最弱オレが、最強魔法騎士様のパートナーになった件

竜也りく

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好きにするがいい

呆れたみたいに紡がれた言葉を聞いて、オレは耳を疑った。

心配してる?

は? 聞き間違いか?

どう考えてもそんな態度には見えない。

「しかし、冒険者など……! お前はアクセラードが命を落としてもいいというのか!」

「Bランクならひとりで、シーサーペントだってたったふたりで倒すような規格外の子よ? そう簡単に命をおとすわけないでしょう。騎士団なんかに入って得意の魔法も封じられて、バカみたいなしごきを受ける方が心が死ぬわ」

「騎士団なんかとはなんだ!」

「騎士団も魔術師団も、個々の資質を正しく見て適性に育てる事ができない時点でクソだわ。……あら、つい荒い言葉が」

ほほほ、と笑う美人母ちゃんは、父ちゃんや兄ちゃんよりよっぽど強そうだった。

「この脳筋二人は私が説得しておくわ。アクセル、今日はもう部屋に戻っておやすみなさい。イールさんもぜひ泊まっていってちょうだい。あれだけの魔物を倒したのですもの、疲れているでしょう?」

「ですが、俺はもう……」

アクセル様が目を逸らす。けれど美人母ちゃんがもの凄く優しい顔でアクセル様を押しとどめた。

「心配しないで。明日の朝、お互いに冷静になってもう一度お話しましょう」

そう説得されるけれど、アクセル様は硬い表情で今にも家を出そうな雰囲気を出している。

オレもさっきまではアクセル様と一緒に冒険者としてこのまま旅に出てしまってもいいのかもしれないと思っていたけれど、美人母ちゃんが一生懸命にアクセル様のために戦っているのを見たら、今ケンカ別れみたいに出て行っちゃって家族と縁が切れてしまうのは良くない気がしてきた。

「アクセル様、お母さんのために、今夜は我慢したほうがいいと思う」

「……イール」

そんな泣きそうな顔しないで欲しい。

せっかく家族がいるのに、こんなに悲しいことになっちゃうんだと思うとやるせない気持ちになる。可哀相になってしまって、アクセル様の広い背中をポンポンと優しく叩いていたら。

「……いい」

小さな声が聞こえてきた。

え? と思って振り返る。

そして、オレは信じられない光景に固まった。

「……お前がそこまで言うのなら、冒険者でもなんでも、好きにするがいい。だが、ラットファムの名に泥を塗るような真似だけはするなよ」

重々しくそんなことを言ってるくせに、アクセル様の父ちゃんの顔はくしゃくしゃで、泣くのを堪えてるみたいに悲しい。

「……ラットファムの名を捨てることだけは許さん」

それだけ言い捨てて、アクセル様の父ちゃんは力ない足取りで食堂から出て行ってしまった。

呆気にとられてその背中を見送っていたら、アクセル様の兄ちゃんがバッ! と顔を上げる。

「くそ……! なんで由緒ある騎士家系であるラットファムに産まれて、魔術師になるとか、果ては冒険者になるなんてバカなことを言うんだ! 父上がどれほど悲しんでいるか、お前は考えた事があるのか!」

アクセル様の胸ぐらを掴んで怒鳴る兄ちゃんは、怒ってるのか悲しんでるのか分からない表情だ。

「ロイヤン、あなたこそ何度言ったら分かるの? アクセルも……もちろん私も、ラットファム家を軽んじているわけではないわ」

何も言わないアクセル様の代わりになのか、美人母ちゃんが口を開く。

「その証拠にアクセルは一度も文句を言わずに騎士としての鍛錬も続けてきたではないの。魔法ほど才ががないにも関わらず、アクセルの実力は騎士の中でも上位に食い込むほどでしょう」

「だからだ! それならなぜ騎士にならない。騎士として充分にやっていけるはずだ」

「こんなにも突出した魔法の才を封じることが罪だとどうして分からないの?」

美人母ちゃんの悔しそうな声に、ああ、この会話はきっと何度も繰り返されてきたんだ、と気がついた。

「分かるつもりがないからでしょ」

口をついて、そんな言葉が出ていた。

「アクセル様の方がずっと強くて優秀だって認めたくなくて、魔法っていう強みを封じて自分達のフィールドに閉じ込めて優位に立ちたいと思ってるようにしか見えない」

「貴様……!」

「イール、いいんだ。ありがとう。……兄さん、すみませんでした。俺たちはもう出て行きますので」

「ふざけるな! ここまで馬鹿にされて黙っていられるか……! 展開に時間のかかる魔法など、戦いの場で何の役にも立たない。そんなものに頼って命を落とすような愚行を防いでやろうとする親心も分からん阿呆が……!」

「なるほどね、完全に魔法もアクセル様も下に見てるんだ。アクセル様、一回本気でお兄さんと戦ってみればいいじゃん」

「え?」

「なんだと!?」

「それともお兄さんは、Bランクの魔物を一日で五体も倒しちゃうようなとんでもないアクセル様とは戦えない?」

「ふざけるな……! アクセラードが俺に勝てるわけがないだろう。幼い頃から一度たりとも俺に勝ったことなどない、戦う価値もない男だぞ」

「へー、それって魔法も込みで戦いました?」

「修練場は剣の道を究める場所だ。魔法など許すわけがないだろう」

「わ、サイアク。相手の武器は取り上げて、弱い弱いって言ってるワケか」
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