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第五章 ~王子のクラフツ留学~
〈334〉光るサイクロン
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起工式から数日後、満月湖の建物の時のように、ドワンゴさんが杭基礎を入れてくれていた。
俺が授業を受けているうちに。
「固まるころに戻ってくるぜぇ」
「わかりました」
と言いながら転移魔法でドワンゴさんを帰す。
ここにも工事中にカルピンさん達が行き来するための扉が必要だな……。
そんなある夜、冒険者ギルドの宿舎に副ギルマスが尋ねてきた。
「ウリサさん、シュンスケさん!緊急です。
ギルマスの部屋に来て下さい」
「ちょっとメープル、クリスといい子にしてて」
『あい!』
「皆も頼んだよ」
“もちろんよ”
“まかせろ”
“すぐにおでかけだぜ”
“……たぶんね”
宿舎の棟と別棟になるギルドの三階の部屋を訪問する。
「ギルマス、緊急とは?
もしかしてセイレンヌアイランド共和国ですか?」
「なんだ知ってるのか」
「そりゃあ精霊のネットワークもありますしね」
「精霊のネットワークはふつう、大陸を超えませんぞ?」
「そうなの?」
黄色ちゃんに聞く
“おうじだけなのよね”
“おうさまでもとどかないわ”
“ぎるどみたいな、ませきのちからがいるの”
“おおきなませき”
「なるほど通信の魔道具なら繋がるしな」
「とにかく、その知らせは俺としては待っていた物なのです」
グリース用の素材に!
「そうか、では気を付けて行って来て下さい」
「「はい」」
そうして、ギルマスの部屋から直接自分達の部屋に戻る。
「メープルは」
「眠られました」
「そっか」
ダイニングテーブルで、三人でこれからの動きを纏める。
「やっと待ちかねてたドラウサードの目撃情報が来たな」
「うん、工場が立ち上がって生産が始まったら、あれの素材はどうしても必要になるからね」
「では二人で行かれますか」
「うん、本当は俺一人でと思ったんだが」
「だめだ、俺も行く。ブランネージュ陛下にもそう頼まれているからな」
「わかってるよ」
「メープルはアナザーワールドに預けるよ。
クリスは、どうする?」
「そうですね、支社と工事現場を回りつつ通学しますよ」
「うん、頼むね」
「任せてください」
自分の部屋に入り、メープルを起こさないようにそのまま精霊屋敷の布団に転移。
「頼んだよトット」
≪まかせろ≫
一言頼んで戻る。
そして海パンを仕込んでから、久しぶりに海竜モササの鱗で出来た皮鎧を着て、叔父さんのローブを着る。
ウリサも、大量に余ってる鱗を提供した皮鎧を作ってもらっていたので、それを着ていた。
「じゃあ行こうか」
「クリス、寂しくなったらガスマニアに行ってもいいよ」
納戸の扉で繋がってるし。
「大丈夫ですって!」
「戸締りはしっかりしろよ」
「はい、そちらこそくれぐれも気を付けてくださいね。健闘を祈ります」
「んじゃ」
そうして、玄関を出て直接アジャー島の冒険者ギルドに出る。
こちらはまだ陽が沈んだところって感じの夕方だ。
夜は、六月と言えど、ヴァルカーン王国から南国のセイレンヌアイランドに出てもそんなに変わらない。
「よう、シュンスケ、ウリサ、待ってたぞ」
「今晩は、タイナロン様。遅くなってすみません」
人魚族長にしてアジャー島の冒険者ギルド長がカウンターにいた。
夜とは言え、そんなに遅くは無いのに、いつもよりレストランはひっそりとしている。
「皆避難しているのか?」
「いや、二日前から海に出るのを禁止しているからな、家から出てきていないんだ」
「騒ぐ気にならんのか」
