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ヤバいヤバいヤバい
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アルロード様から貰ったコインホルダーを胸ポッケに入れて、あったかい気持ちのまま授業を受ける。
いつでも頼って欲しい、と言ってくれたアルロード様。
それが口先だけの事ではないと示すように、こんな貴重なコインを預けてくれるだなんて。
アルロード様の優しさに感動するばかりだ。
貰ったコインホルダーを胸ポッケの上からそっと触って、ほわほわした気持ちのまま授業を受ける。
幸せだ。
アルロード様がオレの推しで良かった。
そう思ってたんだけど。
……ヤバい。
落ち着いてきたら、だんだんコインホルダーから漂ってくるアルロード様の香りに気がついてしまった。
ヤバいヤバいヤバい。
一回気がついちゃうと、このかぐわしい香りが気になって気になってしかたない。
しかも座学中という、身体は動かせないのに考えることだけはいくらでもできてしまう、この環境がさらにヤバい。
アルロード様の香りに包まれていると、どうしてもアルロード様の事を考えてしまって、気を抜くと頭の中で、ヤバい事をアルロード様に言わせてしまいそうで怖い。
心頭滅却。
心頭滅却……!
無駄な事を考えるな、オレ!
必死な精神統一で授業を乗り切り、その後鬼気迫る勢いで放課後の鍛錬を乗り越えたオレは、邸に帰り着くなり革のコインホルダーをビニール袋に閉じ込めて、窓全開で換気に勤しんだ。
アルロード様の優しさ、時に致命傷を与えてくるんだが!?
窓の外の空気をすーはーすーはーと吸いながら、オレは決意した。
これ以上アルロード様に心配をかけるわけにはいかない。あの優しいお方は、オレが身の振り方に迷って悩んでいる限り、胸を痛めてこうして気にかけて手を差し伸べてくれようとするんだろう。
それはとてもありがたいし、推しの尊さに胸が震えるのは確かだ。
でも、一方でその優しささえ色欲に利用してしまう自分の醜さを思い知るハメにもなるわけで、このままじゃオレ、自分を嫌いになってしまいそう。
「……よし」
アルロード様の香りから解放されて幾ばくかクリアになった頭で考える。
父さんに、早いとこ嫁ぎ先を決めて貰えるように話してみよう。
それで、それでもムリだった時のために、冒険者登録もしておいた方がいいかもしれない。
どうせこのまま放課後の鍛錬に出たところで騎士になれるわけじゃないんだ。それなら、町の近くで簡単な討伐依頼でもこなしてみて、冒険者としての道があるのか、試してみたって悪くない。
そうだ。
悩んでるより、そうやって動いてみた方が、きっといい。
アルロード様のおかげで、色々と吹っ切れたオレだった。
バシュ、と剣を振るう。
重たい肉の感覚と、硬い骨にぶつかった感覚が手に伝わるけれど、思い切って剣を振り抜く。
どぅ、と重い音がして魔物が力無く倒れて動かなくなる。
絶命したのを確認して、オレはホッと息をついた。
どうやらオレは、意外にも魔物の討伐にそこそこ向いていたらしい。
もちろん騎士として対人戦を主に鍛錬してきたオレだけれど、相手の動きをよく見て自らも動き回りながら勝機を見つけるスタイルだったからか、魔物の動きに慣れるのも早かった。
最初は近場の草原で、スライム程度の低級で動きの鈍い魔物やウサギに似た小型の魔物が飛びかかってくるのを退治するのが精一杯だった。けれど、放課後冒険者として二週間がたった今ではそれらの魔物が群れで現れても問題なく対処できるし、この前は思いがけず現れたプティボアを仕留める事もできた。
とはいえまだまだ実力不足で、森に近い方には行けない。時間的な制約もあるけれど、ウルフ系の魔物と相対して勝てるとは到底思えないからだ。
この調子で卒業まで魔物討伐を続ければ、嫁ぎ先が見つからなくても冒険者として日々の糧を得ていくのは意外と無理なことではない気がしてきた。
上々の成果に満足して帰路につく。そろそろお金も貯まってきたし、軽くて防御力の高いレザーアーマーを買ってもいいかもしれない。
そんなふうに若干浮かれてたんだけど。
翌日のお昼休み、なぜかドルフとアルロード様、二人がかりで問い詰められる羽目に陥ってしまった。
「ルキノ、そういえばお前、ここ二週間くらい放課後の鍛錬ずっと休んでるよな。体調が悪いのか?」
始まりはドルフのなんてことない質問だったんだけど。
「いや、別に体調は悪くないけど……オレ、騎士になれない事確定だからさ、ちょっと違うことに時間を充てようかと思って」
「!!!!」
そう言った途端、カシャン! とフォークが皿にあたる音がして、アルロード様の身体が大きく揺れた。
豪快に食べてる割りにテーブルマナー完璧なアルロード様らしからぬ事で、ちょっとびっくりしていたら、アルロード様がずいっと身を乗り出してきた。
「ルキノ……もしかして、その、見合いとか……?」
「いやいや、まだ難航してるみたいですね。頑張ってくれてはいるみたいですけど」
「そ、そうか。……では、何を?」
そう尋ねられて、答えに窮した。
放課後冒険者として魔物を討伐しているとはなんとなく言いにくい。だってアルロード様にまた心配をかけてしまいそうな気がするし。
いつでも頼って欲しい、と言ってくれたアルロード様。
それが口先だけの事ではないと示すように、こんな貴重なコインを預けてくれるだなんて。
アルロード様の優しさに感動するばかりだ。
貰ったコインホルダーを胸ポッケの上からそっと触って、ほわほわした気持ちのまま授業を受ける。
幸せだ。
アルロード様がオレの推しで良かった。
そう思ってたんだけど。
……ヤバい。
落ち着いてきたら、だんだんコインホルダーから漂ってくるアルロード様の香りに気がついてしまった。
ヤバいヤバいヤバい。
一回気がついちゃうと、このかぐわしい香りが気になって気になってしかたない。
しかも座学中という、身体は動かせないのに考えることだけはいくらでもできてしまう、この環境がさらにヤバい。
アルロード様の香りに包まれていると、どうしてもアルロード様の事を考えてしまって、気を抜くと頭の中で、ヤバい事をアルロード様に言わせてしまいそうで怖い。
心頭滅却。
心頭滅却……!
