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1.日暮れの出会い
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ひぐらしが鳴いている。
蝉時雨と言うには激しすぎる声に、うわん、と目まいを起こして皆川鈴花は、足を止めた。
「ここ……いったいどこなの?」
独り言を呟きながら彼女は額の汗を拭った。
軽い散歩のつもりでハイキングコースに足を踏み入れたのは、まだ朝の涼しさが残っている時間だった。
子どもの頃から歩きなれた道で、一キロほど先にある丸太橋で折り返せばちょうど良い運動になる。
今日もそのはずだった。
清涼な音を立てる小川にかかる橋を渡り、すこし先の道端に咲いていた花を愛で、いざ帰路につこうと振り向いたその瞬間までは。
踵を返したその先には、あるはずの小川と橋がなかった。
確かに今日は少し――といっても橋から三十メートルくらい――離れた。しかし、一直線の道だ。いくらなんでも橋と小川が綺麗さっぱり視界から消えてしまうなんて、ありえない。
橋はこの位置からだと死角に入るのかも知れない……と、焦りを理性で押し殺して歩き出したものの、どこまで歩いても橋は見当たらず、いつしか道すらなくなっていた。
そんなに長い時間が経過した体感はないが、日は明らかに西に傾いている。
――遭難?
嫌な単語が頭をよぎった。
ポケットから取り出したスマートフォンは圏外を示していて、助けを呼ぶこともできない。
向きを変えたり、スマートフォンを高く掲げてみても表示は変わらない。
彼女は諦めてポケットにしまうと、とぼとぼと歩き出した。
行く当てはないが、だからといって留まっていても事態は好転しない。
「どうしよう……」
焦りは簡単に不安に変わる。
鈴花がいなくなっても気づく者はいない。
心配してくれるような家族はなく、そのうえ引っ越して来たばかりで近所付き合いもまだだ。
「こんなことなら裏の山田さんやお隣のおばあさんには引っ越しの挨拶に行っておくべきだったわ」
と後悔しても後の祭りだ。
両親が亡くなってからずっと空き家だった実家に戻ってきただけなので、ご近所は昔なじみが多いのだ。引っ越しの挨拶も初めての土地へ引っ越すよりもずっと気楽なはずだ。
逆にその気楽さが気の緩みに繋がったわけで、『手土産を買い忘れたから挨拶に行くのは明日にしよう』なんて思うんじゃなかった。
昨日の自分が恨めしい。
「今日はもう日暮れだし、明日の朝イチで買い出しに出て、戻ってきたらすぐ挨拶に行こう」
それにはまず今日中に下山しなければ。
疲れ切った彼女の足取りは重く、歩調も乱れている。
下草を踏みしだく不規則な足音は、ひぐらしの鳴き声がかき消してしまう。
足が上手く上がらなくなっていた。
気をつけないと転んでしまう――と思った矢先、木の根に躓いて転んでしまう。
とっさに手をついて身体を支えたので、地面で顔を打つのは避けられたが、両膝と掌が痛い。
獣道でもなく下草に覆われた腐葉土は柔らかく、痛いとは言ってもおそらく擦り傷程度しかできていないだろうが、心がポッキリ折れた。
「あいたたた……もう、やだー!」
こらえていた弱音が口を突く。
立ち上げる気力もなくぺたりと座り込んで、深々とため息をつく。
泣きたい。
と思うそばから涙がじんわりと滲んだ。
「君、こんなところに座り込んで、どうしたんだい? 大丈夫? どこかに怪我でもしているのかな?」
背後から不意に声がした。
心地好いほど柔らかい男声。通りがいい声だからだろうか耳のそばで聞こえた気さえする。
「ひっ!」
声に安堵するよりも先に、恐怖に似た感情が湧き起こり、鈴花は小さな悲鳴を上げた。
人がいるはずもない山奥で、人の声がするはずがない。しかも声をかけられるまで全く気配を感じなかった。もしかして人ではないのかも……なんてことまで頭をよぎったのは、刻一刻と日暮れに近づいていく心細さからだろうか。
「君?」
カサリと下草を踏む音が聞こえ、白い足袋と銀鼠色の着物の裾が鈴花の視界に入った。
と思ったとたん、件の人物は着物が汚れるのも厭わずに、彼女の傍らに膝をついた。
こんな山奥で着物? と不審に思いはしたが、人と出会えたことに安堵も覚えた。
「――あ……、だ、大丈夫です」
言いながらのろのろと顔を上げた。
「私、道に迷ってしまっ……」
声が途切れたのは、声をかけてきた人物の、常人離れした美貌を目の当たりにしたからだ。
失礼だと心の片隅で思いつつも見蕩れてしまう。
雪のように白い肌、優美な輪郭を描く頬、切れ長の涼しげな目、赤く艶めかしい唇――一つ一つの造作は繊細であるのに、雄々しさを感じる面立ちをしている。
藍鼠色の着物がよく似合う。
