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本編1 警戒される男
7・眩し過ぎる男との出逢い @泉州
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オレが飛び降りた先は芝生だった。
綺麗に刈り込まれた緑色が足元でクッションになってくれて、そのお陰で大した衝撃も無い。
状況を確認する為に、素早く周囲を見回した。
そこは三つの大きな建物に囲まれた、広い庭のようだった。
辺りにはオレの足元にあるような芝生が広がり、規則正しく整えられた花壇や、人の姿を模した見ごたえある石像も飾られてる。
人々が歩きやすいような、車も通りやすそうな、幅広に舗装された道路も整備されてる。道路の内の一本は、たった今、オレが飛び出した建物に向かって続いてた。
道路を建物と反対側に行けば、柵で出来た両扉に行き当たる。
ここからじゃまだ遠いが、開けっ放しになってるから、走れば簡単に出られそうだ。
庭内はそれなりに……いや、オレが思ってた以上に賑わってた。
何かのイベント会場前かってぐらいの人数が集まってて、建物の中で見たような、戦えそうな兵士や、王子の護衛と同じ格好の奴らが人員整理をしてるようだ。
兵士の何人かは、建物の方に近寄って来てた。
ソイツらは、いきなり窓から飛び出したオレに対して警戒心を露わにしてる。
「ソイツを捕まえ……、じゃない、……丁寧に引き止めろ! 無理はするな!」
オレの頭上にある窓から、精悍な男が身を乗り出して叫んでる。
ウッカリ言い掛けた台詞を訂正したようだが、本音は殆ど聞こえちまった。
窓から飛び降りる……までやったのに、見逃してくれる余地は全く無いらしい。
そこまでして追い掛けなくてもいいと思うんだがな。
大人しく一旦、戻った方がいいのか? ……いや、今更だろ。
こうなったらトコトン逃げてやろうと覚悟した。
ダッシュでオレが駆け出そうとした瞬間。
「あーもうっ、なんだよっ。何の騒ぎだよっ?」
やや高めの男の声、苛立った怒鳴り声が……いや、天使の声が。
オレが居たのとは別な建物から、輝きに満ちた赤い髪の天使が出て来た。
空からの太陽光が全て降り注いでんじゃねぇかってくらい、キラキラだ。
見た瞬間、オレは瞬きも出来なくなった。
天使が着てるのは、オレが降臨した部屋で見た僧侶っぽい連中が着てたのに似た、それよりシンプルなデザインの衣装だった。
つまりワンピースみたいな格好なんだが、……何故か、その裾の方で手を拭きながら姿を現した。
きっと直前まで水仕事をしてたか、手を洗ってたんだろう。
それはいい、それはいいんだが。
見えてる。
スラリとした生足が。
膝の上まで、結構、見えてる。
おいおい、出逢って早々にサービスショットかよ。惚れたぜ。
「ロイズ……っ! 異世界人だ、捕獲しろ!」
「は? ……はあぁっ?」
上から聞こえる大声は、もはや言い直しもしねぇ。
天使の呼び名がロイズって分かったのは大収穫だ。
ロイズって呼ばれたオレの天使は、精悍な男の指示を聞いて凄く驚いたようだ。
やや上がり気味で猫のような目を見開いた。表情の変化がいちいち可愛い奴だ。
オレと、頭上にいる精悍な男とを、交互に見てる。上下する首の動きが可愛い。
一方、オレはオレで忙しい。
ロイズから見える角度で、精一杯のキメ顔を作ってるからだ。
精悍な男は、どうやら別な窓から飛び降りて来るらしい。
窓枠から乗り出した様子が、地面に差した影で分かった。
急いで階段を駆け下りても間に合わねぇって判断したんだろうな。
大方、ロイズと挟み打ちが出来そうな位置を狙って、ってトコか。
捕獲を命じられたロイズがオレへと向かって来る。
そんなん、願ったり叶ったり、だろぉが。
オレを捕まえようと伸びて来た悪戯天使の手を、両手でそっと握り締めた。
初めて手を繋いだ感動で口が緩みそうだ。
ついでに、せっかくだから指もちょっと絡めてみる。
「うあっ……!」
ロイズはたったそれだけで、ビックリして硬直した。
動きを止め、唇を半開きにしたまま、ジッとオレを見てる。
