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智樹はブツブツと言いながら、警察に追いかけられている人物を見ようと、顔を窓の方に向けると、目の前から飛んでくるヘルメットが視界に入った瞬間、窓ガラスが割れる音と同時にハンドルをきり、縁石に乗り上げ木に衝突して止まる。
「誰だ!? 馬鹿野郎が!」
ドアを勢いよく開けて道路に降りると、智樹はまるで幽霊でも見てしまったと言う表情である。先ほど殺す勢いで撥ねた夕が血まみれの状態で立っているのだ。
「よくも撥ねてくれたな!!」
喋ったタイミングで夕は智樹の顎に一発殴る。
白目を剥いた智樹は崩れ落ちると、車の後ろに回ってバックドアに手を掛けようとすると、先ほど追って来ていた警察官に両脇を抑えられ拘束される。
「君! やめないか!? これ以上罪に重ね事をやめなさい!
!」
警察官のいう事は正しい。
警察官から見れば夕は車両の襲撃、器物破損、暴行という行為をしている。
それは、ここまでの経緯を知らないからである。
夕は体をよじり警察官から逃れると、バックドアのドア部分では無く、下の方にある隙間に指を掛ける。
車に足を掛けて両手に力強く力を加えるとガチャン!と鍵が壊れる音と共に閉ざされていたドアが開く。
中を見た警察官も驚きで目を見開く。
拘束された女性が二人監禁され、一人は服を破かれている姿に。
後ろに乗っていた男性を夕は足を掴み引きずりだすと、後ろに控えていた警察官が迅速に手錠をかける。
「大丈夫だったか?」
微笑みかける。
「ん~~!」
喋れない事に気がついた夕は晶の口に付けられている物を取ると。
「呼吸が苦しかった!」
何を呑気な事をと思うけど、身体が震えている事に気がついた夕は心配を掛けたくなく強気に振舞っている事に気がついた。
「何を呑気な事を……」
あえてそこに触れず、夕も呑気に返す。
「まぁ、あれだ、とりあえず汚れているがこれでも着とけ」
拘束されていた縄を自慢の力で引きちぎり、あっちこっち破れ、血液が付着している服を晶に着せる。
服の下に着ていた黒のタンクトップはあまり破れては無いけど、肌の面が多く見える事によって傷跡が露わになる。
車と道路に接触した腕は赤黒く痛々しい打ち身の跡が見える。
慌てて、晶が回復しようとするが、夕はそれと辞めさせる。
「今はダメだ」
と言う一言に晶は我に戻る。
この状態で回復をすると、晶の能力に気がつく者が出てくるかもしれない。
「わかった。でも夕は大丈夫?」
「この程度は問題ない。近接職を舐めるなよ?」
近接と言え、あくまでゲームの世界の話であり、もちろんゲームと同じ防具を装備していれば車の衝撃などものともしないだろう。
だけど、現実ではそんな装備は存在しない。
防御力は0に等しいが、それでも車の衝撃に耐えられたのはレベルで上がった身体能力高さであった。
もし、レベルが一であれば夕は間違いなく重症を負っていた事だろ。
この件に関しては二人ともTSしていて本当に良かったと思う瞬間であった。
「姉御! 無事ですか!」
イクで走り去った朱音は遅れてだが、鏡花の元にたどり着く。
未だ意識を失っている鏡花を見つけるが、無事な姿に安堵するが、車の周りには野次馬と警察数台と救急車駆け付けて、処理を始める。
薬品を吸わされ、意識を失っている鏡花は救急車の機材である救急用ストレッチャーに乗せられて運ばれていく。
その後、意識はあるが、同じ薬品を吸わされた晶も乗せられて運ばれるが、顔を見られたくなかったのか、毛布を深く被り顔を隠して運ばれていく。
「君は報告にあった車に撥ねられた子では無いかな?」
救急の男性が声を掛ける。
上着を脱いで見える痛ましい傷で気がついたのだろう。
「撥ねられたけど、問題は無いですよ」
体は問題ないとアピールをするが、顔や髪に付着している血の塊と腕から肩にかけて打ち身の跡は隠しきれない。
「君もさっきの子の友達だろ? と言うか君が一番重傷者なのに…… なぜ元気なのだ?」
「日ごろから鍛えているからですかね」
冗談まで言えるなら命に関しては大丈夫そうであるが、車に撥ねられたとなると、内部で失血して死に至る事もあるので、病院で検査が必要という事で晶と一緒に乗る事になる。
