ショートショートの詰め合わせ

空条浩

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【1話完結】チョコは溶けてもまた固まる

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 えー、イベント前というのは色んな意味で忙しいものですな。男女に関係あるって言ったら、夏祭り、ハロウィン、クリスマス、あとバレンタインデーですか。イチャイチャするカップルを見てはチョコなんか溶けちまえ! と毒を吐くんですが、不思議なものですな。いざ勇気を出して渡しているところなんか見るとこう、幸せになっちまえ!! と心の中で言ってしまうもんです。ただ中にはイベント前に悪いことが起こるっていうのもあります。まあポッキーでもつまみながら読んでください。
 会社の喫煙室ってのは、昔よりも密会に丁度いいかもしれませんな。と言うのも最近は禁煙だなんだで、煙草を吸わない人が多い。家庭のことも、喫煙仲間なら打ち明けられる。そんなことでございましょうか。シケた顔した男二人が、煙をぷかぷか吹いてるんでございます。

「池ちゃんにはあんまり関係ない話かも知らんがな」

「なんだい山ちゃん急に」

「明日何の日か知ってるか?」

「そりゃおめえ決まってるじゃないか。早く帰る日だよ」

「何で明日が早く帰る日なのさ」

「酒を飲んだくれてもいい日だからよ」

「あんたは今日だって二日酔いで会社に来たじゃねえかええ?」

「ばあろうおめえ、明後日は昼まで寝てていいんだから気合の入り方がちげえんだよ」

「明日はバレンタインデーだよ」

池ちゃんニヤニヤしながらすっとぼける。肌も浅黒けりゃ腹も黒い。

「バババ、バレン、タイン、デー?」

「そうだよ。バレンタインデー。あんたにゃ関係ないかも知らんがね、世間様では男女がチョコを贈り合う日なのさ」

「チコを渡す日……? NHKかい?」

「博学な女の子じゃないよ」

「じゃあニンテンドー?」

「マリオさんちの星型生物じゃないよ」

「じゃあ……」

「悪かった悪かった。で、本題なんだけどね。さっきカミさんとケンカしちゃってさあ」

「なんでえ、よりにもよってバレンタイン前に?」

「そうなんだよ。昨日カミさんが風邪引いちまってさ。うつすなよって言ったらもうカンカン」

「そりゃお前が悪い」

「いや、そうなんだけど」

「謝った方がいいんじゃねえか?」

「でもあげるつもりだったって、俺の目の前でバレンタインのチョコ食いやがったんだよ。そんなあてつけされて、頭に来ちゃってなあ」

「それで今も口の一つも聞いてないってか」

「まあな」

「飯でも食いに行くか」

「そしたらまたグチグチ嫌味言われるだろう」

「手土産持って行きゃいいだろ。こう言うのはな、チョコレート作るみたいにするんだよ」

「なんでえ、チョコ作るみたいってのは」

「頭冷やして時間おけ」

<(_ _)>
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