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第三十三話 休憩中です。
第三十三話
鬱蒼とした森の向こう、城壁に囲まれた優美な城が見える。
白亜の城の四隅にはそれぞれ高い塔がそびえ立ち、急傾斜の屋根は陽光を反射してのどかにきらめく。
青空と峻険な山脈を背景にして、眠るように佇むその城が一行の目指す忘却城だ。
確かにファーナが美しいと形容するだけのことはある。エドガルトは心の中で頷きながら目を眇めた。
「あれがフェアゲッセン城か」
当時の技術の粋を集めて建築されたのだろう。遠くからでもその偉容は一目でわかる。数百年の時を経てもなお美しく、古びるどころか経年が良い意味での落ち着きを与えている。
人前に出せない王族を幽閉するために使われた城だというが、築城を命じた国王にはそこに住まう者に対する愛情があったのだろう。エドガルトにそう思わせるに足る姿だった。
「綺麗な城でしょう?」
「そうだね。まるで消えることのない雪のようだ」
どこか得意げなファーナの問いに、エドガルトは大きく頷いた。
城の向こうに聳える山の峰は雪に覆われている。標高が高すぎて一年中とけることのない雪は、誰にも汚されてはいないだろう。その無垢な根雪が、地上にぽっと現れたようにも見えるのだ。
城への道は、森を突っ切るようにして一直線に伸びている。一応、舗装はされているものの、古びた石畳の間からは雑草がひょこり、ひょこりと顔を出している。
城で働く使用人の中には近隣の町や村から通う者もいるし、食料や生活必需品を納入する農民や商人の出入りもある。だから日々の往来がないわけではないが、それでも雑草がはびこる程度には静かなのだ。
「いいところだ」
ため息と混じり合ったエドガルトの言葉には、風景の美しさ以外の意味も含まれている。
城は背後の護りを切り立った山脈に任せ、三方を森に守らせている。これだけ深い森なら攻めるほうも苦労するだろう。しかも森の奥には切り立った崖があり、城に入るにはその崖にかけられた橋を渡らねばならないのだという。まさに天然の要塞ともいえる。
フェアゲッセン城のような――大自然の中に建ち、しかも人々から忘れられたような――建物は、魔術的な観点から言っても絶好の隠れ家となる。
人目を避け、自然に隠れ、身を潜める。人に混じれない魔法使いや、魔法を使いよからぬことを企む者、そして魔物の温床にもなりやすい。
ファーナに呪いをかけた『古の王妃』が潜んでいたとしても何ら不思議はない。
邪悪な気配は感じないが、うっすらと魔力のような気配は感じる。
古い建物には時として魔力に似た気配を持つものだし、王城のように強固な結界が張ってあり、古の王妃の気配が外に漏れ出ていないだけかもしれない。
いずれにしろ、推理するには少々遠すぎる。もっと近づいてから観察するしかなさそうだ。ここまでくればあと半刻ほどで城に着くだろう。
だが、そんな彼の心中を知る由もないファーナは「ええ」と短く答え、ふたりはそのまま黙り込んだ。
同行の皆も、思い思いの場所に腰を下ろして、目の前の光景をのんびりと眺めている。
誰一人なにもしゃべらず、彼らの間をただ微風が過ぎて、木々の葉や草を小さくざわめかせていくばかりだ。
昼食をとるため休憩にしたのだが、腹がくちれば心地よい疲労感と軽い眠気が襲ってくる。
本格的に気怠くなる前に出立したほうがいいのではないか。ファーナはそう思ったが、隣に座るエドガルトは動くそぶりもなく、遠い目をしてどこかを眺めている。
彼の端正な横顔は穏やかだ。それを間近で見上げられる。こんな日が再び来るとは思っていなかった。
硬い鱗に覆われた顔を見られればきっと嫌悪の滲んだ目で見られ、嫌われ、遠ざけられると思っていたのだ。そのくらいならさっさと逃げ出してしまおう。そう思いつめたのはつい数日前のことだというのに、遠い昔のことだと思えてしまう。
あの時、逃亡先と決めたフェアゲッセン城は目の前で、しかも隣には逃げようと思った原因であるエドガルトがいる。
一緒にいられるのは嬉しいのだけれど、どことなく複雑な気分だ。
「どうしたの、ファーナ? 僕の顔になにかついてる?」
「あっ、いえ……」
慌てて首を横に振れば、『じゃあどうしたの?』と言いたげにエドガルトは首をかしげて、彼女をじっと見つめる。
「そろそろ、出立の準備をしなくてもよいのかと心配になりまして。ここから先の森は暗いので、少しでも日が傾いてしまうとちょっと……」
