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第五章 ~王子のクラフツ留学~
〈326〉月夜のパターゴルフ
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ヴァルカーン王国立魔工学園の二年生になってすぐのこと。
その日は、冒険者ギルドの宿舎で一緒に寝ようとメープルをベッドに入れたんだけど。
『めーぷる、ねない!』
「あれ?どうして?」
“きょう、あなざーわーるどで、ずっとねむってたのよ”
緑色ちゃんが教えてくれる。
「どうしてまた」
『かいしぇーのおうちでねてた!』
「あーあそこは落ち着くもんな」
ウリサとクリスは明日も朝から授業だから寝なきゃだめだしさ。
ウリサはもう眠ってるけど、クリスは二年生一発目の工芸科の課題の続きをまだ頑張ってるからなぁ。
ちなみに総合工学の俺とは被ってないものだし。
「んじゃ、ちょっと散歩に行くか!」
『わーい、おしゃんぽ』
「しー、夜だから。
静かにしなくちゃだめだぞ」
ちっちゃい唇を人差し指でつつく。
『ん』
もう春だし、地底都市だとしても、夜の北国ではある。
メープルに厚めのボトム、靴下、上着を着せて長靴も履かせる。
コンコンコン
「クリス、ちょっとメープルを散歩に連れて行ってくる」
「今からですか?」
「うん。昼寝しすぎて寝ないんだって」
「なるほど、ちょっと散歩されたら寝られますかね」
「俺もそう思ってさ」
「気を付けてくださいね」
「いってきます」
『いってきましゅ』
“……って転移で行くところなんですね”
“せいれいやしきではないらしい”
“メープル様はアナザーワールドに一日いらっしゃったんですもんね”
王宮のある最下層の、大型試作室出入り口前にやってきた。
ちなみにその出入口が有るはずの所は大きな岩山に何か魔法陣が描かれている。
こちらからは、これを起動させればあの扉が出現するのだろう。
目の前には魔道車練習場兼パターゴルフ場。
ここなら、多少はしゃいでも王宮まで二キロもあるし大丈夫だろう。
「黄色ちゃん、一応王様に言っといて」
“わかったー、おうじたちがここでちょこっとあそんでますって”
「うん」
元ダンジョンだったこの空間の天体はフェイクだけど、上がってきてすぐの低い場所にある月が大きくて金色でめちゃくちゃ綺麗。
「あのお月様、ウサギがいる」
しかも模様がなんだか、地球に似てる。
『うしゃぎ?らび?』
「ラビィも兎さんだけどね」
シューン
『しゅばいちゅ、あれ!』
メープルの指さす先では真っ赤な車体の三輪魔導車が走ってる。
「教授かな……いや違った」
鍵もないのに勝手にここに持ってきて走らせているお方がいる。
月明かりがあるとはいえ、夜中に相変わらず真っ黒の装束と黒い髪。
だからこそ色の白いお顔や手が良く目立つんだけど。
シュー……
魔道車が俺たちの前で止まった。
「タナプス伯父さん」
『駿介、良く再現できたねぇ』
「ええ、仲間のおかげですけどね。
で、どうですか?運転のしやすさとか、このコースの感じとか」
丁度よかった、今は期限切れらしいけど、日本の教習所に行って運転免許を取った人の意見は大事。
あ、人じゃなかった、月と魂の神様。
『なかなか良いよ。静かだし、開放的だから良い風を感じるよ』
「はは、そこはガラス窓で防いでいかなくちゃいけないですけどね」
ヴァルカーンみたいに四季があっても極端な気候の変化が無ければこれでも良いけど。
『うん。こっちでもドライブが楽しめるなんて。駿介のおかげだな』
「ですけど、まだガラス板が高級で、俺の屋敷も、大きな一枚ガラスがないから。そういうところはステンドグラスの窓なんですよね」
『そうだね。
だけど、こっちは地球より意外と樹脂の技術が進んでるでしょ?』
「確かに」
『水族館とかの水槽ってアクリルなんだよね確か』
ポン!
「そうですよね!アクリルの窓ガラス!」
『ただ、アクリルで自動車のフロントガラスをつくるとワイパーとか砂嵐で傷ついて視界が悪くなるから、あっちでは使えなくて』
「屋外には向いてないんですね」
『地球ではね』
「地球では……」
『しゅばいちゅー』
声がして振り返れば、登り切った坂の上にメープルが立っていた。
坂道も魔道車の試走のために作っている。二十度の角度で十五メートルぐらい。
その両側には綺麗に芝生が生えそろっている。その先がパターゴルフのそれぞれのコースの一つになってる。
この坂の上が一番高いので、他のコースも見える。
月明かりだけと思ったけど、白色君が自主的に俺達のために薄っすら照らしてくれているんだ。
道路の方は、石畳を整えるのが面倒なので、シュバイツマーブルを並べて舗装してる。
緑色っぽい道が月明かりに照らされて光ってる。
オズの魔法使いのエメラルドの道ってどこに続いているんだっけ。
俺が作る道もこういう色になるんだよね。
人々を幸せに導く道になればいいなぁ。
このコースはまだ道だけだ。今後横断歩道をつくったり、教習所にはないけど、トンネルとか、立体的な橋もあると楽しいよな。
ミニカーとか電車の玩具とかにそう言うのあったっけ。
砂漠から持ってきた金色に光るバンカーに、スライムゼリーを敷き詰めた浅い池。
コースの縁を彩る樹々はアナザーワールドから根っこごと持ってきて移植した。
昼間見た時もかなり綺麗だった。
そこではもともと居た子だろうか、フクロウが鳴いている。昼は小鳥達が歌ってたけどね。
「よし、ここで遊ぼうかメープル!」
『あしょぶ!』
樹脂で作った、カラフルな子供用ゴルフセットを出す。
だけど、日本の子供向けのゴルフセットは、危なくないのが良いんだろうけど、ボール迄ピンポン玉みたいに軽すぎて、面白くないんだよね。ここはボールだけでも本物のを。
「このボールを、このパターを使ってあっちの旗が刺さってる穴まで転がして入れるんだよ」
ってボールを置くと。
『あい!いきまーしゅ』
コン……トコトコトコ コン……トコトコトコ コン……トコトコトコ
白い球と、小さい子がジグザグに旗に向かって走っていく。
コーン カラカラ
『入ったー!』
『すごいぞー』
パチパチパチ
タナプス伯父さんはつきあいよく拍手してくれるけど、それはパターゴルフじゃなくてホッケーって言うんだよ、メープル。
『懐かしいな、私もやりたくなってきた』
「やります?大人用のパターありますよ」
『私の愛用のセットもあるよ……ほら』
立派なゴルフバッグを出してきた。
『一度、三人の妹たちと千葉のコースを回ったことがあるんだ。丁度四人だしね。
駿介もいたんじゃないかな?まだオムツ履いたね』
まじですか。
『丁度ブランネージュが国に帰ったところで、風のがちょっと寂しそうだったからね』
俺、あっちでタナプス伯父さんにも会ってたんだ。
そんな神様が立ち上がって、幼い子供に近寄っていく。
『メープル。こうやって持つんだよ』
経験者が指導してくれる。
『こ?』
『そうそう。ボールを当ててみよう』
『こ?』
コン……
軽快な音をたててボールが真っすぐ転がっていく。
指導って大事なんだな。
そのあとタナプス伯父さんとメープルで、九ホール、つまりハーフサイズのコースを回って、楽しんだ。
『ふー楽しかった。またゴルフしたいねぇ』
「今も地球に行かれてるのですか?」
『いや、今はいけないよ』
「今は?」
『駿介のおかげで悪魔たちがいなくなったとはいえ、とくにこの大陸の魔素が少ないからね。一瞬なら行けても滞在することは無理なんだよ』
「じゃあ、母さんは?」
『風の場合は、またちがう。ここでも風が吹いているでしょ?』
「はい」
『だから、あっちにも居れるんだよ』
「そうなんですね」
納得できるような出来ないような。
母さんがあっちで生き生きと仕事をしてるならいいけどさ。
俺の背中では、たっぷり遊んで満足したメープルが眠っている。
『さ、もう帰りなさい。おやすみ』
頭をポンポンとされてから撫でられる。
「はい、おやすみなさい」
扉を出して直接冒険者ギルドに帰る。
部屋の玄関でスニーカーを脱いで通路を歩いていく。
どうやらクリスはもう眠ったようだ。
メープルの靴はベッドに寝かせてから脱がす。
空間魔法を使って脱がせば、起きないからね。
『しゅばいちゅ』
起きちゃった?