「それと、海上マーケットも同じくアイツが確実にいなくなるまで休業だ。暴れるだけで高波になるからな」
「で、レストランの仕入れも止まってると」
「そっちは別ルートだから関係ないけどな」
直接ここの扉の内側から入ってきたから、外の様子は分かってないけどね。
「じゃあ、早速行って来ようかな」
「そうだな」
「ムー様を呼ぶのか?」
「うん。もう呼んでるよ……来たみたい」
ギルマスも一緒に外に出る。
西の方に夕焼けが残ってるのに、半月と、銀河かどうか分からない無数の星々。
そこに白い鯨の縁だけが浮かんでいて中の方は星空が透けているがだんだん全体的に白くなっていく。
『来たぞ、待たせたな』
「俺も来た所だから」
「今晩はムー様」
ほとんど人がいない広場の地面すれすれに降りてくるその巨体の手鰭からウリサが登って行く。
「悪いな二人とも」
「いえ」
「うん。俺が素材が欲しいから討伐したかっただけですよ」
「では、たのむ」
前の夏の終わりにトルネキ王国に雨を降らせた時以来のムーでの移動だ。
白い鯨は少し旋回して南に向く。
「夕方古代鮫の姿見た?」
『ここ数日で何度か見たからシュンスケに連絡したのだが、また海溝に戻っているかもしれぬ。まだ海中を見ていないからな』
「そっか。
とにかく空からなら海溝も古代鮫も平気だから、ムーが目撃した所迄までいこう」
『うむ』
「シュンスケ、ハロルド様にも出てきてもらえるか」
「そうだね」
『こんばんはみんな!』
ハロルドは夜も元気。
ウリサが乗りやすいように、手綱や鞍などを装着しておく。
そして、お気に入りのムーの潮吹き穴のあたりに少し沈むように座る。
ここがハロルドの定位置。
途中で、手持ちで残ってた大量のステンレスと鉄の塊を海底に沈めておく。
気休めの波消しにならないかなって。
「まだそんなに持っていたのか」
あきれ顔のウリサ。
「まあね」
とはいえ、夜の海なんて暗くて何も見えないんじゃない?って思ってたんだけどさ、
「夜光虫?海ほたるか青く光ってるな」
「うん綺麗!」
『あれはスライムだ』
ムーからの答え合わせははずれだったようだ。
「スライム?」
『ブルーライトスライムという海に生息しているスライムで、群れでおるんだ』
「スライムの群れ…」
『あいつらの光があのように青いうちは平和なのだ』
「色が変わるのか?」
『例えば、漁師なんかが、地引網で大量に魚を捕獲しようとすると、あの色が紫色になって、船の舵に取り付いて動きを阻害したり、舵そのものを溶かしたりするのだ』
「こんな大洋で舵を失うということは」
『陸へ帰れなくなると同義だ』
綺麗なものを見て少しはしゃいでしまった空気が変わる。
『そして、赤く光り出すと、海の上だというのに赤い鬼火が浮かんで、漁船に飛んでくるのだ』
「ということは火災になると」
「うわぁ」
『そうだな』
「もしかして、属性が変わっていくのかな」
“そうね、やみまほうはものをくさらせるのがとくいだから”
紫色ちゃんが答えをくれる。
“さいしゅうけいたいは ひぞくせいだ”
赤色君も。
「ガスマニアにはこんなスライムの話は聞かないな。海に浮いてるのは夜光虫かクラゲぐらいだ」
『ああ、南洋の固有種かもしれぬ』
皆が押し黙って静かに海洋の光を見つめている。
その見つめていた先が変わっていく。
「ウリサあっち!紫色に光ってる!その向こうは赤い!」
美しい青い光が、不気味な紫色の帯になり、その向こうが一面赤くなっている。
まるでトリコロールのリボンのように海の波に漂いながら点滅を始めている。
幅はかなり広いよ。その様子がよく見えるようにムーが降下してくれる。
すると、一面浮いたスライムの光で光っている場所がないほどの広範囲。二百メートル位の幅だ。
「皆、船がないか見てきて!」
“わかった!”
“いってくる!”
