【本編完結・外伝投稿予定】異世界で双子の弟に手篭めにされたけど薬師に救われる

miian

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第四章 交錯

閉ざされた扉

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 魔界から戻って息苦しさはなかったものの、まだ身体は熱く痛みが全身を襲った。特に下腹部は先ほどよりも熱さを持っている。

 魔界へと誘う魔鏡から遠ざかりたくて部屋の片隅へとノロノロと移動して座りこんだ。
 そして、身体の痛みを忘れるように頭を振り、これからのことを考えた。

(どうしよう……良太が本当に魔界側についたら……)

 いつの間にか自分は少し前に誕生日を迎えていたことに気づいた。
 あと1年後の20歳になった時、自分は弟に孕まされ、そしてその弟は魔王と手を組んでこの世界を侵略するのだろうか?

(……いやだ……)

 自分が弟の子供を妊娠することも、この世界を良太が侵略することも……。

 どうすればいい……?良太を説得する?どうやって……?

 良太は変わってしまった……。きっと俺の話なんて聞き入れてくれない……。
 そして、自分の身体も変わってしまった。この世界に来て1年と少し良太に隅々まで弄ばれた。
 その事実を受け入れたくなくて目を閉じると、ゆうにぃの知らない所はないんだぞと良太があざ笑っている表情が思い浮かんだ。

 俺の身体は良太に全てを作り変えられてしまったかのようだ……。
 
 いつの日からか嫌だと抵抗していた性行為も最後はいつも我を忘れて快感に飲み込まれている。
 もう自分は今、どこにも逃げ場がない奈落の底にいるみたいだ……。

ーー誰か……誰か……たすけ……

 誰かに縋りたかった。でも、俺に頼る人はいないし、色々な人を巻き込んだ俺が誰かにすがるなんておこがましい……。

 その時、扉が開く音がした。良太が魔界から戻ってきたにしては扉から入ってくるのはおかしい……?
 パッと顔をあげると大輝さんがいた……。
 今まで良太以外誰も開けることのなかった扉が開かれていた。

「優馬っ!」

「え……?だ、いきさ……?」

 大輝さんは走ってきたのか息を荒くして俺の名前を呼んだ。
 驚き、お腹の痛みや熱さを忘れて俺は大輝さんに駆け寄り、大輝さんを抱きしめた。

「だ、いきさ……ん……ぐすっ……」

ーー生きてて良かった……。大輝さんが生きてて良かった……。

 大輝さんに「俺のせいでごめんなさい。生きていて良かった」そう言いたいのに、嗚咽で言葉を繋げることができない。

 大輝さんが俺に触れるとぎゅっと強く、そして優しく抱きしめ返してくれた。

「優馬……遅くなってすまない……本当にすまない……」

 頭の上から聞こえる大輝さんの低い声は悲しみや後悔が溢れていた。大輝さんが生きていてくれたことが何より一番嬉しくて、大輝さんの温もりが安心した。
 ハッと我に返って、抱きついていることに恥ずかしくなり、パッと離れると大輝さんと目があった。そして、よく見ると所々怪我をしていて、右腕からは血が出ていた。

「大輝さんっ、大丈夫ですか?!」

「あぁ、大丈夫だ。とりあえず逃げよう」

 大輝さんが手を差し出す。その大きな手は頼もしく感じた。頷き、その手をとって2人でお城の廊下を走った。
 ただ、いざ走り出すとまた身体が熱く痛み出し、足が思うように動かなかった。

 さっきは大輝さんが来てくれたことに驚き、我を忘れていたので痛みは感じなかったのに、何故自分の身体は大事な時に言うことを聞いてくれないんだろう……。

(このままだと足手まといになってしまう……)

 そこでふとまた心配になってしまった。今ここで逃げても良太は追いかけてくるんじゃないか、そして大輝さんにまた迷惑をかけてしまうんじゃないか?痛みも相まって不安なことばかりがよぎった時、大輝さんが俺を見た。

「優馬、余計なことは考えるな」

「えっ……?」

「俺が守るから、だから一緒に逃げよう」

 俺の手を掴んでいる大輝さんの大きな手に力が込められる。その手の温もりが心強くて俺は頷いた。頷いた俺を見て安心した大輝さんが俺を抱きかかえた。

「無理させてすまない……」

 大輝さんが申し訳なさそうに謝り、俺の方が足でまといなのにと思いつつ甘んじて抱きかかえられた。

(大輝さんはどこへ行くのだろう?)

 お城の1階に降り、外へ繋がる扉を開けた時、目の前にーーユグリル騎士団長がいた……。
 大輝さんはエンフィル王子を殺害したと思われている。逃がしてくれるはずがない……。
 どうしようかと元来た道を戻る?でも、元来た道を戻ったところでお城だから逃げ場なんてない……。
 その時、ユグリル騎士団長が剣を突き出した。ビクッとすると大丈夫だというように大輝さんが力強く抱きしめてくれた。
 ユグリル騎士団長が何か言った後、剣を大輝さんに差し出し、そして馬車に乗るように促した。

「えっ……?」
「……大丈夫だ……行こう、優馬……」

 戸惑っている俺をよそに大輝さんはユグリル騎士団長にお礼を言って、俺と大輝さん2人で馬車に乗り、城を後にした。
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