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第四章 交錯
情報収集 良太side
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魔物討伐会議が終わった後、嫌いな男を疫病が流行っている土地へ追いやることができて満足げに笑みを浮かべた。
そのまま感染でもして死んだらいいのに。
魔物討伐会議は当初3階の王子の部屋で行われていたが、騎士団長補佐の男が増えたため、2階の応接室で開かれることが多くなった。
あの騎士団長補佐の男は最初たまにしかいなかったが、最近では固定で参加するようになっている。
あいつが来てから話が長引くことがあってうんざりだったが、今日のようにうまいこと誘導してやれば役にたつかもしれない。
そんな風に考えながら廊下を曲がろうとしたらドンと誰かとぶつかった。
見上げると先ほど魔物討伐会議に参加していた騎士団長補佐の男だった。
『りょっ、良太様!ご無礼を大変申し訳ございません!!」
『あ、いや、僕も見てなかったから』
『あ、あの!良太様が以前、湖で転移魔術でサッと現れた時、私は大変しびれました!』
確かホルアンとかって名前だっけな?と思いながら、その男を見ていたら口を開いて賞賛してきた。
魔物討伐会議では初めて見る顔だなと思っていたけど、以前湖のところで会っていたらしい。
『良太様がルウファの街で子供を助けた時は感動しました!あの新聞は切り抜いて持ち歩いてます!』
『そう……ありがとう……』
前から思っていたけど、この男はどことなく子供っぽさがあるのか表現がたまに稚拙に感じる時がある。なんと言うか興奮して物を言いやすいと言うか……。
正義感溢れていて学級委員長とかしてそうなタイプだ。黒髪短髪でガタイがしっかりしている男は目を輝かせながらこちらを見てくる。ルウファで生まれ育ったホルアンは、ルウファの街を守ってくれてありがとうという思いがあるみたいだ。
『私の父も感謝していました。父は元神官なんですが、今は退職してルウファで寺子屋をしています。あの時、巻き込まれた子供たちの中には父の寺子屋に通っている子もいたんです』
『へぇ、そうなんだ……。神官として働いていたのはいつ頃?』
『良太様の前の召喚者様、大輝様が父の最後の仕事です』
『ふぅん……”大輝”とおま、いやホルアンの父親は仲がいいのか?』
あの嫌いな男の名前を出すたびについ憎しみがこもった声を出してしまう。神官と聞いて大輝やそれより前の召喚者について聞けるかもしれないと考え、ホルアンに父親について聞いてみる。
『はい、そうですね。父が体を壊してから彼に薬を作っていただいています。彼の薬はよく効くので私も安心です』
『そっか、安心だね。寺子屋はどこで開いているの?』
『図書館近くです。大輝様の薬屋の近くでもありますね』
この男の父親に一度会ってみたい。ふとホルアンが僕の施した結界の補強をしていると聞いたことを思い出す。
最初の頃にかけたあまり強くない結界や知能が上がって結界を補強したい時にホルアンがしているらしいのだ。
『ホルアンは明日ルウファへ行くとさっきの会議で言ってた?』
『あ、先ほどの会議ではそう言ったのですが、ハイネスの森へ結局誰も行かないことが気になってラウリア様とユグリル騎士団長に言いに行こうかと……』
先ほどの会議では、ハイネスの森については有耶無耶にし、隣国・アルツナハインの要望についてホルアンの意見が通ったので問題解決したみたいな空気で終わったはずなのに、この男は気づいてしまったらしい。
『僕、明日ホルアンのお父さんに会ってみたいなって思ったんだけどダメかな?』
『え?!でも、結界作業はどうなさるおつもりですか?!こうしている間にも魔物は……』
『ホルアンが僕の結界の補強とかしてくれてるんだよね?良かったら僕が結界を張るところ間近で見てみない?それにホルアンが実際に張っているところを見てアドバイスできるかもしれないし。でも、王子が反対しちゃうかもしれないから、”ルウファの街の結界の綻びで気になるところがある。もし可能なら良太様に来て欲しい”って言ってみてくれないかな?そうだそうしよう。僕も一緒に王子のところへ行くからさ』
