初めまして日本から勇者やりに来ました結婚してくれ! ~異世界人は現地人を溺愛する~

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プロローグ

プロローグ4・お前だけそばにいれば他に何も要らない

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タカロキは三ヶ月ほど前に、同じ王都の貴族街にある教会から、城下町にあるこの教会に異動して来たばかりの若い主席司祭だ。
ワインレッドの髪が印象的な、細面の美形。
他の者達への態度も実に穏やかな彼は、煙たがれる事無く周囲に溶け込んだ。

付き合いはまだ浅いものの、彼が連れ去られるのを黙って見送る事はない。
当然、何人もが止めようとした。
だが、誰にも止められなかった。
話にもならなかったのだ。

掴みかかった者は何かで弾かれたように、男にもタカロキにも触れる事は出来ず、何かに引っ張られるようにして放り投げられた。
武器を構えた者、魔法を唱えようとした者は軒並み、衝撃波で壁や天井に叩き付けられた。
ハエでも追い払うような、ぞんざいさで。


男は呼吸一つ乱さず、タカロキ以外の者には一言も発さず。まさにこれが異世界から来た勇者だと言わんばかりの力を見せ付けた。
勇者だから、の一言で済ませるには、余りにも強大な魔力も帯びていた。
どうにか死人や重傷者が出ていないのは、必死にタカロキが「どうか酷い事をしないで」と、男に乞い願い、縋ってくれたからだ。



「だが、司教は…」
「司教さまは、止めようとして大声を出した時に、ギックリ腰になったんです。」

神官長イーシャの抱いた疑問は即座に解決した。
イーシャは次の質問を投げ掛ける。

「そんで、今、タカロキ様はどちらに? 他の神官兵達も、だ。」
「司祭さまはお部屋です。」
「部屋ぁ? まさか自分の、か?」
「はい。勇者って名乗った男が、司祭さまにお部屋を聞いてました。神官兵達は、それを追い掛けて…」

桃色髪の少年カカシャは、涙でグシャグシャになった顔で必死に説明する。
泣きべそを掻いてはいるが、事実を取り違えてしまうような事は無さそうだった。



「そうか、分かった。……行くぞ、ロイズ。」
「………。」

この神殿で働く者達の住居館。
そこに向かうべく、イーシャは部下に声を掛けて立ち上がる。


「どうした? ……ロイズ?」
「………。」

返事をしないロイズに、訝し気な表情をしたイーシャが再び声を掛ける。
それでもロイズからの反応は無かった。


「ロイズっ!」
「! ぉ……おうっ。」

カカシャの話を聞いているだけで遠い目になっていたロイズは、慌ててカカシャに視線を戻す。
ロイズはどこかショックが抜けないような表情で、何度か瞬きをしている。


「呼んだのは俺だ、ロイズ! しっかりしろ!」
「はっ、ハイっ!」
「ったく、ぼんやりしてるヒマぁ無ぇぞ! 住居館だ、行くぞ!」
「ハイっ!」

ようやく気を取り直したらしいロイズを叱咤し、イーシャは駆け出す。
ロイズの様子がおかしかったのは、余りにも信じ難い衝撃によるものだと判断した。




   *   *   *




住居館に到着した二人は真っ直ぐ、タカロキの部屋へと向かったが。
その付近で足止めを食らってしまう。

タカロキの部屋の扉が視界に入って来る辺り。
廊下には何人もの神官兵が、歯噛みしながら、その先へと進めずにいた。
他の司祭の姿もあるが、神官兵よりも魔力の高い彼等も、同じように先へは進めないようだ。


「おい、こんな所でどうした? タカロキ様はっ?」
「……神官長っ! 駄目です、何かに阻まれていて進めませんっ!」

絶望的に告げる部下の言葉を確かめるべく、進もうとしたイーシャだが……部下の神官兵に止められる。

その代わりに、と。その神官兵が実際にやって見せた。
何も無いはずの廊下を、何かが塞いでいて通れない。
叩けば手応えは全く無いが、投げ付けた物は跳ね返される。


ロイズも通ろうとして進めず、目を見開いた。

「本当だ、通れない……。」
「タカロキ様は?」

無駄かと思いつつ、立場上、イーシャは尋ねる。
その場にいた神官兵は首を振った。


「扉の向こう側へ連れて行かれたのは目視しました。そこからは分かりません。」
「そうか……。この場に神官兵三名ずつ、交代で警戒に当たれ。人員の選定等は、班長に任せる。」
「ハッ、了解です!」
「この件については幹部で速やかに検討する。詳細は追って知らせる。」

イーシャは来た時と同じか、それ以上の勢いで廊下を引き返す。


頭の中では色々な事を考えねばならず、いっそ倒れてしまいたいぐらいだった。
とにかく、とんでもない非常事態になってしまった事しか分からない。
この神殿のみでは対処出来ないだろう。この国の教会全体でも、対応策があるかどうかも怪しい所だ。




「よりにもよって、タカロキ様を、か……。」

若輩者のタカロキが主席司祭になったのは、彼の特異体質によるものだ。
古代術の失われた、この国では。いや、何処の国でも。
その特異体質は、大変に貴重で有用である。

二十代半ばのイーシャが神官長になれたのも、同じ理由だった。
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