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第五章 ~ゲームに無かった展開だから遠慮しないで歯向かう~
店の場所が病院に近くて良かった
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お昼ご飯を食べに入ったのは、西洋居酒屋みたいな店。
昼間から割と賑わってて、オレ達は窓に向いたカウンター席に着いた。
店内はテーブル席が少なくて、立ち飲み席の方は満席だったから。
料理はオレが適当に注文する。だってメリクルがオレに丸投げするから。
メリクルの食べれる物・食べれない物を確認出来るかな、って思ったのに。これじゃちっとも分かんない。
飲み物だって、オレと同じでいいって言うから。
カウンターテーブルに並ぶのは。
クリスピーピザと、焼いたソーセージやハムの盛り合わせ、ピクルス、キノコと豆類の煮込み料理、それと葡萄ジュース。
「じゃあ、……メリクル? 乾杯しよう。」
「そうだな。……乾杯。」
やっぱり、おかしい。こんなに何事も無くメリクルが乾杯するとか。まるで流されてるみたいじゃないか。
絶対にメリクルが大人しく乾杯しないってワケじゃないけど、その前に何か、一言二言……「なんでだよ」とか「しょ~がねぇな」とか、ありそうだろ。
それともオレ、メリクルに、偏ったイメージによる風評被害しちゃってるか?
「適当に頼んだけどさ、食べれない物だったら無理しないで、他の頼めよ?」
「大丈夫だ。」
バジルソースと溶けるチーズしか乗ってない薄いピザを、メリクルの指が摘む。
オレがジッと見守る中、メリクルは平気そうな様子で口に入れた。表情や動きを見る限りじゃ、特に嫌いな物って感じもしない。
ちょっと肩透かしを食らった気分で、オレもピザを摘んだ。チーズが青カビでかなり匂いと味の癖が強い。
これ……臭いの苦手な人はホント、ダメだろうなぁ。
なんだかオリーブも食べたくなって来たぞ。
「メリクル、美味しいか?」
「普通。」
そうか。食べれるだけで、美味しいとは思ってないのか。
それにしても、このメリクル……。口調が乱暴なワケでも、文句を言ってるワケでもないんだけど、なんか引っ掛かる感じだな。
べっ……別にオレ、『苦手な物を出されて困った顔をするメリクル』が見れなかったからって、それで機嫌を損ねてるんじゃないからなっ。
エステードさん、メリクルはチーズ平気だって言ってたし。
ただちょっと、なんか、変な感じがするだけだから。
「あのさ、メリクルって、いつ…………見てもイイ男だよな。」
急に何を言い出すんだコイツ、って思っただろ。
違うんだ、聞いてくれ。
今オレは「メリクルって、いつの間に好き嫌い無くなったんだ?」って言いそうになったんだ。
それが何故か口から出る瞬間に、これを言ったら面倒臭い展開になりそうな、そんな予感がしたんだよ。
だからって、既にもう「いつ…」まで声に出しちゃった台詞は消えないからさ。それをどうにか別な台詞にしたら、こんなのになっちゃったんだ。
それはそれとして。
自分でもバカ言ったな~って思うような発言したけど。
案外、実はそれで良かったかも。
オレは次の瞬間、メリクルに思いっ切り疑いの目を向けることになる。
だってオレがこんな風に言ったのを聞いたメリクルの対応が……。
「はぁ、……どうも。」
コレだぞ? 無いだろ、こんなの!
え……、えっ? メリクル? どうしたんだ?
その言葉にその反応。それ本気で、なのか?
せめて、オレにも分かるように巫山戯てくれよ。
仮にも相手は生きて動いてる人間なんだからさ。リアクションを完全に予測出来る、なんて言うツモリは無いぞ。
でもホラ、ある程度はメリクルっぽさがあるだろ?
例えば……心底ツマんなさそうに「はぁ~っ?」とか。呆れた目線で「ナニ言ってんだ、お前」とか。面白くもないのにせせら笑いながら「ハッ、当然だろが」とか。……そういうの、あるだろ。
それが……。ナニその没個性的な、明らかに受け流しに掛かった態度。
そんな返事するくらいなら昔の、養育所時代の『お兄ちゃん』なメリクルっぽく「そう言って貰えるのは嬉しいな」とか言ってくれよ。
なぁメリクル……。いや、メリクル……なのか?
今、オレの隣にいるのは……誰だ?
なんかさ、苦手でもなさそうに食べてたのとか。今の反応とか。
見た目と声メリクルに似た、メリクルじゃない誰かに見えて来ちゃうぞ?
「ところで、イグゥ。ハーレムの方は…順調、かな?」
声を掛けられて、ハッと我に返ったオレ。
結構な時間、意識をヨソに飛ばしてたみたいだ。メリクルの皿の煮込み料理が綺麗に無くなってる。
「早っ! メリクル、食べるの早過ぎないか?」
「何か俺に…、手伝って、欲しい…事があれば…」
「…いや、特には。……そ、それよりメリクル、顔色悪すぎだろ、大丈夫か?」
視線を皿からメリクルの顔に移してみたら、メチャクチャ血の気が引いてた。
具合悪いのを我慢してたのか? いつからだ?
「大、丈夫だ。」
「大丈夫じゃないっ。」
喋り方も微妙に変だ。おかしな部分で途切れてる。
吐き気を堪えるみたいに、とうとうメリクルは自分の口元を片手で押さえた。
酔っ払いを介抱するみたいにメリクルを支えて、お店のトイレを借りて、そこで静かに吐かせた。
青白い顔のメリクルに肩を貸して、外へ連れ出すオレ。
「ちゃんと掴まってろ。すぐ近くに病院あるから。」
「ハーレ…ムは…」
「やかましいっ!」
こんな予定じゃなかったけど。
病院の近くから離れてないで本当に良かった。
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