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本編2 試される男
20・ひとつ屋根の下かも知れない @泉州
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神官長って名乗ったイーシャが……おっと、逆だ。ドッチでも良過ぎて間違えただけだから許してくれ……イーシャって名乗った神官長が仕切る形で、とりあえず話が進む。
まず、オレが改めて自己紹介した。
この世界に降り立った時にそれっぽい事は言ったし、それでただ周囲を戸惑わせただけに終わっちまった事はかなり恥ずかしい歴史だが……改めてロイズに向けて、って思えば恥ずかしくもねぇ。
むしろ、ロイズを相手にだったら何度でも自己紹介したっていいぞ。
オレが来訪した目的について「勇者をやりに」って言った時、ロイズはまた、やや上がり気味で猫っぽくて可愛い目を丸くした。
さっきも見た表情だが、こんなん何度見てもイイもんだ。
一方イーシャからは、この世界について色々と説明を受けた。
勇者の能力を使わなくても説明して貰えンのは、何かとラクで有り難い。
欲を言えば、ロイズの口からロイズの声で話して貰えたらもっと有難かったんだがな。流石にそれは贅沢ってヤツか。
あんまりロイズに無理な『お願い』ばっかりも出来ねぇし、大人しく諦めとくわ。
一般の神官兵士なロイズと神官長のイーシャとじゃ、知ってる情報の量とかは全然違うだろうし、知ってる内容をどこまで話していいか……それを決めるのは結局の所、上司であるイーシャだろう。
だったら最初っから、イーシャに説明して貰っとくのが効率的ってモンか。
「じゃあ、一つ提案なんだが……。お前サンが、この世界のどこで暮らすにしても、だ。別な世界から来ていきなりじゃ、何かと勝手も違うだろうし、お前サンだって困るだろう? そこで、だ…」
「…オレはロイズが居れば、それでいい。」
「あぁ……まぁ、ロイズ…は、ちょっと置いとくとして、…」
「…待て、イーシャ。そこは置いとけねぇ。そこだけは譲れねぇからな。」
「分かってる、そこはコッチも分かってるから。」
オレは不本意ながらイーシャと結構、会話を重ねてた。
話しながらオレは、いつロイズがツッコんで来るかって楽しみにしてたんだが。残念な事にロイズは、イーシャが説明を始めてからは全然、オレとイーシャの会話に口を挟んで来なくなっちまってる。
上司だし、真面目な説明してるし、ロイズは『出来る男』だから、そこら辺を気遣ってンだろうが……正直言ってオレはかなり寂しい。
あの、凛とした声で「お前、ふざけるな!」って切り込んで来て欲しい。
「俺が提案したいのはな? お前サンの住む場所とか、この世界での暮らし方とか、そういうものだ。城下町のどこかに住むってのも、そもそも急に、慣れない世界での一人暮らしなんか厳しいだろ?」
「そこは、やってみない事には判断付かねぇな。」
「………あー、うん。……俺の話し方が悪かったようだ。」
「?? そんな気にするほど、悪い事は言ってねぇだろ。」
イーシャは額に手を当てて、何かを反省したような感じだ。
いや、本当に。イーシャの話し方の何が悪かったのか、言われた方のオレには分からねぇんだが?
「お前サンには、下手に前振りとかしない方が良さそうだ。単刀直入に言うぞ?」
「ん? あぁ、良く分からんがそうしてくれ?」
「せっかくだから、お前サン、ここに住まないか? ちなみに、ロイズもこの教会に住んでる。」
「そうするっ。是非っ。よろしく頼む。イーシャって案外、良い人だな。」
こうしてオレの、異世界での住み家がアッサリ決まった。
しかも愛しのロイズと、同じ屋根の下だぞ。こりゃ幸先いいな。
オレの向かい側でロイズが難しい顔をして座ってる。
何か言おうと唇を薄く開いて、イーシャを見て、結局何も言わなかった。
たぶんイーシャに文句を言おうとしたんだろうが、グッと堪えたんだろうなぁ。
話が纏まりそうな感じだから発言するのを遠慮したのか?
流石は空気の読める男だな、ロイズ。だがな? ロイズは遠慮しなくていいんだぜ?
