ドラゴンが最強だなんて誰が言った?

文月 蓮

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第一部

人間になるには……?

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 叔父の姿は人の中でも竜人りゅうじんという種族の姿を模しているらしい。
 ドラゴンの血を引く人を竜人と言うのだそうだ。
 確かに、よく見ると耳はファンタジー映画に出てくるエルフのようにとがっている。と、感心していたら、エルフは森人しんじんという別の種族で存在していると聞いて、もっと驚いた。

「どうやったら人間になれましゅか?」

 私は叔父に尋ねた。

「そうだね。ドラゴンの魔力は人の身体には多すぎるんだ。だから自分の魔力を切り離して、ちょっと周りからは見えにくいようにしまっておくのだが……見せてみたほうが早いな」

 魔力操作かぁ……。それはあまり自信がない。見てわかるものなのかな?
 不安そうに首を傾げた私に、叔父はいたずらっぽく笑った。

「ルチア、よく見ておくんだよ?」
「あいっ!」

 とりあえず、見てみなければ始まらない。
 すると、突然叔父は服を脱ぎ始めた。
 ちょっと、待って? なぜに脱ぐ?
 シャツのボタンをはずし、上着を脱いだかと思うと躊躇なくズボンも脱ぎすてて地面に落とす。下着一枚の姿になったところで、私は恥ずかしさに目をつぶった。

「ルチア、ちゃんと見なきゃ変化できないよ?」
「どうして服を脱ぐんでしゅか?」
「どうもこうも、脱がなければ破れてしまうからね」

 それはもっともだ。
 しばらくドラゴンとして生きてきたせいか、人間としての常識を忘れつつある。私は一刻も早く人間に変身する方法を会得することを心に誓った。
 こつんと頭を突かれて、私は仕方なく目を開ける。
 けれど、下半身が視界に入るのはさすがにまずいと思い、顔を上げてなんとか下を見ないようにした。

「まずは、ドラゴンの姿に戻るよ?」

 私は無言でうなずいた。
 叔父の美しい緋色の髪の毛がゆっくりと短くなっていく。尖った耳があった辺りから大きな角が両側に生えてきて、おしりの辺りからは長く立派な尻尾が生えていた。
 私は息をするのも忘れて、叔父の変身を見つめた。
 腕は大きく、太くなり、前足に変化する。足は少し折れ曲がり、後ろ足に。
 下半身を見ないようにしなければと思っていたことも忘れ、その変わりように目を奪われる。
 白く健康的に輝いていた肌には、びっしりと鱗が浮き上がり、火竜に特徴的な緋色の鱗に変わっていく。

「わあ、叔父さん、おもしろーい!」
「ラウル叔父さん、すっごい!」

 いつの間にかじゃれあうのをやめていたティートとマウロも、すぐ隣で叔父の変身を見つめている。
 叔父の背から大きな翼が二つ、空に向かって大きく伸びていく。緋色の翼を羽ばたかせて、巨体がふわりと宙に浮かび上がった。
 人の姿の時とは比べ物にならないほど、強大な魔力を感じる。
 ああ、かっこいい!
 私は興奮に目を輝かせた。
 ドラゴンとはかくあるべきという姿に、私は憧れを抱かずにはいられない。
 叔父はサービスのつもりなのか、空に向かって一つ、炎の吐息ブレスを吐き出した。
 ごおぅっという音とともに開いた口から吐き出された炎が、空を焦がす。青白く輝く炎はかなりの高温に違いない。

「すっげぇ!」
「うわぁ!」

 兄たちはかなり興奮している。つられてふたりとも小さなブレスを吐き出す。地竜や風竜である兄たちが吐き出すブレスも炎であるのが面白い。
 ブレスを吐き出しあう姿はちょっとシュールだった。
 私はあまりの迫力に、ぶるぶると震えながらその姿を遠巻きに見守る。

「ルチア、ちゃんと見ていたかい?」

 父よりも鮮やかな緋色の鱗を輝かせている姿を目にすると、やはり美形はドラゴンになっても変わらないのだと実感する。

「あい……」

 どうやったらこんなふうに鮮やかに変身できるのだろうか。

「次は、人間の姿になるよ?」

 私は唾を飲み込んだ。いよいよここからが本番だ。

「あいっ!」

 叔父は手のひらを合わせて、魔力を私の手でもつかめるほどの大きさに圧縮していく。
 さっきは変身に夢中になりすぎて、魔力の流れを見るのを忘れてしまったので、今度は注意して観察する。
 叔父はそっと地面に足を下ろし、今度は先ほどとはまったく逆の要領で人の姿に変化していく。急速に縮み、人の姿に変わっていた。

「大事なのは想像力だ」

 叔父の言葉にうなずきかけた私は彼が裸であることを思い出し、慌ててくるりとうしろを向いた。
 私は彼が裸であることを思い出し、慌ててくるりとうしろを向いた。

「ふ、ふきゅきゅ!」

 服を着てくれと言いたいのだが、動揺のあまり噛みまくってしまう。

「ああ、ごめんよ」

 叔父はあくまでも慌てることなくゆっくりと服を身につけている。人間の姿となっても、意識はドラゴンの方が強いのだろう。叔父には羞恥心というものがないようだ。
 だが、叔父のおかげで人の姿に変身できそうだ。
 私はにんまりと笑みを浮かべた。
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