「メープル、帰ってきたよ」
『ぱたーおもしろかった!』
「そうだね」
『またあしたもやりたい!』
「うーん明日はちょっと。だけどアナザーワールドにもコースをつくろうかな」
『うん!ちりゅうたちと、ぱたーすりゅの』
「そりゃ面白そうだ。ちょっと考えとくよ」
『うん!』
「おやすみ」
小さな額にキスをして上掛けを整えてやる。
ポンポンポン
寝息を確認してから、明日の準備を確認してメープルの眠る布団に潜る。
その日は、冒険者ギルドの宿舎で一緒に寝ようとメープルをベッドに入れたんだけど。
『めーぷる、ねない!』
「あれ?どうして?」
“きょう、あなざーわーるどで、ずっとねむってたのよ”
緑色ちゃんが教えてくれる。
「どうしてまた」
『かいしぇーのおうちでねてた!』
「あーあそこは落ち着くもんな」
ウリサとクリスは明日も朝から授業だから寝なきゃだめだしさ。
ウリサはもう眠ってるけど、クリスは二年生一発目の工芸科の課題の続きをまだ頑張ってるからなぁ。
ちなみに総合工学の俺とは被ってないものだし。
「んじゃ、ちょっと散歩に行くか!」
『わーい、おしゃんぽ』
「しー、夜だから。
静かにしなくちゃだめだぞ」
ちっちゃい唇を人差し指でつつく。
『ん』
もう春だし、地底都市だとしても、夜の北国ではある。
メープルに厚めのボトム、靴下、上着を着せて長靴も履かせる。
コンコンコン
「クリス、ちょっとメープルを散歩に連れて行ってくる」
「今からですか?」
「うん。昼寝しすぎて寝ないんだって」
「なるほど、ちょっと散歩されたら寝られますかね」
「俺もそう思ってさ」
「気を付けてくださいね」
「いってきます」
『いってきましゅ』
“……って転移で行くところなんですね”
“せいれいやしきではないらしい”
“メープル様はアナザーワールドに一日いらっしゃったんですもんね”
王宮のある最下層の、大型試作室出入り口前にやってきた。
ちなみにその出入口が有るはずの所は大きな岩山に何か魔法陣が描かれている。
こちらからは、これを起動させればあの扉が出現するのだろう。
目の前には魔道車練習場兼パターゴルフ場。
ここなら、多少はしゃいでも王宮まで二キロもあるし大丈夫だろう。
「黄色ちゃん、一応王様に言っといて」
“わかったー、おうじたちがここでちょこっとあそんでますって”
「うん」
元ダンジョンだったこの空間の天体はフェイクだけど、上がってきてすぐの低い場所にある月が大きくて金色でめちゃくちゃ綺麗。
「あのお月様、ウサギがいる」
しかも模様がなんだか、地球に似てる。
『うしゃぎ?らび?』
「ラビィも兎さんだけどね」
シューン
『しゅばいちゅ、あれ!』
メープルの指さす先では真っ赤な車体の三輪魔導車が走ってる。
「教授かな……いや違った」
鍵もないのに勝手にここに持ってきて走らせているお方がいる。
月明かりがあるとはいえ、夜中に相変わらず真っ黒の装束と黒い髪。
だからこそ色の白いお顔や手が良く目立つんだけど。
シュー……
魔道車が俺たちの前で止まった。
「タナプス伯父さん」
『駿介、良く再現できたねぇ』
「ええ、仲間のおかげですけどね。
で、どうですか?運転のしやすさとか、このコースの感じとか」
丁度よかった、今は期限切れらしいけど、日本の教習所に行って運転免許を取った人の意見は大事。
あ、人じゃなかった、月と魂の神様。
『なかなか良いよ。静かだし、開放的だから良い風を感じるよ』
「はは、そこはガラス窓で防いでいかなくちゃいけないですけどね」
ヴァルカーンみたいに四季があっても極端な気候の変化が無ければこれでも良いけど。
『うん。こっちでもドライブが楽しめるなんて。駿介のおかげだな』
「ですけど、まだガラス板が高級で、俺の屋敷も、大きな一枚ガラスがないから。そういうところはステンドグラスの窓なんですよね」
『そうだね。
だけど、こっちは地球より意外と樹脂の技術が進んでるでしょ?』
「確かに」
『水族館とかの水槽ってアクリルなんだよね確か』
ポン!
