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第四章 交錯
虚無
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食事する部屋へと向かい、奥の席に座ると良太は俺の横に座り、大輝さんは入り口近くの席に座るも、何故かラウリア王子だけすぐに部屋を出て行ってしまった。
一緒に食事するんじゃなかったのかな?と首を傾げていると良太が隣から「すぐに戻ってくるよ」と教えてくれた。
静まり返った部屋で大輝さんが良太を見て口を開いた。
「何を……企んでるんだ……?」
「別に何も。皆で楽しく話したいなって思ったんだ。今まで僕が一方的に大輝のことを嫌ってごめんね?仲良くできたらなんて思ってるんだよ?」
「国王陛下とエンフィルが亡くなったという時に何を……言ってるんだ……?」
「あぁ、そういえばいたね。そんな人たち。そんなことより大輝、弟がいるって聞いたよ?弟のことを詳しく聞きたいな、ふふっ」
亡くなった人のことをどうでもよさそうに言う良太に「おいっ」と言うも良太は気にした風もない。
そして、大輝さんも訝しげに良太を見ていた。良太が大輝さんに機嫌良く話しかける。
良太は大輝さんに弟がいることをどうして知っているんだろうか?どうして弟のことを知りたいんだ?
そんな疑問を打ち消すようにまた、良太が口を開いた。
「前の世界でも弟がセックスしてるところ黙って見てたりしてたの?」
「えっ?」「なっ……」
良太がいきなり変なことを言い始めて驚いて、良太を見た。
もしかして俺とのことをバラすつもりなのか?
尚も良太は口を開こうとするので慌てて立ち上がり、良太を止めようとする。
大輝さんも慌てた様子で席を立ち上がり、その話を遮ろうとした。そこにラウリア王子が騎士を引き連れて仰々しく部屋へと入ってきて、大輝さんを取り押さえた。
体格の良い大輝さんでも騎士たちに取り押さえられると動くことはできなかった。
『なっ……ラウリア?!どういうことだ?!』
『大輝……すまない……』
ラウリア王子は大輝さんに謝っている。大輝さんを捕まえているのはラウリア王子なのにとても苦しそうな顔で大輝さんを見つめ、そしてもう一度謝り何か言っている。
何が起こっているのか分からない……。
大輝さんは『違う』とラウリア王子に伝えるも目の前の騎士たちは大輝さんの拘束を緩めることはなかった。
その光景に驚き戸惑っていると、良太は立ち上がって俺に近づき、耳元で囁いた。
「ゆうにぃ、こいつ知ってたんだよ。あの時、見てたんだ」
「え……?「やめろっ!」」
「うるさいなぁ。今、ゆうにぃにきちんと教えてあげるんだから黙ってて」
(ーーあの時、見ていた……?あの時って……?)
俺が何を見ていたのか疑問に思っていることを良太は答え合わせをするように、そして俺が理解できるようにゆっくりと口を開いた。
良太が嘲笑いながら大輝さんを見る様、そして、大輝さんの焦る表情……それが何を意味するのかは何となく分かった。
(……いやだ……やめて……言わないで……)
「あの湖で僕たちがセックスしてたの黙って見てたんだよ。ゆうにぃが泣いてたのに止めもせず黙って見てたなんて最低だね。ゆうにぃに優しくしてたのも身体が目当てだったんだよ」
「やめろっ!!違うっ!」
『ラウリア連れて行っていいよ』
良太はラウリア王子にニッコリと笑い、ラウリア王子は何かを訴えるかのようにすがるような目で良太を見るも、良太は微笑むだけだった。大輝さんが「違うっ」と俺を見て言うも、頭には入ってこなかった。
ーー大輝さんが……知ってた……?
頭が真っ白になり何も考えられない。身体の感覚もなく、おそらく冷たくなっているであろう手足には力が入らず、立つのでやっとだった。
「優馬っ!」
ラウリア王子が大輝さんを引き連れて部屋を出て行こうとした時、もう一度大輝さんが俺に呼びかけた。
大輝さんを連れて行かないでと言って追いかけたいのに動けない。
ーー知られたくなかった。ひた隠しにしていた。大輝さんとスハンとの楽しいひと時を守るために。
でも、大輝さんは知っていたのだ……
心のどこかにポカンと穴が空いたようにーーただただ暗闇が俺を包み込み、打ちのめされた。
実の弟と関係を持っている薄汚れた俺。
大輝さんが気遣ってくれたのは同情?
それとも、良太が言ったようにあの優しい大きな手は俺の身体目当てだった……?