オレも、たったこれだけで。
コイツの為に何かしてやりたいって思うぐらいには、好きになっちまった。
綺麗に刈り込まれた緑色が足元でクッションになってくれて、そのお陰で大した衝撃も無い。
状況を確認する為に、素早く周囲を見回した。
そこは三つの大きな建物に囲まれた、広い庭のようだった。
辺りにはオレの足元にあるような芝生が広がり、規則正しく整えられた花壇や、人の姿を模した見ごたえある石像も飾られてる。
人々が歩きやすいような、車も通りやすそうな、幅広に舗装された道路も整備されてる。道路の内の一本は、たった今、オレが飛び出した建物に向かって続いてた。
道路を建物と反対側に行けば、柵で出来た両扉に行き当たる。
ここからじゃまだ遠いが、開けっ放しになってるから、走れば簡単に出られそうだ。
庭内はそれなりに……いや、オレが思ってた以上に賑わってた。
何かのイベント会場前かってぐらいの人数が集まってて、建物の中で見たような、戦えそうな兵士や、王子の護衛と同じ格好の奴らが人員整理をしてるようだ。
兵士の何人かは、建物の方に近寄って来てた。
ソイツらは、いきなり窓から飛び出したオレに対して警戒心を露わにしてる。
「ソイツを捕まえ……、じゃない、……丁寧に引き止めろ! 無理はするな!」
オレの頭上にある窓から、精悍な男が身を乗り出して叫んでる。
ウッカリ言い掛けた台詞を訂正したようだが、本音は殆ど聞こえちまった。
窓から飛び降りる……までやったのに、見逃してくれる余地は全く無いらしい。
そこまでして追い掛けなくてもいいと思うんだがな。
大人しく一旦、戻った方がいいのか? ……いや、今更だろ。
こうなったらトコトン逃げてやろうと覚悟した。
ダッシュでオレが駆け出そうとした瞬間。
「あーもうっ、なんだよっ。何の騒ぎだよっ?」
やや高めの男の声、苛立った怒鳴り声が……いや、天使の声が。
オレが居たのとは別な建物から、輝きに満ちた赤い髪の天使が出て来た。
空からの太陽光が全て降り注いでんじゃねぇかってくらい、キラキラだ。
見た瞬間、オレは瞬きも出来なくなった。
天使が着てるのは、オレが降臨した部屋で見た僧侶っぽい連中が着てたのに似た、それよりシンプルなデザインの衣装だった。
つまりワンピースみたいな格好なんだが、……何故か、その裾の方で手を拭きながら姿を現した。
きっと直前まで水仕事をしてたか、手を洗ってたんだろう。
それはいい、それはいいんだが。
見えてる。
スラリとした生足が。
膝の上まで、結構、見えてる。
おいおい、出逢って早々にサービスショットかよ。惚れたぜ。
「ロイズ……っ! 異世界人だ、捕獲しろ!」
「は? ……はあぁっ?」
上から聞こえる大声は、もはや言い直しもしねぇ。
天使の呼び名がロイズって分かったのは大収穫だ。
ロイズって呼ばれたオレの天使は、精悍な男の指示を聞いて凄く驚いたようだ。
やや上がり気味で猫のような目を見開いた。表情の変化がいちいち可愛い奴だ。
オレと、頭上にいる精悍な男とを、交互に見てる。上下する首の動きが可愛い。
一方、オレはオレで忙しい。
ロイズから見える角度で、精一杯のキメ顔を作ってるからだ。
精悍な男は、どうやら別な窓から飛び降りて来るらしい。
窓枠から乗り出した様子が、地面に差した影で分かった。
急いで階段を駆け下りても間に合わねぇって判断したんだろうな。
大方、ロイズと挟み打ちが出来そうな位置を狙って、ってトコか。
捕獲を命じられたロイズがオレへと向かって来る。
そんなん、願ったり叶ったり、だろぉが。
オレを捕まえようと伸びて来た悪戯天使の手を、両手でそっと握り締めた。
初めて手を繋いだ感動で口が緩みそうだ。
ついでに、せっかくだから指もちょっと絡めてみる。
「うあっ……!」
ロイズはたったそれだけで、ビックリして硬直した。
動きを止め、唇を半開きにしたまま、ジッとオレを見てる。
オレも、たったこれだけで。
コイツの為に何かしてやりたいって思うぐらいには、好きになっちまった。
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