273 / 364
第五章 ~ゲームに無かった展開だから遠慮しないで歯向かう~
考えさせてくれ、は断りの言葉じゃないハズだ
しおりを挟む* * *
病院に向かって歩くオレ。
歩きながら今日の目標。やること、言うこと。ちゃんと決めとく。
そうしておかなきゃ、なんやかんやでウッカリしそうだからな。
「一週間は経ってないもんな。」
リオが刺されてからの日数。
確認するように、つい口から出た。
この世界はあんまり医療が発達してない。
刺された部位が太腿で、胴体にかなり近い部分だからな。日常生活にも支障をきたすだろうし、普通に考えて、この日数ならリオはまだ入院してるハズだ。
「まだ痛むよな、きっと……。」
リオが味わっただろう痛みと衝撃を考えて、オレの眉間にシワが寄る。
出来ればリオが退院する日には付き添いたいな、って。
考えながら歩いてたら病院に着いた。
朝の院内は、こないだ来た昼前よりも来院者が多いようだ。もしかして皆、朝一番で薬とか貰いに来るのかも。
病院の受付ブースっぽいトコで来院目的を告げたら、どうやらリオの病室が変わってたらしい。前回とは違う病室を教えられた。
なんと、一人部屋だってさ。
リオの病室は、前回リッカと行き合ったあの病室エリアよりも奥だった。
幾つかある扉の配置間隔が狭めだから、個室ばっかりなんだろう。
まるで誰も人が入ってないみたいで、廊下はとても静かだった。
聞いてた部屋の前も、もちろん静かだった。
オレは軽く呼吸を整えて扉をノックした。
「………?」
室内から返事が無い。
オレはもう一度ノックする。
「リオ……? 寝てる、のか……?」
病室を教えて貰ったんだから、この部屋にいるのは間違いない。
もう一度ノックしても返事が無かったら。どうしよう……って、考えてたら。
室内から慌てたような気配と、……ベッド、かな。結構、派手に軋む音。
その音の直後。
扉の向こうから「イタぁ~」って声が聞こえた。確実に、リオの、痛がる声。
「リオ? 大丈夫か? ぇと、オレ……イグザだけど、開けていいか?」
ちょっと焦るオレ。
許可してくれる返事が聞こえたから、急いで扉を開けた。
部屋の中はこじんまりして丁度良いくらいに明るい。
ベッドの横に、リオが蹲ってる。布団に掴まって立ち上がろうとしてるんだけど、上手く行かないみたいだった。
「……リオっ、大丈夫かっ?」
「うん……、ちょっと慌てちゃって…」
苦笑いを浮かべるリオに素早く駆け寄って支える。
シーツを握るリオの手を、オレの肩へと乗せさせた。
「オレに掴まれ。とりあえずベッドに戻るぞ?」
「あ、ありが……ぅわっ!」
リオが肩に掴まったのを確認して、抱え上げたら。
ビックリした声を上げたリオにしがみ付かれた。
「だっ、抱き上げるなら、こ…声ぐらい掛けろよ。ビックリするだろ……もう。」
「ゴメン、ゴメン。抱き上げるぞ。」
「もう遅いっての。」
ツッコミ的に指摘して、リオはちょっと笑った。
寝起きだからか、入院中だからか。纏めてない髪が揺れて、フワッて心地良い香がする。オレの腕に掛かる丁度良い重さとか、温かさとか、硬さと柔らかさの絶妙なバランスとか。全部、いい。
ずっとギュムギュムしてたくなる気持ちを振り払って、リオをベッドに戻した。
足を伸ばして座るリオのすぐそばに、丸椅子を引っ張って来てオレも腰掛ける。
「また来てくれたんだね、イグゥ。ありがと。」
「今日はオレ、どうしてもリオに伝えたい、大事な話があるんだ。」
リオの頬が薄っすら赤く見える。
綺麗なリオの可愛い表情を前にオレは、さっそく『大事な話』を始めた。
話しておかないとオレ、このままデレデレするだけで終わりそうだからな。
リオに伝えよう、って決めてた話をするオレ。
「オレの身体にシルシが見付かったんだ。天守の、シルシ。」
「っえ、え………、えええぇぇぇっっ? ほ、ホントにっ?」
「本当だ。驚くのも無理無いよな。天守だなんてさ、オレもつい最近知ったんだ。」
「て、天守なんだ……イグゥ。そっか……。じゃ、ハーレム…」
「…あぁ。ハーレムを作ろう、って考えてる。」
「そう……。そっか、……そう、なんだ。」
ん? あれ? なんか、リオの様子が……。
あっ、マズい。これ、誤解させてるんじゃないか?
「リオに、オレの、妻になって欲しいんだ。」
「でも、……おれ…」
「タチとかネコとか関係無いからっ。ハーレムの妻になるのに、属性の限定は無いんだ。タチ妻も法律的に何の問題も無いって、調べてあるからっ。」
タチの自分はハーレムに入れない。
そう思ったから、リオの元気が無くなったんじゃないか。
「ひょっとして、いきなり『妻』って抵抗あるか? 確かに、恋人になるのと違ってちょっと重たいよな。いきなりな話だから、すぐに了承するのは難しいかも知れないけど、オレはリオに頷いて欲しい。」
どうにかしたくて必死に言葉を並べるオレ。
オレの勢いがあり過ぎるからか、リオは何も言わずにジッとオレを見てる。
「もしリオは、しばらくは恋人がいいって言うなら、恋人期間を過ごしてからでもいい。一般的なハーレム入りがどうなのかは別として、オレは、リオが納得して妻になってくれるのがいい。……それから今日は絶対、リオに、住んでるトコを教えて欲しい。少なくとも。リオと会いたかったらどこに行けばいいのか、どこで連絡が取れるのか。それだけは把握しときたい。会うのもままならない、なんてイヤだ。」
急な饒舌。急な長文。別にオレ、普段は口数が少ないワケでもないけどさ。
こんなの自分でも……引く。
リオも引いてる。
オレに向いてた視線がちょっと揺れてから、下へ逸らされた。
「…………考え、させて。」
か、ん、が、え、さ、せ、て。
その意味が分かんなくなるくらい。
リオの言葉はオレの頭の中に、単なる音として響いた。
0
あなたにおすすめの小説
泥酔している間に愛人契約されていたんだが
暮田呉子
BL
泥酔していた夜、目を覚ましたら――【愛人契約書】にサインしていた。
黒髪の青年公爵レナード・フォン・ディアセント。
かつて嫡外子として疎まれ、戦場に送られた彼は、己の命を救った傭兵グレイを「女避けの盾」として雇う。
だが、片腕を失ったその男こそ、レナードの心を動かした唯一の存在だった。
元部下の冷徹な公爵と、酒に溺れる片腕の傭兵。
交わした契約の中で、二人の距離は少しずつ近づいていくが――。
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…
彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜??
ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。
みんなから嫌われるはずの悪役。
そ・れ・な・の・に…
どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?!
もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣)
そんなオレの物語が今始まる___。
ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️
ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜
キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」
(いえ、ただの生存戦略です!!)
【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】
生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。
ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。
のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。
「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。
「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。
「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」
なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!?
勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。
捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!?
「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」
ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます!
元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!
メインキャラ達の様子がおかしい件について
白鳩 唯斗
BL
前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。
サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。
どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。
ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。
世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。
どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!
主人公が老若男女問わず好かれる話です。
登場キャラは全員闇を抱えています。
精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。
BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。
恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。
イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした
和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。
そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。
* 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵
* 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる