17 / 46
信じて欲しい
ゆうべアクセル様はオレの魔法石にたくさんの魔法を登録してくれた。
魔法石自体が安物だったしまだまだレベルが低くて、中級魔法までしか登録できなかったけど、アクセル様はできる限りの魔法を込めてくれたんだ。
こんなにたくさんの魔法が込められた魔法石なんて、いったいいくらするのかわからない。
それもこれも、アクセル様が色んな魔法を知っていて、かつ惜しげもなくこの魔法石に登録してくれたからだ。
そもそも魔法石に魔法を登録するのはかなり難しい。『登録屋』なんて職業が成り立つくらいなんだから、その難しさがわかるってもんだろう。何度も何度も何度も同じ魔法を石に放って、石が魔法を運良く取り込むのを待つしかない。
そんな作業を延々と。オレから魔力を分けてもらいながらアクセル様は頑張った。
申し訳なくてそこまでしなくて大丈夫だと言うオレに、アクセル様は笑ってこう言ったんだ。
「A級魔物との戦闘に巻き込むんだ。迷惑料だと思ってくれ」
納得した。
「確かに。よろしくお願いします」
命かけるんだもんな、と即座に頷いたオレを見てアクセル様が朗らかに笑う。
「これでこの石は、イールを守る力がさらに増した筈だ。相棒がレベルアップしたと思えばいい」
この強くて優しいアクセル様の力を封入して大量の魔法を取り込んだ石も一緒なら、なんだかA級魔物との戦闘も怖くない気がしたんだ。
アクセル様のおかげでうんと強くなった魔法石をグローブに嵌めて、『防護』魔法を起動する。A級魔物に攻撃されたらこれだって防ぎきれないかもしれないけど、何もないよりは遙かに遥かに強い筈。
よし! やるぞ! と気合を入れてアクセル様の方を見たら、アクセル様は昨日俺が魔物の革と羽毛で作ってやった即席布団をいそいそとマジックバッグに詰め込んでいた。
ああ……まぁ、もうひと晩あるもんね。
オレの視線に気づいたアクセル様が、オレを見て嬉しそうに笑う。
「イール、これはなかなかの寝心地だった! 多分その寝袋よりも心地いいと思うぞ」
「そっか、よく眠れた?」
「まさか屋外で熟睡するとは思わなかった」
熟睡したのか。ほんとこの人、お坊ちゃんなんだかワイルドなんだか、わかんない人だなぁ。
オレが若干呆れているのも知らず、荷物をまとめ終わったアクセル様はつかつかとオレのそばに寄ってきて、急に真剣な顔になってこう言った。
「イール、A級魔物を倒したいというのは俺の我儘だ。もし窮地に陥るような事があっても、イールだけは絶対に守る。それだけは信じて欲しい」
「ふざけんなよ」
思わずそんな言葉が口をついて出ていた。
アクセル様が本気だってわかったからこそ許せない。
「そこは絶対にふたり一緒に生きて帰る、だろ。カッコつけて勝手に死なれちゃこっちがあと味悪いっつうの」
「……」
「ポカンとした顔してんじゃねぇよ。言い直せ」
腹が立ってつい強い口調になっちゃったけど、仕方ないと思う。それで怒るような人じゃないのは、昨日一日一緒にいてわかってるから、オレは訂正せずにアクセル様の言葉を待った。
なのに、アクセル様は困ったように眉毛を下げる。
「A級魔物はB級なんて比べ物にならないくらい強いらしいんだ。それこそ、B級魔物を十体いっぺんに相手取るよりも遥かに厳しい戦いになるって」
「ふざけんなよ……」
そんなエグい敵との戦いに巻き込もうとしてるのかコイツは。そりゃあ魔法石にいくつ魔法をパンパンに入れて貰ったって割に合わない。
「だから? アクセル様はその怖~いA級魔物と刺し違えるつもりなわけ?」
「死んでもおかしくないとは思っている」
「ふざけんなよ……!」
三回目のふざけんなが出てしまった。だって、本当にふざけてる。
「あのなぁ! オレを巻き込むと決めた時点で、絶対に生きて帰るって心に決めろよ!!! じゃなきゃこのまま帰る! そんな腰抜けは冒険者になる資格なんかねぇよ。安全な場所で魔術を極められる王宮魔術師で充分だ。嫌味言われながら一生こき使われちまえ!」
「イール」
「こっちは一緒に行くって決めた時点で命かけてんだよ、アンタに! そのアンタが死ぬかも……って弱気なこと言うのは違うだろ!」
「イール、ごめん」
「誓え! オレもアンタも五体満足で、A級魔物をこてんぱんに倒して帰るって!!!」
腹立ちのままに叫んだら、アクセル様はますます困った眉毛になって、なんでか笑った。
「誓う内容がだいぶ増えた」
「っ……!!!」
「ごめん、待って。ちゃんと誓う」
さらに怒鳴ってやろうかと思ったら、アクセル様に慌てて止められた。睨むオレをおちつかせるようにオレの両肩に手を置いて、アクセル様が真っ直ぐに見つめてくる。
「イール、ごめん。君の言うとおりだ」
「当たり前だ」
「もし窮地に陥るような事があっても、絶対に諦めない。A級魔物を倒して、五体満足でイールを連れて帰還すると誓う」
「口先だけじゃねぇだろうな」
念押しするオレに、アクセル様は心底嬉しそうに破顔した。
「大丈夫だ。イールがいれば、できる。そう確信できた」
今まで見た中で、一番嬉しそうな笑顔だった。
魔法石自体が安物だったしまだまだレベルが低くて、中級魔法までしか登録できなかったけど、アクセル様はできる限りの魔法を込めてくれたんだ。
こんなにたくさんの魔法が込められた魔法石なんて、いったいいくらするのかわからない。
それもこれも、アクセル様が色んな魔法を知っていて、かつ惜しげもなくこの魔法石に登録してくれたからだ。
そもそも魔法石に魔法を登録するのはかなり難しい。『登録屋』なんて職業が成り立つくらいなんだから、その難しさがわかるってもんだろう。何度も何度も何度も同じ魔法を石に放って、石が魔法を運良く取り込むのを待つしかない。
そんな作業を延々と。オレから魔力を分けてもらいながらアクセル様は頑張った。
申し訳なくてそこまでしなくて大丈夫だと言うオレに、アクセル様は笑ってこう言ったんだ。
「A級魔物との戦闘に巻き込むんだ。迷惑料だと思ってくれ」
納得した。
「確かに。よろしくお願いします」
命かけるんだもんな、と即座に頷いたオレを見てアクセル様が朗らかに笑う。
「これでこの石は、イールを守る力がさらに増した筈だ。相棒がレベルアップしたと思えばいい」
この強くて優しいアクセル様の力を封入して大量の魔法を取り込んだ石も一緒なら、なんだかA級魔物との戦闘も怖くない気がしたんだ。
アクセル様のおかげでうんと強くなった魔法石をグローブに嵌めて、『防護』魔法を起動する。A級魔物に攻撃されたらこれだって防ぎきれないかもしれないけど、何もないよりは遙かに遥かに強い筈。
よし! やるぞ! と気合を入れてアクセル様の方を見たら、アクセル様は昨日俺が魔物の革と羽毛で作ってやった即席布団をいそいそとマジックバッグに詰め込んでいた。
ああ……まぁ、もうひと晩あるもんね。
オレの視線に気づいたアクセル様が、オレを見て嬉しそうに笑う。
「イール、これはなかなかの寝心地だった! 多分その寝袋よりも心地いいと思うぞ」
「そっか、よく眠れた?」
「まさか屋外で熟睡するとは思わなかった」
熟睡したのか。ほんとこの人、お坊ちゃんなんだかワイルドなんだか、わかんない人だなぁ。
オレが若干呆れているのも知らず、荷物をまとめ終わったアクセル様はつかつかとオレのそばに寄ってきて、急に真剣な顔になってこう言った。