その後も戸惑っているホルアンを何とか言いくるめて、会議を開いていた応接室へと一緒に行く。騎士団長と大輝は明日アルツナハインへ行くため、早々に部屋を出ていたのは知っていた。王子だけ応接室にいることが分かっていた。
王子はいつも最後まで部屋にいるけど何をしているかなんて考えたこともなかったけど、扉を開けて驚く。僕が座っていた席に跪いて、クッション部分を匂いでいたのだ。
『おいっ!!気色悪いことするなっ』
気持ち悪すぎて思わず悪態づいてしまう。自慰はしていないようだったけど、もしかしてこの後するつもりだったかもしれないと思うと鳥肌が立った。王子は『えぇ~?どうして戻ってきたの?僕の癒しの時間が~』とか言い始めて、ゴミクズを見るような目で見てしまう。
『ちょっと気持ち悪すぎるし、明日の結界作業お前とは無理だ。ちょうどホルアンがルウファの綻びがあって気になるところがあるから僕に来て欲しいらしいし、ルウファに行くことにする。そうだよね、ホルアン?』
『はっ、はいっ!そうであります!』
ホルアンもさすがに王子の行為にドン引いているようだった。今日のことを見逃して欲しかったらハイネスの森へお前が行けと王子に言い、部屋を去る。もともと明日はハイネスの森近くの街の結界作業だったけど、それこそ別に1日くらいどうってことないだろ。
翌日、僕とホルアンでホルアンの父親が開く寺子屋へと向かった。ホルアンは毎晩、魔物討伐会議で話した世間に教えても問題ない無難な内容をニッチスに電報を送る役割を担っているとのことで、そのついでに自分の父親にも今日僕が訪れる旨の電報を打ったらしい。
ようやくルウファへと着きすぐに向かおうとしたのに、真面目なホルアンは道を歩いているとその都度、実際に綻びがあるところを伝えてくるので、やはり少し鬱陶しく感じる。
寺子屋へようやく着いた頃には昼前になっていた。少し先に見えるところに寺子屋があると聞いて目をやると、寺子屋の前で年配の男と小さな女の子がいて何か話しているようだ。その女の子は僕たちが歩いている方向とは反対の方へ去っていく。
(あぁ、スハンの妹か……)
どこかで見たことのある子供だと思い記憶を辿ると、スハンの妹だったことを思い出す。
そう言えば、図書館へ行ってもスハンの妹を見かけないなと思っていたらここで勉強していたのかと気づく。年配の男がこちらに気づいてお辞儀した。
ホルアンの父親はユーシアという名前らしい。白髪混じりで貫禄がある雰囲気のユーシアは知的さも感じられる。
この父親からこのホルアンが生まれたとは少し意外に思った。
ユーシアに先ほどの女の子とのやり取りを聞くと、『客人が来るからと今日は子供達に帰るように言ったんですが、ミンだけギリギリまで残っていたんですよ。以前なら喜んで図書館へ行っていたのにどうしたのかなとこちらが疑問に思ってしまいました』と教えてくれる。
どうもスハンは僕が妹に何かするのではないかと恐れてこの寺子屋にいるように言ったのだろう。
客間へと通されてユーシアと向かい合って座る。ユーシアには召喚者として呼び出されたものの、自分の能力が使いこなせているか不安で他の召喚者の話を聞きたいんですが……というような感じで話を切り出すと、快く返事をしてくれた。
ただユーシアの話を聞いて、自分が思っていたような話はあまり聞けずがっかりする。何故なら過去の召喚者の話を聞けると思っていたのに、ユーシアはあまり知らなかったのだ。
と言うか、神官は複数人いて神の啓示が誰か1人に降りてくるので、毎回召喚者と関わるわけじゃないらしい。
一応呼び出した人間の能力などは知っているし話す機会もあるが、神官は啓示を受ける役割というだけみたいだ。
ユーシアが働いている期間でユーシアに啓示が降りたのは大輝1人だけだったのだ。そもそも啓示自体があまり降りず、神官が複数人いるため何回も降りてくる人は珍しいらしい。
僕が聞きたかった自己犠牲の能力を持つ前召喚者については知ることができなかった。
『あれ?僕は儀式で呼び出されてから一度も僕のことを掲示した神官とは会ってないですね…』
呼び出された時の記憶を思い返してみても騎士たちと騎士団長、その後に王子が来た覚えしかなかった。
ユーシアも『それはおかしいですね?』と首を傾げた後、『私が辞める前に少し揉め事があったので、それが原因で方針を変えたのかもしれません……』と答えてくれた。
その揉め事というのは前召喚者のことだろうかと思い、聞いてみるものの『詳しくは分からない』と教えてくれることはなかった。