「お前は一度、院で検査を受けるべきだ。警察の事は私に任せておけ」
行って来いと背を向けながら手を振る朱音の後ろ姿を見ながらドアが閉まるとサイレンを流しながら走り始める。
見た目が一番重度の夕が車内で出来る手当をする。
晶は夕に場所を変わり、夕が寝転がっている状態で傷の手当をする。色々な事がありすぎて夕は傷の手当てを受けている間にすやすやと寝息を立て始めるが、事故の後という事に救急隊員は状況が悪化したのかと勘違いをして夕に声を掛けるが、軽い呻き声をだして、寝が入りを打つ姿に、晶も少し安心をする。
運ばれた病院先は二人がTSしてしまった時にお世話になった病院であった。
夕の外傷は目立つものがあるが、検査をした所内部も異常が無いと診断されたが、念の為に一日入院と判断される。それは晶も同じであった。
薬品を嗅がされた事で、普通の人間ならしばらく眠った状態になる薬を嗅がされているにも関わらず、ピンピンとしている晶が変であるのだが、現に同じもの嗅がされた鏡花は未だ目を覚ましていない事から強力な物を使われたという事なのだが、医者は不思議そうにしていた。
ゴタゴタに巻き込まれ既に人々が寝始める時間、大部屋では3人がベッドで横になっている。
相変わらず寝ている夕と目を覚まさない鏡花。
唯一目をさましてベッドの上で本を読む晶。
「おっす、元気か~」
緊急の入院という事もあり、遅い時間でも病室に現れた朱音は少しやつれている。
「あっ、朱音さん。この度は……」
「おう、気にするな。今回の事はお互い様だ。そこの夕が居なければ助けられたか、わからなかったからな。それにしてもお前のツレは正直化け物だな。いくら晶が大事だと言っても事故後なのに、お前を追いかけて行くとかよほど好かれてんだな」
まぁ小さい頃からの何時も遊んでいる仲なので、他の人よりも仲が良いと思っている。
「仲は良いよ。幼馴染だからね」
「そりゃぁ仲が良いわけだな」
「まぁ今回の事は申し訳ないと思っているよ。俺達のせいで変な奴らに目を付けられて危険な目に遭わせてしまった事を」
朱音に負い目があると感じているのだろう。その深く握られた拳はプルプルと震えている。
「気にしなくて良いよ。どのみち狙われていたと思うよ。この容姿ならね」
深くため息を漏らす晶。その様子に過去に朱音は何があったのかは大体の予想がつく。テレビで美人だの可愛いと言われる有名人と比べるまでもない程の容姿に何が起こるかは誰でも予想は出来る。
「まぁ、それも今回で終わりにするよ。さすがにメデューサは今回やり過ぎた」
少し寂し気な表情をしながら、ベッドで寝ている鏡花を見る。その姿は何か決意を決めたそんな表情で病室から出て行くのであった。
少しピリッとした空気が部屋に残っており、これから何が始まるのか予想が出来てしまった。
晶は無意識に寝ている夕に手を伸ばそうとしていたが、はっと我に戻り手を下げる。
夕なら解決できる能力がある事を晶は知っている。
だから、無意識に夕を起こそうとしていた。
「夕に頼らなくても私にも力は無いけど、助けられる力はある……」
夕の様に力業が出来なくても、支援を生身の人間に掛ける事が出来れば、負ける事は無いが晶の能力が知られる事になるのは間違いない。
だが、このまま朱音を見送ればもう二度と会えない。そんな感じが晶に伝わっていた。
晶も意志を決めて、病室から出ようとする。
「何処に行く?」
ベッドから起き上がった夕が晶を見ている。
「その……」
「まぁ、言いたい事はわかるが、未成年が夜を出歩くのはダメだぞ」
白い歯を見せて笑う。
「でも……」
「俺に任せておけば大丈夫だ。晶は鏡花の様子を見ていてくれ」
夕は晶に回復魔法で傷を治すと、夕は病室を出て朱音の後を追う。
「誰だ!? 馬鹿野郎が!」
ドアを勢いよく開けて道路に降りると、智樹はまるで幽霊でも見てしまったと言う表情である。先ほど殺す勢いで撥ねた夕が血まみれの状態で立っているのだ。
「よくも撥ねてくれたな!!」
喋ったタイミングで夕は智樹の顎に一発殴る。
白目を剥いた智樹は崩れ落ちると、車の後ろに回ってバックドアに手を掛けようとすると、先ほど追って来ていた警察官に両脇を抑えられ拘束される。
「君! やめないか!? これ以上罪に重ね事をやめなさい!