「そうですよね!アクリルの窓ガラス!」
『ただ、アクリルで自動車のフロントガラスをつくるとワイパーとか砂嵐で傷ついて視界が悪くなるから、あっちでは使えなくて』
「屋外には向いてないんですね」
『地球ではね』
「地球では……」
『しゅばいちゅー』
声がして振り返れば、登り切った坂の上にメープルが立っていた。
坂道も魔道車の試走のために作っている。二十度の角度で十五メートルぐらい。
その両側には綺麗に芝生が生えそろっている。その先がパターゴルフのそれぞれのコースの一つになってる。
この坂の上が一番高いので、他のコースも見える。
月明かりだけと思ったけど、白色君が自主的に俺達のために薄っすら照らしてくれているんだ。
道路の方は、石畳を整えるのが面倒なので、シュバイツマーブルを並べて舗装してる。
緑色っぽい道が月明かりに照らされて光ってる。
オズの魔法使いのエメラルドの道ってどこに続いているんだっけ。
俺が作る道もこういう色になるんだよね。
人々を幸せに導く道になればいいなぁ。
このコースはまだ道だけだ。今後横断歩道をつくったり、教習所にはないけど、トンネルとか、立体的な橋もあると楽しいよな。
ミニカーとか電車の玩具とかにそう言うのあったっけ。
砂漠から持ってきた金色に光るバンカーに、スライムゼリーを敷き詰めた浅い池。
コースの縁を彩る樹々はアナザーワールドから根っこごと持ってきて移植した。
昼間見た時もかなり綺麗だった。
そこではもともと居た子だろうか、フクロウが鳴いている。昼は小鳥達が歌ってたけどね。
「よし、ここで遊ぼうかメープル!」
『あしょぶ!』
樹脂で作った、カラフルな子供用ゴルフセットを出す。
だけど、日本の子供向けのゴルフセットは、危なくないのが良いんだろうけど、ボール迄ピンポン玉みたいに軽すぎて、面白くないんだよね。ここはボールだけでも本物のを。
「このボールを、このパターを使ってあっちの旗が刺さってる穴まで転がして入れるんだよ」
ってボールを置くと。
『あい!いきまーしゅ』
コン……トコトコトコ コン……トコトコトコ コン……トコトコトコ
白い球と、小さい子がジグザグに旗に向かって走っていく。
コーン カラカラ
『入ったー!』
『すごいぞー』
パチパチパチ
タナプス伯父さんはつきあいよく拍手してくれるけど、それはパターゴルフじゃなくてホッケーって言うんだよ、メープル。
『懐かしいな、私もやりたくなってきた』
「やります?大人用のパターありますよ」
『私の愛用のセットもあるよ……ほら』
立派なゴルフバッグを出してきた。
『一度、三人の妹たちと千葉のコースを回ったことがあるんだ。丁度四人だしね。
駿介もいたんじゃないかな?まだオムツ履いたね』
まじですか。
『丁度ブランネージュが国に帰ったところで、風のがちょっと寂しそうだったからね』
俺、あっちでタナプス伯父さんにも会ってたんだ。
そんな神様が立ち上がって、幼い子供に近寄っていく。
『メープル。こうやって持つんだよ』
経験者が指導してくれる。
『こ?』
『そうそう。ボールを当ててみよう』
『こ?』
コン……
軽快な音をたててボールが真っすぐ転がっていく。
指導って大事なんだな。
そのあとタナプス伯父さんとメープルで、九ホール、つまりハーフサイズのコースを回って、楽しんだ。
『ふー楽しかった。またゴルフしたいねぇ』
「今も地球に行かれてるのですか?」
『いや、今はいけないよ』
「今は?」
『駿介のおかげで悪魔たちがいなくなったとはいえ、とくにこの大陸の魔素が少ないからね。一瞬なら行けても滞在することは無理なんだよ』
「じゃあ、母さんは?」
『風の場合は、またちがう。ここでも風が吹いているでしょ?』
「はい」
『だから、あっちにも居れるんだよ』
「そうなんですね」
納得できるような出来ないような。
母さんがあっちで生き生きと仕事をしてるならいいけどさ。
俺の背中では、たっぷり遊んで満足したメープルが眠っている。
『さ、もう帰りなさい。おやすみ』
頭をポンポンとされてから撫でられる。
「はい、おやすみなさい」
扉を出して直接冒険者ギルドに帰る。
部屋の玄関でスニーカーを脱いで通路を歩いていく。
どうやらクリスはもう眠ったようだ。
メープルの靴はベッドに寝かせてから脱がす。
空間魔法を使って脱がせば、起きないからね。
『しゅばいちゅ』
起きちゃった?
「メープル、帰ってきたよ」
『ぱたーおもしろかった!』
「そうだね」
『またあしたもやりたい!』
「うーん明日はちょっと。だけどアナザーワールドにもコースをつくろうかな」
『うん!ちりゅうたちと、ぱたーすりゅの』
「そりゃ面白そうだ。ちょっと考えとくよ」
『うん!』
「おやすみ」
小さな額にキスをして上掛けを整えてやる。
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寝息を確認してから、明日の準備を確認してメープルの眠る布団に潜る。
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