日が傾けば松明が必要になる。
闇や夜は魔物の領分だ。いくらエドガルトに強力な結界を張ってもらっているとは言え、一抹の不安はある。
ファーナは無意識に、胸に下げたアメジストのペンダントに触れた。指先で石のふちをなぞれば、石はかすかに揺れて陽光を弾く。
その仕草で彼女の言わなかった言葉を察したエドガルトは、ふっと目を細め、おもむろにファーナの肩を抱き寄せた。
「ああ、うん。心配させてごめんね。でも、もうちょっと待ってくれるかな? ギィとニャーにちょっとお使いに出て貰ってるんだ。あの子達が帰ってきた出発しよう」
「あっ、そういえばふたりの姿が見えませんね」
昼食を終えるまでは騒がしく、もとい、楽しそうにしていたのは覚えている。記憶を辿っても二匹を見たのはそれが最後だ。
エドガルトのお使いでどこかへ出かけているなら納得がいく。
「でもあの子達、このあたりの地理に詳しくはないですよね? 途中、迷子にでもなったら可哀想です」
「大丈夫。彼らは僕の気配を辿って戻って来る。使い魔と使役主の絆って言うのは存外強いものなんだ。だからファーナは心配しなくていいんだよ」
「そ、それならよいのですが」
と思った途端、今度は別の心配が頭をよぎる。
「まだ浮かない顔をしてるね。心配事、まだある?」
「もし、強い魔物に出くわしてしまって、大怪我でもしたら大変です」
ファーナは大真面目で告げたというに、エドガルトは噴き出し、あはは、と大きな笑い声を立てた。
「大丈夫だよ! あの子達は強いから。そこら辺の魔物では勝てないよ」
「そ、そうなのですか? あんな可愛いのにそんなに強いだなんて」
心配性なうえに嫉妬深いエドガルトは、ファーナのあずかり知らぬところで、使い魔に周辺の魔物の退治を命じている。おかげで二匹は倒した魔物の力を吸収してどんどん強くなっているのだ。
「人も魔物も見かけじゃないってことだよ。――でも、心配してくれてありがとう。あの子達に代わってお礼を言うよ」
そして彼は、無防備な額に口づける。
人とは異なる平たい額。肌を覆う乾いて硬い鱗。だが、その異形を不快に思うことはない。
むしろ、驚き狼狽えるファーナを見られるし楽しくて仕方ないのだ。が、彼女自身は自分の顔に相当の引け目を感じているから、むやみやたらに触れるのは可哀想だと思って我慢しているのだ。これでも。
(だから、口づけても不自然じゃないだろう機会は見逃さないんだけどね)
案の定、狼狽えて視線を彷徨わせるファーナを見下ろしながら、エドガルトはにんまりと笑う。
そんなふたりを遠くから見守っている――いや、遠くに離れるわけにもいかないため、見たくなくても見えてしまうし聞こえてしまう――護衛たちはもくもくと剣の手入れやら、馬の世話にいそしんでいる。ここ数日でふたりの仲睦まじさにもすっかり慣れてしまった。
初めの頃は無表情を装っていたものの、心の中では当てられっぱなしだったのだが、今では『はいはいはい仲良きことはよきことですねそうですね』な心境だ。
護衛隊長のシュタールも他の四人同様、そんな感じだ。
よくまぁあんなにベタベタとくっついて飽きないものだと思うが、思った次の瞬間には、それも仕方ないかと思い直す。
巧妙に隠してはいるが、エドガルトは実は気難しくて人嫌いだ。長年護衛を務めていれば嫌でも気がつく。
そんなエドガルトが手放しで懐いているのはほんの数人しかいない。いや、ファーナしかいないと言っても過言ではない。
心を鎧うように軽薄な言葉ばかりを吐くエドガルトだが、ファーナとの婚姻は心の底から楽しみにしているのが見て取れた。
生まれ持った才能におごることなく、誰にも知られぬようにこっそり猛勉強をしていたのも知っているし、それらが全て彼の地位や立場を盤石にするため、ひいては妻になるファーナを苦労させたくないからだということも、シュタールは察していた。
そうして環境を整え、ようやく愛しいファーナを迎えに来たというのに……。
今度は愛しい女性に逃げられたのだ。
楽しげに捜索に出かけたわけだが、普通に考えれば傷つかなかったわけはない。
少なくともシュタール自身がエドガルトと同じ目に遭ったら、落ち込んで国へ戻るか、怒りに任せて相手の女性を追うだろう。
嬉々として後を追い、捕まえた後も変わらない愛を注ぐエドガルトには驚く。
理由が理由だけに逃げ出したファーナの気持ちもわからなくはないが。
そういうわけだから、シュタールとしては、主であるエドガルトがファーナにべったりになるのも仕方ないと思うのだ。