「イール、A級魔物を倒したいというのは俺の我儘だ。もし窮地に陥るような事があっても、イールだけは絶対に守る。それだけは信じて欲しい」
「ふざけんなよ」
思わずそんな言葉が口をついて出ていた。
アクセル様が本気だってわかったからこそ許せない。
「そこは絶対にふたり一緒に生きて帰る、だろ。カッコつけて勝手に死なれちゃこっちがあと味悪いっつうの」
「……」
「ポカンとした顔してんじゃねぇよ。言い直せ」
腹が立ってつい強い口調になっちゃったけど、仕方ないと思う。それで怒るような人じゃないのは、昨日一日一緒にいてわかってるから、オレは訂正せずにアクセル様の言葉を待った。
なのに、アクセル様は困ったように眉毛を下げる。
「A級魔物はB級なんて比べ物にならないくらい強いらしいんだ。それこそ、B級魔物を十体いっぺんに相手取るよりも遥かに厳しい戦いになるって」
「ふざけんなよ……」
そんなエグい敵との戦いに巻き込もうとしてるのかコイツは。そりゃあ魔法石にいくつ魔法をパンパンに入れて貰ったって割に合わない。
「だから? アクセル様はその怖~いA級魔物と刺し違えるつもりなわけ?」
「死んでもおかしくないとは思っている」
「ふざけんなよ……!」
三回目のふざけんなが出てしまった。だって、本当にふざけてる。
「あのなぁ! オレを巻き込むと決めた時点で、絶対に生きて帰るって心に決めろよ!!! じゃなきゃこのまま帰る! そんな腰抜けは冒険者になる資格なんかねぇよ。安全な場所で魔術を極められる王宮魔術師で充分だ。嫌味言われながら一生こき使われちまえ!」
「イール」
「こっちは一緒に行くって決めた時点で命かけてんだよ、アンタに! そのアンタが死ぬかも……って弱気なこと言うのは違うだろ!」
「イール、ごめん」
「誓え! オレもアンタも五体満足で、A級魔物をこてんぱんに倒して帰るって!!!」
腹立ちのままに叫んだら、アクセル様はますます困った眉毛になって、なんでか笑った。
「誓う内容がだいぶ増えた」
「っ……!!!」
「ごめん、待って。ちゃんと誓う」
さらに怒鳴ってやろうかと思ったら、アクセル様に慌てて止められた。睨むオレをおちつかせるようにオレの両肩に手を置いて、アクセル様が真っ直ぐに見つめてくる。
「イール、ごめん。君の言うとおりだ」
「当たり前だ」
「もし窮地に陥るような事があっても、絶対に諦めない。A級魔物を倒して、五体満足でイールを連れて帰還すると誓う」
「口先だけじゃねぇだろうな」
念押しするオレに、アクセル様は心底嬉しそうに破顔した。
「大丈夫だ。イールがいれば、できる。そう確信できた」
今まで見た中で、一番嬉しそうな笑顔だった。
あなたにおすすめの小説
愛しの妻は黒の魔王!?
ごいち
BL
「グレウスよ、我が弟を妻として娶るがいい」
――ある日、平民出身の近衛騎士グレウスは皇帝に呼び出されて、皇弟オルガを妻とするよう命じられる。
皇弟オルガはゾッとするような美貌の持ち主で、貴族の間では『黒の魔王』と怖れられている人物だ。
身分違いの政略結婚に絶望したグレウスだが、いざ結婚してみるとオルガは見事なデレ寄りのツンデレで、しかもその正体は…。
魔法の国アスファロスで、熊のようなマッチョ騎士とツンデレな『魔王』がイチャイチャしたり無双したりするお話です。
表紙は豚子さん(https://twitter.com/M_buibui)に描いていただきました。ありがとうございます!
11/28番外編2本と、終話『なべて世は事もなし』に挿絵をいただいております! ありがとうございます!
