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最終章 終焉(ナミル・魔界編)
おうちにお呼ばれ
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何度も抱き合い、お互いに身体をむさぼった後、深い眠りについた。翌朝、目を覚ますと、大輝さんが俺を抱きしめ眠っている。大輝さんの色気のある香りが鼻をくすぐり、昨日の情事を鮮明に思い出させた。頬だけでなく全身の体温が上がる。大輝さんも一緒に眠りについたのだと思っていたけど、身体は綺麗になっていて後処理を大輝さんがしてくれたのだと気付き、尚更恥ずかしくなった。
一度、自身の頬をつねってみる。少し痛いだけだ。もしかすると夢かもしれない。今度は先ほどより強く頬をつねろうとした。それを阻止するかのように大輝さんの手が伸びてきた。
「どうしたんだ?」
笑いながら、大輝さんが俺に尋ねる。
「い、え……夢かと思って……」
「ははは」
大輝さんはキョトンとした表情をした後、顔をクシャッとさせて笑った。その笑顔は朝から見るには贅沢すぎる。
「夢じゃない」
甘い声で耳元で囁くとキスをした。今度は何故かホロリと涙が零れ落ちた。
「ど、どうした?!」
「い、え……嬉しくて……俺、ほんとうに嬉しくて……」
「あぁ、俺も嬉しい」
今度は優しく微笑み、もう一度大輝さんが俺にキスを落とす。何度かキスをして、これ以上すると止まらなくなってしまう。ナミルに来て2日目の今日は友也とトルデン王子の家に行って、食事する約束をしているから、お互いに我慢してすんでのところで留まる。
「そろそろ準備しないとですねっ……?!」
ベッドから立ち上がろうとして、腰が抜け落ちた。
「だ、大丈夫か?!」
大輝さんが慌てて俺を抱き起こし、もう一度ベッドの方へと連れて行った。先ほどまではベッドの中でイチャついていたので、気付かなかった。
「すまない、無理させたな」
「いえ、全然大丈夫です。むしろその……沢山求められたんだって思えて嬉しいです」
大輝さんが俺の身体を求めてくれたことが嬉しくて、小さな声でそう口にした。
「あまり可愛いことを言ってくれるな。また抱きたくなる」
耳元で甘く囁かれるだけでズクンと下腹部が震えた。その後、俺の足腰が戻るまでベッドに食事を持ってきてくれ、寝癖のある俺の髪を整えてくれた。ようやく自分で動けるようになったのは少し時間が経ってからだ。大輝さんと友也とトルデン王子への手土産は何にしようかと話しながら身支度した。結局、友也とトルデン王子の家には、大輝さんが準備したユモルと薬草で作った安らぎのお茶と、簡単に作ったコリンの砂糖漬けをデザートにと持って行くことにした。少し歩いたところに淡い黄色の屋根が見えてきた。
「いらっしゃイ。待ってましタ!」
「トルデン王子、友也、お邪魔します」
「ふふっ、もう王子じゃないので普通に呼んでくださイ」
「はい!トルデンさん、友也、今日はよろしくお願いします」
「おぅ、昨日は観光楽しめたか?」
トルデンさんが扉を開け、友也が後ろからひょこっと顔を出した。友也と以前会った時は金色の髪だったのに、今は黒い髪になっていて、一筋の髪だけが綺麗な金色に輝いている。「友也、髪色変えたんだな」と言うよりも先に、トルデンさんが「さぁさぁ、立ち話もなんですシ、どうぞどうゾ」と言って部屋の中へと招き入れる。手土産を早速2人に渡すと、木で出来た家具が多い暖かみのある部屋へと案内され、その部屋に入っただけで心が落ち着いた。机には湯気が立った料理が沢山置かれている。
「さぁさぁ、座ってくださイ!」
「これがアオナマルのグラタンで、こっちが貝のピアッコロのクリームスープ、それでこっちが……」
友也がそう言って、用意してくれた料理を紹介してくれる。果物やお菓子、ギムコを使ったカリーヌの肉まんと種類豊富だった。
「どれもおいしい~!」
「そうだろっ?オレとトルデンが作ったからな!」
会話は弾み、時間はあっという間に過ぎた。持ってきた砂糖漬けのコリンを見て、友也が「りんご飴懐かしいな」と言って頬張った。
