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第一章 ~始まりの章~
〈1〉もうすぐ成人なのに迷子
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年末、俺こと田中駿介はバイトの帰りに駅を歩いていた。
私立大学の推薦が決まってたし、進学高校の高3なんて同級生はみんなこれからの入試のため遊ぶのには誘ってくれないし誘えない。
部活も夏には引退して暇なのだ。それで母親に学校に提出するバイトする届け出のサインを書いてもらって、毎日小遣い稼ぎをしていた。
今日はクリスマスイブで、俺はイケてないはずないのに彼女もなくデートの予定もなく、時給を上乗せするからと店長に言われ、休憩挟みながらの十二時間の立ち仕事に、疲れた足を引きずって駅から続く高架の歩道橋を歩いていた。
前を歩く人は誰もいない。イブだからね。みんな繁華街にいるかお家に帰るかしてるんだろ。
この駅もできた時は賑やかだったらしいけど、今は寂れている。トボトボ歩いていたら後ろからなんか聞き覚えのある足跡が小走りで近づいてきた。
「駿ちゃん!今帰り?」
「母さんも今なんだ、相変わらず遅いね」
「まあね、年末だもん。それでも今日はイブだし、ケーキとか色々買ってきた。早くお家で食べよう」
工業デザイナーをしている母親が両手に荷物を持って小走りしてきた。ケーキ持ってんだろ?崩れるよ。
母さんは息子の俺が言うのもなんだけど、結構な美人さん。
父親はどこにいるのか、俺は顔も覚えていない。死んではいないらしいが、ずっと昔に別れた的なことを言われたので、物心ついた時には父親の話題を母さんにしたことはない。でも写真は見たことあるよ。黒目黒髪の日本人だね。まあ、イケメンなんじゃない?
女手一つで育ててくれた母さんは、色が白くて眼の色も明るいなんかハーフらしいんだ。外国の血が半分入ってるのに今四十五歳だったっけ。若作りを頑張っているわけではないのに、俺が高校生になってからは一緒に歩いていたらよく俺の姉かと言われる。
最近のおばちゃんたちはすごいよね。美人さんが深夜まで仕事して大丈夫か?って思うけど、やりがいがあるらしいし、生き生きとされていらっしゃる。いいよね。俺もやりがいのある仕事とか将来できたらいいな。そう思って色んなことを広く浅く手を広げていたりする。武道や、料理、果ては工作や手芸も。まあ、学校の連れには内緒だけど。
そして、俺も父さんに似ているか母さんに似てるのか分からないけど、イケメンと言われたことは実はある。でも、メディアとか世の中にはイケメンは多いから、中の上ぐらいだと思っている。
「そのパソコンのカバンが一番重いんだろ?かして」
「ありがと!こっちも持って」
と言って、パソコンが入っているショルダータイプの革のカバンとレジ袋を渡された。
「あぁ、チキンが入ってるのか」
「そ、会社の下のコンビニのだから」
「コンビニで買うなら家の近くのでいいじゃん」
「そんなこと言って去年は深夜のコンビニじゃ売り切れてたんだもん」
「俺もチキン持ってるんだけど、連絡すればよかったな。バイト先でもらったんだよ、俺が自分で焼いたやつだけど」
「ホント?どんなの?」
と言って俺の背中に回ってカバンのチャックを勝手に開けて、ビニール袋を引っ張り出す。
「ちょ、帰ってからにしてよ」
母さんの荷物で両手がふさがってて抗えない。
「うわ、いい匂い。おいしそ。今日はこっちのほうを食べようよ」
母さん、あなたのほうが子供っぽい。アニメや漫画、ゲームが好きないつまでも少女のような人だ。俺も少しは影響されている。でも今時オタクなんて普通だよな。
そうやって、ほかに人がいない歩道橋で騒いでいると
ブワー
突然暖かい風が足元から吹き上がって、続いて緑っぽい光に包まれた?
