃げてばっかりだ。


ちょっと離れた場所の、人目に付かない建物の陰で蹲った。
さっさと家に帰ればいいんだろうけど、三日連続で発熱してるのが家の人にバレたくなくて。ちょっと休めば大丈夫だって自分に言い聞かせてた。


休んで。待って。しばらく経って。

そろそろ大丈夫かな、って頃。



「……っ!」

目の前が突然、暗くなった。
声を出そうとした口も塞がれて。
頭から何かを被せて押さえ付けられてるのが分かったのと同時に、ボクの身体は何処かへと引き摺られる所だった。

「ぅわ、なんだ、コイツ。」
「ちょ……デカ過ぎだろ。」

えっ? なに? 襲われてる?
ボクの身体が大きくて難儀してるっぽいけど……どうし…。


「へ~ぇ? 人攫いか、物盗りか、強姦か……。」

ボクが完全に狼狽える前に、そんな声が聞こえた。


「っま、何でもい~わな。大手を振って堂々と甚振れんだからよ。」
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