チートなんて簡単にあげないんだから~結局チートな突貫令嬢~

まきノ助

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第3章 魔族王国の迷子令嬢

96 ジャマング国王からの褒美

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 又しても、私は地面に倒れて気絶してしまいました。

 夜間にもかかわらずに、王都の正門はスグに開かれました。外の避難民を受け入れる為です。
 ジルベルトはマリエルを背負って、外からの民の流れに逆らって、皆が待っている野営に戻りました。


「お嬢ちゃん、しっかりしろ」

「又、魔力切れだわ、マナポーションを飲ませましょう」

 リーゼがマリエルの頭を膝の上に乗せて口を開け、ポーションを飲ませます。

「やっぱり飲まないわ、口移しで飲ませましょう!」


 マッシュが一歩前に出ながら、

「じゃあ、俺が……」

 パッカァァァンッ!

 リーゼがマッシュの頭を再びハタキました。


「ダメッ! ミレーヌ、お願い!」

「分かったわ」


 トクトクトク……、

「……ングッ、ングッ、ングッ……」


「ん~、ノーカウントって事で……お願い…します」

「気が付いたわ」


「お嬢ちゃん、【範囲完全回復】レンジパーフェクトヒールも封印だな」

「はい……ジルベルトさん」


 ◇ ◆ ◇


 夜の暗がりの中の尖塔に、大きな魔法陣が浮かび上がり、ドーム状に光の壁が広がりました。
 道端で力なく倒れてる者にも、急に満月が上ったように明るくなった尖塔が良く見えたのです。
 獅子人族のジルベルトと猫耳を付けたマリエルの姿が、街路からもはっきり見えました。
 街を見下ろす尖塔の上で、高く両手を広げたマリエルの姿を沢山の人が見上げていたのです。


「おおぅ、女神エイル様の再臨に違いない。我々の願いが叶ったのじゃ」

(エイルは元ヴァン神族で、ヨトゥンヘイムの霜の巨人メングロズの召使めしつかいでした。アース神族の地アースガルズに移り住んでからアルフヘイムに昇天して、医療の女神と言われるように成ったのです。〔北欧神話参照〕)



 翌日早く、私達は城の謁見の間に連れて行かれました。2つのパーティーメンバーも全員一緒です。
 赤いジュータンの上で立ったまま待っていると、先ぶれが声高に告げました。

「スリヴァルディ・フィンマルク・ジャマング国王陛下の御成りである。控えおろぉぉぉぅ」

 私達は皆、片膝を付いて最敬礼をしました。
 紫色のビロードの幕の後ろから、豪華な衣装を着て王冠を被った国王が現れて、玉座に座りました。


「スリヴァルディ・フィンマルク・ジャマングだ。苦しゅうないおもてを上げよ」

 私達は少しだけ顔を上げました。


「此度の働き、見事であった。全国民を代表して感謝する。この通りじゃ」

 王が頭を下げました。


「勿体無いお言葉でございます。恐れ入りまする」

 実はここまでは、予め教わった通りに喋っているだけでした。


「ふむ、型通りの挨拶はこれでよい。マリエルとやら、もそっと近う参れ」

「はっ」


「年寄達がエイルの再臨と言って居るぞ。昔と同じ魔法を見たとな?」

「あいたたたっ……はい、記憶にある名前みたいです。きっと私と関係があるのでしょう。残念ながら私は記憶喪失なので覚えておりませんが、過去の事に触れると頭痛がするので、そのエイル様と言う方も、以前の私と関係していると思います」

