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第1章 アストリア王国に転生
60 エイルの裁き!?
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アリタリカ帝国の神殿長イエニス・グレイムルが、女神エイルを彫刻した天秤型の神具の前で両手を上に向けて広げました。
「世界を救い給いし女神エイル様、帝国議会委員会で議論した内容をお聞き取り下さり、我々の前に御意思を顕し給え」
神具はエイル像の両手が天秤に成っています。
誰も触っていないのに細かく揺れ始めると、徐々に揺れ幅が大きくなっていきました。
「「「おおおぉぉぉっ!」」」
神具による占いを始めて見たフランク、アストリア、シュヴィーツの一行から驚きの声が上がります。
やがてフランクの主張を認める様に、天秤が西側に傾いてピタリと止まりました。
フランク王国代表ジャイヴ・ロドリゲス外相の顔が喜びに満ちて唇をニヤリとさせます。
神殿長や委員達の顔も自信に満ちた顔で、
『どうだ』と、言わんばかりにこちらを睥睨しました。
「女神エイル様の御意思を確認しま……!」
と、神殿長のグレイムルが宣言しようとした時……、
ピカピカ、ゴロゴロゴロ、ドドォオオオオオンッ!
帝国議会会議場の屋根を雷が直撃して大音響が響き渡り、参加者全員が身を竦めて耳を押さえました。
ジャイヴ・ロドリゲス外相が驚きつつも声を絞り出しました。
「きっと女神エイル様も我々に賛同して、アストリア王国の暴虐を非難しているのでしょう……」
『黙りなさい! この痴れ者が!』
会議室一杯に、聞き覚えのある声が凛として響きました。
すると議会の天井をすり抜けて、眩しい光がオーロラの様に揺らぎながら差し込みます。
神殿長も委員会会員も驚愕の眼差しで、その光の帯を見詰めました。
大聖女が呟きます。
「なんて事でしょう。女神エイル様の意思を伺う神具の御祈りで、この様な事が起こった事は今迄ありませんでした!」
やがて7色の光の粒が集約して人型に成っていきます。
白い薄絹のワンピースに羽衣を纏った、美しい少女姿の女神エイルが白く大きな翼を広げて顕現したのでした。
「私の名に誓っておいて、この様な不正な神具を使う事は許しません!」
ドドォオオオオオンッ!
エイルが握り締めた拳を振り上げると、落雷が発生して議決の為の神具を粉々に砕きました。
「「「ヒイイイイイッ!」」」
「「「ウワアアアアアッ!」」」
「私はシュヴィーツ地方の独立を支持いたします。私の名を穢す、この様な会議を行う事は2度と許しません。アリタリカ帝国の神殿長とフランク王国のジャイヴ・ロドリゲス外相は役職を降り謹慎しなさい。この委員会も直ちに解散するのです。さもなければ私が貴方達を罰する事に成るでしょう!」
「「ははぁぁっ。仰せの通りに致します」」
神殿長と外相は、震え上がりながら平伏しました。
「マリエルは私の親友です。この様な場所に2度と引き出しては成りません。貴方達人間が女神の親友を謀る事は決して許されないのです!」
「エイルちゃん。来てくれて、どうもありがとう」
「いいえ、マリエルちゃん。大人達を相手に臆する事無く、立派に議論しましたね」
(まぁ、前世と合わせると、もうアラサーですけどね。テヘペロ)
「エイル様、どうも有難う御座います」
シュヴィーツ地方の長老が跪いて頭を下げました。
「貴方達は良く我慢して困難を凌ぎました。これからは安心して暮して下さい」
大聖女が跪いて女神エイルを見上げます。
「敬愛する女神エイル様、アリタリカ帝国もフランク王国も、ここ数年は飢饉や疫病に苦しんでいます。どうか祝福と恵みをお与え下さいませ。民を哀れんで下さいませ」