!」
警察官のいう事は正しい。
警察官から見れば夕は車両の襲撃、器物破損、暴行という行為をしている。
それは、ここまでの経緯を知らないからである。
夕は体をよじり警察官から逃れると、バックドアのドア部分では無く、下の方にある隙間に指を掛ける。
車に足を掛けて両手に力強く力を加えるとガチャン!と鍵が壊れる音と共に閉ざされていたドアが開く。
中を見た警察官も驚きで目を見開く。
拘束された女性が二人監禁され、一人は服を破かれている姿に。
後ろに乗っていた男性を夕は足を掴み引きずりだすと、後ろに控えていた警察官が迅速に手錠をかける。
「大丈夫だったか?」
微笑みかける。
「ん~~!」
喋れない事に気がついた夕は晶の口に付けられている物を取ると。
「呼吸が苦しかった!」
何を呑気な事をと思うけど、身体が震えている事に気がついた夕は心配を掛けたくなく強気に振舞っている事に気がついた。
「何を呑気な事を……」
あえてそこに触れず、夕も呑気に返す。
「まぁ、あれだ、とりあえず汚れているがこれでも着とけ」
拘束されていた縄を自慢の力で引きちぎり、あっちこっち破れ、血液が付着している服を晶に着せる。
服の下に着ていた黒のタンクトップはあまり破れては無いけど、肌の面が多く見える事によって傷跡が露わになる。
車と道路に接触した腕は赤黒く痛々しい打ち身の跡が見える。
慌てて、晶が回復しようとするが、夕はそれと辞めさせる。
「今はダメだ」
と言う一言に晶は我に戻る。
この状態で回復をすると、晶の能力に気がつく者が出てくるかもしれない。
「わかった。でも夕は大丈夫?」
「この程度は問題ない。近接職を舐めるなよ?」
近接と言え、あくまでゲームの世界の話であり、もちろんゲームと同じ防具を装備していれば車の衝撃などものともしないだろう。
だけど、現実ではそんな装備は存在しない。
防御力は0に等しいが、それでも車の衝撃に耐えられたのはレベルで上がった身体能力高さであった。
もし、レベルが一であれば夕は間違いなく重症を負っていた事だろ。
この件に関しては二人ともTSしていて本当に良かったと思う瞬間であった。
「姉御! 無事ですか!」
イクで走り去った朱音は遅れてだが、鏡花の元にたどり着く。
未だ意識を失っている鏡花を見つけるが、無事な姿に安堵するが、車の周りには野次馬と警察数台と救急車駆け付けて、処理を始める。
薬品を吸わされ、意識を失っている鏡花は救急車の機材である救急用ストレッチャーに乗せられて運ばれていく。
その後、意識はあるが、同じ薬品を吸わされた晶も乗せられて運ばれるが、顔を見られたくなかったのか、毛布を深く被り顔を隠して運ばれていく。
「君は報告にあった車に撥ねられた子では無いかな?」
救急の男性が声を掛ける。
上着を脱いで見える痛ましい傷で気がついたのだろう。
「撥ねられたけど、問題は無いですよ」
体は問題ないとアピールをするが、顔や髪に付着している血の塊と腕から肩にかけて打ち身の跡は隠しきれない。
「君もさっきの子の友達だろ? と言うか君が一番重傷者なのに…… なぜ元気なのだ?」
「日ごろから鍛えているからですかね」
冗談まで言えるなら命に関しては大丈夫そうであるが、車に撥ねられたとなると、内部で失血して死に至る事もあるので、病院で検査が必要という事で晶と一緒に乗る事になる。
「お前は一度、院で検査を受けるべきだ。警察の事は私に任せておけ」
行って来いと背を向けながら手を振る朱音の後ろ姿を見ながらドアが閉まるとサイレンを流しながら走り始める。
見た目が一番重度の夕が車内で出来る手当をする。