「そう。道に迷ったの」
男性は目を細めて微笑んだ。そうすると人懐こさが滲む。
「この辺りはハイキングコースからずいぶん離れているから、迷い込む人は滅多にいないんだけど、珍しいな。よっぽど方向音痴……いや、失礼。君を非難するつもりはないんだ」
身を強ばらせている鈴花の緊張をほぐそうというのか、男性の口から軽口が飛び出した。
それが功を奏したのか、鈴花の肩から力が抜けて、口元がわずかに綻んだ。
「いえいえ。本当に私、方向音痴みたいです。子どもの頃は何度も歩いた道なのに、久しぶりに通ったら見事に迷ってしまいましたので」
「なんにせよ、君は運が良いよ。僕と出会ったのだから。すぐそこの一軒家で暮らしているんだ」
「え?」
鈴花はこんな山奥に家があるということに驚いて、小さく声を上げた。
それとも知らないうちに人里近くまで歩いて来ていたのだろうか?
「今から山を下りるにしても日暮れには到底間に合わない」
男性の言葉に、鈴花は自分がいる場所がだいぶ山奥なのだと知った。
同時に、今夜一晩をどう過ごしたらいいのかと途方に暮れる。
「間に合わないですか……」
男性の言葉をただ鸚鵡返しに呟くしかできない。
「もし、君さえ良かったら、僕の家へおいで。大したもてなしもできないが、一夜の宿ぐらいはお貸ししよう」
渡りに船の申し出に、鈴花はパッと顔を輝かせてから、狼狽えたように視線を泳がせた。
「ご迷惑ではありませんか、いきなり……」
「迷惑? そんなこと気にしなくて良いよ」
「で、でも、私みたいな得体の知れない人間を家にあげたら、ご家族の皆さんもご不快な思いをされるのではないでしょうか」
「君のことを得体の知れないあやしい人間だなんて思っちゃいないから大丈夫。それに僕は一人暮らしなんだ。――ごめんね。妙齢の女性を一人暮らしの男の家に招待するなんて、失礼かとは思ったんだけれど、ここで夜を明かすよりはマシだと思うんだ」
男性は秀麗な顔を困ったように曇らせて、小首を傾げる。
「そ、そんな! あ、あの、もし本当にご迷惑でなかったら、お言葉に甘えてもよろしいでしょうか?」
「もちろんだよ」
にっこりと笑みの形を作る唇の妖艶さに、鈴花の胸がどきりと跳ねた。
こんな綺麗な男性なら、黙っていても引く手あまただろう。わざわざ色気も素っ気もなく、顔だって十人並みの自分を襲ったりしない。
――変に意識したらそれこそ失礼だわ。
「ご親切にありがとうございます。一晩ご厄介になります」
「あははっ、親切、か。残念ながら親切心から声をかけたわけではないんだよ。こんな山奥で暮らしてると日々何の変化もなくて退屈なんだ。そんな無聊を一晩だけでもいいから、君に慰めて貰おうという魂胆だよ。――そういうわけだから遠慮はしないで」
男性はスッと立ち上がると、さりげない仕草で鈴花に手を差し伸べた。
「立ち上がれるかい? さぁ、この手に掴まって」
「でも……」
「疲れた時に一度座ってしまうと立つのは億劫だろう? 遠慮なくどうぞ」
鈴花が躊躇うと、彼はやや眼光を強めて言葉を重ねる。
自分で立ち上がれると断るつもりが、気づけば魅入られたように彼の手を取っていた。
「自己紹介がまだだったね。僕は夏々地涼。どうぞよろしく」
「皆川鈴花です。お世話になります」
深々と頭を下げると、夏々地と名乗った彼は満足そうに頷いた。
「ようこそ、鈴花さん。歓迎するよ」
夏々地は心底嬉しそうに笑い、それを間近で見た鈴花は顔を赤くした。
「……ひぐらし達も君を歓迎してるみたいだね。こんなに啼いて」
二人の姿は遠ざかり、後にはただ蟬時雨ばかりが残された。
その蟬時雨もじきに訪れた日没に消えていくだろう。
蝉時雨と言うには激しすぎる声に、うわん、と目まいを起こして皆川鈴花は、足を止めた。
「ここ……いったいどこなの?」
独り言を呟きながら彼女は額の汗を拭った。
軽い散歩のつもりでハイキングコースに足を踏み入れたのは、まだ朝の涼しさが残っている時間だった。
子どもの頃から歩きなれた道で、一キロほど先にある丸太橋で折り返せばちょうど良い運動になる。
今日もそのはずだった。
清涼な音を立てる小川にかかる橋を渡り、すこし先の道端に咲いていた花を愛で、いざ帰路につこうと振り向いたその瞬間までは。
踵を返したその先には、あるはずの小川と橋がなかった。
確かに今日は少し――といっても橋から三十メートルくらい――離れた。しかし、一直線の道だ。いくらなんでも橋と小川が綺麗さっぱり視界から消えてしまうなんて、ありえない。
橋はこの位置からだと死角に入るのかも知れない……と、焦りを理性で押し殺して歩き出したものの、どこまで歩いても橋は見当たらず、いつしか道すらなくなっていた。
そんなに長い時間が経過した体感はないが、日は明らかに西に傾いている。
――遭難?