「アリタリカ帝国は、議会で真に神の御心を求めず、自分達の都合で神の意志をネジ曲げています。フランク王国は悪辣な野心を抱いて他国を狙い、その国の民を苦しめています。祝福と恵みを与える事は出来ません。まず神を恐れ、求め、御教えを守りなさい。祝福と恵みはその後です」
「私達は毎日、神に祈りを捧げていますし、民には罪はありません。どうか民に哀れみを掛けてくださいませ」
「民の収穫を『御供え』と称して、税金の如く強制的に簒奪していながら、心から民の安らぎを祈る神官は殆ど居ません。貴方達には民を導く事は出来ないでしょう。まず国や神殿の食料庫を開き民に施しをしなさい」
「アリタリカは今年も不作でしたので、やがて飢饉に成るでしょう。食料庫を解放しても次の収穫まで持ちません」
「ここに居る議員や神殿の神官達は、飽食により肥え太ってるではありませんか。心から祈りを捧げず、畑も耕さず、傲岸にも民を苦しめて、自分達は私腹を肥やしているのです。飢饉は全て貴方達貴族の所為ではありませんか。
アリタリカ帝国とフランク王国の不作以上に、アストリア王国とシュヴィーツ地方の収穫が増えるでしょうから。頭を下げて身を低くして懇願して、食料を分けて貰いなさい。そうすれば民は飢えずに済むでしょう。
貴方達議員や神官が、家の蔵に積み上げてる宝を手放せば、アストリア王国から食料を買う事が出来る筈です。全てを手放した時に神の祝福と恵みが得られるでしょう。神は貧しい者を哀れまれる方なのですから」
「……見に染みて理解しました。寛大な御裁きを有難う御座います。それならば民は助かるでしょう」
「マリエルちゃん、御苦労様でした。若い貴方には大変だったでしょうけれど、見事に役割を担ってくれました、感謝しています。それではごきげんよう」
「エイルちゃん、ごきげんよう。またねぇ」
☆☆☆ ★★★ ☆☆☆
これで第1部の終了とさせて戴きます。
長い事お付き合い下さり有難う御座いました。
「世界を救い給いし女神エイル様、帝国議会委員会で議論した内容をお聞き取り下さり、我々の前に御意思を顕し給え」
神具はエイル像の両手が天秤に成っています。
誰も触っていないのに細かく揺れ始めると、徐々に揺れ幅が大きくなっていきました。
「「「おおおぉぉぉっ!」」」
神具による占いを始めて見たフランク、アストリア、シュヴィーツの一行から驚きの声が上がります。
やがてフランクの主張を認める様に、天秤が西側に傾いてピタリと止まりました。
フランク王国代表ジャイヴ・ロドリゲス外相の顔が喜びに満ちて唇をニヤリとさせます。
神殿長や委員達の顔も自信に満ちた顔で、
『どうだ』と、言わんばかりにこちらを睥睨しました。
「女神エイル様の御意思を確認しま……!」
と、神殿長のグレイムルが宣言しようとした時……、
ピカピカ、ゴロゴロゴロ、ドドォオオオオオンッ!
帝国議会会議場の屋根を雷が直撃して大音響が響き渡り、参加者全員が身を竦めて耳を押さえました。
ジャイヴ・ロドリゲス外相が驚きつつも声を絞り出しました。
「きっと女神エイル様も我々に賛同して、アストリア王国の暴虐を非難しているのでしょう……」
『黙りなさい! この痴れ者が!』
会議室一杯に、聞き覚えのある声が凛として響きました。
すると議会の天井をすり抜けて、眩しい光がオーロラの様に揺らぎながら差し込みます。
神殿長も委員会会員も驚愕の眼差しで、その光の帯を見詰めました。
大聖女が呟きます。
「なんて事でしょう。女神エイル様の意思を伺う神具の御祈りで、この様な事が起こった事は今迄ありませんでした!」
やがて7色の光の粒が集約して人型に成っていきます。
白い薄絹のワンピースに羽衣を纏った、美しい少女姿の女神エイルが白く大きな翼を広げて顕現したのでした。
「私の名に誓っておいて、この様な不正な神具を使う事は許しません!」
ドドォオオオオオンッ!
