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本編3 残念な男
31・会えない時間が何を育てるのか @泉州
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異世界に来てから、十日間が経った。
その間にオレは、魔術師達から魔法を見せて貰い、その使い方を教わったり。
神官兵士達の戦闘訓練に参加して武器の扱い方を教わったり。
だが武器での戦闘に関して言えば。
一週間ぐらいで、これじゃあダメだって気付いた。
付き合ってくれた先輩方には悪いんだがレベルが違い過ぎでな。
残念ながら、どんな戦闘訓練に参加してもどうって事ぁ無かったし、体力作りみてぇな基礎訓練に参加しても殆ど疲れもしなかった。
神様から『勇者能力』を貰ってたオレは、肉体的な面に関しちゃ、この世界にいる人々より遥かに強かったんだ。
聞いてた話と違って、望まれた存在じゃなかったが。
この世界で「勇者をやる」って話は本当だったようだな。
魔法に関して言えば。
幾つかの初期魔法ってヤツを教わったものの、どれも今一つ、シックリ来ねぇ。
炎を出すとか。
風を吹かせるとか。
水を噴き出すとか。
自分が持ってる武器に、炎や氷や雷を纏わせるとか。
どれもが一応『出来る』ってレベルになった。
なった、って言うか……勉強したらすぐに出来た。
教わってすぐ使えるようになる、ってだけで凄い事なんだと。
教師役の魔術師は言ってくれたんだが……。
正直、そんな魔法を使える事で、強くなれそうな感じがしねぇ。
少なくとも、魔法の腕を磨いてった所で。もっと強い魔法を習得したからって、それであの……ワケの分からねぇ結界をどうこう出来るとは、とても思えなかった。
あの時、廊下にあるらしい結界を、オレは見る事が出来なかった。
そういうのが見えるかどうかは『魔力』ってモンが影響するらしい。
魔術師が言うには、異世界から来たオレは魔力の扱い方を、本能レベルで『知らなさ過ぎる』んだとさ。
その辺を急いで鍛えるなら、とにかく使って使って……経験あるのみ、だ。
そんなワケで、ここ数日間。
ひたすらオレは自主練習に明け暮れてた。
一人での練習方法についても、先輩方や魔術師は親切に教えてくれたからな。
武器は一本の長剣を貰って、素振りと型の練習。速さと正確さを伸ばす。
魔法は錫杖を貰った。三時間ぐらいずっと、炎なら炎ばっかり、水なら水ばっかりの魔法を使い続けて、経験を稼いだ。
夕飯後は武器か魔法の自主練を、寝るまで。自分が疲れ切るまで続けた。
根拠は全く無ぇが、ちょっとは自分を追い込んだ方が成長すンじゃねぇかって、オレはそう思い込んだからだ。
トンっ、トトンっ。
「起きてますかぁ~? 入りますよぉ?」
ノック音に返事をしなくても勝手に入って来るのはカカシャ。
この世界に来たオレが最初に見掛けた……あの、桃色髪の少年だ。
僧侶の見習いなカカシャは、オレの世話係を押し付けられてた。
最初はかなりビビられたモンだが、割と慣れて来たっぽいな。
「もう、食堂、閉まっちゃいました。あの、これ……。」
「わざわざ持って来てくれたのか。悪いな、カカシャ。」
カカシャは両手に持ったお盆の上に、パンと、何かの煮込みかスープが入った皿、飲み物のカップを乗せてる。
今日もウッカリして、食堂が開いてる時間に行かなかったオレに、夕飯を持って来てくれたようだ。
ちなみに、今のオレの立場は、イーシャから提案された通り『神官兵士見習い』だ。
住居館に一人部屋を与えられてるのは、見習いとしちゃ破格の待遇だな。
そこは一応、オレが異世界人ってのを考慮してくれたらしい。
見習いだから、まだ仕事はしてねぇ。
神官兵士の制服も、まだ支給されてねぇ。
オレが着てる衣服は、先輩方が譲ってくれた古着と、イーシャから渡された物だ。
いつまでもライダースジャケットじゃあ、この世界じゃ浮いてるからな。
洗濯は、共同で使う洗濯場まで行って、自分でやってる。
「もぉ。すぐ忘れるんだから。……お腹、空かないんですかぁ?」
「いっつも、気付いたら時間、過ぎちまっててなぁ。」
「神官長さま、心配してますよ?」
「そうか、悪いな……。」
偉い立場のイーシャは何かと忙しいだろうに、ちょくちょくオレの事を気に掛けてくれてた。
この教会で働く提案をしたのがイーシャだから、気に病んでンだろう。
「あ、それと……。ロイズさんは怒ってます。」