何か気になってるなら言わせてやろうと思って、オレは口を開いたんだが。
実際にオレが言葉にしたのは別な台詞だった。
「ロイズ、明日の朝からオレが起こしてやるぞ?」
「なんでだよっ!」
十数分ぶりに聞いたロイズの声に、オレは嬉しくなって目を細めた。
まず、オレが改めて自己紹介した。
この世界に降り立った時にそれっぽい事は言ったし、それでただ周囲を戸惑わせただけに終わっちまった事はかなり恥ずかしい歴史だが……改めてロイズに向けて、って思えば恥ずかしくもねぇ。
むしろ、ロイズを相手にだったら何度でも自己紹介したっていいぞ。
オレが来訪した目的について「勇者をやりに」って言った時、ロイズはまた、やや上がり気味で猫っぽくて可愛い目を丸くした。
さっきも見た表情だが、こんなん何度見てもイイもんだ。
一方イーシャからは、この世界について色々と説明を受けた。
勇者の能力を使わなくても説明して貰えンのは、何かとラクで有り難い。
欲を言えば、ロイズの口からロイズの声で話して貰えたらもっと有難かったんだがな。流石にそれは贅沢ってヤツか。
あんまりロイズに無理な『お願い』ばっかりも出来ねぇし、大人しく諦めとくわ。
一般の神官兵士なロイズと神官長のイーシャとじゃ、知ってる情報の量とかは全然違うだろうし、知ってる内容をどこまで話していいか……それを決めるのは結局の所、上司であるイーシャだろう。
だったら最初っから、イーシャに説明して貰っとくのが効率的ってモンか。
「じゃあ、一つ提案なんだが……。お前サンが、この世界のどこで暮らすにしても、だ。別な世界から来ていきなりじゃ、何かと勝手も違うだろうし、お前サンだって困るだろう? そこで、だ…」
「…オレはロイズが居れば、それでいい。」
「あぁ……まぁ、ロイズ…は、ちょっと置いとくとして、…」
「…待て、イーシャ。そこは置いとけねぇ。そこだけは譲れねぇからな。」
「分かってる、そこはコッチも分かってるから。」
オレは不本意ながらイーシャと結構、会話を重ねてた。
話しながらオレは、いつロイズがツッコんで来るかって楽しみにしてたんだが。残念な事にロイズは、イーシャが説明を始めてからは全然、オレとイーシャの会話に口を挟んで来なくなっちまってる。
上司だし、真面目な説明してるし、ロイズは『出来る男』だから、そこら辺を気遣ってンだろうが……正直言ってオレはかなり寂しい。
あの、凛とした声で「お前、ふざけるな!」って切り込んで来て欲しい。
「俺が提案したいのはな? お前サンの住む場所とか、この世界での暮らし方とか、そういうものだ。城下町のどこかに住むってのも、そもそも急に、慣れない世界での一人暮らしなんか厳しいだろ?」
「そこは、やってみない事には判断付かねぇな。」
「………あー、うん。……俺の話し方が悪かったようだ。」
「?? そんな気にするほど、悪い事は言ってねぇだろ。」
イーシャは額に手を当てて、何かを反省したような感じだ。
いや、本当に。イーシャの話し方の何が悪かったのか、言われた方のオレには分からねぇんだが?
「お前サンには、下手に前振りとかしない方が良さそうだ。単刀直入に言うぞ?」
「ん? あぁ、良く分からんがそうしてくれ?」
「せっかくだから、お前サン、ここに住まないか? ちなみに、ロイズもこの教会に住んでる。」
「そうするっ。是非っ。よろしく頼む。イーシャって案外、良い人だな。」
こうしてオレの、異世界での住み家がアッサリ決まった。
しかも愛しのロイズと、同じ屋根の下だぞ。こりゃ幸先いいな。
オレの向かい側でロイズが難しい顔をして座ってる。
何か言おうと唇を薄く開いて、イーシャを見て、結局何も言わなかった。
たぶんイーシャに文句を言おうとしたんだろうが、グッと堪えたんだろうなぁ。
話が纏まりそうな感じだから発言するのを遠慮したのか?
流石は空気の読める男だな、ロイズ。だがな? ロイズは遠慮しなくていいんだぜ?
何か気になってるなら言わせてやろうと思って、オレは口を開いたんだが。
実際にオレが言葉にしたのは別な台詞だった。
「ロイズ、明日の朝からオレが起こしてやるぞ?」
「なんでだよっ!」
十数分ぶりに聞いたロイズの声に、オレは嬉しくなって目を細めた。
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