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 それから夕は敵を殲滅すると、二階に居る 凌平をニヤリと笑いながら見る。次はお前だと言うように。
 ありえない光景にフリーズをしていた凌平だが、はっと我に返ると逃げるかのように移動を始めるが、それを見た夕は勢いをつけて走ると工場にある柱に向かってジャンプすると、そのままの勢いでもう一度ジャンプをして、二階にある通路の手すりに捕まり軽々と上がる。
「化け物め!」
 
 狭い通路では邪魔になるのか、凌平を守る者は居ない。
 夕はコツコツと歩き凌平の首を掴む。

「ぐっ! 何をする!?」
 
 満面な笑みで答える。

「これで終わりだ」
 
 掴んだまま夕は通路の外に凌平を出す。
 凌平は夕の右手一本で落ちるのを逃れている状態である。

「お前がその手を離したらお前も犯罪者だからな!」
「クク、大丈夫だ。そのまま落ちれば最悪死ぬかもしれないが、下には受け止めてくれる人が沢山いるから安心しろ」
 
 凌平は下を見ると、拳の骨を鳴らしながら落ちてくるのを待機して待って居る悪鬼のメンバーが居る。
 その光景に落ちれば自分がどうなるのか想像は簡単である。

「まっ、待て! 交渉をしようじゃないか、いくら払えば逃してもらえる?」
 
 もともと喧嘩を得意としていない凌平はお金で人を集めて、相手を脅すやり方がメインであった。
なので、夕も金を払えば助けてくれると思ったのだろう。

「ん~ 晶に手を出した時点で許すわけ無いだろ?」 
 晶、それは誰だと考えたが智樹が、いい女を見つけたという報告を受けていた事を思い出す。となると目の前で自分の首を掴んでいる厄介な相手に手を出したという事である。
「智樹~~!!!」
 
 目を真っ赤にしながらゆっくりと落下する。
 その顔はまるで鬼の形相である。
 そのまま悪鬼のメンバーが居る中に消えて行く凌平は数人の人間に縛られて、そのまま何処かに運ばれていく、タイミングで遠くの方から複数のサイレンの音が向かってくるのがわかった。
 
「おい! さっさと逃げるぞ! 夕!」
 
 蜘蛛の子を散らす様にそれぞれのバイクに跨り逃げ始める。

「椿さん! 起きてください! サツが来ていますよ!!」
 
 夕の攻撃が思った以上に体に効いていて、フラフラと起き上がる。 

「おい! 椿肩をまわせ」

 椿は夕が肩を貸してくれると思って夕の指示通りにするが、次の瞬間椿の体がふわりと浮く。

「はっ……」

 筋肉質の椿は100キロ近くあり夕よりも身長が高いのに、今は夕の腕の中で抱えられて走っている。
 周囲から見ても異様な光景である。
 夕からほのかに甘い匂いが鼻につく。そして、腕に当たっている豊満胸の柔らかい感触を100メートルほど体験するのであった。
 悪鬼のメンバーが乗っていた車に椿を押し込む。

「んじゃ、俺はこれで帰るわ」

 朱音に言葉を残すと夕は常闇の中に消える様に見えなくなる。
 サイレンの音も近く、夕に構っている事が出来ない朱音は車を出させる。

 皆が寝静まっている時間にこっそりと病院の病室に戻ると、夜明け前だと言うのに晶は窓の外を見ながら夕の帰りを待つ姿がある。

「早く寝ないと綺麗なお肌に悪いぞ」
「お帰り」
 
 振り向きざまに安心しきった顔で微笑む姿は破壊力がある。流石作られた顔と言えば良いのだろう。

 「おう! 問題は片付いたから俺は寝るぞ」
 
 患者用の服に着替えて、ベッドに潜ると夕はあっという間に寝息をたてる。

 次の日の朝早くに目を覚ました晶は警察から返してもらった携帯電話で学校に電話を掛ける。
 担任の先生に昨日の事情を話して休ませてもらう。
 晶と隣で寝ている夕は既に回復済みなので、異常は無い。だが、病院からすれば薬品を嗅がされた事で、体が異常をきたす可能性があるという事で一日は様子を見るという検査入院である。