「そう言えば、2人は仕事はどうするんだ?大輝は薬師だろ?優馬も薬師の仕事をするのか?あ、いや、でも薬師は難しいもんな」
「え?そうなのか?」
「あぁ、元々この世界に薬師自体少ないし、あれってなんか試験あるんじゃなかったっけ?下手したら人もし……むぐ……」
「まぁ、でも急ぐ必要は無いですし、ゆっくりとネ」
旅の道中などで自分が調合した薬を使用したりする分には問題ない。ただ誰かに調合して売ったりするのは、命にかかわることもあるため、薬師の資格がいる。その資格を得るためには判定の魔法石が光る必要があるのだ。
(そうなのか……誰でもなれるわけじゃないのか……。でも、確かにそうだよな。もし間違えて調合したら一大事だ)
ナミルでも大輝さんのお手伝いをしたかったから、その事実に少しガックリした。いや、でも、こっちの世界の言葉をいまだに間違えたり、上手く話せない俺が薬師になるのは元々難しいかもしれない。
「友也は何の仕事してるんだ?」
「……に……し……る……」
先ほどまで元気に喋っていた友也が、急に声を小さくしてボソボソと言う。あまりにも小さい声だから、なかなか聞き取れない。いつどんな時も強気に見える友也にしてはどこか自信なさげで不安そうだ。首を傾げていると「…………デス」と飲み物を持ってきてくれたトルデンさんが小さな声でこっそりと教えてくれたのだ。
「あっ、トルデン、教えるなよ!」
友也が立ち上がってトルデンさんに言った。口調は強いが本気で怒ってはいないようだ。でも、そんなことよりも俺の驚きの声の方が勝った。
「え!凄いな!俺も今度行きたい……!」
「え……?」
とても凄い仕事をしているのにどうして友也は頼りなく言ったのか不思議でしょうがなかった。友也も友也で、俺の純粋な「凄い」と言う言葉に驚いたようで固まっていた。
「………………じゃぁ、今度、来てもいい」
「やった、ありがとう!」
友也は色白な頬を赤くして照れているのが分かる。黒髪に金色のメッシュの友也をもう一度見た。黒髪のせいで幼く見える。
「そう言えば、髪色変えたんだな」
「あぁ、金色に染めるにはチブンの羽が必要なんだ。もう少しだけチブンの色を身につけていたくて、一部だけ残して黒色に戻したんだ。そしたら長持ちするし」
「そう言えば、友也はチブンに何か思い出があるのか?」
「あぁ!」
友也が笑顔でチブンとの出会いを教えてくれて、俺たちはその話をワクワクして聞いた。
一度、自身の頬をつねってみる。少し痛いだけだ。もしかすると夢かもしれない。今度は先ほどより強く頬をつねろうとした。それを阻止するかのように大輝さんの手が伸びてきた。
「どうしたんだ?」
笑いながら、大輝さんが俺に尋ねる。
「い、え……夢かと思って……」
「ははは」
大輝さんはキョトンとした表情をした後、顔をクシャッとさせて笑った。その笑顔は朝から見るには贅沢すぎる。
「夢じゃない」
甘い声で耳元で囁くとキスをした。今度は何故かホロリと涙が零れ落ちた。
「ど、どうした?!」
「い、え……嬉しくて……俺、ほんとうに嬉しくて……」
「あぁ、俺も嬉しい」
今度は優しく微笑み、もう一度大輝さんが俺にキスを落とす。何度かキスをして、これ以上すると止まらなくなってしまう。ナミルに来て2日目の今日は友也とトルデン王子の家に行って、食事する約束をしているから、お互いに我慢してすんでのところで留まる。
「そろそろ準備しないとですねっ……?!」
ベッドから立ち上がろうとして、腰が抜け落ちた。
「だ、大丈夫か?!」
大輝さんが慌てて俺を抱き起こし、もう一度ベッドの方へと連れて行った。先ほどまではベッドの中でイチャついていたので、気付かなかった。
「すまない、無理させたな」
「いえ、全然大丈夫です。むしろその……沢山求められたんだって思えて嬉しいです」
大輝さんが俺の身体を求めてくれたことが嬉しくて、小さな声でそう口にした。
「あまり可愛いことを言ってくれるな。また抱きたくなる」