嫌な単語が頭をよぎった。
ポケットから取り出したスマートフォンは圏外を示していて、助けを呼ぶこともできない。
向きを変えたり、スマートフォンを高く掲げてみても表示は変わらない。
彼女は諦めてポケットにしまうと、とぼとぼと歩き出した。
行く当てはないが、だからといって留まっていても事態は好転しない。
「どうしよう……」
焦りは簡単に不安に変わる。
鈴花がいなくなっても気づく者はいない。
心配してくれるような家族はなく、そのうえ引っ越して来たばかりで近所付き合いもまだだ。
「こんなことなら裏の山田さんやお隣のおばあさんには引っ越しの挨拶に行っておくべきだったわ」
と後悔しても後の祭りだ。
両親が亡くなってからずっと空き家だった実家に戻ってきただけなので、ご近所は昔なじみが多いのだ。引っ越しの挨拶も初めての土地へ引っ越すよりもずっと気楽なはずだ。
逆にその気楽さが気の緩みに繋がったわけで、『手土産を買い忘れたから挨拶に行くのは明日にしよう』なんて思うんじゃなかった。
昨日の自分が恨めしい。
「今日はもう日暮れだし、明日の朝イチで買い出しに出て、戻ってきたらすぐ挨拶に行こう」
それにはまず今日中に下山しなければ。
疲れ切った彼女の足取りは重く、歩調も乱れている。
下草を踏みしだく不規則な足音は、ひぐらしの鳴き声がかき消してしまう。
足が上手く上がらなくなっていた。
気をつけないと転んでしまう――と思った矢先、木の根に躓いて転んでしまう。
とっさに手をついて身体を支えたので、地面で顔を打つのは避けられたが、両膝と掌が痛い。
獣道でもなく下草に覆われた腐葉土は柔らかく、痛いとは言ってもおそらく擦り傷程度しかできていないだろうが、心がポッキリ折れた。
「あいたたた……もう、やだー!」
こらえていた弱音が口を突く。
立ち上げる気力もなくぺたりと座り込んで、深々とため息をつく。
泣きたい。
と思うそばから涙がじんわりと滲んだ。
「君、こんなところに座り込んで、どうしたんだい? 大丈夫? どこかに怪我でもしているのかな?」
背後から不意に声がした。
心地好いほど柔らかい男声。通りがいい声だからだろうか耳のそばで聞こえた気さえする。
「ひっ!」
声に安堵するよりも先に、恐怖に似た感情が湧き起こり、鈴花は小さな悲鳴を上げた。
人がいるはずもない山奥で、人の声がするはずがない。しかも声をかけられるまで全く気配を感じなかった。もしかして人ではないのかも……なんてことまで頭をよぎったのは、刻一刻と日暮れに近づいていく心細さからだろうか。
「君?」
カサリと下草を踏む音が聞こえ、白い足袋と銀鼠色の着物の裾が鈴花の視界に入った。
と思ったとたん、件の人物は着物が汚れるのも厭わずに、彼女の傍らに膝をついた。
こんな山奥で着物? と不審に思いはしたが、人と出会えたことに安堵も覚えた。
「――あ……、だ、大丈夫です」
言いながらのろのろと顔を上げた。
「私、道に迷ってしまっ……」
声が途切れたのは、声をかけてきた人物の、常人離れした美貌を目の当たりにしたからだ。
失礼だと心の片隅で思いつつも見蕩れてしまう。
雪のように白い肌、優美な輪郭を描く頬、切れ長の涼しげな目、赤く艶めかしい唇――一つ一つの造作は繊細であるのに、雄々しさを感じる面立ちをしている。
藍鼠色の着物がよく似合う。
「そう。道に迷ったの」
男性は目を細めて微笑んだ。そうすると人懐こさが滲む。