「ほう、そうか。海を渡って西に行けばメングロズ女王の国だ。若い頃に女神エイルが使えていたと聞いておる」


「ありがとうございます。その国へ行けば故郷の情報を得られるかもしれません」

「お主はノスロンドの領主に実力で成ったのだ、そこで幸せに暮らしても良いのだぞ」


「私みたいな小娘が、ノスロンドの領主で良ろしいのですか?」

「良い良い、お主も誰かに奪われぬように気を付けるのだぞ。はーはっはっはっは~」

「はぃ……」


「それとは別に、王都を疫病から救った褒美を授けよう。望みは何じゃ?」

「褒美は要りません、その代わりノスロンド領の支配権をお返しさせてください」

「ほぅ、いらないのか?」

「私に政治はできません。それに私は故郷を探さなければならないのです」

「何もしなくて良いのだ、代官を決めて丸投げすれば良い。我々魔族も政治に向いてないから、人事だけ気を配れば良いのだ」


「私には人脈がありません」

「そこの仲間たちに任せればよい」


「いいんですか?」

 私は後ろを振り返り、ジルベルト達を見回します。


「いいかもな」

 と、ジルベルトがドリーに言いました。


「それでは、この10人に領を任したいと思います」

「好きにせよ、ワシが口を挟む事ではないぞ。ワシも行政は苦手じゃ、だから出来るやつに丸投げしている。人選を間違えなければ良いのじゃ。任命権者と言われる訳じゃが、その代わりに責任は全部取らねばならぬのだ。はーはっはっはっは~」


「分かりました。合議制でよく話し合い、多数決でお願いしますね」

「「「おおぅ」」」


「ほれ、それとは別に、王都を救った褒美をやらねばワシの沽券こけんに関わる。早う言うのじゃ」

「では、旅をする為に馬が欲しいです」

「ほうほう、それは良い。ここは馬の産地で良馬が沢山いるのじゃ、キット旅の役に立つであろう。王宮の馬房から選んでよいぞ。遠慮するな、どれでも好きな馬を選ぶがよいぞ」

「ははぁっ、ありがたき幸せでございます」




 国王の前を辞して、馬房に案内して貰いました。

「こちらでございますが、最奥の馬は国1番の暴れ馬です。気を付けてくださいませ、誰も乗れませんから」

「乗れない馬を厩舎に入れているのですか?」
 と、ジルベルトが首を傾げました。


「この馬は西国の大王が乗っていたという馬なのです。アレクサンドロス大王の愛馬『ブケファラス』は人を食べるが、乗りこなせれば世界を支配できると言われています」

「へぇぇ、この馬が!」


「ブッヒヒヒィィィンッ」
『お嬢ちゃん、俺をここから出してくれ、西国へ向かうんだろう? 俺も西へ帰りたいんだ!』

「まぁ、それなら一緒に行きましょう。でも、人を食べるのは困るのだけど?」

『ちゃんと食事を与えてくれれば食わないよ。人より牧草の方が美味いからな』


「じゃあ、一緒にいきましょう。……厩務員さんこの馬を褒美として頂きます。馬房から出して下さい」

「はい……」


「お嬢ちゃん、ブヒブヒ言ってたけど、馬と会話してたのかい?」

「はい、人を食べないから一緒に連れて行ってくれ。って言ってましたよ」


「そうなのか、良く調教されてる馬にした方がいいんじゃないか?」

「ブッヒヒヒィィィンッ」
『余計な事を言うんじゃねぇぇっ、ジルベルト』


「あら、リーダーの名前を知ってるのね?」

『俺はそこらの馬と違うんだ、神獣だぞぅ。フンスッ!』

 ブケファラスはドヤ顔をしました。


「神獣なら、勝手に1人で故郷に帰れそうなものだけど?」

『前ジャマング国王に呪縛を掛けられて、ここに封印されちまったんだよ。呪いを解くように国王に頼んでくれよ』


「まぁ、可哀想に……ブケファラスを【浄化】!」

 ピッキイイイイインッ!


『おおぅ、スゲェェェ。呪いが消えちまったぞ! お嬢ちゃん、ありがとう』

「うふふ、私を背中に乗せてくれるのでしょう?」

『勿論だ、乗せて走れば、アッという間に帰れるさ。ちんたら歩いてなんぞ、いられるかってとこさ』


 ブケファラスはマリエルの前に、膝を折り背を低くしました。

『さぁ、乗ってみてくれ』

「はい、まぁ大きくて立派な背中だ事!」

『そうだろう、そうだろう。そこらの馬とは違うだろう?』

「はい、そうですね。よろしくね」

『こちらこそ』


「ねぇ、言いにくいから、『ブゥちゃん』て、呼んでもいい?」

『あぁ、いいぜ』

 ピッカァァァァァンッ!

 その瞬間、ブケファラスの体が光りました。


『あっ、契約しちまった……俺とした事が、うっかり名を受けちまったなぁ。まっ、いいかぁ!』

 私は神獣ブケファラスと主従の契約を結んだのでした。
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