140 / 286
第四章 交錯
閉ざされた扉
しおりを挟む
魔界から戻って息苦しさはなかったものの、まだ身体は熱く痛みが全身を襲った。特に下腹部は先ほどよりも熱さを持っている。
魔界へと誘う魔鏡から遠ざかりたくて部屋の片隅へとノロノロと移動して座りこんだ。
そして、身体の痛みを忘れるように頭を振り、これからのことを考えた。
(どうしよう……良太が本当に魔界側についたら……)
いつの間にか自分は少し前に誕生日を迎えていたことに気づいた。
あと1年後の20歳になった時、自分は弟に孕まされ、そしてその弟は魔王と手を組んでこの世界を侵略するのだろうか?
(……いやだ……)
自分が弟の子供を妊娠することも、この世界を良太が侵略することも……。
どうすればいい……?良太を説得する?どうやって……?
良太は変わってしまった……。きっと俺の話なんて聞き入れてくれない……。
そして、自分の身体も変わってしまった。この世界に来て1年と少し良太に隅々まで弄ばれた。
その事実を受け入れたくなくて目を閉じると、ゆうにぃの知らない所はないんだぞと良太があざ笑っている表情が思い浮かんだ。
俺の身体は良太に全てを作り変えられてしまったかのようだ……。
いつの日からか嫌だと抵抗していた性行為も最後はいつも我を忘れて快感に飲み込まれている。
もう自分は今、どこにも逃げ場がない奈落の底にいるみたいだ……。
ーー誰か……誰か……たすけ……
誰かに縋りたかった。でも、俺に頼る人はいないし、色々な人を巻き込んだ俺が誰かにすがるなんておこがましい……。
その時、扉が開く音がした。良太が魔界から戻ってきたにしては扉から入ってくるのはおかしい……?
パッと顔をあげると大輝さんがいた……。
今まで良太以外誰も開けることのなかった扉が開かれていた。
「優馬っ!」
「え……?だ、いきさ……?」
大輝さんは走ってきたのか息を荒くして俺の名前を呼んだ。
驚き、お腹の痛みや熱さを忘れて俺は大輝さんに駆け寄り、大輝さんを抱きしめた。
「だ、いきさ……ん……ぐすっ……」
ーー生きてて良かった……。大輝さんが生きてて良かった……。
大輝さんに「俺のせいでごめんなさい。生きていて良かった」そう言いたいのに、嗚咽で言葉を繋げることができない。
大輝さんが俺に触れるとぎゅっと強く、そして優しく抱きしめ返してくれた。
「優馬……遅くなってすまない……本当にすまない……」
頭の上から聞こえる大輝さんの低い声は悲しみや後悔が溢れていた。大輝さんが生きていてくれたことが何より一番嬉しくて、大輝さんの温もりが安心した。
ハッと我に返って、抱きついていることに恥ずかしくなり、パッと離れると大輝さんと目があった。そして、よく見ると所々怪我をしていて、右腕からは血が出ていた。
「大輝さんっ、大丈夫ですか?!」
「あぁ、大丈夫だ。とりあえず逃げよう」
大輝さんが手を差し出す。その大きな手は頼もしく感じた。頷き、その手をとって2人でお城の廊下を走った。
ただ、いざ走り出すとまた身体が熱く痛み出し、足が思うように動かなかった。
さっきは大輝さんが来てくれたことに驚き、我を忘れていたので痛みは感じなかったのに、何故自分の身体は大事な時に言うことを聞いてくれないんだろう……。
(このままだと足手まといになってしまう……)
そこでふとまた心配になってしまった。今ここで逃げても良太は追いかけてくるんじゃないか、そして大輝さんにまた迷惑をかけてしまうんじゃないか?痛みも相まって不安なことばかりがよぎった時、大輝さんが俺を見た。
「優馬、余計なことは考えるな」
「えっ……?」
「俺が守るから、だから一緒に逃げよう」
俺の手を掴んでいる大輝さんの大きな手に力が込められる。その手の温もりが心強くて俺は頷いた。頷いた俺を見て安心した大輝さんが俺を抱きかかえた。
「無理させてすまない……」
大輝さんが申し訳なさそうに謝り、俺の方が足でまといなのにと思いつつ甘んじて抱きかかえられた。
(大輝さんはどこへ行くのだろう?)
お城の1階に降り、外へ繋がる扉を開けた時、目の前にーーユグリル騎士団長がいた……。
大輝さんはエンフィル王子を殺害したと思われている。逃がしてくれるはずがない……。
どうしようかと元来た道を戻る?でも、元来た道を戻ったところでお城だから逃げ場なんてない……。
その時、ユグリル騎士団長が剣を突き出した。ビクッとすると大丈夫だというように大輝さんが力強く抱きしめてくれた。
ユグリル騎士団長が何か言った後、剣を大輝さんに差し出し、そして馬車に乗るように促した。
「えっ……?」
「……大丈夫だ……行こう、優馬……」
戸惑っている俺をよそに大輝さんはユグリル騎士団長にお礼を言って、俺と大輝さん2人で馬車に乗り、城を後にした。
魔界へと誘う魔鏡から遠ざかりたくて部屋の片隅へとノロノロと移動して座りこんだ。
そして、身体の痛みを忘れるように頭を振り、これからのことを考えた。
(どうしよう……良太が本当に魔界側についたら……)
いつの間にか自分は少し前に誕生日を迎えていたことに気づいた。
あと1年後の20歳になった時、自分は弟に孕まされ、そしてその弟は魔王と手を組んでこの世界を侵略するのだろうか?