-ーちがう……大輝さんはそんなイヤらしい意味で触ってなんかない……
そう考えているのに、何度も良太の言った言葉が頭の中で繰り返される。
頭がこれ以上深く考えるのをやめたいと訴え、床に目を落とすと手が震えていることに気づいた。
部屋は静まり返り、良太が俺を覗き込む。その表情はとても晴れやかで楽しそうな顔をしていた。
その顔を見たくなくて目を閉じると、驚き、慌てた表情の大輝さんが思い出された。
目を閉じれば、涙が流れるかなと思ったけど、涙は流れなかった。
一緒に食事するんじゃなかったのかな?と首を傾げていると良太が隣から「すぐに戻ってくるよ」と教えてくれた。
静まり返った部屋で大輝さんが良太を見て口を開いた。
「何を……企んでるんだ……?」
「別に何も。皆で楽しく話したいなって思ったんだ。今まで僕が一方的に大輝のことを嫌ってごめんね?仲良くできたらなんて思ってるんだよ?」
「国王陛下とエンフィルが亡くなったという時に何を……言ってるんだ……?」
「あぁ、そういえばいたね。そんな人たち。そんなことより大輝、弟がいるって聞いたよ?弟のことを詳しく聞きたいな、ふふっ」
亡くなった人のことをどうでもよさそうに言う良太に「おいっ」と言うも良太は気にした風もない。
そして、大輝さんも訝しげに良太を見ていた。良太が大輝さんに機嫌良く話しかける。
良太は大輝さんに弟がいることをどうして知っているんだろうか?どうして弟のことを知りたいんだ?
そんな疑問を打ち消すようにまた、良太が口を開いた。
「前の世界でも弟がセックスしてるところ黙って見てたりしてたの?」
「えっ?」「なっ……」
良太がいきなり変なことを言い始めて驚いて、良太を見た。
もしかして俺とのことをバラすつもりなのか?
尚も良太は口を開こうとするので慌てて立ち上がり、良太を止めようとする。
大輝さんも慌てた様子で席を立ち上がり、その話を遮ろうとした。そこにラウリア王子が騎士を引き連れて仰々しく部屋へと入ってきて、大輝さんを取り押さえた。
体格の良い大輝さんでも騎士たちに取り押さえられると動くことはできなかった。
『なっ……ラウリア?!どういうことだ?!』
『大輝……すまない……』
ラウリア王子は大輝さんに謝っている。大輝さんを捕まえているのはラウリア王子なのにとても苦しそうな顔で大輝さんを見つめ、そしてもう一度謝り何か言っている。
何が起こっているのか分からない……。
大輝さんは『違う』とラウリア王子に伝えるも目の前の騎士たちは大輝さんの拘束を緩めることはなかった。
その光景に驚き戸惑っていると、良太は立ち上がって俺に近づき、耳元で囁いた。
「ゆうにぃ、こいつ知ってたんだよ。あの時、見てたんだ」
「え……?「やめろっ!」」
「うるさいなぁ。今、ゆうにぃにきちんと教えてあげるんだから黙ってて」
(ーーあの時、見ていた……?あの時って……?)
俺が何を見ていたのか疑問に思っていることを良太は答え合わせをするように、そして俺が理解できるようにゆっくりと口を開いた。
良太が嘲笑いながら大輝さんを見る様、そして、大輝さんの焦る表情……それが何を意味するのかは何となく分かった。
(……いやだ……やめて……言わないで……)
「あの湖で僕たちがセックスしてたの黙って見てたんだよ。ゆうにぃが泣いてたのに止めもせず黙って見てたなんて最低だね。ゆうにぃに優しくしてたのも身体が目当てだったんだよ」
「やめろっ!!違うっ!」
『ラウリア連れて行っていいよ』
良太はラウリア王子にニッコリと笑い、ラウリア王子は何かを訴えるかのようにすがるような目で良太を見るも、良太は微笑むだけだった。大輝さんが「違うっ」と俺を見て言うも、頭には入ってこなかった。
ーー大輝さんが……知ってた……?
頭が真っ白になり何も考えられない。身体の感覚もなく、おそらく冷たくなっているであろう手足には力が入らず、立つのでやっとだった。
「優馬っ!」
ラウリア王子が大輝さんを引き連れて部屋を出て行こうとした時、もう一度大輝さんが俺に呼びかけた。
大輝さんを連れて行かないでと言って追いかけたいのに動けない。
ーー知られたくなかった。ひた隠しにしていた。大輝さんとスハンとの楽しいひと時を守るために。
でも、大輝さんは知っていたのだ……
心のどこかにポカンと穴が空いたようにーーただただ暗闇が俺を包み込み、打ちのめされた。
実の弟と関係を持っている薄汚れた俺。
大輝さんが気遣ってくれたのは同情?
それとも、良太が言ったようにあの優しい大きな手は俺の身体目当てだった……?
-ーちがう……大輝さんはそんなイヤらしい意味で触ってなんかない……
そう考えているのに、何度も良太の言った言葉が頭の中で繰り返される。
頭がこれ以上深く考えるのをやめたいと訴え、床に目を落とすと手が震えていることに気づいた。
部屋は静まり返り、良太が俺を覗き込む。その表情はとても晴れやかで楽しそうな顔をしていた。
その顔を見たくなくて目を閉じると、驚き、慌てた表情の大輝さんが思い出された。
目を閉じれば、涙が流れるかなと思ったけど、涙は流れなかった。
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