無駄な事を考えるな、オレ!
必死な精神統一で授業を乗り切り、その後鬼気迫る勢いで放課後の鍛錬を乗り越えたオレは、邸に帰り着くなり革のコインホルダーをビニール袋に閉じ込めて、窓全開で換気に勤しんだ。
アルロード様の優しさ、時に致命傷を与えてくるんだが!?
窓の外の空気をすーはーすーはーと吸いながら、オレは決意した。
これ以上アルロード様に心配をかけるわけにはいかない。あの優しいお方は、オレが身の振り方に迷って悩んでいる限り、胸を痛めてこうして気にかけて手を差し伸べてくれようとするんだろう。
それはとてもありがたいし、推しの尊さに胸が震えるのは確かだ。
でも、一方でその優しささえ色欲に利用してしまう自分の醜さを思い知るハメにもなるわけで、このままじゃオレ、自分を嫌いになってしまいそう。
「……よし」
アルロード様の香りから解放されて幾ばくかクリアになった頭で考える。
父さんに、早いとこ嫁ぎ先を決めて貰えるように話してみよう。
それで、それでもムリだった時のために、冒険者登録もしておいた方がいいかもしれない。
どうせこのまま放課後の鍛錬に出たところで騎士になれるわけじゃないんだ。それなら、町の近くで簡単な討伐依頼でもこなしてみて、冒険者としての道があるのか、試してみたって悪くない。
そうだ。
悩んでるより、そうやって動いてみた方が、きっといい。
アルロード様のおかげで、色々と吹っ切れたオレだった。
バシュ、と剣を振るう。
重たい肉の感覚と、硬い骨にぶつかった感覚が手に伝わるけれど、思い切って剣を振り抜く。
どぅ、と重い音がして魔物が力無く倒れて動かなくなる。
絶命したのを確認して、オレはホッと息をついた。
どうやらオレは、意外にも魔物の討伐にそこそこ向いていたらしい。
もちろん騎士として対人戦を主に鍛錬してきたオレだけれど、相手の動きをよく見て自らも動き回りながら勝機を見つけるスタイルだったからか、魔物の動きに慣れるのも早かった。
最初は近場の草原で、スライム程度の低級で動きの鈍い魔物やウサギに似た小型の魔物が飛びかかってくるのを退治するのが精一杯だった。けれど、放課後冒険者として二週間がたった今ではそれらの魔物が群れで現れても問題なく対処できるし、この前は思いがけず現れたプティボアを仕留める事もできた。
とはいえまだまだ実力不足で、森に近い方には行けない。時間的な制約もあるけれど、ウルフ系の魔物と相対して勝てるとは到底思えないからだ。
この調子で卒業まで魔物討伐を続ければ、嫁ぎ先が見つからなくても冒険者として日々の糧を得ていくのは意外と無理なことではない気がしてきた。
上々の成果に満足して帰路につく。そろそろお金も貯まってきたし、軽くて防御力の高いレザーアーマーを買ってもいいかもしれない。
そんなふうに若干浮かれてたんだけど。
翌日のお昼休み、なぜかドルフとアルロード様、二人がかりで問い詰められる羽目に陥ってしまった。
「ルキノ、そういえばお前、ここ二週間くらい放課後の鍛錬ずっと休んでるよな。体調が悪いのか?」
始まりはドルフのなんてことない質問だったんだけど。
「いや、別に体調は悪くないけど……オレ、騎士になれない事確定だからさ、ちょっと違うことに時間を充てようかと思って」
「!!!!」
そう言った途端、カシャン! とフォークが皿にあたる音がして、アルロード様の身体が大きく揺れた。
豪快に食べてる割りにテーブルマナー完璧なアルロード様らしからぬ事で、ちょっとびっくりしていたら、アルロード様がずいっと身を乗り出してきた。
「ルキノ……もしかして、その、見合いとか……?」
「いやいや、まだ難航してるみたいですね。頑張ってくれてはいるみたいですけど」
「そ、そうか。……では、何を?」
そう尋ねられて、答えに窮した。
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