「うわ?あれ?」
「駿ちゃん!」
トスッ
「ってー。なんだよ!」
母さんが何を思ったのか俺にチョップをかましてきた。結構な衝撃だ。
両手があんたの荷物でふさがってて避けられないってんのに。何ふざけてんだよ。怒られることはしてないのに!痛くないけど。
あっという間に光は真っ白にさらに眩しくなって、母さんの姿も見えなくなってしまう。
足元からの風の音もすごい。そしてすぐにジェットコースターの最初の下りのような感覚が全身を包むと、足の裏に衝撃が来た。
ドサッ
「ってー。歩道橋に穴が開いて落ちた?あれ?母さん!」
寂れた郊外の駅前だったのに、見たことのない景色が目の前に広がっていた。暑い。
左手に森があって、草というか草原?大きな軽石のような白っぽい岩がまだらな大地が広がっていた。
「母さん?」
きょろきょろしても母さんは視界にはいなかった。
「おかあさーん」
幼いころにやったことのある叫びを久しぶりにしてみる。
あれ?俺の声?お味噌のCM?まじで幼い感じ。成長遅めの俺でも声変わりは終わったはずなのに。
「かあさん?」
もう一度呼びかけるもやっぱりちっこい子供の声。
青い空、太陽。あれもお日様と呼ぶのか?鳥のさえずり。東京より澄んだ空気。それは見覚えがある。
しかし、視線を下げると見覚えのない風景。その大地の真ん中で十七歳にして迷子になってしまった。
私立大学の推薦が決まってたし、進学高校の高3なんて同級生はみんなこれからの入試のため遊ぶのには誘ってくれないし誘えない。
部活も夏には引退して暇なのだ。それで母親に学校に提出するバイトする届け出のサインを書いてもらって、毎日小遣い稼ぎをしていた。
今日はクリスマスイブで、俺はイケてないはずないのに彼女もなくデートの予定もなく、時給を上乗せするからと店長に言われ、休憩挟みながらの十二時間の立ち仕事に、疲れた足を引きずって駅から続く高架の歩道橋を歩いていた。
前を歩く人は誰もいない。イブだからね。みんな繁華街にいるかお家に帰るかしてるんだろ。
この駅もできた時は賑やかだったらしいけど、今は寂れている。トボトボ歩いていたら後ろからなんか聞き覚えのある足跡が小走りで近づいてきた。
「駿ちゃん!今帰り?」
「母さんも今なんだ、相変わらず遅いね」
「まあね、年末だもん。それでも今日はイブだし、ケーキとか色々買ってきた。早くお家で食べよう」
工業デザイナーをしている母親が両手に荷物を持って小走りしてきた。ケーキ持ってんだろ?崩れるよ。
母さんは息子の俺が言うのもなんだけど、結構な美人さん。
父親はどこにいるのか、俺は顔も覚えていない。死んではいないらしいが、ずっと昔に別れた的なことを言われたので、物心ついた時には父親の話題を母さんにしたことはない。でも写真は見たことあるよ。黒目黒髪の日本人だね。まあ、イケメンなんじゃない?
女手一つで育ててくれた母さんは、色が白くて眼の色も明るいなんかハーフらしいんだ。外国の血が半分入ってるのに今四十五歳だったっけ。若作りを頑張っているわけではないのに、俺が高校生になってからは一緒に歩いていたらよく俺の姉かと言われる。
最近のおばちゃんたちはすごいよね。美人さんが深夜まで仕事して大丈夫か?って思うけど、やりがいがあるらしいし、生き生きとされていらっしゃる。いいよね。俺もやりがいのある仕事とか将来できたらいいな。そう思って色んなことを広く浅く手を広げていたりする。武道や、料理、果ては工作や手芸も。まあ、学校の連れには内緒だけど。
そして、俺も父さんに似ているか母さんに似てるのか分からないけど、イケメンと言われたことは実はある。でも、メディアとか世の中にはイケメンは多いから、中の上ぐらいだと思っている。
「そのパソコンのカバンが一番重いんだろ?かして」
「ありがと!こっちも持って」
と言って、パソコンが入っているショルダータイプの革のカバンとレジ袋を渡された。
「あぁ、チキンが入ってるのか」
「そ、会社の下のコンビニのだから」
「コンビニで買うなら家の近くのでいいじゃん」
「そんなこと言って去年は深夜のコンビニじゃ売り切れてたんだもん」
「俺もチキン持ってるんだけど、連絡すればよかったな。バイト先でもらったんだよ、俺が自分で焼いたやつだけど」
「ホント?どんなの?」
と言って俺の背中に回ってカバンのチャックを勝手に開けて、ビニール袋を引っ張り出す。
「ちょ、帰ってからにしてよ」
母さんの荷物で両手がふさがってて抗えない。
「うわ、いい匂い。おいしそ。今日はこっちのほうを食べようよ」
母さん、あなたのほうが子供っぽい。アニメや漫画、ゲームが好きないつまでも少女のような人だ。俺も少しは影響されている。でも今時オタクなんて普通だよな。
そうやって、ほかに人がいない歩道橋で騒いでいると
ブワー
突然暖かい風が足元から吹き上がって、続いて緑っぽい光に包まれた?
「うわ?あれ?」
「駿ちゃん!」
トスッ
「ってー。なんだよ!」
母さんが何を思ったのか俺にチョップをかましてきた。結構な衝撃だ。
両手があんたの荷物でふさがってて避けられないってんのに。何ふざけてんだよ。怒られることはしてないのに!痛くないけど。
あっという間に光は真っ白にさらに眩しくなって、母さんの姿も見えなくなってしまう。
足元からの風の音もすごい。そしてすぐにジェットコースターの最初の下りのような感覚が全身を包むと、足の裏に衝撃が来た。
ドサッ
「ってー。歩道橋に穴が開いて落ちた?あれ?母さん!」
寂れた郊外の駅前だったのに、見たことのない景色が目の前に広がっていた。暑い。
左手に森があって、草というか草原?大きな軽石のような白っぽい岩がまだらな大地が広がっていた。
「母さん?」
きょろきょろしても母さんは視界にはいなかった。
「おかあさーん」
幼いころにやったことのある叫びを久しぶりにしてみる。
あれ?俺の声?お味噌のCM?まじで幼い感じ。成長遅めの俺でも声変わりは終わったはずなのに。
「かあさん?」
もう一度呼びかけるもやっぱりちっこい子供の声。
青い空、太陽。あれもお日様と呼ぶのか?鳥のさえずり。東京より澄んだ空気。それは見覚えがある。
しかし、視線を下げると見覚えのない風景。その大地の真ん中で十七歳にして迷子になってしまった。
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