「この辺りはハイキングコースからずいぶん離れているから、迷い込む人は滅多にいないんだけど、珍しいな。よっぽど方向音痴……いや、失礼。君を非難するつもりはないんだ」
身を強ばらせている鈴花の緊張をほぐそうというのか、男性の口から軽口が飛び出した。
それが功を奏したのか、鈴花の肩から力が抜けて、口元がわずかに綻んだ。
「いえいえ。本当に私、方向音痴みたいです。子どもの頃は何度も歩いた道なのに、久しぶりに通ったら見事に迷ってしまいましたので」
「なんにせよ、君は運が良いよ。僕と出会ったのだから。すぐそこの一軒家で暮らしているんだ」
「え?」
鈴花はこんな山奥に家があるということに驚いて、小さく声を上げた。
それとも知らないうちに人里近くまで歩いて来ていたのだろうか?
「今から山を下りるにしても日暮れには到底間に合わない」
男性の言葉に、鈴花は自分がいる場所がだいぶ山奥なのだと知った。
同時に、今夜一晩をどう過ごしたらいいのかと途方に暮れる。
「間に合わないですか……」
男性の言葉をただ鸚鵡返しに呟くしかできない。
「もし、君さえ良かったら、僕の家へおいで。大したもてなしもできないが、一夜の宿ぐらいはお貸ししよう」
渡りに船の申し出に、鈴花はパッと顔を輝かせてから、狼狽えたように視線を泳がせた。
「ご迷惑ではありませんか、いきなり……」
「迷惑? そんなこと気にしなくて良いよ」
「で、でも、私みたいな得体の知れない人間を家にあげたら、ご家族の皆さんもご不快な思いをされるのではないでしょうか」
「君のことを得体の知れないあやしい人間だなんて思っちゃいないから大丈夫。それに僕は一人暮らしなんだ。――ごめんね。妙齢の女性を一人暮らしの男の家に招待するなんて、失礼かとは思ったんだけれど、ここで夜を明かすよりはマシだと思うんだ」
男性は秀麗な顔を困ったように曇らせて、小首を傾げる。
「そ、そんな! あ、あの、もし本当にご迷惑でなかったら、お言葉に甘えてもよろしいでしょうか?」
「もちろんだよ」
にっこりと笑みの形を作る唇の妖艶さに、鈴花の胸がどきりと跳ねた。
こんな綺麗な男性なら、黙っていても引く手あまただろう。わざわざ色気も素っ気もなく、顔だって十人並みの自分を襲ったりしない。
――変に意識したらそれこそ失礼だわ。
「ご親切にありがとうございます。一晩ご厄介になります」
「あははっ、親切、か。残念ながら親切心から声をかけたわけではないんだよ。こんな山奥で暮らしてると日々何の変化もなくて退屈なんだ。そんな無聊を一晩だけでもいいから、君に慰めて貰おうという魂胆だよ。――そういうわけだから遠慮はしないで」
男性はスッと立ち上がると、さりげない仕草で鈴花に手を差し伸べた。
「立ち上がれるかい? さぁ、この手に掴まって」
「でも……」
「疲れた時に一度座ってしまうと立つのは億劫だろう? 遠慮なくどうぞ」
鈴花が躊躇うと、彼はやや眼光を強めて言葉を重ねる。
自分で立ち上がれると断るつもりが、気づけば魅入られたように彼の手を取っていた。
「自己紹介がまだだったね。僕は夏々地涼。どうぞよろしく」
「皆川鈴花です。お世話になります」
深々と頭を下げると、夏々地と名乗った彼は満足そうに頷いた。
「ようこそ、鈴花さん。歓迎するよ」
夏々地は心底嬉しそうに笑い、それを間近で見た鈴花は顔を赤くした。
「……ひぐらし達も君を歓迎してるみたいだね。こんなに啼いて」
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