「夜だしギルドで出るなと言われいたからいないと思うけど、水中にマーメイドとかいない?」
“いないとおもうわ、かくにんしてくるわね”
今日は特に青色ちゃんが多い。
だからムーの周りもちらちらと青く光ってるんだよ。
スライムの青とはちょっと色味が違うけどね。
青色ちゃんはシアンって感じで、スライムはミディアムブルーだ。
“ふねない”
“ひといない”
“すいちゅうもいない”
“さかなもいない”
今回、勿論モササからも連絡があったけど、俺の島に待機してもらっている。
“スライムだけ”
「了解」
「なのに赤いということは」
『鮫かもしれぬな』
赤い所から炎が浮かび出した。
浮かんだ炎が二つ三つ融合して大きくなっていく。
ゴオーッ
集まった炎は赤から黄色に変わって白っぽく輝いていく。
「炎の温度が上がってるな」
「そうみたいだな」
「よし、俺が近くで見てくる。ムーは皆を連れて五百メートル地点まで上昇して待機」
『うむ』
「きをつけろよ」
「大丈夫油断はしない」
『乗る?』
「ハロルドも待機。呼んだらウリサを乗せて動いて」
『わかった!』
上昇を始めるムーから飛び出して白くなった炎の向こうへ飛んでいく。
すると赤い光たちが右巻きの渦を描いて下の方に向かって引き込まれていく。
台風って赤道より南だと右向きだっけサイクロンって言う・・・。
関係のないことも頭をかすめていく。
渦の真ん中が黒くなっていく。いや、それは穴だ。
そこに向かって光るスライムが吸い込まれていく。
大きな火の玉は俺の後ろにあるけれど、細かい火の玉も赤いスライムたちは浮かべていて、それももろとも吸い込まれていく。
穴は、縦か横か分からないが長細く伸びて、計り知れないほどの大きさになり、漁船ぐらいは嵌りそうなほどになっていく。
そして穴の縁がきらきらと光る。それはスライム達が出した美しい光じゃなくて、半月が反射している。
“おうじ、きをつけて”
“さめのくちよ!”
「え?まさかだって、あの鱗のように無数に光ってるのは…」
“さめのは”
「こわー」
スライムたちは仲間が大量に食われれているにもかかわらず、皆で作った大きな白い火の玉をあの口の中に放り込もうと挑んでいるのか。
もしかしてそうやって、この海域をドラウサードから守ってきたのだろうか。
「この火の玉を預からせてもらわないかな」
“それはだいじょうぶだけど”
「スライムたちに言ってくれ、避難を!ここからは俺が引き受ける!」
“むりよ!すらいむはただよってるだけなの”
「しょうがないな。ごめんな~ちょっと預かるよ」
火の玉を急遽それ用に使った空間に入れる。
青色ちゃんが言うにはスライムは表面に浮かんでいるだけで地中深くにはいないらしい。
そこで俺はいつぞや水を取り込んだように、表面のスライムたちを海水ごとアナザーボックスを作って入れる。
飛んでまわりながら何度かそれを繰り返して、あたり一面が真っ暗になっていく。
そしてそこに残ったのは黒い穴の両縁に光る複数の三角の赤い光だった。
それは並んでまっすぐ海底に伸びている。
俺が授業を受けているうちに。
「固まるころに戻ってくるぜぇ」
「わかりました」
と言いながら転移魔法でドワンゴさんを帰す。
ここにも工事中にカルピンさん達が行き来するための扉が必要だな……。
そんなある夜、冒険者ギルドの宿舎に副ギルマスが尋ねてきた。
「ウリサさん、シュンスケさん!緊急です。
ギルマスの部屋に来て下さい」
「ちょっとメープル、クリスといい子にしてて」
『あい!』
「皆も頼んだよ」
“もちろんよ”
“まかせろ”
“すぐにおでかけだぜ”
“……たぶんね”
宿舎の棟と別棟になるギルドの三階の部屋を訪問する。
「ギルマス、緊急とは?
もしかしてセイレンヌアイランド共和国ですか?」
「なんだ知ってるのか」
「そりゃあ精霊のネットワークもありますしね」
「精霊のネットワークはふつう、大陸を超えませんぞ?」
「そうなの?」
黄色ちゃんに聞く
“おうじだけなのよね”
“おうさまでもとどかないわ”
“ぎるどみたいな、ませきのちからがいるの”
“おおきなませき”
「なるほど通信の魔道具なら繋がるしな」
「とにかく、その知らせは俺としては待っていた物なのです」
グリース用の素材に!
