最弱オレが、最強魔法騎士様のパートナーになった件

竜也りく

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信じて欲しい

ゆうべアクセル様はオレの魔法石にたくさんの魔法を登録してくれた。

魔法石自体が安物だったしまだまだレベルが低くて、中級魔法までしか登録できなかったけど、アクセル様はできる限りの魔法を込めてくれたんだ。

こんなにたくさんの魔法が込められた魔法石なんて、いったいいくらするのかわからない。

それもこれも、アクセル様が色んな魔法を知っていて、かつ惜しげもなくこの魔法石に登録してくれたからだ。

そもそも魔法石に魔法を登録するのはかなり難しい。『登録屋』なんて職業が成り立つくらいなんだから、その難しさがわかるってもんだろう。何度も何度も何度も同じ魔法を石に放って、石が魔法を運良く取り込むのを待つしかない。

そんな作業を延々と。オレから魔力を分けてもらいながらアクセル様は頑張った。

申し訳なくてそこまでしなくて大丈夫だと言うオレに、アクセル様は笑ってこう言ったんだ。

「A級魔物との戦闘に巻き込むんだ。迷惑料だと思ってくれ」

納得した。

「確かに。よろしくお願いします」

命かけるんだもんな、と即座に頷いたオレを見てアクセル様が朗らかに笑う。

「これでこの石は、イールを守る力がさらに増した筈だ。相棒がレベルアップしたと思えばいい」

この強くて優しいアクセル様の力を封入して大量の魔法を取り込んだ石も一緒なら、なんだかA級魔物との戦闘も怖くない気がしたんだ。

アクセル様のおかげでうんと強くなった魔法石をグローブに嵌めて、『防護』魔法を起動する。A級魔物に攻撃されたらこれだって防ぎきれないかもしれないけど、何もないよりは遙かに遥かに強い筈。

よし! やるぞ! と気合を入れてアクセル様の方を見たら、アクセル様は昨日俺が魔物の革と羽毛で作ってやった即席布団をいそいそとマジックバッグに詰め込んでいた。

ああ……まぁ、もうひと晩あるもんね。

オレの視線に気づいたアクセル様が、オレを見て嬉しそうに笑う。

「イール、これはなかなかの寝心地だった! 多分その寝袋よりも心地いいと思うぞ」

「そっか、よく眠れた?」

「まさか屋外で熟睡するとは思わなかった」

熟睡したのか。ほんとこの人、お坊ちゃんなんだかワイルドなんだか、わかんない人だなぁ。

オレが若干呆れているのも知らず、荷物をまとめ終わったアクセル様はつかつかとオレのそばに寄ってきて、急に真剣な顔になってこう言った。

「イール、A級魔物を倒したいというのは俺の我儘だ。もし窮地に陥るような事があっても、イールだけは絶対に守る。それだけは信じて欲しい」

「ふざけんなよ」

思わずそんな言葉が口をついて出ていた。

アクセル様が本気だってわかったからこそ許せない。

「そこは絶対にふたり一緒に生きて帰る、だろ。カッコつけて勝手に死なれちゃこっちがあと味悪いっつうの」

「……」

「ポカンとした顔してんじゃねぇよ。言い直せ」

腹が立ってつい強い口調になっちゃったけど、仕方ないと思う。それで怒るような人じゃないのは、昨日一日一緒にいてわかってるから、オレは訂正せずにアクセル様の言葉を待った。

なのに、アクセル様は困ったように眉毛を下げる。

「A級魔物はB級なんて比べ物にならないくらい強いらしいんだ。それこそ、B級魔物を十体いっぺんに相手取るよりも遥かに厳しい戦いになるって」

「ふざけんなよ……」

そんなエグい敵との戦いに巻き込もうとしてるのかコイツは。そりゃあ魔法石にいくつ魔法をパンパンに入れて貰ったって割に合わない。

「だから? アクセル様はその怖~いA級魔物と刺し違えるつもりなわけ?」

「死んでもおかしくないとは思っている」

「ふざけんなよ……!」

三回目のふざけんなが出てしまった。だって、本当にふざけてる。

「あのなぁ! オレを巻き込むと決めた時点で、絶対に生きて帰るって心に決めろよ!!! じゃなきゃこのまま帰る! そんな腰抜けは冒険者になる資格なんかねぇよ。安全な場所で魔術を極められる王宮魔術師で充分だ。嫌味言われながら一生こき使われちまえ!」

「イール」

「こっちは一緒に行くって決めた時点で命かけてんだよ、アンタに! そのアンタが死ぬかも……って弱気なこと言うのは違うだろ!」

「イール、ごめん」

「誓え! オレもアンタも五体満足で、A級魔物をこてんぱんに倒して帰るって!!!」

腹立ちのままに叫んだら、アクセル様はますます困った眉毛になって、なんでか笑った。

「誓う内容がだいぶ増えた」

「っ……!!!」

「ごめん、待って。ちゃんと誓う」

さらに怒鳴ってやろうかと思ったら、アクセル様に慌てて止められた。睨むオレをおちつかせるようにオレの両肩に手を置いて、アクセル様が真っ直ぐに見つめてくる。

「イール、ごめん。君の言うとおりだ」

「当たり前だ」

「もし窮地に陥るような事があっても、絶対に諦めない。A級魔物を倒して、五体満足でイールを連れて帰還すると誓う」

「口先だけじゃねぇだろうな」

念押しするオレに、アクセル様は心底嬉しそうに破顔した。

「大丈夫だ。イールがいれば、できる。そう確信できた」

今まで見た中で、一番嬉しそうな笑顔だった。
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