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第七章 ~ゲームの強制力に縛られた者、縛られない者~
バグはバグなりに色々あるんでな・4 $メリクル$
しおりを挟むすっかり忘れてた、そういやぁスルーしてたな。
あぁ、スルーしたっつ~のとも違うか。
聞いたのはまだ糞メリクルが表に出てた状態だったし、あれから後もなんやかんやでその話題に触れる感じでもなかったしな。
今頃になってから思い出したのも仕方ねぇだろ。
で、思い出して、エステードの発言をよくよく考えてみたら、だ。
な~んかちょっとモヤモヤして来んなぁ、おい。
「メリクル、何かありました?」
エステードが不思議そうに俺を見上げる。
パッと見た限り、もう通常モードに戻ったようだ。
つい今さっきまで半べそだったくせに、随分と復活が早い。早過ぎだろがよ。
今に始まった事じゃねえけど相変わらず、こ~いうトコは可愛げが無ぇ。
……まっ、コイツにそ~いう可愛げは求めてねぇからいいんだけどよ。
「あぁ……ちょっと教会での話を思い出して、な。」
「教会での、話……? 何ですか?」
俺の言葉に、話が見えてないらしいエステードは訝し気に首を傾げた。
何の説明もしてねぇから当然、か? とは言え、教会でのどの件なのか、エステードには全く思い当たらんようだ。
それでも俺の機嫌がほんのちょこっと、悪くなってんのは感じ取ったらしい。
よ~く見ないと分からない程度に、エステードの眉が微かに下がる。
「例の、リング……アレだけどよ。」
「ハーレムリングの話……ですか。」
教会で、糞メリクルがリングを返せとほざいた、あん時。
エステードはそれをきっぱり断り、奴にリングを渡さなかった。
それはいいんだ、悪くねぇ。
っつ~か、よくアレが俺じゃないって判断したもんだ、と。感心すんのを通り越して寧ろ驚きだ。
そこだけ思い出しゃあ、割と……地味に結構、嬉しかったりもするんだけどよ。
だが、糞メリクルとの会話の中で、エステードは……確か…。
「普段から持ち歩いてんのか?」
「いいえ、違います。いつもはちゃんと、大事に仕舞ってます。」
「ほぉ~。大事に、ねぇ。」
自分でも若干苛立った声を出してる自信がある。
とりあえず咽喉を潤そうと、グラスに手を伸ばし。
まだ中身がカラっぽなのに気付き、つい舌打ちする。
エステードは申し訳なさそうに眉尻を下げた。
「あの、今日はその、ちょっと、たまたま……。フィロウが自分のリングを作るにあたり、参考にさせる為に見せてやったので。……すみません、大事な預かり物を勝手に…」
「そうじゃねえっ!」
俺が不機嫌な理由を誤解したエステードが言い訳するのを乱暴に遮った。
それと同時に、俺は、自分のモヤモヤの理由を理解する。
理解して。
それが腹立たしかった。
エステードは、リングを単なる預かり物だと。そう認識してたワケだ。
俺の意図は何一つ伝わってなかった、ってか。……イラ付くわ。
俺はエステードにハーレムリングを渡してある。
だいぶ前の話だ。
それなりに身体を重ねて、相性も悪くなく。分かりやすい可愛げや色気は無くても、まぁまぁそれなりに気に入り。手元に置いてやってもいい、そう思った頃の話だ。
その頃から俺は金獅子ハーレムで若守様、若宮様と呼ばれ、近い将来……ハーレムの節目、二十周年で……天守の地位を、イクシィズから貰い受ける予定でいた。
すんなりとは行かなくても、金獅子ハーレムは俺のもんになる。必ずしてみせる。
天守っつっても永遠に精力旺盛なワケじゃねぇからな。すっかり衰えて他の天守に蹂躙される前に、後継者に後を託すのが正統ってもんだ。
そこら辺はイクシィズも、ある程度は覚悟してるハズだからな。
引退した老天守は通常、ハーレム内での権力が少なくなるものの、自分が気に入ってる妻は手元に残しておける。義務も無い、悠々自適な生活が送れんだから文句は無いだろ。
むしろ感謝してもらってもバチは当たらないぐらいだ。
感謝して欲しいのは妻達もだな。
普通なら一旦ハーレムに入った妻がそこから離脱するには、色々と結構面倒臭かったハズだ。それを、天守の交代時に限って、身の振り方をどうするかが選べるんだからな。
前の天守の傍に侍っても良し。
新たな天守の妻になっても良し。
完全にハーレムから出て行くのも認められる。その場合でも、ハーレムを追い出されるのとは違い、妻が不名誉を被る事は無い。
例えるなら、日本での定年退職に近いイメージか。クビになるのとは違うだろ?
とにかく。
あんだけデカいハーレムの天守になるに当たり、前の天守からの『お下がり』じゃない、俺自身が捕まえた妻が欲しかった、って気持ちもあった。
そんな時ちょうど都合良くエステードがいた。ただそれだけだ。
だからまぁ、エステードへの渡し方はぞんざいだったような気がする。
わざわざ畏まるような真似はしなかったし、妻にしてやるとも言わなかった。何かのモノのついでに、どさくさ紛れに済ませた感もある。
今となっちゃもう、あんまり覚えてもないけどな。
だからってよ、エステード……なんでハーレムリングを『預かり物』だと思った?
リングを預ける理由は無いだろがよ。
そもそもお前にリングを預けて何になる?
っつーか、俺はお前に「持ってろ」って言わなかったか?
「エステードは、俺がただ単に『預けた』んだと、そう思ってんのか。」
「はい。とりあえず預けとく、持ってろ。……と言われたので。」
「ぅわ…」
思わず呻いて片手を額にやった。
そのまま足の上に肘を付き、ほぼ俯くような姿勢になる。
それぐらい、俺はガックリしてんだ。
「メリクル、どうしたんですっ?」
ぐっと近くからエステードの声がする。
俺が頭でも痛がってんのかと、心配して寄って来たんだろ。
そ~いう気遣いは出来るクセしてよ、なんで言葉を額面通りに受け取ってんだよ。
預けとくって言われて普通、それを本気で『預かり物』だと思うのか?
なんだ? 俺の言い方が悪かったのか? 悪くねぇだろ?
……あぁ~、くそ、メンドくせぇわ。
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