鬱蒼とした森の向こう、城壁に囲まれた優美な城が見える。
白亜の城の四隅にはそれぞれ高い塔がそびえ立ち、急傾斜の屋根は陽光を反射してのどかにきらめく。
青空と峻険な山脈を背景にして、眠るように佇むその城が一行の目指す忘却城だ。
確かにファーナが美しいと形容するだけのことはある。エドガルトは心の中で頷きながら目を眇めた。
「あれがフェアゲッセン城か」
当時の技術の粋を集めて建築されたのだろう。遠くからでもその偉容は一目でわかる。数百年の時を経てもなお美しく、古びるどころか経年が良い意味での落ち着きを与えている。
人前に出せない王族を幽閉するために使われた城だというが、築城を命じた国王にはそこに住まう者に対する愛情があったのだろう。エドガルトにそう思わせるに足る姿だった。
「綺麗な城でしょう?」
「そうだね。まるで消えることのない雪のようだ」
どこか得意げなファーナの問いに、エドガルトは大きく頷いた。
城の向こうに聳える山の峰は雪に覆われている。標高が高すぎて一年中とけることのない雪は、誰にも汚されてはいないだろう。その無垢な根雪が、地上にぽっと現れたようにも見えるのだ。
城への道は、森を突っ切るようにして一直線に伸びている。一応、舗装はされているものの、古びた石畳の間からは雑草がひょこり、ひょこりと顔を出している。
城で働く使用人の中には近隣の町や村から通う者もいるし、食料や生活必需品を納入する農民や商人の出入りもある。だから日々の往来がないわけではないが、それでも雑草がはびこる程度には静かなのだ。
「いいところだ」
ため息と混じり合ったエドガルトの言葉には、風景の美しさ以外の意味も含まれている。
城は背後の護りを切り立った山脈に任せ、三方を森に守らせている。これだけ深い森なら攻めるほうも苦労するだろう。しかも森の奥には切り立った崖があり、城に入るにはその崖にかけられた橋を渡らねばならないのだという。まさに天然の要塞ともいえる。
フェアゲッセン城のような――大自然の中に建ち、しかも人々から忘れられたような――建物は、魔術的な観点から言っても絶好の隠れ家となる。
人目を避け、自然に隠れ、身を潜める。人に混じれない魔法使いや、魔法を使いよからぬことを企む者、そして魔物の温床にもなりやすい。
ファーナに呪いをかけた『古の王妃』が潜んでいたとしても何ら不思議はない。
邪悪な気配は感じないが、うっすらと魔力のような気配は感じる。
古い建物には時として魔力に似た気配を持つものだし、王城のように強固な結界が張ってあり、古の王妃の気配が外に漏れ出ていないだけかもしれない。
いずれにしろ、推理するには少々遠すぎる。もっと近づいてから観察するしかなさそうだ。ここまでくればあと半刻ほどで城に着くだろう。
だが、そんな彼の心中を知る由もないファーナは「ええ」と短く答え、ふたりはそのまま黙り込んだ。
同行の皆も、思い思いの場所に腰を下ろして、目の前の光景をのんびりと眺めている。
誰一人なにもしゃべらず、彼らの間をただ微風が過ぎて、木々の葉や草を小さくざわめかせていくばかりだ。
昼食をとるため休憩にしたのだが、腹がくちれば心地よい疲労感と軽い眠気が襲ってくる。
本格的に気怠くなる前に出立したほうがいいのではないか。ファーナはそう思ったが、隣に座るエドガルトは動くそぶりもなく、遠い目をしてどこかを眺めている。
彼の端正な横顔は穏やかだ。それを間近で見上げられる。こんな日が再び来るとは思っていなかった。
硬い鱗に覆われた顔を見られればきっと嫌悪の滲んだ目で見られ、嫌われ、遠ざけられると思っていたのだ。そのくらいならさっさと逃げ出してしまおう。そう思いつめたのはつい数日前のことだというのに、遠い昔のことだと思えてしまう。
あの時、逃亡先と決めたフェアゲッセン城は目の前で、しかも隣には逃げようと思った原因であるエドガルトがいる。
一緒にいられるのは嬉しいのだけれど、どことなく複雑な気分だ。
「どうしたの、ファーナ? 僕の顔になにかついてる?」
「あっ、いえ……」
慌てて首を横に振れば、『じゃあどうしたの?』と言いたげにエドガルトは首をかしげて、彼女をじっと見つめる。
「そろそろ、出立の準備をしなくてもよいのかと心配になりまして。ここから先の森は暗いので、少しでも日が傾いてしまうとちょっと……」
日が傾けば松明が必要になる。
闇や夜は魔物の領分だ。いくらエドガルトに強力な結界を張ってもらっているとは言え、一抹の不安はある。
