アイツが女装やめたら世界が滅びるんだってさ

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12 ご指示にはちゃんと従えよ!

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あぁそうだ。ちょうど良い機会だからこの辺りで、ちょろっと説明しておくか。
先週は襲撃やら、その後のクソ王子のクソっぷりとかがあったからな。人物とか……そもそもの魔王の話、とか? そういう部分について、落ち着いて話せるようなヒマが無かっただろ。




ここはラグエード王国。
海と森と平原のある、まぁまぁ豊かで割と平穏な、規模としては中くらいな国家。
国王が一人。王妃が一人。側妃が二人。王子が四人。姫が二人だ。



こうして今、話しているオレの名前は、エルドレッド・ジャグヴェイ。
ちょっとワケあって、現国王の弟であるジャグヴェイ公爵の所で厄介になってる。

城での役職は『ヴァレンタイン第三王子殿下の世話役』だ。
教育係とか専属執事とかとは異なっていて、王族や貴族が子供の頃に世話になる乳母とか子守とかとも違う。
そこそこ子供じゃなくなった王族相手に、本来ならこういう役職は無い。
偉大なるキフ神様(キフジンさま)のご指示で、オレが出来るだけ第三王子の近くにいるって事になった時に。どうせなら四六時中、おそばに侍っていられるようにって、新たに作られたものだ。



この大陸で最もポピュラーに信仰されているのは、人々を練り上げたって言い伝えのある『フジョ神様(フジョシンさま)』という女神様。
そしてフジョ神様の母神とされているのが、この世界を作り上げた女神と言われているキフ神様だ。


キフ神様から初めてご指示があったのは、王妃が第三王子をご出産された直後。
城内にいる……国王陛下や王妃、宰相、大神官、その他数名に対して同時にご指示があった為、その当時は密かに、だがとんでもない騒ぎになったらいい。


それも仕方ない事だろうと思う。
そもそも神様からの『ご指示』自体が、滅多にある事じゃないんだ。
通常なら、定期的な祭事でたま~に儀式の最中、フジョ神様から『ご啓示』があるもんだった。
イレギュラーな場合でも、大神官などの聖職者が神殿とかで祈っている際に、フジョ神様からふんわりとした感じの啓示を受ける事がある……って程度が精々だった。

それを、フジョ神様をすっ飛ばしてキフ神様から。かなり具体的なご指示。
タイミングが酷いのもさる事ながら、その内容も、「第三王子は魔王と共にある。魔王が復活して世界が滅びる事を防ぐ為には、第三王子を『可愛い』で覆い囲むべし。」って酷いアレだったからな。
王族も、城内も、教会関係者も、何なら魔術師協会も。ご指示を受けた全員がそりゃもう、大騒ぎにもなるってもんだろうさ。


実は正直、大きな声じゃ決して言えねぇし、ここだけの話なんだが……。
まだ赤ん坊な第三王子(予定)を今の内にどうにかしようかって話も、かなり確率の高い『手段』として考えられたらしい。

そしてその案は、実際に行われた事があった。

第三王子が生まれ、キフ神様からご指示があった翌々日。
国王は赤ん坊を始末する事に決断を下した。
息子一人を生かす為に、国や大陸、世界を天秤には乗せられねぇ。
生まれたばかりの我が子をむざむざと殺す事はきっとツラかった……ハズだと思いたい所だ……が、国王として国民や世界の事を考えれば仕方ねぇ事だった。


だが結果は。殺害を命じられた騎士も、神官も、魔術師達も。
誰一人として、第三王子を殺すどころか傷の一つも付けられなかった。


封印されている魔王の片鱗だか、魔王能力の一部だかがことごとく、どんな攻撃を受けても全くの無傷だった。
第三王子の身体の周囲が不思議な殻にでも包まれているみたいに。
大剣を振り下ろしても、鋭い刃物で斬り付けても、火や氷や雷の強力な攻撃魔法を撃ち込んでも。第三王子の本体に届いたかどうかも怪しい有り様。
それだけでなく、赤ん坊に仕掛けた攻撃はほぼ二~三倍に威力が跳ね上がって、周囲へとランダムに跳ね返ったそうだ。
とにかく、まだ赤ん坊にも関わらず、第三王子の戦闘能力はまさしく魔王だった。


自分を殺そうと四苦八苦している大人達を。
自分達の仲間がやった事で右往左往して被害を出している大人達を。
第三王子は赤ん坊の姿に見合わない冷めた瞳で、何も言葉や泣き声を発さずに見詰めていたそうだ。

余りにも異様なその様子を見て、大人達はやっと『不可能』を理解した。
第三王子を処分する事で魔王の復活を阻止する、って方法は諦める事となった。



そして当初のキフ神様のご指示通り、第三王子を『可愛い』で埋め尽くす事とした。
身に着ける物。手に取る物。部屋にある物、その全てを。


……いや、そもそもよ。なんでキフ神様のご指示を無視してんだよ。
出産直後からご指示があったんだから、ちゃんと従っておけよ!
被害とか言って、自業自得だろ。




身の回りに可愛い物ばかりを用意していった結果。
第三王子の姿は必然的に女装となった。



その第三王子がヴァレンタイン殿下、ってワケだ。
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