「そうか、では気を付けて行って来て下さい」
「「はい」」
そうして、ギルマスの部屋から直接自分達の部屋に戻る。
「メープルは」
「眠られました」
「そっか」
ダイニングテーブルで、三人でこれからの動きを纏める。
「やっと待ちかねてたドラウサードの目撃情報が来たな」
「うん、工場が立ち上がって生産が始まったら、あれの素材はどうしても必要になるからね」
「では二人で行かれますか」
「うん、本当は俺一人でと思ったんだが」
「だめだ、俺も行く。ブランネージュ陛下にもそう頼まれているからな」
「わかってるよ」
「メープルはアナザーワールドに預けるよ。
クリスは、どうする?」
「そうですね、支社と工事現場を回りつつ通学しますよ」
「うん、頼むね」
「任せてください」
自分の部屋に入り、メープルを起こさないようにそのまま精霊屋敷の布団に転移。
「頼んだよトット」
≪まかせろ≫
一言頼んで戻る。
そして海パンを仕込んでから、久しぶりに海竜モササの鱗で出来た皮鎧を着て、叔父さんのローブを着る。
ウリサも、大量に余ってる鱗を提供した皮鎧を作ってもらっていたので、それを着ていた。
「じゃあ行こうか」
「クリス、寂しくなったらガスマニアに行ってもいいよ」
納戸の扉で繋がってるし。
「大丈夫ですって!」
「戸締りはしっかりしろよ」
「はい、そちらこそくれぐれも気を付けてくださいね。健闘を祈ります」
「んじゃ」
そうして、玄関を出て直接アジャー島の冒険者ギルドに出る。
こちらはまだ陽が沈んだところって感じの夕方だ。
夜は、六月と言えど、ヴァルカーン王国から南国のセイレンヌアイランドに出てもそんなに変わらない。
「よう、シュンスケ、ウリサ、待ってたぞ」
「今晩は、タイナロン様。遅くなってすみません」
人魚族長にしてアジャー島の冒険者ギルド長がカウンターにいた。
夜とは言え、そんなに遅くは無いのに、いつもよりレストランはひっそりとしている。
「皆避難しているのか?」
「いや、二日前から海に出るのを禁止しているからな、家から出てきていないんだ」
「騒ぐ気にならんのか」
「それと、海上マーケットも同じくアイツが確実にいなくなるまで休業だ。暴れるだけで高波になるからな」
「で、レストランの仕入れも止まってると」
「そっちは別ルートだから関係ないけどな」
直接ここの扉の内側から入ってきたから、外の様子は分かってないけどね。
「じゃあ、早速行って来ようかな」
「そうだな」
「ムー様を呼ぶのか?」
「うん。もう呼んでるよ……来たみたい」
ギルマスも一緒に外に出る。
西の方に夕焼けが残ってるのに、半月と、銀河かどうか分からない無数の星々。
そこに白い鯨の縁だけが浮かんでいて中の方は星空が透けているがだんだん全体的に白くなっていく。
『来たぞ、待たせたな』
「俺も来た所だから」
「今晩はムー様」
ほとんど人がいない広場の地面すれすれに降りてくるその巨体の手鰭からウリサが登って行く。
「悪いな二人とも」
「いえ」
「うん。俺が素材が欲しいから討伐したかっただけですよ」
「では、たのむ」
前の夏の終わりにトルネキ王国に雨を降らせた時以来のムーでの移動だ。
白い鯨は少し旋回して南に向く。
「夕方古代鮫の姿見た?」
『ここ数日で何度か見たからシュンスケに連絡したのだが、また海溝に戻っているかもしれぬ。まだ海中を見ていないからな』
「そっか。
とにかく空からなら海溝も古代鮫も平気だから、ムーが目撃した所迄までいこう」
『うむ』
「シュンスケ、ハロルド様にも出てきてもらえるか」
「そうだね」
『こんばんはみんな!』
ハロルドは夜も元気。
ウリサが乗りやすいように、手綱や鞍などを装着しておく。
そして、お気に入りのムーの潮吹き穴のあたりに少し沈むように座る。
ここがハロルドの定位置。
途中で、手持ちで残ってた大量のステンレスと鉄の塊を海底に沈めておく。
気休めの波消しにならないかなって。
「まだそんなに持っていたのか」
あきれ顔のウリサ。
「まあね」
とはいえ、夜の海なんて暗くて何も見えないんじゃない?って思ってたんだけどさ、
「夜光虫?海ほたるか青く光ってるな」
「うん綺麗!」
『あれはスライムだ』
ムーからの答え合わせははずれだったようだ。
「スライム?」
『ブルーライトスライムという海に生息しているスライムで、群れでおるんだ』
「スライムの群れ…」
『あいつらの光があのように青いうちは平和なのだ』
「色が変わるのか?」
『例えば、漁師なんかが、地引網で大量に魚を捕獲しようとすると、あの色が紫色になって、船の舵に取り付いて動きを阻害したり、舵そのものを溶かしたりするのだ』
「こんな大洋で舵を失うということは」
『陸へ帰れなくなると同義だ』
綺麗なものを見て少しはしゃいでしまった空気が変わる。
『そして、赤く光り出すと、海の上だというのに赤い鬼火が浮かんで、漁船に飛んでくるのだ』
「ということは火災になると」
「うわぁ」
『そうだな』
「もしかして、属性が変わっていくのかな」
“そうね、やみまほうはものをくさらせるのがとくいだから”
紫色ちゃんが答えをくれる。
“さいしゅうけいたいは ひぞくせいだ”
赤色君も。
「ガスマニアにはこんなスライムの話は聞かないな。海に浮いてるのは夜光虫かクラゲぐらいだ」
『ああ、南洋の固有種かもしれぬ』
皆が押し黙って静かに海洋の光を見つめている。
その見つめていた先が変わっていく。
「ウリサあっち!紫色に光ってる!その向こうは赤い!」
美しい青い光が、不気味な紫色の帯になり、その向こうが一面赤くなっている。
まるでトリコロールのリボンのように海の波に漂いながら点滅を始めている。
幅はかなり広いよ。その様子がよく見えるようにムーが降下してくれる。
すると、一面浮いたスライムの光で光っている場所がないほどの広範囲。二百メートル位の幅だ。
「皆、船がないか見てきて!」
“わかった!”
