【完結】追放住職の山暮らし~あやかしに愛され過ぎる生臭坊主は隠居して山でスローライフを送る

伊瀬カイト

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第31話 書き初め

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『今年は書き初めはやらんのか?』

「いや、めんどくせぇ事を思い出させるなよ」

 化け狐が言った書き初めは、正月だし今年の目標を書いて春っとこうぜって気軽に始めた我が家の習慣である。
 馬鹿息子が十歳ぐらいの頃から始めたんだっけな?
 寺には筆も墨もあるから気楽に出来たんだが、寺を出ると道具を揃える所から始めなければならないので、結構面倒臭い。
 なんて、普通だったらなるんだろうが。

「馬鹿息子が来た時の荷物に混ざってたんだよな。一式。」

 酒なんかの入った荷物の一番下に忍ばせてあった、筆に硯に墨に下敷き。
 半紙だけは別になってたけどな。

 因みに我が家では書き初めの時に条幅紙を使っていた。
 半切とも呼ばれて、学校の書道なんかで使われる細長い紙だ。
 条幅紙は綺麗な状態で鞄に忍ばせるのは不可能と判断したらしい。
 懸命だな。

「うーん、面倒だがやるか。
 よし、書ける奴は全員参加で書き初めをやるぞ!
 テーマは今年の目標な!」

 こうしてあやかしも参加の書き初めが開始されて、俺が皆の分の墨汁を用意する羽目になって、早速少しばかりの後悔をする事となった。

 参加者は俺、化け狐、座敷童五人姉妹、河童、垢舐め。
 ここまでが人型で、、、いや、化け狐は獣だけど器用だから良いんだよ。
 後は外から加夫羅太伊の一番でかい奴。

 家鳴は家を叩いて応援。
 大蝦蟇は屋内に入りたがらないので不参加。
 人魂と鬼火は筆を掴めないから不参加。
 狼も同じく筆を掴めなかったので、指導教官の如く見て回る役目。

「面白そうな事をしてるな!私もやるぞ!」

 冬しか外で活動しないのに、やけに暑苦しい雪女も参加になった。

『出来たぞ』

「はっや。自分が言い出したんだから、もっと真剣に考えろよな」

 開始一分で化け狐が書き終えて今年の目標を発表する。

 “調教”

「次、誰か掛けた奴はいるか?」

 深堀りすると怖いので触れない様にしよう。

 えーと、河童は全員キュウリの絵を書いてるから脱落として、垢舐めが書き終えたのか手を上げたな。
 因みに垢舐めは、何と言うか爬虫類感強めの少女って感じで、白蛇を擬人化したみたいな見た目をしている。
 いつも風呂場にいて、ある意味風呂掃除に命を懸ける掃除屋だ。
 そんな掃除屋の今年の目標は。

 “舐める”

 知ってた。

 垢舐めが風呂場に戻って行って、作務衣の裾を誰かが引いたので振り返ると加夫羅太伊だった。
 家庭菜園で頑張るミミズ達を代表した加夫羅太伊の目標は。

 “良い土”

 今以上に良い土を作る事が可能なのかはわからないが、是非とも頑張って欲しい。

 一子、二子、三子 四子はぐちゃぐちゃで何を書いてるのかよくわからんが、頑張ったので全員の頭を撫でておく。

「出来た!」

 一人だけ自分の部屋で書いていた雪女が半紙を持って現れた。
 雪女の今年の目標は。

 “年中降雪”

 寒いだろ、止めろ馬鹿。

「出来た!」

 雪女の真似をして五子も書き終えた半紙を俺に掲げる。
 これは、あれだな。
 輪郭を見る限り俺の似顔絵だな。
 俺の似顔絵と、化け狐も一緒に書いているのかもしれない。

「よく書けてるぞ」

「えへへ」

 頭を撫でてやると五子は花が咲いた様に笑った。
 これは額にでも入れて飾っておくことにしよう。

『それで、お主の目標は何なのだ?』

 皆の書いたものを見るのに忙しくて、自分の目標がまだ書けていなかった。
 しかし、長年仕事で筆を握っていた俺は、書こうと思えばすぐにでも書ける。
 スススっと筆を走らせて皆に今年の目標を掲げた。

 “もう少し真面目にスローライフする”

 ここに来てから流石にだらけ過ぎていたのは、自覚している。
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