「おぅ……、…………そ、……そぉ、か。」
あれから愛しのロイズとは顔を合わせてなかった。
その間にオレは、魔術師達から魔法を見せて貰い、その使い方を教わったり。
神官兵士達の戦闘訓練に参加して武器の扱い方を教わったり。
だが武器での戦闘に関して言えば。
一週間ぐらいで、これじゃあダメだって気付いた。
付き合ってくれた先輩方には悪いんだがレベルが違い過ぎでな。
残念ながら、どんな戦闘訓練に参加してもどうって事ぁ無かったし、体力作りみてぇな基礎訓練に参加しても殆ど疲れもしなかった。
神様から『勇者能力』を貰ってたオレは、肉体的な面に関しちゃ、この世界にいる人々より遥かに強かったんだ。
聞いてた話と違って、望まれた存在じゃなかったが。
この世界で「勇者をやる」って話は本当だったようだな。
魔法に関して言えば。
幾つかの初期魔法ってヤツを教わったものの、どれも今一つ、シックリ来ねぇ。
炎を出すとか。
風を吹かせるとか。
水を噴き出すとか。
自分が持ってる武器に、炎や氷や雷を纏わせるとか。
どれもが一応『出来る』ってレベルになった。
なった、って言うか……勉強したらすぐに出来た。
教わってすぐ使えるようになる、ってだけで凄い事なんだと。
教師役の魔術師は言ってくれたんだが……。
正直、そんな魔法を使える事で、強くなれそうな感じがしねぇ。
少なくとも、魔法の腕を磨いてった所で。もっと強い魔法を習得したからって、それであの……ワケの分からねぇ結界をどうこう出来るとは、とても思えなかった。
あの時、廊下にあるらしい結界を、オレは見る事が出来なかった。
そういうのが見えるかどうかは『魔力』ってモンが影響するらしい。
魔術師が言うには、異世界から来たオレは魔力の扱い方を、本能レベルで『知らなさ過ぎる』んだとさ。
その辺を急いで鍛えるなら、とにかく使って使って……経験あるのみ、だ。
そんなワケで、ここ数日間。
ひたすらオレは自主練習に明け暮れてた。
一人での練習方法についても、先輩方や魔術師は親切に教えてくれたからな。
武器は一本の長剣を貰って、素振りと型の練習。速さと正確さを伸ばす。
魔法は錫杖を貰った。三時間ぐらいずっと、炎なら炎ばっかり、水なら水ばっかりの魔法を使い続けて、経験を稼いだ。
夕飯後は武器か魔法の自主練を、寝るまで。自分が疲れ切るまで続けた。
根拠は全く無ぇが、ちょっとは自分を追い込んだ方が成長すンじゃねぇかって、オレはそう思い込んだからだ。
トンっ、トトンっ。
「起きてますかぁ~? 入りますよぉ?」
ノック音に返事をしなくても勝手に入って来るのはカカシャ。
この世界に来たオレが最初に見掛けた……あの、桃色髪の少年だ。
僧侶の見習いなカカシャは、オレの世話係を押し付けられてた。
最初はかなりビビられたモンだが、割と慣れて来たっぽいな。
「もう、食堂、閉まっちゃいました。あの、これ……。」
「わざわざ持って来てくれたのか。悪いな、カカシャ。」
カカシャは両手に持ったお盆の上に、パンと、何かの煮込みかスープが入った皿、飲み物のカップを乗せてる。
今日もウッカリして、食堂が開いてる時間に行かなかったオレに、夕飯を持って来てくれたようだ。
ちなみに、今のオレの立場は、イーシャから提案された通り『神官兵士見習い』だ。
住居館に一人部屋を与えられてるのは、見習いとしちゃ破格の待遇だな。
そこは一応、オレが異世界人ってのを考慮してくれたらしい。
見習いだから、まだ仕事はしてねぇ。
神官兵士の制服も、まだ支給されてねぇ。
オレが着てる衣服は、先輩方が譲ってくれた古着と、イーシャから渡された物だ。
いつまでもライダースジャケットじゃあ、この世界じゃ浮いてるからな。
洗濯は、共同で使う洗濯場まで行って、自分でやってる。
「もぉ。すぐ忘れるんだから。……お腹、空かないんですかぁ?」
「いっつも、気付いたら時間、過ぎちまっててなぁ。」
「神官長さま、心配してますよ?」
「そうか、悪いな……。」
偉い立場のイーシャは何かと忙しいだろうに、ちょくちょくオレの事を気に掛けてくれてた。
この教会で働く提案をしたのがイーシャだから、気に病んでンだろう。
「あ、それと……。ロイズさんは怒ってます。」
「おぅ……、…………そ、……そぉ、か。」
あれから愛しのロイズとは顔を合わせてなかった。
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