異世界転移したら尖った耳が生えたので、ちびっこライフを頑張ります。

前野羊子

文字の大きさ
1 / 371
第一章 ~始まりの章~

〈1〉もうすぐ成人なのに迷子

しおりを挟む
 年末、俺こと田中駿介はバイトの帰りに駅を歩いていた。
 私立大学の推薦が決まってたし、進学高校の高3なんて同級生はみんなこれからの入試のため遊ぶのには誘ってくれないし誘えない。
 部活も夏には引退して暇なのだ。それで母親に学校に提出するバイトする届け出のサインを書いてもらって、毎日小遣い稼ぎをしていた。
 今日はクリスマスイブで、俺はイケてないはずないのに彼女もなくデートの予定もなく、時給を上乗せするからと店長に言われ、休憩挟みながらの十二時間の立ち仕事に、疲れた足を引きずって駅から続く高架の歩道橋を歩いていた。
 前を歩く人は誰もいない。イブだからね。みんな繁華街にいるかお家に帰るかしてるんだろ。
 この駅もできた時は賑やかだったらしいけど、今は寂れている。トボトボ歩いていたら後ろからなんか聞き覚えのある足跡が小走りで近づいてきた。
 「駿ちゃん!今帰り?」

 「母さんも今なんだ、相変わらず遅いね」
 「まあね、年末だもん。それでも今日はイブだし、ケーキとか色々買ってきた。早くお家で食べよう」
 工業デザイナーをしている母親が両手に荷物を持って小走りしてきた。ケーキ持ってんだろ?崩れるよ。
 母さんは息子の俺が言うのもなんだけど、結構な美人さん。
 父親はどこにいるのか、俺は顔も覚えていない。死んではいないらしいが、ずっと昔に別れた的なことを言われたので、物心ついた時には父親の話題を母さんにしたことはない。でも写真は見たことあるよ。黒目黒髪の日本人だね。まあ、イケメンなんじゃない?

 女手一つで育ててくれた母さんは、色が白くて眼の色も明るいなんかハーフらしいんだ。外国の血が半分入ってるのに今四十五歳だったっけ。若作りを頑張っているわけではないのに、俺が高校生になってからは一緒に歩いていたらよく俺の姉かと言われる。
 最近のおばちゃんたちはすごいよね。美人さんが深夜まで仕事して大丈夫か?って思うけど、やりがいがあるらしいし、生き生きとされていらっしゃる。いいよね。俺もやりがいのある仕事とか将来できたらいいな。そう思って色んなことを広く浅く手を広げていたりする。武道や、料理、果ては工作や手芸も。まあ、学校の連れには内緒だけど。
 そして、俺も父さんに似ているか母さんに似てるのか分からないけど、イケメンと言われたことは実はある。でも、メディアとか世の中にはイケメンは多いから、中の上ぐらいだと思っている。
 「そのパソコンのカバンが一番重いんだろ?かして」
 「ありがと!こっちも持って」
 と言って、パソコンが入っているショルダータイプの革のカバンとレジ袋を渡された。
 「あぁ、チキンが入ってるのか」
 「そ、会社の下のコンビニのだから」
 「コンビニで買うなら家の近くのでいいじゃん」
 「そんなこと言って去年は深夜のコンビニじゃ売り切れてたんだもん」
 「俺もチキン持ってるんだけど、連絡すればよかったな。バイト先でもらったんだよ、俺が自分で焼いたやつだけど」
 「ホント?どんなの?」
と言って俺の背中に回ってカバンのチャックを勝手に開けて、ビニール袋を引っ張り出す。
 「ちょ、帰ってからにしてよ」
 母さんの荷物で両手がふさがってて抗えない。
 「うわ、いい匂い。おいしそ。今日はこっちのほうを食べようよ」
 母さん、あなたのほうが子供っぽい。アニメや漫画、ゲームが好きないつまでも少女のような人だ。俺も少しは影響されている。でも今時オタクなんて普通だよな。
 そうやって、ほかに人がいない歩道橋で騒いでいると
 ブワー
 突然暖かい風が足元から吹き上がって、続いて緑っぽい光に包まれた?
 「うわ?あれ?」
 「駿ちゃん!」

 トスッ

 「ってー。なんだよ!」
 母さんが何を思ったのか俺にチョップをかましてきた。結構な衝撃だ。
 両手があんたの荷物でふさがってて避けられないってんのに。何ふざけてんだよ。怒られることはしてないのに!痛くないけど。
 あっという間に光は真っ白にさらに眩しくなって、母さんの姿も見えなくなってしまう。
 足元からの風の音もすごい。そしてすぐにジェットコースターの最初の下りのような感覚が全身を包むと、足の裏に衝撃が来た。


ドサッ

 「ってー。歩道橋に穴が開いて落ちた?あれ?母さん!」

 寂れた郊外の駅前だったのに、見たことのない景色が目の前に広がっていた。暑い。
 左手に森があって、草というか草原?大きな軽石のような白っぽい岩がまだらな大地が広がっていた。
 「母さん?」
 きょろきょろしても母さんは視界にはいなかった。
 「おかあさーん」
 幼いころにやったことのある叫びを久しぶりにしてみる。
 あれ?俺の声?お味噌のCM?まじで幼い感じ。成長遅めの俺でも声変わりは終わったはずなのに。
 「かあさん?」
 もう一度呼びかけるもやっぱりちっこい子供の声。
 青い空、太陽。あれもお日様と呼ぶのか?鳥のさえずり。東京より澄んだ空気。それは見覚えがある。
 しかし、視線を下げると見覚えのない風景。その大地の真ん中で十七歳にして迷子になってしまった。
 
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

不死王はスローライフを希望します

小狐丸
ファンタジー
 気がついたら、暗い森の中に居た男。  深夜会社から家に帰ったところまでは覚えているが、何故か自分の名前などのパーソナルな部分を覚えていない。  そこで俺は気がつく。 「俺って透けてないか?」  そう、男はゴーストになっていた。  最底辺のゴーストから成り上がる男の物語。  その最終目標は、世界征服でも英雄でもなく、ノンビリと畑を耕し自給自足するスローライフだった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  暇になったので、駄文ですが勢いで書いてしまいました。  設定等ユルユルでガバガバですが、暇つぶしと割り切って読んで頂ければと思います。

【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています

きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

処理中です...