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第一章 壊れた日常の始まり
追い詰める方法
しおりを挟む「虎林!聞いてるのか!」
呼び出された教員室に来て早々、体育教師の杉屋に怒鳴られていた。杉屋はいつも暑苦しく、うんざりしていた。
「大体非常ベルを鳴らすなんて笑い事じゃないんだぞ。謹慎すべきところを反省文で許してやったのに、なんだこの反省文は!」
「うっせーな。出しただろ」
「出しても内容がなければ意味がないだろ」
杉屋がペラペラと反省文を手で揺らす。あれから何か月も経ってるのに、出せ出せうるさいから出したら、今度は内容について怒っているらしい。反省文だった紙は杉屋の手によって握りしめられている。
(はやく終わんねーかな。弘人んとこ行きてーな)
「まぁまぁ、杉屋先生、落ち着いてください。廊下まで聞こえてましたよ。あら、生物室の鍵がないわね……?中村先生は休みなのに……」
女教師が杉屋を窘めながらぶつぶつと何か言っている。
「あぁ、それならさっき吉田先生が持って行きましたよ。あっ、こら、虎林!」
杉屋が女教師にデレデレしている間に、教員室を後にした。杉屋の怒鳴り声が聞こえるも、撒いていつもの屋上へと向かった。
(あれ?いない……?)
屋上をぐるっと見回しても弘人はいない。いつもこの時間帯にはいるはずだ。
『あら、生物室の鍵がないわね……?中村先生は休みなのに……』
『あぁ、それならさっき吉田先生が持って行きましたよ』
先ほどの教員室での話を思い出し、何故か嫌な予感がした。
気のせいであって欲しい。でも、念のため確認するだけだ……。生物室は校舎の一番端にあり、人気の少ない場所だった。
「あっ、こら!虎林!見つけたぞ!」
鬱陶しいことに杉屋がまた現れた。適当に撒こうとするもずっと追いかけてくる。階段横の非常ベルをいつの日かのように押した。
ーージリリ
大きな音が響き渡る。教室から生徒たちが何事かと出てきて、杉屋は足止めをくらう。その間に生物室へと急いで向かった。
中から声が聞こえる。鍵がかかっている。何度も扉を叩き、名前を呼んだ。
「ひろとっ!」
扉を蹴破ると吉田が弘人を押し倒していた。露わになる弘人の白い肌。その光景を見た瞬間足は動いていた。吉田に拳を振り上げるとあっけなく吹っ飛んだ。
吉田にはらわたが煮えくり返っていたが、弘人に止められ冷静さを取り戻した。
「教師を誘惑したんじゃないのか?」
「ひろと、いけっ。誰かが来る前に逃げろ」
吉田の発言にまた殴りかかりそうになるも、我に返った。今は吉田より弘人を逃がすことの方が重要で、弘人にそう叫んでいた。生物室の方には幸いなことにまだ人は来ていない。
この状況をどうするか考える。吉田を潰す方法を。ぐるっと部屋を見渡した時に、棚から赤く光る何かを見つけた。
「それでお前は残ってどうするつもりだ?って、なにを……」
弘人が出て行ったのを確認し、俺はすぐ横の棚に横殴りした。大きなガラスの割れる音がする。腕からは血が流れ、突き刺さるような痛みを感じる。でも、気にせず棚の中にあったものを掴み、吉田の胸倉を掴んだ。
「これに全てが映ってるんじゃないのか?これを警察に見せたらお前は首どころじゃない。何を言ってるか分かるよな?」
吉田がわなわなと口を震わせている。手に持っているのは小型のビデオカメラ。恐らく吉田はこれで今後も弘人を脅すつもりだったのだろう。最低で卑怯な奴。
「おい、何の音だっ」
ようやくやって来た杉屋は血まみれの2人を見て絶句した。
吉田と口論し、吉田が先に手を出してきて、驚いてやり返した。と言うと、吉田はそれをすんなりと認めた。吉田はビデオテープが自分の元へ来ることはないと分かると、警察への提出を恐れ、数日後には自ら退職を言い出た。
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