349 / 364
第六章 ~ゲームと違ってオレのハーレムは自動生成されない~
エステードさんが分かってるならヨシ
しおりを挟むこれ以上、仮メリクルがフィロウに関心を示して不用意な発言をする前に。
フィロウに「エステードさんを連れて、この場を離れてくれ」……って視線を送るオレだけど。やっぱり視線で複雑な会話なんか出来るワケもなく。
むしろオレの態度が微妙なのか、フィロウが離れる素振りが無い。
「あの人って確か……お兄さんの恋人、だよね……?」
「違います。」
即座に否定するエステードさん。
このクダリはもう、いつもの様式美と化してる気がする。
エステードさん的には、自分がメリクルを好きなだけで付き合ってはいない。って意思表示なんだろうけど。
ハーレムリングの話を聞いちゃったからなぁ。
「エステードさん、オレはその主張……ちょっと疑問に思ってるぞ。」
「おや、そうですか?」
「そうだよ、お兄さん。……あ、もしかして、恋人じゃなくて妻だからって意味? なら分かるけど。リングまで貰っておいて…」
「持ってろと言われただけで、貰ってませんよ……。」
「そんな不本意な顔されてもなぁ。……まぁ、その話は馬車でするとして…」
とりあえず二人とも、先に馬車に行っててくれ。
そう言おうとしたオレを遮ったのは。
一瞬だけ大人しかった、仮メリクルだ。
「ならば返却して貰おうか。預かりは不要だ。」
落としたばかりのハンカチでも渡して貰うような感じで、仮メリクルは片手をエステードさんに向かって差し出してる。
胡散臭い笑みを浮かべた仮メリクルに、関係無いハズのオレもムッとする。
エステードさんはほぼ無表情のような顔になって、僅かに目を見開いた。
小首を傾げたフィロウの方がよっぽど驚きの表情に見える。
「悪用されては大変だからな。」
仮メリクルが一歩、エステードさんに近付く。
思わずオレは、すぐに庇えるようエステードさんのそばに寄った。
オレの妻はフィロウだし、つい今さっきまで天守登録してないことを責められてたから、本当はフィロウを庇う位置にいるべきなんだろうけど。
何となく今、仮メリクルの意識は完全にエステードさんに向いた気がするんだ。
すっごい、凄い怪しいけど。仮メリクルの外見は完全にメリクルだ。たぶん実際に身体もメリクルのもの、なんだろうなって思う。
BLゲームの世界に転生した、なんて奇妙キテレツな体験をしてるオレだから。何となく、メリクルの身体にも珍妙な現象が起きてるんだろうなって想像出来る。
でも、エステードさんからしたら、そうじゃないから。
メリクルじゃない別人から、メリクルの姿で。エステードさんが変な絡み方されるなんてダメだろ。
「今、持ってるなら出したまえ。……預かってるだけ、だろう?」
「………。」
「家に置いてあるなら取りに行く。どちらにしろ、返して貰う。」
エステードさん、ほぼ無表情だったのが完全な無表情になってる。
無言で仮メリクルを見詰める視線は、どんな気持ちなのか想像付かない。
リングの話もまた今度にして貰おうって、考えたオレが口を開くより。
「お断りします。」
「ちょっといい?」
エステードさんとフィロウの声が重なった。
とりあえずまだオレの出番じゃなさそうだ。
それにしても、エステードさんがキッパリ断ったのはともかく。
フィロウが首を突っ込んで来たのはちょっと驚いた。
「……何だって? 二人同時に話した所為で聞こえなかった。」
わざとらしい言葉を吐く仮メリクル。
兄弟二人は顔を見合わせた後、フィロウが譲った。
「ハーレムリングの返却についてはお断りします。……貴方から預かったんじゃないですからね。」
「へ~ぇ……? 俺からじゃなければ、誰からだと?」
「勿論メリクルですよ。貴方じゃない。」
驚いた。オレ、超、驚き。
片眉を跳ね上げた仮メリクルよりも絶対、オレの方が驚いてる自信ある。
だってエステードさん、目の前にいるのがメリクルじゃないって、分かったんだ。
愛か……! これが愛の力、なのか!
どうにか割り込もうって考えてたけど、エステードさんが分かってるなら。
無理にオレが口を挟まないで黙っとく方がいいかな。
仮メリクルの言葉を遮るのは全然オッケーだけど、エステードさんを遮るような真似はしたくない。
「つまり……俺はメリクルじゃない、と。何処を見たらそう思えるのかな?」
「メリクルが私に、そんな丁寧な態度を取ったり、伺うような言い方をしたりなんかしません。何かをしたいと思ったら、したい通りにするのがメリクルですから。」
愛じゃなかった……! ある意味、清々しいくらいに偏見だった!
いや、これも愛か?
うん、愛だな、愛だ。
感動するオレの視界に。
不満気に顔を歪めて舌打ちする仮メリクルが映った。
こんなちょっとしたトコで……この人、メリクルじゃないな、って思う。
メリクルは舌打ちする姿もカッコ付いてたぞ。オレが羨ましく感じる程度には。
0
あなたにおすすめの小説
泥酔している間に愛人契約されていたんだが
暮田呉子
BL
泥酔していた夜、目を覚ましたら――【愛人契約書】にサインしていた。
黒髪の青年公爵レナード・フォン・ディアセント。
かつて嫡外子として疎まれ、戦場に送られた彼は、己の命を救った傭兵グレイを「女避けの盾」として雇う。
だが、片腕を失ったその男こそ、レナードの心を動かした唯一の存在だった。
元部下の冷徹な公爵と、酒に溺れる片腕の傭兵。
交わした契約の中で、二人の距離は少しずつ近づいていくが――。
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…
彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜??
ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。
みんなから嫌われるはずの悪役。
そ・れ・な・の・に…
どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?!
もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣)
そんなオレの物語が今始まる___。
ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️
ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜
キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」
(いえ、ただの生存戦略です!!)
【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】
生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。
ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。
のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。
「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。
「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。
「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」
なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!?
勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。
捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!?
「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」
ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます!
元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!
メインキャラ達の様子がおかしい件について
白鳩 唯斗
BL
前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。
サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。
どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。
ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。
世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。
どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!
主人公が老若男女問わず好かれる話です。
登場キャラは全員闇を抱えています。
精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。
BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。
恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。
イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした
和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。
そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。
* 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵
* 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください
僕がサポーターになった理由
弥生 桜香
BL
この世界には能力というものが存在する
生きている人全員に何らかの力がある
「光」「闇」「火」「水」「地」「木」「風」「雷」「氷」などの能力(ちから)
でも、そんな能力にあふれる世界なのに僕ーー空野紫織(そらの しおり)は無属性だった
だけど、僕には支えがあった
そして、その支えによって、僕は彼を支えるサポーターを目指す
僕は弱い
弱いからこそ、ある力だけを駆使して僕は彼を支えたい
だから、頑張ろうと思う……
って、えっ?何でこんな事になる訳????
ちょっと、どういう事っ!
嘘だろうっ!
幕開けは高校生入学か幼き頃か
それとも前世か
僕自身も知らない、思いもよらない物語が始まった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる