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石も成長するんだな
「かかるんだよ。採取のクエストを十や二十こなしたって足りねぇ額がな」
「そんなに……」
「でも、使い続けてれば石だって成長する。最初はコップ一杯しか出なかった水も今じゃ毎日風呂に入ったって困らねぇくらい出るようになったし、ファイアの威力も上がってきたんだ」
なんでだか、オレが大切に大切にして一緒に死線を越えてきた石たちを貶されたような気持ちになって、オレは言い訳がましいことを口にしていた。
アクセル様にとってはへっぽこな初期魔法しか入ってない役立たずな石に見えるかもしれない。でも、オレにとっては他には代えられない、相棒みたいな石なんだ。
「この前は、この石のおかげで初めて中級魔物だって仕留めたし……」
死にかけたけど。
こっちが泣きたい気持ちだってのに、なぜかアクセル様は微笑んで、オレの大切な石たちをそっと指先で撫でている。
そして、ぽつりと呟いた。
「そうか、石も成長するんだな。……この石に込めた魔法がイールの命を守っているのか」
「えっ」
「違うのか?」
オレが思わずびっくりした声を出したから、アクセル様がキョトンとした顔をする。
アクセル様は、これっぽっちもバカになんてしてなかった。むしろオレの命を守る石だと、同じように大切に思ってくれたらしい。
オレは、自分の卑屈さを知る思いだった。勝手にバカにされてるって思い込むなんて……心が貧しいのはオレの方だ。
「いや、そう……そうなんだ。オレの相棒で、大切な石なんだ」
「そうか。魔物と対峙する時に、頼れるものがあるのはいいよな。俺も、この剣だけは手放せない」
今度はオレが苦笑する番だった。
「魔術師なのに、大切なのは剣なんだ……」
「俺は魔力はイールほど豊富じゃないからな。強力な魔法を使える回数は限られている。大半の魔物は、この剣と身体強化で倒してきた」
「そっか、アクセル様の相棒はこの剣なのか」
「お互い、おおよそ魔術師とは思えない戦い方だな」
ははは、とアクセル様が笑う。そこには何の嫌味も感じられなくて、オレはなんだか、アクセル様がとても身近に感じられるようになっていた。
だからだろう、ついこんなことを言ってしまったのは。
「アクセル様、明日はA級魔物に挑むんだろ? 魔力が足りなくなったらオレが補充してやるよ」
そう言った途端、今まで楽しそうに笑っていたアクセル様が、急に真顔になった。
「……」
しまった、と思った。
何を偉そうに「オレが補充してやる」なんて言ってんだろ。オレなんて結界の中で大人しくしとくしか脳がないってのに。
「ごめん! オレなんか足手纏いだよな」
慌てて言ったら、アクセル様の表情が急に戻って、アクセル様まで慌て始めた。
「違う! すごくありがたい! もしかしたら、イールがいれば本当にA級魔物に勝てるかもしれないと思って……思わず、どうしたら効率よく魔力の補充ができるか考えていた」
「え……」
「確かにA級の魔物になると身体強化と剣だけじゃ厳しいんじゃないかと思っていたんだ。だが、俺が死んだらイールが戻れなくなるからな」
「っ……!」
そう言われて戦慄した。
そうじゃん!!!
オレが結界で守られてたとしても、その中に永遠にいられるわけじゃない。アクセル様が死んじゃったりしたら、飢えをしのぐためか魔法学校に戻るためか……いずれにしろ結界を出なきゃいけないタイミングがくるだろう。
でもオレってアクセル様の話によると、魔物にとっちゃめちゃくちゃ美味そうなエサ認定されてるんだろ? 結界から出た途端、絶対にA級魔物に美味しくいただかれちゃうの決定じゃん……!
「そもそもはイールだけでも無事に帰れる方法はないかと考えていたんだが、オレに魔力を注入できるイールと一緒ならば、勝率が格段に上がる。いざとなれば一緒に転移で逃げることも可能だろう」
「え、それってオレもアクセル様と一緒に行動するってこと?」
「それが一番いいと思う」
「オレ、B級の中でも下位のヤツとしか戦ったことないんだけど」
いきなりA級魔物と戦うの? 死ぬ未来しか見えない。
「イールは俺と常に一緒にいて、適宜その魔力を俺に流し込んでくれていればそれでいい。……だが、そうだな」
ちょっとだけ考えて、アクセル様はオレににっこりと笑いかけた。
「もしイールが嫌じゃなければ、イールの石にもっと強い魔法を登録させてくれないか? もしもの時にイールの攻撃手段にできるだろう?」
願ってもない話に、オレはただ頷くしかできなかった。
***
そして翌朝。
二人で一緒に朝飯を作って、美味しく食べて。
オレは初めてのA級魔物との戦闘を前に超ドキドキしていた。緊張で魔法石をグローブに嵌める手さえ震えていた。
ただ、オレの魔法石は昨日アクセル様の手によって信じられないほど進化していて、防護石も中級の防護を展開できるようになっていたし、火石も水石も様々な中級魔法まで展開できるようになっている。
ただし、そこまで魔法石が育ちきってるワケじゃないから、無理に中級の魔法を連発したら、ヘタしたら壊れちゃうだろうけど……それでも、中級魔法なら威力が高いのはもちろん、範囲魔法も結構あって、使い勝手がすごくいい。
「そんなに……」
「でも、使い続けてれば石だって成長する。最初はコップ一杯しか出なかった水も今じゃ毎日風呂に入ったって困らねぇくらい出るようになったし、ファイアの威力も上がってきたんだ」
なんでだか、オレが大切に大切にして一緒に死線を越えてきた石たちを貶されたような気持ちになって、オレは言い訳がましいことを口にしていた。
アクセル様にとってはへっぽこな初期魔法しか入ってない役立たずな石に見えるかもしれない。でも、オレにとっては他には代えられない、相棒みたいな石なんだ。
「この前は、この石のおかげで初めて中級魔物だって仕留めたし……」
死にかけたけど。
こっちが泣きたい気持ちだってのに、なぜかアクセル様は微笑んで、オレの大切な石たちをそっと指先で撫でている。
そして、ぽつりと呟いた。
「そうか、石も成長するんだな。……この石に込めた魔法がイールの命を守っているのか」
「えっ」
「違うのか?」
オレが思わずびっくりした声を出したから、アクセル様がキョトンとした顔をする。
アクセル様は、これっぽっちもバカになんてしてなかった。むしろオレの命を守る石だと、同じように大切に思ってくれたらしい。
オレは、自分の卑屈さを知る思いだった。勝手にバカにされてるって思い込むなんて……心が貧しいのはオレの方だ。
「いや、そう……そうなんだ。オレの相棒で、大切な石なんだ」
「そうか。魔物と対峙する時に、頼れるものがあるのはいいよな。俺も、この剣だけは手放せない」
今度はオレが苦笑する番だった。
「魔術師なのに、大切なのは剣なんだ……」
「俺は魔力はイールほど豊富じゃないからな。強力な魔法を使える回数は限られている。大半の魔物は、この剣と身体強化で倒してきた」
「そっか、アクセル様の相棒はこの剣なのか」
「お互い、おおよそ魔術師とは思えない戦い方だな」
ははは、とアクセル様が笑う。そこには何の嫌味も感じられなくて、オレはなんだか、アクセル様がとても身近に感じられるようになっていた。
だからだろう、ついこんなことを言ってしまったのは。
「アクセル様、明日はA級魔物に挑むんだろ? 魔力が足りなくなったらオレが補充してやるよ」
そう言った途端、今まで楽しそうに笑っていたアクセル様が、急に真顔になった。
「……」
しまった、と思った。
何を偉そうに「オレが補充してやる」なんて言ってんだろ。オレなんて結界の中で大人しくしとくしか脳がないってのに。
「ごめん! オレなんか足手纏いだよな」
慌てて言ったら、アクセル様の表情が急に戻って、アクセル様まで慌て始めた。
「違う! すごくありがたい! もしかしたら、イールがいれば本当にA級魔物に勝てるかもしれないと思って……思わず、どうしたら効率よく魔力の補充ができるか考えていた」
「え……」
「確かにA級の魔物になると身体強化と剣だけじゃ厳しいんじゃないかと思っていたんだ。だが、俺が死んだらイールが戻れなくなるからな」
「っ……!」
そう言われて戦慄した。
そうじゃん!!!
オレが結界で守られてたとしても、その中に永遠にいられるわけじゃない。アクセル様が死んじゃったりしたら、飢えをしのぐためか魔法学校に戻るためか……いずれにしろ結界を出なきゃいけないタイミングがくるだろう。
でもオレってアクセル様の話によると、魔物にとっちゃめちゃくちゃ美味そうなエサ認定されてるんだろ? 結界から出た途端、絶対にA級魔物に美味しくいただかれちゃうの決定じゃん……!
「そもそもはイールだけでも無事に帰れる方法はないかと考えていたんだが、オレに魔力を注入できるイールと一緒ならば、勝率が格段に上がる。いざとなれば一緒に転移で逃げることも可能だろう」
「え、それってオレもアクセル様と一緒に行動するってこと?」
「それが一番いいと思う」
「オレ、B級の中でも下位のヤツとしか戦ったことないんだけど」
いきなりA級魔物と戦うの? 死ぬ未来しか見えない。
「イールは俺と常に一緒にいて、適宜その魔力を俺に流し込んでくれていればそれでいい。……だが、そうだな」
ちょっとだけ考えて、アクセル様はオレににっこりと笑いかけた。
「もしイールが嫌じゃなければ、イールの石にもっと強い魔法を登録させてくれないか? もしもの時にイールの攻撃手段にできるだろう?」
願ってもない話に、オレはただ頷くしかできなかった。
***
そして翌朝。
二人で一緒に朝飯を作って、美味しく食べて。
オレは初めてのA級魔物との戦闘を前に超ドキドキしていた。緊張で魔法石をグローブに嵌める手さえ震えていた。
ただ、オレの魔法石は昨日アクセル様の手によって信じられないほど進化していて、防護石も中級の防護を展開できるようになっていたし、火石も水石も様々な中級魔法まで展開できるようになっている。
ただし、そこまで魔法石が育ちきってるワケじゃないから、無理に中級の魔法を連発したら、ヘタしたら壊れちゃうだろうけど……それでも、中級魔法なら威力が高いのはもちろん、範囲魔法も結構あって、使い勝手がすごくいい。
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