ドラゴンが最強だなんて誰が言った?

文月 蓮

文字の大きさ
56 / 81
第三部

四人パーティ

しおりを挟む
「これに乗るの?」
「ああ、タダだからな」

 クラウディオの言葉、私たちはコルシニの門のすぐ外に用意されていた馬車に乗り込んだ。
 迷宮での大発生に際して、ギルドは冒険者をスムーズに現場へ運ぶために馬車を用意していた。
 緊急クエストを受注している冒険者は無料で近くまで送ってくれるらしい。
 馬車には私たちのほかにもパーティが二組ほど乗り込んでいた。
 幌を跳ね除けて、足を踏み入れたとたん、彼らの視線が私に集中するのがわかった。
 うう、居心地悪い。
 おそらく子供に見えるので、大丈夫かという心配を含んだ視線なのだろうが、そんなにあからさまに見つめなくてもいいではないかと、思ってしまう。
 入り口近くに固まっていた一団の中から、リーダーらしき人が立ち上がった。ごつい男性ばかりのメンバーで、リーダーらしき人はクラウディオに向かって手を差し出した。

「俺たちは疾風の盾。パーティネームの通り、防御が得意だ」

 お、おう。そんなパーティ名なんだね。うん、ちゅうに……。なんでもない。
 盾持ちタンクが四人のパーティだけど、攻撃役アタッカーもできるらしく、途中で役割を交代しながら戦うのが、攻撃スタイルなのだと胸を張っていた。
 何だか力押しなパーティだなあという印象だ。

「ねえ、パーティ名ってつけるのが普通なの?」

 私は小さな声でヴィートに尋ねた。

「長く同じパーティを組む場合は付けることもあるが、私は名前のついたパーティに参加したことはないな」

 パーティの名前を名乗るのは恥ずかしすぎてちょっと無理だと思っていたから、そうと聞いてほっとする。
 まあ、他の人が名乗る分にはぜんぜんかまわないんだけどね。
 奥のほうにいたもう一つのパーティとも挨拶をする。

「短い間になると思うが、よろしく」

 こっちのパーティはいつも組んでいるわけじゃなくて、今回の緊急クエストにあわせてその場で結成したということだった。
 男性二人に女性が二人で、盾持ちタンクが一人と攻撃役アタッカーが三人のパーティ構成だ。
 どのパーティにも回復役ヒーラーはいなくて、改めて回復役ヒーラーが少ないのだということを実感する。
 挨拶を終えた私たちは、馬車の中ほどに腰を降ろした。
 他に乗り込んでくる人はいなくて、しばらく待っていると馬車が動き出した。

「コルシの、洞窟は、初めてか?」
「ああ、もうちょっとレベルが上がってからって思ってたから」

 緊張に表情をこわばらせているルフィに、クラウディオが問いかける。
 迷宮に入るには星二つ以上のギルドランクを保持していることが推奨されているが、ギルドランクはあくまで目安であり、すべては自己責任となっている。
 私のように星一つで迷宮に入ったとしても、なんの罰則もない。
 けれどほとんどの冒険者は命を最優先にしているので、基本的に自分のランクよりも上のクエストを受けることはほとんどない。
 ルフィがコルシの洞窟に入らなかったのも、当然の選択だと言えた。

「じゃあ、ルチアとルフィのために説明をしておこう」

 いつも冷静なヴィートが説明を買って出てくれた。

「コルシの洞窟は地下およそ十五層からなる迷宮だ。上層、中層、低層という感じで、深くに下りれば下りるほど魔物も強くなる。低層まで下りるなら、星四つはないと厳しい。……だから、今回は上層だけにするつもりだ。クラウディオもそれでいいな?」

 クラウディオは無言でうなずく。

「大発生を収束させるために、どうすればいいのか具体的にはわかっていない。何もしなくても数日で収まったこともある。ただ、最下層まで踏破すれば大発生が治まることは確実にわかっている。今の私たちにできることは魔物の数を減らして、最下層に送り込むパーティを増やすことだけだと思う」

 うん。無理してもしょうがないからね。初心者から卒業したばかりの私と、迷宮に入れる最低ランクのルフィがいるから、私たちのパーティはみんなのサポートに回るつもりくらいでちょうどいいと思う。

「心配すんな。俺たちがきっちり最下層まで踏破してやるから、サポート頼むぜ」

 私たちの会話を聞いていた疾風の盾のメンバーの一人が、がははと笑ってルフィの背中を叩いた。

「ああ、がんばってくれ」

 私に他人を気にする余裕はない。迷宮ともなれば今までの魔物よりも手ごわくなるのは確実で、みんなの足を引っ張らないためにも、私はがんばらなくちゃいけない。

「ねえ、クラウディオ。迷宮に出る魔物について教えてくれる?」
「ああ、対策を、練ろうか」

 そんなわけで、迷宮へ向かう馬車の中で私たちのパーティは作戦会議を行った。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

処理中です...