勇者召喚されたのは「キグルミの中の人」でした!~人見知り腐女子なので魔法少女になんて成れませんし魔王討伐もできません~

まきノ助

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15 珪砂精製の秘密

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 千代がカタランヌ町郊外の工房に来てから3ヶ月が過ぎた。

 千代のガラスや陶磁器製品は、他の職人の物を上回る出来に成ってきたが。その事は敢えて言わずに、ずっと裏方を主な仕事としている。


「ローリーさん、私が作った製品は皆さんの物と混ぜて売りましょう。私の名前は出さないで下さい。ローリー工房の1商品という事でお願いします」

「別にいいけど、名を上げてお金持ちに成りたくないの?」
「成りたくないです」

「早っ、即答じゃない!?……はぁ、まぁいいわ」


 ローリー工房の製品は慢性的な品不足になってきた、需要が伸び続けているのだ。

「皆聞いて。独立した職人さん達が工房に戻って勉強し直したい。って、言ってきてるのよ!」

あねさん、注文が沢山入って追いつかないから、それも良いかもしれませんね」
 とアランが言った。

「『ローリー工房』という名前が評判に成っているから、工房に戻った方が稼ぎが良く成りそうだ。と思ったのでしょうね」
 そう、ライナが言った。

 工房で作った全ての製品には『Rolly workshop』と、銘が刻まれているのだった。
 独立した職人達の製品には勿論『Rolly workshop』とは刻まれていない。当然、その職人の名前や屋号が刻まれていた。

 工房に復帰すれば『Rolly workshop』と、製品に銘を入れる事が出来るので、売上げ上昇が見込まれる。
 それに『Rolly workshop』の前に自分の名前を刻む事も許されるので。例えばアランの場合では『Alain in Rolly workshop』と、銘が刻まれているのだった。
 因みに、千代の製品には『Rolly workshop』としか刻まれていないが……。


「皆が大丈夫なら、元職人さん達を工房に戻しても良いかな、と私は思っているのよ。……どうかなぁ?」

「「「オッケィで~す」」」


「それじゃあ、歓迎してあげてください、宜しくね」

「「「は~い」」」



 〇 ▼ 〇



 ガラス工房と陶磁器工房で、それぞれ2人の元職人が戻って来る事になった。
 先代が亡くなって、先行きに不安を感じて独立した職人達だったのだが。最近のローリー工房の評判の良さを聞いて、戻りたいと思っていたのだ。

「これも全てチヨのお陰だわ。ありがとね」

「いいえ、ローリーさんの努力の結果だと思います」

「あらまぁ、謙虚ね。チヨも悩み事があったら遠慮なく言ってね。出来る限り頑張るからね」

「はい、ありがとうございます」



 時々工房に、見習い希望者が来るようになった。
 余所よそから来る者の殆どは、ほかより光沢や輝きのある製品の秘密を知りたいようだ。

 ローリーは面接をして、16歳のクラインという男を1人だけ雇う事にした。

他国者よそものだけど誠実そうだし、イイ男でしょう?」

 そう、チヨにだけ本音を漏らした。

「まぁ、ローリーさんのタイプなんですね?」

「違うわよ、チヨに似合うと思ったのっ!」

「まぁ、私は結構です! 男の人と付き合うなんてムリですから」

 ムリムリムリムリ! と、千代は右手を顔の前で振った。


「あら、チヨが結婚したら私の工房を引き継いで貰おうと思っているのよ。チヨは私の後継ぎなんだから!」

「え、初耳ですよ。私、結婚なんて出来ません。男の人と付き合った事も無いんですから!」

 その時、工房の男職人全員の目が『キラリン!』と輝いた。
 興奮して大きな声に成ってる2人の会話が、離れた所で休憩していた職人達にも聞こえてしまったからだ。


 妻帯者のアランが千代に聞いた。

「チヨちゃん、そんなに可愛いのに、今迄彼氏がいなかったのかい?」

「私、ちっとも可愛く何かありません……」
 うつむき加減で声が小さく成った。


「チヨちゃんが可愛くなかったら、他の女性は皆困っちゃうよ」

「まぁ…ありがとうございます。でも、そう思ってるのはきっとアランさんだけです」

「そんな事無いぞ!」

「「「うんうん」」」

 と、女性も含めた職人全員が頷いていた。


「皆さんは、きっと私を贔屓目に見て下さってるのです。大きな街に行けば、私より綺麗な女性が沢山いるはずです」

「まぁまぁ、落ち着いてチヨ。取り敢えず、チヨの男性恐怖症を治さないといけないわね」

「そうですよ、姉さん。なるべく我々も会話するように心掛けますから」

「お願いね」


「はぁぁ……」

 千代はガックリと項垂うなだれて、大きな溜息を付いてしまった。



 千代は、職人や見習いや見学者の前ではインベントリを使わない。
 ローリー以外の人の目がある時は、ローリーが最初に教えてくれた通りの珪砂の精製をする事にしていた。
 だからガラス釜や陶磁器粘土に含まれる珪砂が、いつどこで綺麗に成るのかは誰も分からなかった。


 ある日、見習いのクラインが一緒に採取に連れてってくれと、言いだした。

「私も石英の採取の仕方を勉強したいのです」

「いいわよ」

 とローリーが快諾した。そういう事が、いつかあるだろうと考えていたから。


 職人は、誰もが最初に採取を経験するものらしい。でないと、独立した時に珪砂の入手で困るからだ。
 ただ、ローリーはチヨの秘密を隠したいので、まだクラインに採取をさせていなかったのだ。
 しかし、採取をしたいと言われて断る事はできなかった。


「それでは、翌朝5時半に集合出発しますからね」

「「は~い」」


「ローリーお嬢さん、俺達も連れてってくだせぇ」

 出戻りのガラス職人2人がそう言った。


「勿論いいわよ。でも、昔と変わらないけどね」

「へぇ、それでも構わねぇです」

「オッケ~」

 職人達は製品の秘密が珪砂にある事に、うすうす気付いていたのだ。



 翌朝、ローリーと千代と荷車を曳くロッティは、3人の男職人達と丘に採取に出かけた。
 インベントリを使わずに採取をしたので、誰も珪砂の秘密は分からなかった。
 工房に帰って石英を精製して珪砂を作ってる時、千代はインベントリの中の珪砂とソ~ッと交換した。

「ふ~ぅ、ローリーさん、このぐらい精製すればいいですね?」

「うん、オッケ~」


 男職人達は通常の精製作業としか見えてなかったので、いつの間にか綺麗に成った珪砂に目を白黒させていた。

「へぇ、このお嬢さんは精製が上手なんですね!」

「チヨは丁寧に作業するからね。不純物を取り除く根気の良さかしらね、それだけの事なのよ」

「う~む、そうなんですかねぇ!?」

「それ以外、な・い・のっ!」


「勉強になりました。俺達も根気よく精製します」

「はい、お願いしますね」


 ただ、見習いのクラインだけは本人の希望で、しばらく千代と午前中の作業を一緒にするようになった。

(やり難いな~)と、千代は思う。


 何をするにもスキルが使えないのは、やはり辛かった。
 3ヶ月間で、すっかりスキルに依存するように成ってしまっていたからだった。
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