勇者召喚されたのは「キグルミの中の人」でした!~人見知り腐女子なので魔法少女になんて成れませんし魔王討伐もできません~

まきノ助

文字の大きさ
20 / 54

20 ダンジョン発見後の日常

しおりを挟む
「おはよう、おチヨちゃん」

「おはようございます…クラインさん」


「ダンジョン出現で採取に行けないのだから、遅く起きても良かったのに」

「……いいえ、採取には…行きます」

「え、行くの?」

「はい、行きます」


「じゃあ、僕も一緒に行くよ」

「護衛ゴーレムが出来たので、クラインさんは無理しなくてもいいです」

「そんなことないよ、大丈夫だよ」


「冒険者達が来ると、インベントリを使った採取が出来なくなると思うのです。だから、今のうちにインベントリを使って沢山の石英を採取しておこうと思います」

「そうか、そういう事なら喜んで協力するよ」

「はい、ありがとうございます」



 クラインと千代はダンジョン近く迄行き、いつものように石英を採取する。

「アダモちゃん、インベントリから出て来てちょうだいな」

『は~い』

 シュィイイインッ!
 ギュッ!

 護衛ゴーレムのアダモが、現れるなり千代に抱き付いてきた。


『プッハ~、この為に生きてるって感じですぅ』

「まぁ、仕事終わりに1杯飲んだサラリーマンですか!……ねぇアダモちゃん、私達が採取している間、護衛していてほしいのだけど?」

『は~い、畏まりましたぁ』

 タタタタタッ、ビュンビュンビュンッ、ピョォォォンッ!

 アダモは側転からバク転して、クルクルと回転しながら大木に近づくと。ジャンプして木の上に上り、早速辺りを睥睨へいげいして警戒態勢に入った。



 それからしばらく、千代とクラインはかなりの石英を採取したが、千代のインベントリにはまだまだ余裕があった。
 2人は小1時間程石英を採取したので、工房に帰ることにする。

 ふと気が付くと、周りにオーガやオーク等の魔物が20体ぐらい倒れていた。

「まぁアダモちゃん、沢山倒してくれてありがとう」

『お役に立てて光栄ですぅ。お邪魔にならないように瞬殺しておきましたぁ』

「そう……お疲れさまでした」


「おチヨちゃん、アダモは凄い護衛ゴーレムだね」

「はい」

『へへへぇ、このぐらいお茶の子さいさいですぅ』


 帰り道で誰かに見られないように、アダモは再びインベントリに入って貰うことにした。
 ロッティは行きも帰りも空の荷車を曳いている。
 千代がクラインを意識して、ワザとロッティを挟むようにして隣りを歩くので、ロッティは終始上機嫌だった。



 翌日から、ちらほらと冒険者達がカタランヌ町に訪れ始めた。
 午前中の採取から帰って来た千代は、雑用を終えてからローリーと一緒に店員として働く。

「明日からしばらく採取を控えます。魔物が居るのに採取していたら、変に思われるでしょうから」

「そうよね。目立ちたくないなら、そうした方がいいわね」

「はい」


 冒険者ギルドのグループの中には貴族のパーティもある。
 その為なのか、店に身なりのいい騎士風の男が入って来た。

 男は陳列されてるグラスを手に取って尋ねた。

「このグラスは、ここの工房で作ってるんだよね?」

「はい、そうです」


「これには【耐熱+1】が付与されているだろう? これをセットで注文したいんだが?」

 ローリーはチラッと千代の顔を窺う。
 チヨは小さくコックリと頷いた。


「畏まりました。1週間程お時間が掛かりますが、よろしいですか?」

「おぉ、作ってくれるのかありがたい。急がなくていいから良い物を作っておくれ。侯爵様への献上品にしたいのだ」


「侯爵様への献上品ですか?」

「そうだ、今話題に成っている熱い紅茶を入れても割れないグラスを献上したいのだ」

「熱い紅茶を入れても割れないグラス……!?」


「何だ、もしかしてそれを意図した物では無かったのか?」

 ローリーは再びチヨに目をやった。


「あの、【耐熱】効果を付与してグラスを作れば良いのですね?」
 千代が応えた。

「そうなんだが、出来るのかい?」

「はい、出来ます。デザインをこちらのカタログからお選びくださいませ」


 それは手書きのデッサンで書かれた製品カタログだ。
 職人は絵の得意な者が多いので、人気にんきがある製品を描いて貰い、貴族の注文に応える為にお店に備えていた。

 その冒険者はカタログから製品を選んで、頭金を十分に払って帰って行った。


「まさか貴族様に気付かれると思わなかったわ。チヨのガラス製品を【鑑定】されてしまったのね」

「【付与魔法】が勝手に製品に効果を付けてしまうのです。勿論、意識して特定の効果を付与する事も出来ますけど」


「まぁ、悪い事をしている訳では無いし、そういうニーズがあるなら良いじゃない?」

「はい、でもこの事は売りにしないでほしいです」


「分かったわ。チヨがそう言うならそうしましょう。でもクチコミで噂が広がっちゃうかもね」

「はい、それはしょうがありません」



 千代は休憩時間にアダモをインベントリから出して上げた。

『御嬢様ぁ、アダモにフェイスマスクを作って下さ~い?』

「アダモちゃんの顔は綺麗だから、そのままでもいいでしょう?」

『ありがとうございます。でもサチコ様から言われたのです、護衛は目立ってはいけないと。だからマスクを付けていたのですぅ』


「そうなのね、人間の顔のマスクって、どうやって作ってたの?」

『ゴムというものですぅ』


「う~ん、服飾用のゴムバンドはあるけど、ゴムの原料はカタランヌ町では見た事がないなぁ」

「絵を描くキャンバスではどうかしら、結構リアルに人の顔を描いてるのを見たことがあるわよ」
 と、ローリーが言った。


「絵の上手な職人さんに、実物大の顔をキャンバスに書いて貰って、それをアダモちゃんの顔に被せるのですね?」

「私達でやってみようか? ただし絵画の道具は、エルレイダまで行かないと売って無いけどね」

「はい、やりましょう。エルレイダにも行ってみたいです」

 千代とローリーでキャンバス布と絵具と筆を買いに、エルレイダに行くことに成った。


『アダモもインベントリに入れて連れてってくださ~い。カツラと靴も買って欲しいですぅ』

「舞踏会用のカツラと仮面ならエルレイダで売ってるわよ。貴族がよくパーティで使うからね」

「はい。 明日、エルレイダに行っても良いですか?」

「うん、乗合馬車に乗って一緒に行きましょうね」

「はい」
『ハ~イ』
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...