 そして一番の問題は夕である。車に撥ねられてアスファルトに打ち付けられた事で、脳に失血など無いか検査はしたけど、体が頑丈なのか、肌に傷があるだけで、骨や脳に異常は無いが、何時怪我が悪化する可能性がある為に夕も入院という形である。
 まぁ当の本人は晶の隣のベッドでスヤスヤと寝ている状況である。
 生身の人間である鏡花は朝には目を覚ましていた。

「あぁ~、昨日あれから何があったか覚えているか?」
 
 昨日の出来事を鏡花に話す。

「そっか~ まぁ夕が無事だった事は良かったよ。まさか、私達関係で巻き込んでしまって申し訳ない」
「鏡花さんが居なくても私達はきっと同じ事が起こっていました。最近時に色々な事に巻き込まれる事が多くなりまして」
 
 という晶の言葉に鏡花まぁそうだろうなと思うが口には出さない。美人や可愛いと言われる有名と比べても圧倒的に晶と夕に軍配が上がるだろう。そんな人間が一般人としていれば色々から声も掛けられる。

「お前達ならまぁ色々な人間から声を掛けられるだろうな。それより夕は寝すぎじゃないか?」
「まぁ、夕は寝るが遅かったから仕方ないかな」
「まぁ、怪我だってした事だろうし、寝付けなかったんだろうな」
 
 病室で鏡花は暇つぶしにテレビの電源を入れると、ニュースが流れ始める。
 なんと、とある工場でグループの抗争があり、メデューサというグループの人間が大勢捕まったと言う報告であった。 
 だが、不可解な事に捕まったグループはメデューサのみで、抗争をしていた相手側がわからないという事実。
 そして、グループの頭である希一 凌平が何者かによって、暴行を受けた姿で警察署の近くで縛られている所を発見され事情が聞けないほど、痛めつけられていたという事である。
 
 そんなニュースを見ている最中に頬に布のガーゼを付けた朱音がお見舞いには入って来る。

「姉御? 体大丈夫ですか~」
「あぁ~ 少し体が重いぐらいだ…… ってその怪我はお前達まさか……」
 
 さすがの朱音の傷に気がつく。
 グループを脱退してからは喧嘩を全くと言って喧嘩をしていない事を鏡花は知っている。
 それなのに朱音が怪我をしていると言う事は昨日の抗争の件に関わっているという事だ。
 だが、そのグループを束ねていた鏡花だからこそわかる戦力である。
 悪鬼のメンバーだけではメデューサを一方的に負かす事は不可能であるというのにニュースでは一方的に負かして、尚且つ証拠と言うものを残していない事。
 そして、唯一可能性を秘めているのは、未だにベッドで寝ている夕の存在である。
 鏡花から見れば夕は自分よりも強いと感じている。それも底が見えない程である。ふと鼻で笑うと、鏡花は両手を後頭部に当ててベッドに寝転がる。

 その日の夕方には目を覚ました夕は病院から退院した。

 長く感じた濃い二日間を終えた晶達はいつも通りに学校に登校するが、ギャル3人組は心配そうに声を掛けてくる。
 あのナンパ事件の後に晶達が休んだ事に何かあったのかと思ったからだろう。実際に色々な事に巻き込まれたが、心配させない為にも晶は風邪を引き夕に介護をしてもらっていたと言う嘘を吐くが、3人は晶の言葉が嘘だとわかるがそれ以上は聞く事もしなかった。
 本人はあまり気にしていないようだが、メディーサの事件のニュースは地元民を含めて、大きな話題の一つである。
 グループに恐喝され暴行をされた人間は数知れず。繁華街で歩く等、狙ってくれと言っている程であった。だが、壊滅というニュースを見た繁華街で働く者、会社の飲み会などで行く者にとっては大きな喜びであった。

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