耳元で甘く囁かれるだけでズクンと下腹部が震えた。その後、俺の足腰が戻るまでベッドに食事を持ってきてくれ、寝癖のある俺の髪を整えてくれた。ようやく自分で動けるようになったのは少し時間が経ってからだ。大輝さんと友也とトルデン王子への手土産は何にしようかと話しながら身支度した。結局、友也とトルデン王子の家には、大輝さんが準備したユモルと薬草で作った安らぎのお茶と、簡単に作ったコリンの砂糖漬けをデザートにと持って行くことにした。少し歩いたところに淡い黄色の屋根が見えてきた。
「いらっしゃイ。待ってましタ!」
「トルデン王子、友也、お邪魔します」
「ふふっ、もう王子じゃないので普通に呼んでくださイ」
「はい!トルデンさん、友也、今日はよろしくお願いします」
「おぅ、昨日は観光楽しめたか?」
トルデンさんが扉を開け、友也が後ろからひょこっと顔を出した。友也と以前会った時は金色の髪だったのに、今は黒い髪になっていて、一筋の髪だけが綺麗な金色に輝いている。「友也、髪色変えたんだな」と言うよりも先に、トルデンさんが「さぁさぁ、立ち話もなんですシ、どうぞどうゾ」と言って部屋の中へと招き入れる。手土産を早速2人に渡すと、木で出来た家具が多い暖かみのある部屋へと案内され、その部屋に入っただけで心が落ち着いた。机には湯気が立った料理が沢山置かれている。
「さぁさぁ、座ってくださイ!」
「これがアオナマルのグラタンで、こっちが貝のピアッコロのクリームスープ、それでこっちが……」
友也がそう言って、用意してくれた料理を紹介してくれる。果物やお菓子、ギムコを使ったカリーヌの肉まんと種類豊富だった。
「どれもおいしい~!」
「そうだろっ?オレとトルデンが作ったからな!」
会話は弾み、時間はあっという間に過ぎた。持ってきた砂糖漬けのコリンを見て、友也が「りんご飴懐かしいな」と言って頬張った。
「そう言えば、2人は仕事はどうするんだ?大輝は薬師だろ?優馬も薬師の仕事をするのか?あ、いや、でも薬師は難しいもんな」
「え?そうなのか?」
「あぁ、元々この世界に薬師自体少ないし、あれってなんか試験あるんじゃなかったっけ?下手したら人もし……むぐ……」
「まぁ、でも急ぐ必要は無いですし、ゆっくりとネ」
旅の道中などで自分が調合した薬を使用したりする分には問題ない。ただ誰かに調合して売ったりするのは、命にかかわることもあるため、薬師の資格がいる。その資格を得るためには判定の魔法石が光る必要があるのだ。
(そうなのか……誰でもなれるわけじゃないのか……。でも、確かにそうだよな。もし間違えて調合したら一大事だ)
ナミルでも大輝さんのお手伝いをしたかったから、その事実に少しガックリした。いや、でも、こっちの世界の言葉をいまだに間違えたり、上手く話せない俺が薬師になるのは元々難しいかもしれない。
「友也は何の仕事してるんだ?」
「……に……し……る……」
先ほどまで元気に喋っていた友也が、急に声を小さくしてボソボソと言う。あまりにも小さい声だから、なかなか聞き取れない。いつどんな時も強気に見える友也にしてはどこか自信なさげで不安そうだ。首を傾げていると「…………デス」と飲み物を持ってきてくれたトルデンさんが小さな声でこっそりと教えてくれたのだ。
「あっ、トルデン、教えるなよ!」
友也が立ち上がってトルデンさんに言った。口調は強いが本気で怒ってはいないようだ。でも、そんなことよりも俺の驚きの声の方が勝った。
「え!凄いな!俺も今度行きたい……!」
「え……?」
とても凄い仕事をしているのにどうして友也は頼りなく言ったのか不思議でしょうがなかった。友也も友也で、俺の純粋な「凄い」と言う言葉に驚いたようで固まっていた。
「………………じゃぁ、今度、来てもいい」
「やった、ありがとう!」
友也は色白な頬を赤くして照れているのが分かる。黒髪に金色のメッシュの友也をもう一度見た。黒髪のせいで幼く見える。
「そう言えば、髪色変えたんだな」
「あぁ、金色に染めるにはチブンの羽が必要なんだ。もう少しだけチブンの色を身につけていたくて、一部だけ残して黒色に戻したんだ。そしたら長持ちするし」
「そう言えば、友也はチブンに何か思い出があるのか?」
「あぁ!」
友也が笑顔でチブンとの出会いを教えてくれて、俺たちはその話をワクワクして聞いた。
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