“いってくる!”
「夜だしギルドで出るなと言われいたからいないと思うけど、水中にマーメイドとかいない?」
“いないとおもうわ、かくにんしてくるわね”
今日は特に青色ちゃんが多い。
だからムーの周りもちらちらと青く光ってるんだよ。
スライムの青とはちょっと色味が違うけどね。
青色ちゃんはシアンって感じで、スライムはミディアムブルーだ。
“ふねない”
“ひといない”
“すいちゅうもいない”
“さかなもいない”
今回、勿論モササからも連絡があったけど、俺の島に待機してもらっている。
“スライムだけ”
「了解」
「なのに赤いということは」
『鮫かもしれぬな』
赤い所から炎が浮かび出した。
浮かんだ炎が二つ三つ融合して大きくなっていく。
ゴオーッ
集まった炎は赤から黄色に変わって白っぽく輝いていく。
「炎の温度が上がってるな」
「そうみたいだな」
「よし、俺が近くで見てくる。ムーは皆を連れて五百メートル地点まで上昇して待機」
『うむ』
「きをつけろよ」
「大丈夫油断はしない」
『乗る?』
「ハロルドも待機。呼んだらウリサを乗せて動いて」
『わかった!』
上昇を始めるムーから飛び出して白くなった炎の向こうへ飛んでいく。
すると赤い光たちが右巻きの渦を描いて下の方に向かって引き込まれていく。
台風って赤道より南だと右向きだっけサイクロンって言う・・・。
関係のないことも頭をかすめていく。
渦の真ん中が黒くなっていく。いや、それは穴だ。
そこに向かって光るスライムが吸い込まれていく。
大きな火の玉は俺の後ろにあるけれど、細かい火の玉も赤いスライムたちは浮かべていて、それももろとも吸い込まれていく。
穴は、縦か横か分からないが長細く伸びて、計り知れないほどの大きさになり、漁船ぐらいは嵌りそうなほどになっていく。
そして穴の縁がきらきらと光る。それはスライム達が出した美しい光じゃなくて、半月が反射している。
“おうじ、きをつけて”
“さめのくちよ!”
「え?まさかだって、あの鱗のように無数に光ってるのは…」
“さめのは”
「こわー」
スライムたちは仲間が大量に食われれているにもかかわらず、皆で作った大きな白い火の玉をあの口の中に放り込もうと挑んでいるのか。
もしかしてそうやって、この海域をドラウサードから守ってきたのだろうか。
「この火の玉を預からせてもらわないかな」
“それはだいじょうぶだけど”
「スライムたちに言ってくれ、避難を!ここからは俺が引き受ける!」
“むりよ!すらいむはただよってるだけなの”
「しょうがないな。ごめんな~ちょっと預かるよ」
火の玉を急遽それ用に使った空間に入れる。
青色ちゃんが言うにはスライムは表面に浮かんでいるだけで地中深くにはいないらしい。
そこで俺はいつぞや水を取り込んだように、表面のスライムたちを海水ごとアナザーボックスを作って入れる。
飛んでまわりながら何度かそれを繰り返して、あたり一面が真っ暗になっていく。
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