ファーナは無意識に、胸に下げたアメジストのペンダントに触れた。指先で石のふちをなぞれば、石はかすかに揺れて陽光を弾く。
その仕草で彼女の言わなかった言葉を察したエドガルトは、ふっと目を細め、おもむろにファーナの肩を抱き寄せた。
「ああ、うん。心配させてごめんね。でも、もうちょっと待ってくれるかな? ギィとニャーにちょっとお使いに出て貰ってるんだ。あの子達が帰ってきた出発しよう」
「あっ、そういえばふたりの姿が見えませんね」
昼食を終えるまでは騒がしく、もとい、楽しそうにしていたのは覚えている。記憶を辿っても二匹を見たのはそれが最後だ。
エドガルトのお使いでどこかへ出かけているなら納得がいく。
「でもあの子達、このあたりの地理に詳しくはないですよね? 途中、迷子にでもなったら可哀想です」
「大丈夫。彼らは僕の気配を辿って戻って来る。使い魔と使役主の絆って言うのは存外強いものなんだ。だからファーナは心配しなくていいんだよ」
「そ、それならよいのですが」
と思った途端、今度は別の心配が頭をよぎる。
「まだ浮かない顔をしてるね。心配事、まだある?」
「もし、強い魔物に出くわしてしまって、大怪我でもしたら大変です」
ファーナは大真面目で告げたというに、エドガルトは噴き出し、あはは、と大きな笑い声を立てた。
「大丈夫だよ! あの子達は強いから。そこら辺の魔物では勝てないよ」
「そ、そうなのですか? あんな可愛いのにそんなに強いだなんて」
心配性なうえに嫉妬深いエドガルトは、ファーナのあずかり知らぬところで、使い魔に周辺の魔物の退治を命じている。おかげで二匹は倒した魔物の力を吸収してどんどん強くなっているのだ。
「人も魔物も見かけじゃないってことだよ。――でも、心配してくれてありがとう。あの子達に代わってお礼を言うよ」
そして彼は、無防備な額に口づける。
人とは異なる平たい額。肌を覆う乾いて硬い鱗。だが、その異形を不快に思うことはない。
むしろ、驚き狼狽えるファーナを見られるし楽しくて仕方ないのだ。が、彼女自身は自分の顔に相当の引け目を感じているから、むやみやたらに触れるのは可哀想だと思って我慢しているのだ。これでも。
(だから、口づけても不自然じゃないだろう機会は見逃さないんだけどね)
案の定、狼狽えて視線を彷徨わせるファーナを見下ろしながら、エドガルトはにんまりと笑う。
そんなふたりを遠くから見守っている――いや、遠くに離れるわけにもいかないため、見たくなくても見えてしまうし聞こえてしまう――護衛たちはもくもくと剣の手入れやら、馬の世話にいそしんでいる。ここ数日でふたりの仲睦まじさにもすっかり慣れてしまった。
初めの頃は無表情を装っていたものの、心の中では当てられっぱなしだったのだが、今では『はいはいはい仲良きことはよきことですねそうですね』な心境だ。
護衛隊長のシュタールも他の四人同様、そんな感じだ。
よくまぁあんなにベタベタとくっついて飽きないものだと思うが、思った次の瞬間には、それも仕方ないかと思い直す。
巧妙に隠してはいるが、エドガルトは実は気難しくて人嫌いだ。長年護衛を務めていれば嫌でも気がつく。
そんなエドガルトが手放しで懐いているのはほんの数人しかいない。いや、ファーナしかいないと言っても過言ではない。
心を鎧うように軽薄な言葉ばかりを吐くエドガルトだが、ファーナとの婚姻は心の底から楽しみにしているのが見て取れた。
生まれ持った才能におごることなく、誰にも知られぬようにこっそり猛勉強をしていたのも知っているし、それらが全て彼の地位や立場を盤石にするため、ひいては妻になるファーナを苦労させたくないからだということも、シュタールは察していた。
そうして環境を整え、ようやく愛しいファーナを迎えに来たというのに……。
今度は愛しい女性に逃げられたのだ。
楽しげに捜索に出かけたわけだが、普通に考えれば傷つかなかったわけはない。
少なくともシュタール自身がエドガルトと同じ目に遭ったら、落ち込んで国へ戻るか、怒りに任せて相手の女性を追うだろう。
嬉々として後を追い、捕まえた後も変わらない愛を注ぐエドガルトには驚く。
理由が理由だけに逃げ出したファーナの気持ちもわからなくはないが。
そういうわけだから、シュタールとしては、主であるエドガルトがファーナにべったりになるのも仕方ないと思うのだ。
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