ついでに召喚者以外に呼び出された人間がいる場合、その人間は元の世界に戻れないのか?という質問にも『そのような事例は聞いたことがなくて分からない』といった返事だった。
ゆうにぃが魔力のない人間だからなのか、召喚ミスを露呈させたくなかったからなのかは分からないが、僕以外にも一緒に人が呼び出されたということは知らないようだった。もしかすると、ユーシアが辞めた後だから情報が入っていないからかもしれないけど……。
『最後に禁書が保管してある場所ってご存知ですか?』
『いや……知りま『それなら図書館に保管されてます!』』
同席して所々で口を挟み、さすがに煩くてユーシアに怒られてしょげていたホルアンが目を輝かせて自分にも活躍の出番が来た!と、父であるユーシアに言葉を被せて話してくる。
最初に僕が自分の能力に自信がなくてと言った時も『何をおっしゃいますか!』と口挟んできた。
王子ほど気持ち悪くはないもののどこか似通っている所を感じる。
禁書庫について何故ホルアンが知っているのかは分からないけど、とりあえず図書館にあるらしい。
時間も過ぎ、お礼の言葉を伝えてホルアンと寺子屋を出る。
『ホルアン、今日はありがとう。とても楽しいひと時を過ごせたよ』
『いえっ!私も良太様とお話しすることができて嬉しく思います!』
『お願いがあるんだけど、明日もルウファに来れるようにしてもらえないかな?今日はホルアンもいたのにユーシアと全然話せなかったでしょ?明日、僕がルウファの結界作業するからさ親孝行と思ってユーシアと一緒に過ごしなよ』
ユーシアは年を取ってからできたホルアンのことが可愛いようで、ホルアンへ時折見せる眼差しは小さな子を見ているようだった。怒り方も小さな子にするような感じで、騎士団に入ってから一緒に過ごせなくなったことが寂しいのだということが伝わった。
ホルアンが『ですが、父は寺子屋で子供達に勉強を教えないとですし、私も作業が……』と言うので、僕が『騎士団に入ってからの話とかを子供達にしたら喜ぶと思うし、ユーシアはまだまだホルアンのことを子供だと思ってるけど、その話を聞いてホルアンのことを成長したなって感動してくれるかもよ?』と言うと喜んで引き受けてくれた。
ホルアンはユーシアに今だに子供扱いされていることに不満があったのかもしれない。
そのまま感染でもして死んだらいいのに。
魔物討伐会議は当初3階の王子の部屋で行われていたが、騎士団長補佐の男が増えたため、2階の応接室で開かれることが多くなった。
あの騎士団長補佐の男は最初たまにしかいなかったが、最近では固定で参加するようになっている。
あいつが来てから話が長引くことがあってうんざりだったが、今日のようにうまいこと誘導してやれば役にたつかもしれない。
そんな風に考えながら廊下を曲がろうとしたらドンと誰かとぶつかった。
見上げると先ほど魔物討伐会議に参加していた騎士団長補佐の男だった。
『りょっ、良太様!ご無礼を大変申し訳ございません!!」
『あ、いや、僕も見てなかったから』
『あ、あの!良太様が以前、湖で転移魔術でサッと現れた時、私は大変しびれました!』
確かホルアンとかって名前だっけな?と思いながら、その男を見ていたら口を開いて賞賛してきた。
魔物討伐会議では初めて見る顔だなと思っていたけど、以前湖のところで会っていたらしい。
『良太様がルウファの街で子供を助けた時は感動しました!あの新聞は切り抜いて持ち歩いてます!』
『そう……ありがとう……』
前から思っていたけど、この男はどことなく子供っぽさがあるのか表現がたまに稚拙に感じる時がある。なんと言うか興奮して物を言いやすいと言うか……。
正義感溢れていて学級委員長とかしてそうなタイプだ。黒髪短髪でガタイがしっかりしている男は目を輝かせながらこちらを見てくる。ルウファで生まれ育ったホルアンは、ルウファの街を守ってくれてありがとうという思いがあるみたいだ。
『私の父も感謝していました。父は元神官なんですが、今は退職してルウファで寺子屋をしています。あの時、巻き込まれた子供たちの中には父の寺子屋に通っている子もいたんです』
『へぇ、そうなんだ……。神官として働いていたのはいつ頃?』
『良太様の前の召喚者様、大輝様が父の最後の仕事です』
『ふぅん……”大輝”とおま、いやホルアンの父親は仲がいいのか?』