(……いやだ……)
自分が弟の子供を妊娠することも、この世界を良太が侵略することも……。
どうすればいい……?良太を説得する?どうやって……?
良太は変わってしまった……。きっと俺の話なんて聞き入れてくれない……。
そして、自分の身体も変わってしまった。この世界に来て1年と少し良太に隅々まで弄ばれた。
その事実を受け入れたくなくて目を閉じると、ゆうにぃの知らない所はないんだぞと良太があざ笑っている表情が思い浮かんだ。
俺の身体は良太に全てを作り変えられてしまったかのようだ……。
いつの日からか嫌だと抵抗していた性行為も最後はいつも我を忘れて快感に飲み込まれている。
もう自分は今、どこにも逃げ場がない奈落の底にいるみたいだ……。
ーー誰か……誰か……たすけ……
誰かに縋りたかった。でも、俺に頼る人はいないし、色々な人を巻き込んだ俺が誰かにすがるなんておこがましい……。
その時、扉が開く音がした。良太が魔界から戻ってきたにしては扉から入ってくるのはおかしい……?
パッと顔をあげると大輝さんがいた……。
今まで良太以外誰も開けることのなかった扉が開かれていた。
「優馬っ!」
「え……?だ、いきさ……?」
大輝さんは走ってきたのか息を荒くして俺の名前を呼んだ。
驚き、お腹の痛みや熱さを忘れて俺は大輝さんに駆け寄り、大輝さんを抱きしめた。
「だ、いきさ……ん……ぐすっ……」
ーー生きてて良かった……。大輝さんが生きてて良かった……。
大輝さんに「俺のせいでごめんなさい。生きていて良かった」そう言いたいのに、嗚咽で言葉を繋げることができない。
大輝さんが俺に触れるとぎゅっと強く、そして優しく抱きしめ返してくれた。
「優馬……遅くなってすまない……本当にすまない……」
頭の上から聞こえる大輝さんの低い声は悲しみや後悔が溢れていた。大輝さんが生きていてくれたことが何より一番嬉しくて、大輝さんの温もりが安心した。
ハッと我に返って、抱きついていることに恥ずかしくなり、パッと離れると大輝さんと目があった。そして、よく見ると所々怪我をしていて、右腕からは血が出ていた。
「大輝さんっ、大丈夫ですか?!」
「あぁ、大丈夫だ。とりあえず逃げよう」
大輝さんが手を差し出す。その大きな手は頼もしく感じた。頷き、その手をとって2人でお城の廊下を走った。
ただ、いざ走り出すとまた身体が熱く痛み出し、足が思うように動かなかった。
さっきは大輝さんが来てくれたことに驚き、我を忘れていたので痛みは感じなかったのに、何故自分の身体は大事な時に言うことを聞いてくれないんだろう……。
(このままだと足手まといになってしまう……)
そこでふとまた心配になってしまった。今ここで逃げても良太は追いかけてくるんじゃないか、そして大輝さんにまた迷惑をかけてしまうんじゃないか?痛みも相まって不安なことばかりがよぎった時、大輝さんが俺を見た。
「優馬、余計なことは考えるな」
「えっ……?」
「俺が守るから、だから一緒に逃げよう」
俺の手を掴んでいる大輝さんの大きな手に力が込められる。その手の温もりが心強くて俺は頷いた。頷いた俺を見て安心した大輝さんが俺を抱きかかえた。
「無理させてすまない……」
大輝さんが申し訳なさそうに謝り、俺の方が足でまといなのにと思いつつ甘んじて抱きかかえられた。
(大輝さんはどこへ行くのだろう?)
お城の1階に降り、外へ繋がる扉を開けた時、目の前にーーユグリル騎士団長がいた……。
大輝さんはエンフィル王子を殺害したと思われている。逃がしてくれるはずがない……。
どうしようかと元来た道を戻る?でも、元来た道を戻ったところでお城だから逃げ場なんてない……。
その時、ユグリル騎士団長が剣を突き出した。ビクッとすると大丈夫だというように大輝さんが力強く抱きしめてくれた。
ユグリル騎士団長が何か言った後、剣を大輝さんに差し出し、そして馬車に乗るように促した。
「えっ……?」
「……大丈夫だ……行こう、優馬……」
戸惑っている俺をよそに大輝さんはユグリル騎士団長にお礼を言って、俺と大輝さん2人で馬車に乗り、城を後にした。
12
あなたにおすすめの小説
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
人気俳優に拾われてペットにされた件
米山のら
BL
地味で平凡な社畜、オレ――三池豆太郎。
そんなオレを拾ったのは、超絶人気俳優・白瀬洸だった。
「ミケ」って呼ばれて、なぜか猫扱いされて、執着されて。
「ミケにはそろそろ“躾”が必要かな」――洸の優しい笑顔の裏には、底なしの狂気が潜んでいた。
これは、オレが洸の変態的な愛情と執着に、容赦なく絡め取られて、逃げ道を失っていく話。
飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
2025/09/12 1000 Thank_You!!
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。
彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!
恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする
愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ!
毎日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる