せっかくBLゲームに転生したのにモブだったけど前向きに生きる!

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第五章 ~ゲームに無かった展開だから遠慮しないで歯向かう~

シルシがあっても欲しいものは手に入らない・8 $フィロウ$

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大通りを行き交う人がちょっと横を見たら、すぐに見えるような場所。
建物の間にある細い路地は、壁際に何かの箱が積まれてて道を更に狭くしてる。

箱の上に腰掛けてるボク。
お兄さんのオトコ……長いからもう、男、でいいよね。男はボクの横に、腰を預けるような感じで箱に寄り掛かって立ってる。

「お前、なんであんなトコに居た?」
「………。」
「ッハ、だんまりかよ。どぉせ、ハーレムが上手く行ってなくて、ダラダラ時間潰してたんだろ。」

分かってるならわざわざ聞いて来ないでよ。
関係無いでしょ。


言い当てられた苛立ちを、そのまま視線に乗せて無言で睨んでやった。
当然、その程度じゃどうって事も無いだろうって思ってたけど、平然と見返される。

今は姿勢の関係でボクから見上げてるけど、身長はイグゥと同じくらいかな。
黙ってたら結構凛々しい系なのに、さっきの暴挙を思い出したら、中身は全然違うんだろうな。


「全然、進んでないらしいな?」
「……な…ぇ。」
「……あ?」
「そっちの、名前っ。……教えてくれても良くない? ボクの事は知ってるんでしょ?」
「俺の名前を聞くより、お前はもっと、他の奴に声を掛けたらどうだ?」

自分がボクの名前を知ってるからって、なんでボクの方も知ってると思うんだろ?
しかも、お兄さんのオトコだからか知らないけど、同じような小言まで……。

「名前も知らない人に……アレコレ言われる筋合い、無いから。」
「あーはいはい。俺はメリクルだ。……ったく、可愛くねぇな。」
「お兄さんのオトコから可愛いって思われても仕方ないからね。」
「………。」

どうやら、お兄さんのオトコだろうって思ったボクの勘は当たってたみたい。


メリクルは黙り込むと、わざとらしく視線を逸らした。
あからさまに返事する気が無い感じで足を組み替えたりして。

そんな仕草にもタチの余裕とかを感じてちょっと面白くない。
食って掛かるくらいまで苛立たないのはたぶん、勝てそうにないのが分かるから……かな。
すぐそばの大通りに人があんまり歩いてなくて良かった。
絶対、人目を惹きそうだもん、この人。


「どうすんだ? 街でウロ付いたって、どうにもならねぇぞ?」
「いよいよ本当に駄目だったら、最終手段で……お兄さんに頼んでハーレムに入って貰うのも良いかもね。」
「へ~ぇ……? そりゃ確かに最終手段、だな?」
「……ヒっ!」

…………ご、……ゴメンなさい。調子に、乗って……。


てっきり何か文句を言って来るかと思ったのに、メリクルは微笑を浮かべた。
でも怖い。
目が睨んでるとか、そういうんじゃなくて。
きっともし本当にそんな話になったとしたら、その前にコイツをどうにかすればいいから今は文句を言わない。……って、そんな感じだ。

普通はまず恫喝するもんじゃないの?
この人、脅しも警告も無しで無言実行するタイプだ!

お兄さんのオトコ……、本気でヤバい人、なんじゃ……?
どうしよう? もう遅い気もするけど、お兄さんに言うべき?



「まぁ冗談はさておき。……相当、溜まってんなぁ。」
「変な言い方しないでくれない?」
「それに比べてイグゥの方は、ちょこちょこ手ぇ出してるけどな?」

ニヤリと笑うメリクルに何も言い返せない。
だって、ボクがイグゥをどう思ってるか。何故か知られてるんだ。
お兄さんにも知られてるのかって思ったら、どうしたら良いか、頭が回らない。

回らない。けど。

「お前、イグゥが……、あー、いや……。」

微妙な所で言葉を切るメリクル。
ボクは視線を外して、そっと下を向いた。


「正直……他のタチならともかく、イグゥはなぁ……。」
「………。」
「イグゥは妻に、ならないぜ? 分かってるだろうけどよ。」

分かってる……分かってるよ、でも……。
お兄さんにもだけど、この人にも言われたくないよ。
カップル揃って同じように忠告しなくたっていいじゃない。


無意識の内にボクは箱の上で、膝を抱えて小さくなってた。
こんな風にしたってボクの身体が大きいのは変わらないのに。


嫌だな……また熱っぽくなって来たみたい。
メリクルが何か言ってる。
知らない。



「あー分かった、分かった。んな顔すんな、手ぇ貸してやるから。」

急に髪をワシャクシャにされる。
驚いて顔を上げたら、困った表情のメリクルがボクの頭に手を伸ばしてた。

ちょっと驚いたボクは、手を出すように言われて反射的に右手を出す。

「考え込んでねぇで、ヤッてみろ。んん?」
「えっ……。」

掌に乗せられた小瓶。
今さっき以上に衝撃を受けたボクはマジマジと凝視する。

「とりあえず一服盛ってやれ。なんせ、酒で酔い潰されて連れ込まれても、怒んない男だからな。」
「だからって……!」

瓶の見た目と言い、メリクルの台詞と言い。
何を渡されたか分かった。

「そんなの、無理っ!」
「どうせ、ヤラずに諦めんならよ。ヤッて駄目になってもいいだろ。」
「そんな!」

簡単に、投げやりな感じに聞こえて。
カッとなってメリクルを睨み付ける。


ボクと目が合ったメリクルは驚いたように目を見開いた。
きっとボクの瞳にシルシが浮かんでるんだろう。


ボクが更に口を開いた瞬間。


「……っぐ!」

メリクルが自分の両眼を押さえて顔を背けた。
苦しそうな呻き声を漏らしながら蹲る。

「寄るなっ!」

小瓶を握ったままなボクをメリクルが鋭く制止した。
ボクが近寄ると思ったんだろう。

「よ、寄るな、っつってんだろがぁ! 寄ってくんじゃねぇ!」
「寄ってないよ!」
「……るさい、お前じゃ……、……っ。」


急に。

メリクルは黙り込んだ。


「ぁの……だいじょう、」
「大丈夫だ、問題無い。」

顔から手を離して立ち上がると、メリクルは衣服に付いた埃を手で払い落す。
と、メリクルは穏やかな目でボクを見る。

直前の状況と温度差があり過ぎて。
きっとその所為で。ボクは動けない。


「俺に出来るのはあくまでサポートだ。それは覚えておいてくれ。」
「……え?」
「フィロウが上手く行くよう、祈ってる。じゃあ今日はこれで。」
「えぇっ?」

急に様子が変わったメリクルがオカシイな、って分かるけど。
何故かボクの足は動かなくて、後を追う事が出来なかった。
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