あの嫌いな男の名前を出すたびについ憎しみがこもった声を出してしまう。神官と聞いて大輝やそれより前の召喚者について聞けるかもしれないと考え、ホルアンに父親について聞いてみる。
『はい、そうですね。父が体を壊してから彼に薬を作っていただいています。彼の薬はよく効くので私も安心です』
『そっか、安心だね。寺子屋はどこで開いているの?』
『図書館近くです。大輝様の薬屋の近くでもありますね』
この男の父親に一度会ってみたい。ふとホルアンが僕の施した結界の補強をしていると聞いたことを思い出す。
最初の頃にかけたあまり強くない結界や知能が上がって結界を補強したい時にホルアンがしているらしいのだ。
『ホルアンは明日ルウファへ行くとさっきの会議で言ってた?』
『あ、先ほどの会議ではそう言ったのですが、ハイネスの森へ結局誰も行かないことが気になってラウリア様とユグリル騎士団長に言いに行こうかと……』
先ほどの会議では、ハイネスの森については有耶無耶にし、隣国・アルツナハインの要望についてホルアンの意見が通ったので問題解決したみたいな空気で終わったはずなのに、この男は気づいてしまったらしい。
『僕、明日ホルアンのお父さんに会ってみたいなって思ったんだけどダメかな?』
『え?!でも、結界作業はどうなさるおつもりですか?!こうしている間にも魔物は……』
『ホルアンが僕の結界の補強とかしてくれてるんだよね?良かったら僕が結界を張るところ間近で見てみない?それにホルアンが実際に張っているところを見てアドバイスできるかもしれないし。でも、王子が反対しちゃうかもしれないから、”ルウファの街の結界の綻びで気になるところがある。もし可能なら良太様に来て欲しい”って言ってみてくれないかな?そうだそうしよう。僕も一緒に王子のところへ行くからさ』
その後も戸惑っているホルアンを何とか言いくるめて、会議を開いていた応接室へと一緒に行く。騎士団長と大輝は明日アルツナハインへ行くため、早々に部屋を出ていたのは知っていた。王子だけ応接室にいることが分かっていた。
王子はいつも最後まで部屋にいるけど何をしているかなんて考えたこともなかったけど、扉を開けて驚く。僕が座っていた席に跪いて、クッション部分を匂いでいたのだ。
『おいっ!!気色悪いことするなっ』
気持ち悪すぎて思わず悪態づいてしまう。自慰はしていないようだったけど、もしかしてこの後するつもりだったかもしれないと思うと鳥肌が立った。王子は『えぇ~?どうして戻ってきたの?僕の癒しの時間が~』とか言い始めて、ゴミクズを見るような目で見てしまう。
『ちょっと気持ち悪すぎるし、明日の結界作業お前とは無理だ。ちょうどホルアンがルウファの綻びがあって気になるところがあるから僕に来て欲しいらしいし、ルウファに行くことにする。そうだよね、ホルアン?』
『はっ、はいっ!そうであります!』
ホルアンもさすがに王子の行為にドン引いているようだった。今日のことを見逃して欲しかったらハイネスの森へお前が行けと王子に言い、部屋を去る。もともと明日はハイネスの森近くの街の結界作業だったけど、それこそ別に1日くらいどうってことないだろ。
翌日、僕とホルアンでホルアンの父親が開く寺子屋へと向かった。ホルアンは毎晩、魔物討伐会議で話した世間に教えても問題ない無難な内容をニッチスに電報を送る役割を担っているとのことで、そのついでに自分の父親にも今日僕が訪れる旨の電報を打ったらしい。
ようやくルウファへと着きすぐに向かおうとしたのに、真面目なホルアンは道を歩いているとその都度、実際に綻びがあるところを伝えてくるので、やはり少し鬱陶しく感じる。
寺子屋へようやく着いた頃には昼前になっていた。少し先に見えるところに寺子屋があると聞いて目をやると、寺子屋の前で年配の男と小さな女の子がいて何か話しているようだ。その女の子は僕たちが歩いている方向とは反対の方へ去っていく。
(あぁ、スハンの妹か……)
どこかで見たことのある子供だと思い記憶を辿ると、スハンの妹だったことを思い出す。
そう言えば、図書館へ行ってもスハンの妹を見かけないなと思っていたらここで勉強していたのかと気づく。年配の男がこちらに気づいてお辞儀した。
ホルアンの父親はユーシアという名前らしい。白髪混じりで貫禄がある雰囲気のユーシアは知的さも感じられる。
この父親からこのホルアンが生まれたとは少し意外に思った。