晶は夕に場所を変わり、夕が寝転がっている状態で傷の手当をする。色々な事がありすぎて夕は傷の手当てを受けている間にすやすやと寝息を立て始めるが、事故の後という事に救急隊員は状況が悪化したのかと勘違いをして夕に声を掛けるが、軽い呻き声をだして、寝が入りを打つ姿に、晶も少し安心をする。
運ばれた病院先は二人がTSしてしまった時にお世話になった病院であった。
夕の外傷は目立つものがあるが、検査をした所内部も異常が無いと診断されたが、念の為に一日入院と判断される。それは晶も同じであった。
薬品を嗅がされた事で、普通の人間ならしばらく眠った状態になる薬を嗅がされているにも関わらず、ピンピンとしている晶が変であるのだが、現に同じもの嗅がされた鏡花は未だ目を覚ましていない事から強力な物を使われたという事なのだが、医者は不思議そうにしていた。
ゴタゴタに巻き込まれ既に人々が寝始める時間、大部屋では3人がベッドで横になっている。
相変わらず寝ている夕と目を覚まさない鏡花。
唯一目をさましてベッドの上で本を読む晶。
「おっす、元気か~」
緊急の入院という事もあり、遅い時間でも病室に現れた朱音は少しやつれている。
「あっ、朱音さん。この度は……」
「おう、気にするな。今回の事はお互い様だ。そこの夕が居なければ助けられたか、わからなかったからな。それにしてもお前のツレは正直化け物だな。いくら晶が大事だと言っても事故後なのに、お前を追いかけて行くとかよほど好かれてんだな」
まぁ小さい頃からの何時も遊んでいる仲なので、他の人よりも仲が良いと思っている。
「仲は良いよ。幼馴染だからね」
「そりゃぁ仲が良いわけだな」
「まぁ今回の事は申し訳ないと思っているよ。俺達のせいで変な奴らに目を付けられて危険な目に遭わせてしまった事を」
朱音に負い目があると感じているのだろう。その深く握られた拳はプルプルと震えている。
「気にしなくて良いよ。どのみち狙われていたと思うよ。この容姿ならね」
深くため息を漏らす晶。その様子に過去に朱音は何があったのかは大体の予想がつく。テレビで美人だの可愛いと言われる有名人と比べるまでもない程の容姿に何が起こるかは誰でも予想は出来る。
「まぁ、それも今回で終わりにするよ。さすがにメデューサは今回やり過ぎた」
少し寂し気な表情をしながら、ベッドで寝ている鏡花を見る。その姿は何か決意を決めたそんな表情で病室から出て行くのであった。
少しピリッとした空気が部屋に残っており、これから何が始まるのか予想が出来てしまった。
晶は無意識に寝ている夕に手を伸ばそうとしていたが、はっと我に戻り手を下げる。
夕なら解決できる能力がある事を晶は知っている。
だから、無意識に夕を起こそうとしていた。
「夕に頼らなくても私にも力は無いけど、助けられる力はある……」
夕の様に力業が出来なくても、支援を生身の人間に掛ける事が出来れば、負ける事は無いが晶の能力が知られる事になるのは間違いない。
だが、このまま朱音を見送ればもう二度と会えない。そんな感じが晶に伝わっていた。
晶も意志を決めて、病室から出ようとする。
「何処に行く?」
ベッドから起き上がった夕が晶を見ている。
「その……」
「まぁ、言いたい事はわかるが、未成年が夜を出歩くのはダメだぞ」
白い歯を見せて笑う。
「でも……」
「俺に任せておけば大丈夫だ。晶は鏡花の様子を見ていてくれ」
夕は晶に回復魔法で傷を治すと、夕は病室を出て朱音の後を追う。
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