エイルが握り締めた拳を振り上げると、落雷が発生して議決の為の神具を粉々に砕きました。
「「「ヒイイイイイッ!」」」
「「「ウワアアアアアッ!」」」
「私はシュヴィーツ地方の独立を支持いたします。私の名を穢す、この様な会議を行う事は2度と許しません。アリタリカ帝国の神殿長とフランク王国のジャイヴ・ロドリゲス外相は役職を降り謹慎しなさい。この委員会も直ちに解散するのです。さもなければ私が貴方達を罰する事に成るでしょう!」
「「ははぁぁっ。仰せの通りに致します」」
神殿長と外相は、震え上がりながら平伏しました。
「マリエルは私の親友です。この様な場所に2度と引き出しては成りません。貴方達人間が女神の親友を謀る事は決して許されないのです!」
「エイルちゃん。来てくれて、どうもありがとう」
「いいえ、マリエルちゃん。大人達を相手に臆する事無く、立派に議論しましたね」
(まぁ、前世と合わせると、もうアラサーですけどね。テヘペロ)
「エイル様、どうも有難う御座います」
シュヴィーツ地方の長老が跪いて頭を下げました。
「貴方達は良く我慢して困難を凌ぎました。これからは安心して暮して下さい」
大聖女が跪いて女神エイルを見上げます。
「敬愛する女神エイル様、アリタリカ帝国もフランク王国も、ここ数年は飢饉や疫病に苦しんでいます。どうか祝福と恵みをお与え下さいませ。民を哀れんで下さいませ」
「アリタリカ帝国は、議会で真に神の御心を求めず、自分達の都合で神の意志をネジ曲げています。フランク王国は悪辣な野心を抱いて他国を狙い、その国の民を苦しめています。祝福と恵みを与える事は出来ません。まず神を恐れ、求め、御教えを守りなさい。祝福と恵みはその後です」
「私達は毎日、神に祈りを捧げていますし、民には罪はありません。どうか民に哀れみを掛けてくださいませ」
「民の収穫を『御供え』と称して、税金の如く強制的に簒奪していながら、心から民の安らぎを祈る神官は殆ど居ません。貴方達には民を導く事は出来ないでしょう。まず国や神殿の食料庫を開き民に施しをしなさい」
「アリタリカは今年も不作でしたので、やがて飢饉に成るでしょう。食料庫を解放しても次の収穫まで持ちません」
「ここに居る議員や神殿の神官達は、飽食により肥え太ってるではありませんか。心から祈りを捧げず、畑も耕さず、傲岸にも民を苦しめて、自分達は私腹を肥やしているのです。飢饉は全て貴方達貴族の所為ではありませんか。
アリタリカ帝国とフランク王国の不作以上に、アストリア王国とシュヴィーツ地方の収穫が増えるでしょうから。頭を下げて身を低くして懇願して、食料を分けて貰いなさい。そうすれば民は飢えずに済むでしょう。
貴方達議員や神官が、家の蔵に積み上げてる宝を手放せば、アストリア王国から食料を買う事が出来る筈です。全てを手放した時に神の祝福と恵みが得られるでしょう。神は貧しい者を哀れまれる方なのですから」
「……見に染みて理解しました。寛大な御裁きを有難う御座います。それならば民は助かるでしょう」
「マリエルちゃん、御苦労様でした。若い貴方には大変だったでしょうけれど、見事に役割を担ってくれました、感謝しています。それではごきげんよう」
「エイルちゃん、ごきげんよう。またねぇ」
☆☆☆ ★★★ ☆☆☆
これで第1部の終了とさせて戴きます。
長い事お付き合い下さり有難う御座いました。
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