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第七章 ~ゲームの強制力に縛られた者、縛られない者~
バグはバグなりに色々あるんでな・3 $メリクル$
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部屋に戻って来たエステードをベッドでひとしきり啼かしてやり。
スッキリしたらそのまま風呂へ直行だ。
身体を綺麗に洗って浴室から戻れば、部屋の中はすっかり綺麗になってた。
メチャクチャに汚したベッドも新しいシーツに換えられてて、ちょうど良い感じに新しい飲み物やら何やらも用意されてる。
さすがは領主の館、ってな。
使用人の仕事が早ぇわ。
「メリクル、冷たい飲み物でもどうですか?」
バスローブを羽織ったエステードが俺に声を掛ける。
ヤった後だからか、この部屋に俺を招き入れた直後よりかは、ずっとリラックスした様子だ。
「おぅ。」
長ソファに腰掛けた俺は、ぞんざいに返事をしていつも通り手を伸ばす。
受け取ったグラスに入ってたのは冷たい珈琲だった。
風呂上がりの飲み物は、特に何かが無い限り、ノンアルコールと決めてるからだ。
エステードの自宅なら珈琲紅茶が出されるところ。実家じゃそうもいかねぇか。
自分のグラスを手に、エステードはごく普通に俺の隣に腰を下ろした。
さっきまでの妙なぎこちなさが無くなって何より、だな。
無言でエステードの腰に腕を回した。
エステードも、特に何も言わねぇ。
あんまり高くない体温と、ほんの僅かな重みを腕と肩に感じながら、時々グラスを傾ける。
そんな感じでしばらくそのままでいた。
これだ、これでいいんだっつ~の。
洒落た会話を楽しむような、そんなキャラでもないんだからよ、お互い。
ヤって、くっついて、飲んで、食って、ヤって……そんなもんだろよ、普段。
好きなタイミングでヤって、後はダラダラ過ごせりゃ俺はそれでいい。
アイス珈琲を飲み終えた後は酒に切り替える。
何となく今日は呑む気分になったからだ。
もちろん、飲みたいとは一言も言ってねぇ。
飲むかどうかは分からないだろうに、エステードはちゃんと酒と氷も用意してた。
ちょうど良い感じに氷を削り、ちょうど良い感じに酒を注ぐ手付きはもうすっかり慣れたもんだ。
三杯、四杯と空けてく内に、ベロベロに酔っ払う程じゃなくても、少し気分がふわふわして来たようだ。
身体の自由が利くようになって浮かれてんのか。
自分でも若干、ペースが早めだってのは分かってる。
「そろそろ何か……、別なのにします?」
「ん……いや。」
空いた俺のグラスに次の酒を作ろうとしてた、ハズのエステードが手を止めてまで俺に尋ねて来た。
いつもなら俺が言うまで同じのを作ってるだろうに、こうやって言うのは珍しい。
「じゃあ何かツマミを用意しますから…」
「要らねぇって。まだ腹は減ってねぇ。」
「……何か食べた方が良いですよ?」
こうやって食い下がるのも珍しい。
俺が機嫌を悪くして困らせてるわけでもないのに、眉尻を若干下げた困り顔を浮かべてんのも割と珍しい。
何か思い当たるとすりゃ……。
「なんだ? そんなに俺が酔っ払ってるように見えるか?」
「あ……、はい、ちょっと……。」
「そうでもねぇだろ。ちょっとペース早めなだけで、よ。」
飲み過ぎを心配されるのが鬱陶しく感じる。ってのは酔っ払いアルアルだ。
そこまで酔ってるつもりは無かったから余計に、な。
「まぁ……そう、ですけど……。」
「酔っ払ったらそのまま寝りゃいいだろが。……どした?」
面倒になって言い捨てた俺は、直後、エステードの行動に驚いた。
グラスをテーブルに置いたエステードが抱き付いて来たからだ。
泣きだしそうに歪めた顔を隠すようにして、俺の胸に押し付けてる。
「ほんとに、どうした?」
「………。」
「エステード? おい?」
「……ぁ、あの……。」
なかなか答えねぇってのも珍しい。
顎を掴んで上向かせてみたら、エステードは目を潤ませてた。
こいつをこんな状態にさせるような心当たりが無い。
思い当たるふしも無ぇのにエステードが泣きそうになってるとか、誰かに勝手な事をされたようで不愉快だった。
ワザとじゃなくても自然と声が低くなる、ってもんだ。
「だから、おい、どうした?」
「メリクルは……」
恐る恐るっつ~か、言葉を探すようにしながらエステードが口を開く。
「大丈夫、ですか……? 寝て、起きても…メリクル、ですよね……?」
「そ~いう事か。……大丈夫だ。酒で寝落ちしたぐらいじゃ何ともねぇ。信じろ。」
「はい。」
素直に頷いたエステードの髪を撫でてやる。
エステードはホッとしたように短く息を吐いた。
今の発言からすると、要するにエステードは。
酒で酔っ払って意識を失くした俺が、目覚めた時にまたあの『糞メリクル』になるんじゃねぇかって。それを心配してたってワケか。
案外と可愛いトコがあるもんだ。
詳しい事情は分からねぇだろうにな。
糞メリクルにキッパリ言い返したり、そういうエステードを、俺は嫌いじゃねぇ。
「……んんっ? ちょっと待てよ…」
「はい?」
教会でのやり取りを思い出した俺は、妙な引っ掛かりに気付いた。
そこはかとなく不機嫌になりそうな気配がする。自分でも分かる。
エステードと糞メリクルとの会話。
……ハーレムリングの話、だ。
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