父親に売られた兄は夕闇に翻弄される

miian

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第一章 壊れた日常の始まり

いつもの屋上で

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 今日ようやく迅の停学処分が終わる。少しの期間だったのに、どうしてか迅に会える今日が、待ち遠しかった。俺を助けたことで停学処分になり、迷惑をかけてしまった。俺に嫌気がさして、迅はもう屋上には来ないかもしれない。でも、どうしてか俺の元に迅は来てくれるんじゃないかと思った。

 もしかすると願望なのかもしれない。


ーーこの気持ちは何なのだろう?


 屋上へと行くと、もうすでに迅は来ていた。その姿を見てホッとする。

 巻き込んでしまったことや、何も出来なかった自分のせいで「ごめん」と謝りたかったのに、迅は何も言わず、こちらを見つめて手で隣をポンポンと叩いた。目が合い、何も起こっていないというような優しい瞳。

 素直にいつものように迅の隣へと座り、空を見上げた。お互い無言で、気持ちの良い風を浴びる。

「うわっ」

 カサカサっと手のひらに何かが当たり、驚いた俺は迅の肩に身を寄せた。それは何の変哲もない枯葉だったが、虫と勘違いした俺を迅は「ぷっ」と揶揄うように笑った。

「わ、笑うなよ……」

 恥ずかしさで迅を押しのけようとする。こちらからくっつきながら理不尽だなとその行動を思ったが、迅がその手を掴んだ。

 迅と視線が絡み合う。

 いつもなら、こういう時、じゃれ合って、俺を押し倒し、迅が確認した後、セックスをする。でも、今、迅にはそんな下心はない。俺を見つめた後、ぎゅっと優しく包み込んだ。

 こんな風に優しく扱われるのはいつ以来だろう?毎日、誰かに抱かれるのに、こんな風に抱きしめられることはなかった。迅の体温が伝わってくる。

 その温もりが怖くて、身体は強張った。

 これならいつものように押し倒されて、セックスをした方がマシだ。そう思う反面、嬉しくて抱きしめ返した。

 少しして迅が離れた。温もりが消え、肌が冷えるのを感じる。

 それを寂しく感じる。

「なぁ、お金があれば……お金があればお前は俺と一緒に逃げるか?」

 迅の唐突な質問に驚き、また質問の意図が分からず首を傾げた。

「だから!俺と逃げてくれるか?って言ってるんだ」

 肌を赤く染めて迅はもう一度言った。迅は付け足すように「お前の弟も一緒に」と言った。

「すぐには難しいかもしれない。でも、必ずお金を用意するから、だから、俺と一緒に逃げよう」

 その未来を思い描くことは簡単ではなかったが、俺は嬉しくて頷いた。

 迅は俺の頬が赤いぞ、と揶揄ったが、俺も仕返しに迅の頬の色を指摘した。
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