せっかくBLゲームに転生したのにモブだったけど前向きに生きる!

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第六章 ~ゲームと違ってオレのハーレムは自動生成されない~

エステードさんが分かってるならヨシ

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これ以上、仮メリクルがフィロウに関心を示して不用意な発言をする前に。
フィロウに「エステードさんを連れて、この場を離れてくれ」……って視線を送るオレだけど。やっぱり視線で複雑な会話なんか出来るワケもなく。
むしろオレの態度が微妙なのか、フィロウが離れる素振りが無い。


「あの人って確か……お兄さんの恋人、だよね……?」
「違います。」

即座に否定するエステードさん。
このクダリはもう、いつもの様式美と化してる気がする。
エステードさん的には、自分がメリクルを好きなだけで付き合ってはいない。って意思表示なんだろうけど。
ハーレムリングの話を聞いちゃったからなぁ。


「エステードさん、オレはその主張……ちょっと疑問に思ってるぞ。」
「おや、そうですか?」
「そうだよ、お兄さん。……あ、もしかして、恋人じゃなくて妻だからって意味? なら分かるけど。リングまで貰っておいて…」
「持ってろと言われただけで、貰ってませんよ……。」
「そんな不本意な顔されてもなぁ。……まぁ、その話は馬車でするとして…」

とりあえず二人とも、先に馬車に行っててくれ。
そう言おうとしたオレを遮ったのは。

一瞬だけ大人しかった、仮メリクルだ。


「ならば返却して貰おうか。預かりは不要だ。」

落としたばかりのハンカチでも渡して貰うような感じで、仮メリクルは片手をエステードさんに向かって差し出してる。
胡散臭い笑みを浮かべた仮メリクルに、関係無いハズのオレもムッとする。
エステードさんはほぼ無表情のような顔になって、僅かに目を見開いた。
小首を傾げたフィロウの方がよっぽど驚きの表情に見える。


「悪用されては大変だからな。」

仮メリクルが一歩、エステードさんに近付く。
思わずオレは、すぐに庇えるようエステードさんのそばに寄った。

オレの妻はフィロウだし、つい今さっきまで天守登録してないことを責められてたから、本当はフィロウを庇う位置にいるべきなんだろうけど。
何となく今、仮メリクルの意識は完全にエステードさんに向いた気がするんだ。

すっごい、凄い怪しいけど。仮メリクルの外見は完全にメリクルだ。たぶん実際に身体もメリクルのもの、なんだろうなって思う。
BLゲームの世界に転生した、なんて奇妙キテレツな体験をしてるオレだから。何となく、メリクルの身体にも珍妙な現象が起きてるんだろうなって想像出来る。
でも、エステードさんからしたら、そうじゃないから。
メリクルじゃない別人から、メリクルの姿で。エステードさんが変な絡み方されるなんてダメだろ。


「今、持ってるなら出したまえ。……預かってるだけ、だろう?」
「………。」
「家に置いてあるなら取りに行く。どちらにしろ、返して貰う。」

エステードさん、ほぼ無表情だったのが完全な無表情になってる。
無言で仮メリクルを見詰める視線は、どんな気持ちなのか想像付かない。

リングの話もまた今度にして貰おうって、考えたオレが口を開くより。


「お断りします。」
「ちょっといい?」

エステードさんとフィロウの声が重なった。
とりあえずまだオレの出番じゃなさそうだ。

それにしても、エステードさんがキッパリ断ったのはともかく。
フィロウが首を突っ込んで来たのはちょっと驚いた。


「……何だって? 二人同時に話した所為で聞こえなかった。」

わざとらしい言葉を吐く仮メリクル。
兄弟二人は顔を見合わせた後、フィロウが譲った。


「ハーレムリングの返却についてはお断りします。……貴方から預かったんじゃないですからね。」
「へ~ぇ……? 俺からじゃなければ、誰からだと?」
「勿論メリクルですよ。貴方じゃない。」

驚いた。オレ、超、驚き。
片眉を跳ね上げた仮メリクルよりも絶対、オレの方が驚いてる自信ある。
だってエステードさん、目の前にいるのがメリクルじゃないって、分かったんだ。
愛か……! これが愛の力、なのか!

どうにか割り込もうって考えてたけど、エステードさんが分かってるなら。
無理にオレが口を挟まないで黙っとく方がいいかな。
仮メリクルの言葉を遮るのは全然オッケーだけど、エステードさんを遮るような真似はしたくない。


「つまり……俺はメリクルじゃない、と。何処を見たらそう思えるのかな?」
「メリクルが私に、そんな丁寧な態度を取ったり、伺うような言い方をしたりなんかしません。何かをしたいと思ったら、したい通りにするのがメリクルですから。」

愛じゃなかった……! ある意味、清々しいくらいに偏見だった!
いや、これも愛か?
うん、愛だな、愛だ。


感動するオレの視界に。
不満気に顔を歪めて舌打ちする仮メリクルが映った。

こんなちょっとしたトコで……この人、メリクルじゃないな、って思う。
メリクルは舌打ちする姿もカッコ付いてたぞ。オレが羨ましく感じる程度には。
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