【完結】完璧アルファな推し本人に、推し語りするハメになったオレの顛末

竜也りく

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調子出てきたじゃねぇか

「あのお方はそもそもお顔もものすごく整っていらっしゃるけど! とにかく考え方や振る舞いが誠実で素晴らしいんだ」

「ハイハイ」

「ドルフだって聞いただろ? あれだけ告白されまくってさ、よりどりみどりなんだよ? お試しでお付き合いしたって相手は喜びこそすれ恨んだりしないと思うよ? なのに相手に失礼だって、自分が成長してからって……誠実なあのお方らしくて、オレ感動したよ」

「まぁそうかもな」

「まぁそうかもな、じゃないよ! しかも悩んだ末に決意されたときのあのお顔! それまで悩ましげに伏せられていた目がさ、オレをまっすぐに見つめてキラッて光ったの、見た!? もう瞳の中に星があるのかって思うくらい綺麗だった」

「結局顔じゃねぇか」

「いや違くて!」

「調子出てきたじゃねぇか」

「あ」

オレの緊張をほぐしてくれていたのか、と思い当たって目を丸くした瞬間。

「今日も楽しそうだね」

「アルロード様!」

「こんちは-」

「今日からよろしく頼むね」

気の抜けた返事をするドルフにも動じることなく、アルロード様はにこやかに言いながら席に着く。

オレは低位貴族、ドルフは平民だから、本来は公爵家の子息であるアルロード様にこんな不遜な態度はとがめられても仕方が無いところだけれど、アルロード様にとってはそれすらささいな事なのかも知れない。

とにかくこれくらいの雰囲気で問題ないんだと安心した。

これならドルフとのいつもの雰囲気で話せばいいんだろう。もしかして、昨日オレが茫然自失に陥っていた間に、ドルフとアルロード様との間では、合意が取れていたのかも知れないな……。

そんな事を考えながらアルロード様をチラ、と見たらその優雅な所作に目が釘付けになった。

キャベツを敷き詰めた上に皿からこぼれそうなくらいたっぷりの鳥の唐揚げ、目玉焼きと豚肉の煮込み、スープと白飯なんていう、オレとそう代わらないボリュームたっぷりのがっつり系学食のトレイを前にしているというのに、レモンを絞る指先は繊細だったしフォークにぶっさされた唐揚げが口の中に消えていく様は爽快感がある。

さすがだ。

男らしく気持ちの良い食べっぷりなのになぜか気品を感じる……!

しかも昨日と違ってオレの横じゃなくて斜め向かいに座ってるから、そのご尊顔がめちゃくちゃばっちり見えて、もう悶絶しそうなほどに眼福過ぎる。

「意外とがっつり食うんすね」

優雅な所作なのに、でっかい唐揚げが魔法みたいにみるみるアルロード様の麗しい唇の奥に消えていくのに見蕩れていたら、ドルフが軽くツッコミを入れてくれる。

「騎士科は運動量が多いから、どうしても腹が減るよね」

「確かに。しかしさすがに食い方が優雅っすね」

「変かな?」

「んな事ないでしょ。なぁルキノ、お前の大切な『あのお方』も所作は優雅だっていつも言ってるもんな」

「うん!」

ドルフの投げかけにハッとする。

そうだった、見蕩れている場合じゃなかった。オレのミッションは、アルロード様にオレが今まで見てきたアルロード様への思いをそのままの熱量でお聞かせすること……!!!

「その話、ぜひ聞かせて欲しいね」

「聞いてくれますか!」

オレは心を奮い立たせた。

大丈夫だ。

目の焦点をあわせなければ、目の前のこの麗しいお方がアルロード様だって意識せずにいられる筈。

わざと焦点をずらしてみたら、アルロード様のキラキラ感はさすがに無くすことは難しいけど、輝かしい瞳も輪郭も形のいい唇もボヤッと霞んでなんとか意識せずに話せそうな気がしてくる。

これならいける!

今日会ったばかりの話しやすそうな人に、アルロード様の魅力を思う存分お伝えするって思えばいいんだから!

オレは大きく息を吸い込んだ。

「本当にあのお方の所作はいつも優雅で、うっかり見惚れて食事を食べ損なった日も数えきれないほどで」

「あ、冷える前に俺が食ってるから粗末にはしてませんのでご心配なく」

ドルフがいらない合いの手を入れてくるが無視だ無視!

「たとえば?」

ボヤッと霞んで見えるけど、アルロード様の口元がにこやかに弧を描いている。きっとアルロード様は優しい表情でオレを見てくれているんじゃないだろうか。

期待されている……!

「まずカトラリーを持つ手が美しいんですよね。変に力が入ってないっていうか軽く動かしているみたいに見えて無駄なく料理を切り分けてる。動きに無駄がないから食べるのも早くて、きっと美味しいものを美味しいうちに食べるってこういう事なんだろうなって思って」

「そうか、君の大切な人はテーブルマナーがいいんだね。そして、料理人が喜ぶ食べ方をしているわけだ」

「そうなんです! 多分何事においても基本を大事にするお方なんだと思うんですよね! だって剣筋もめちゃくちゃ綺麗で、師範のお手本だってこうはいかないってくらい型がピシッと決まるんです。なのに実践でも強くって、さらに突然襲い掛かられて体勢を崩してもすぐに型どおりの美しい剣筋で反撃できる。あれってもう天賦の才としか言いようがないっていうか」

「剣? 君の大切な『あのお方』は男性なのかな?」
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