【完結】異世界召喚 (聖女)じゃない方でしたがなぜか溺愛されてます
七夜かなた
恋愛
仕事中に突然異世界に転移された、向先唯奈 29歳
どうやら聖女召喚に巻き込まれたらしい。
一緒に召喚されたのはお金持ち女子校の美少女、財前麗。当然誰もが彼女を聖女と認定する。
聖女じゃない方だと認定されたが、国として責任は取ると言われ、取り敢えず王族の家に居候して面倒見てもらうことになった。
居候先はアドルファス・レインズフォードの邸宅。
左顔面に大きな傷跡を持ち、片脚を少し引きずっている。
かつて優秀な騎士だった彼は魔獣討伐の折にその傷を負ったということだった。
今は現役を退き王立学園の教授を勤めているという。
彼の元で帰れる日が来ることを願い日々を過ごすことになった。
怪我のせいで今は女性から嫌厭されているが、元は女性との付き合いも派手な伊達男だったらしいアドルファスから恋人にならないかと迫られて
ムーライトノベルでも先行掲載しています。
前半はあまりイチャイチャはありません。
イラストは青ちょびれさんに依頼しました
118話完結です。
ムーライトノベル、ベリーズカフェでも掲載しています。
不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です
新川はじめ
BL
国王とシスターの間に生まれたフィル・ディーンテ。五歳で母を亡くし第七王子として王宮へ迎え入れられたのだが、そこは針の筵だった。唯一優しくしてくれたのは王太子である兄セガールとその友人オーティスで、二人の存在が幼いフィルにとって心の支えだった。
フィルが十八歳になった頃、王宮内で生霊事件が発生。セガールの寝所に夜な夜な現れる生霊を退治するため、彼と容姿のよく似たフィルが囮になることに。指揮を取るのは大魔法師になったオーティスで「生霊が現れたら直ちに捉えます」と言ってたはずなのに何やら様子がおかしい。
生霊はベッドに潜り込んでお触りを始めるし。想い人のオーティスはなぜか黙ってガン見してるし。どうしちゃったの、話が違うじゃん!頼むからしっかりしてくれよぉー!
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位
黒とオメガの騎士の子育て〜この子確かに俺とお前にそっくりだけど、産んだ覚えないんですけど!?〜
せるせ
BL
王都の騎士団に所属するオメガのセルジュは、ある日なぜか北の若き辺境伯クロードの城で目が覚めた。
しかも隣で泣いているのは、クロードと同じ目を持つ自分にそっくりな赤ん坊で……?
「お前が産んだ、俺の子供だ」
いや、そんなこと言われても、産んだ記憶もあんなことやこんなことをした記憶も無いんですけど!?
クロードとは元々険悪な仲だったはずなのに、一体どうしてこんなことに?
一途な黒髪アルファの年下辺境伯×金髪オメガの年上騎士
※一応オメガバース設定をお借りしています
異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる
ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。
アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。
異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。
【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。
αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。
負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。
「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。
庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。
※Rシーンには♡マークをつけます。
【完結】顔だけと言われた騎士は大成を誓う
凪瀬夜霧
BL
「顔だけだ」と笑われても、俺は本気で騎士になりたかった。
傷だらけの努力の末にたどり着いた第三騎士団。
そこで出会った団長・ルークは、初めて“顔以外の俺”を見てくれた人だった。
不器用に愛を拒む騎士と、そんな彼を優しく包む団長。
甘くてまっすぐな、異世界騎士BLファンタジー。
婚約破棄されたSubですが、新しく伴侶になったDomに溺愛コマンド受けてます。
猫宮乾
BL
【完結済み】僕(ルイス)は、Subに生まれた侯爵令息だ。許婚である公爵令息のヘルナンドに無茶な命令をされて何度もSub dropしていたが、ある日婚約破棄される。内心ではホッとしていた僕に対し、その時、その場にいたクライヴ第二王子殿下が、新しい婚約者に立候補すると言い出した。以後、Domであるクライヴ殿下に溺愛され、愛に溢れるコマンドを囁かれ、僕の悲惨だったこれまでの境遇が一変する。※異世界婚約破棄×Dom/Subユニバースのお話です。独自設定も含まれます。(☆)挿入無し性描写、(★)挿入有り性描写です。第10回BL大賞応募作です。応援・ご投票していただけましたら嬉しいです! ▼一日2話以上更新。あと、(微弱ですが)ざまぁ要素が含まれます。D/Sお好きな方のほか、D/Sご存じなくとも婚約破棄系好きな方にもお楽しみいただけましたら嬉しいです!(性描写に痛い系は含まれません。ただ、たまに激しい時があります)