チートなんて簡単にあげないんだから~結局チートな突貫令嬢~

まきノ助

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第1章 アストリア王国に転生

42 魔法学院の2学期

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 サンクトガレン城を囲んでいたオークの群れが逃げ出して、レオポルド領の騎士とソラランド家の兎人兵士が追撃して行くのを見送り、お父様と私は城に引き上げました。


「レオポルド侯爵様、ありがとうございます。マリエル様と皆様もありがとうございました」

「ミミちゃん、城が陥落する前に、間に合って良かったね」


「1度ならず2度までも助けて頂いて、何とお礼を言ったら良いのでしょう!」

「あら、お友達を助けるのは当然ですわ」


「とりあえず、お城の客間で寛いで下さいませ。お食事を御用意致しますね」

「まぁ、戦後処理でお忙しいでしょうから、お気を使わなくて結構ですわ」

「うむ。ウォルフスベルクから、もっと兵を派遣しよう。協力し合って事後処理をしておくれ」

「はい、レオポルド侯爵様、ありがとうございます」


 〇 ▼ 〇


 翌日、レオポルド侯爵とエリザ護衛騎士は、ウォルフスベルク城の武器庫と食料庫を確認していました。
 食料庫には、討伐した沢山のオーク肉が積まれています。

「サンクトガレン城に、兵糧・武器・鎧を送ってやろうと思っているのだ」

「はい、そのように手配いたします。それと、殆どの兎人族は菜食主義者らしく、オーク肉は引き取ってくれと言われたのです。ですから小麦と野菜を送りましょう」

「エリザ、そんな事は侍従長に任せれば良い。それよりも戦場でマリエルに置いて行かれては成らぬ。護衛騎士の務めを果たせるようにするのだ」

「はっ、申し訳ありません。次こそはマリエル様の盾として十分に働く所存で御座います」

「うむ、マリエルには強力な【自動万能盾】が有るから、盾に成らなくても良いが。せめて側で支えてやってくれ」

「はい」


「それと、マリエルが1人で先走らぬように押さえてやってほしい」

「はい。ユニコーンより早いカピバラ(ピーちゃん)が走り出す前に、何とか止めるように心がけさせて頂きます」

「うむ、それで良い。……ワシは侯爵に陞爵したから、領軍と騎士団を再編成するつもりでいるのだが。エリザには、女性だけで新たに編成する『マリエル騎士団』の団長に成って貰うつもりだ」

「ははっ、有り難き幸せでございます。粉骨砕身勤めさせて頂きます……ですが、団長はルイス殿でなくて宜しいのでしょうか?」

「ロベルトには『レオポルド騎士団』団長に成って貰い、ルイスには副団長に成って貰うつもりだ」

 ロベルトはサンクトガレン城の治安維持に出向いていて、ルイスはマリエルの護衛中だった。


「はい……我がレオポルド騎士家の一族には騎士候補の若者が、まだ沢山居ります。侯爵家で受け入れて下さらないでしょうか?」

「勿論、血族の騎士は重要だが。だからと言って、新人を役職に付ける訳にはいかぬ。平騎士から経験を積んで貰う事に成る。それが嫌ならお断りしよう」

「承知致しました。父にはその様に伝えておきます。既に祖父と父の騎士家は、当侯爵家と身分が離れてしまいましたので、侯爵家の御威光に従わせて頂く所存であると聞いております」

「うむ、そうか。……それにしても沢山のオーク肉だ! 腐らせる前に商人共に売り捌きたいが、量が多すぎて運ぶのも大変だな」

「マリエル様の熊人形(ケンちゃん)のマジックバッグで、王都の大商人の倉庫まで運んで貰いましょうか?」

「ふん、しょうがない。生意気な熊人形に頼むとしよう」

「はい……」

 ケンちゃんのマジックバッグは市販の魔道具よりも収納量が多く、時間経過を止める事も出来るのでした。



 フランク王国にとってサンクトガレン城に続くアルプの山脈は、そんなに価値があるものではありませんでした。
 もっぱら、侵略の為の国境線が問題であり、経済的なメリットは低いと見ていたのです。
 しかし【識別】と【採取】スキルを持つマリエルから見ると、希少な鉱物資源と薬草が溢れる、文字通りの『宝の山』だったのです。



 〇 ▼ 〇



 アストリア魔法学院の2学期が始まりました。

「おはようございます、マリー」

「おはようございます、グレーテ」


 マリエルは教室に入ると、朝からクラスメートに囲まれました。

「マリー! サンクトガレン城がオークに襲撃されたのを、また助けたんだって?」

「はい、レクシ王子。でもそれは、お父様と騎士達が助けたのですよ」


「マリーが1人で突貫して、オークキングを蹴り倒したって噂に成ってるよ!」
 と、ブラン。

「蹴り倒したなんて酷い! 侯爵令嬢が…そんな…はしたない真似は…しませんことよ!」
(しどろ、もどろ)


「なんだぁ、ヤッパリ噂だけかぁ!」
 とロズ。

「さすがに1人で突貫しないよねぇ」
 とセフィ。


「突貫はしちゃった…けど……」

「1人で?」

「1人で……」


「オークキングに向かったの?」

「オークキングに向かった…けど……」


「蹴り倒したの?」

「倒したのはカピバラのピーちゃんなのよ! ピーちゃんが体当たりして倒して、ケンちゃんがロングソードで止めを刺したの!」


「ピーちゃんに跨って1人でオークキングに突貫したのは本当なんだね?」

「……ピーピーピー♪、ピーピーピー♪」
 マリエルは口笛を吹いて誤魔化しました。


「クレセントマリーに変身してたのに、噂になちゃったんだね」

「アウッ! 変身するのを忘れてました! って、レクシ王子も私がクレセントマリーに変身してるって知ってたのですか?」

「だって、従魔騎乗競争に変身して出場してたじゃないか、両脇にレオポルド侯爵とエリザ騎士を従えて」

「アッ……そうでした。その事も含めて皆さんも忘れてくださいな。せめて、お口にチャックでお願いします」

「「「は~ぁ、はいはい」」」


「これ以上噂が広まらない様に、気をつけようね」

「はい……」


「将来、『突貫王妃』なんて言われない様にしないとね」

「アゥッ! 気をつけますぅ……ショボン」





 お昼に学院のダイニングに行くと、ランチメニューはオーク肉を使った料理ばかりに成っていました。
 大学や騎士学校も同じくオーク肉ばかりだそうです。

「マリエルのお陰でオーク肉の価格が暴落してるらしいよ」

「まぁ、それなら孤児院にも配って上げましょう」

「ポケットマネーでオーク肉を買って、孤児院に配るの?」

「いいえ、私のマジックバッグにも沢山オーク肉が残ってるのです」

「まだあるんだ! じゃあ、帰りに孤児院に拠って行こうか」

「そうですね。グレーテ、一緒に付いて来て下さいね」

「勿論ですわ、マリー」



 孤児院に行くと修道女の責任者に面会をして、オーク肉とジャガイモ、ニンジン、たまねぎも寄付して、皆と一緒にポークシチュウを作りました。
 本当はポークカレーにしたかったけど、スパイスが揃わなかったのです。
 更にレオポルド侯爵屋敷からロールパンを貰ってきて、シチュウと一緒に食べて貰いました。


「新鮮なオーク肉をお腹一杯食べて貰って良かったわ」

「マリちゃん、結構目立ってきちゃったね。もしかして聖女にされちゃうかもよ!」

「大変ケンちゃん、またヤラカシちゃったかしら!」

「うん、ヤラカシちゃったね~」
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