ユーシアに先ほどの女の子とのやり取りを聞くと、『客人が来るからと今日は子供達に帰るように言ったんですが、ミンだけギリギリまで残っていたんですよ。以前なら喜んで図書館へ行っていたのにどうしたのかなとこちらが疑問に思ってしまいました』と教えてくれる。
どうもスハンは僕が妹に何かするのではないかと恐れてこの寺子屋にいるように言ったのだろう。
客間へと通されてユーシアと向かい合って座る。ユーシアには召喚者として呼び出されたものの、自分の能力が使いこなせているか不安で他の召喚者の話を聞きたいんですが……というような感じで話を切り出すと、快く返事をしてくれた。
ただユーシアの話を聞いて、自分が思っていたような話はあまり聞けずがっかりする。何故なら過去の召喚者の話を聞けると思っていたのに、ユーシアはあまり知らなかったのだ。
と言うか、神官は複数人いて神の啓示が誰か1人に降りてくるので、毎回召喚者と関わるわけじゃないらしい。
一応呼び出した人間の能力などは知っているし話す機会もあるが、神官は啓示を受ける役割というだけみたいだ。
ユーシアが働いている期間でユーシアに啓示が降りたのは大輝1人だけだったのだ。そもそも啓示自体があまり降りず、神官が複数人いるため何回も降りてくる人は珍しいらしい。
僕が聞きたかった自己犠牲の能力を持つ前召喚者については知ることができなかった。
『あれ?僕は儀式で呼び出されてから一度も僕のことを掲示した神官とは会ってないですね…』
呼び出された時の記憶を思い返してみても騎士たちと騎士団長、その後に王子が来た覚えしかなかった。
ユーシアも『それはおかしいですね?』と首を傾げた後、『私が辞める前に少し揉め事があったので、それが原因で方針を変えたのかもしれません……』と答えてくれた。
その揉め事というのは前召喚者のことだろうかと思い、聞いてみるものの『詳しくは分からない』と教えてくれることはなかった。
ついでに召喚者以外に呼び出された人間がいる場合、その人間は元の世界に戻れないのか?という質問にも『そのような事例は聞いたことがなくて分からない』といった返事だった。
ゆうにぃが魔力のない人間だからなのか、召喚ミスを露呈させたくなかったからなのかは分からないが、僕以外にも一緒に人が呼び出されたということは知らないようだった。もしかすると、ユーシアが辞めた後だから情報が入っていないからかもしれないけど……。
『最後に禁書が保管してある場所ってご存知ですか?』
『いや……知りま『それなら図書館に保管されてます!』』
同席して所々で口を挟み、さすがに煩くてユーシアに怒られてしょげていたホルアンが目を輝かせて自分にも活躍の出番が来た!と、父であるユーシアに言葉を被せて話してくる。
最初に僕が自分の能力に自信がなくてと言った時も『何をおっしゃいますか!』と口挟んできた。
王子ほど気持ち悪くはないもののどこか似通っている所を感じる。
禁書庫について何故ホルアンが知っているのかは分からないけど、とりあえず図書館にあるらしい。
時間も過ぎ、お礼の言葉を伝えてホルアンと寺子屋を出る。
『ホルアン、今日はありがとう。とても楽しいひと時を過ごせたよ』
『いえっ!私も良太様とお話しすることができて嬉しく思います!』
『お願いがあるんだけど、明日もルウファに来れるようにしてもらえないかな?今日はホルアンもいたのにユーシアと全然話せなかったでしょ?明日、僕がルウファの結界作業するからさ親孝行と思ってユーシアと一緒に過ごしなよ』
ユーシアは年を取ってからできたホルアンのことが可愛いようで、ホルアンへ時折見せる眼差しは小さな子を見ているようだった。怒り方も小さな子にするような感じで、騎士団に入ってから一緒に過ごせなくなったことが寂しいのだということが伝わった。
ホルアンが『ですが、父は寺子屋で子供達に勉強を教えないとですし、私も作業が……』と言うので、僕が『騎士団に入ってからの話とかを子供達にしたら喜ぶと思うし、ユーシアはまだまだホルアンのことを子供だと思ってるけど、その話を聞いてホルアンのことを成長したなって感動してくれるかもよ?』と言うと喜んで引き受けてくれた。
ホルアンはユーシアに今だに子供扱いされていることに不満があったのかもしれない。
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