【完結】追放住職の山暮らし~あやかしに愛され過ぎる生臭坊主は隠居して山でスローライフを送る

伊瀬カイト

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第41話 買い物して帰ろう

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「それじゃあな。次はいつ来るかわからんから達者で」

「今度来る時は前の日に連絡しろよ、マジで。
 近い内に差し入れ持って山に行くよ」

「私も一緒に伺います」

 三時間くらいは寺にいたか。
 昼飯を食って話をして、酒をかっぱらって。

 いいって言ってるのに馬鹿息子と彼女は、俺をわざわざ見送りに来た。
 別にそれで何かが変わる訳でもないんだけどな。

 車に乗り込んで、エンジンを掛けて発車する。
 別に今生の別れでも無いし、躊躇いも感傷も無い。
 バックミラーで確認すると、二人は俺の姿が見えなくなるまで、その場に留まってたみたいだな。
 彼女の方は俺が熱烈に口説いたから、メロメロになって目で俺の姿を追い掛けてしまうのは仕方がないだろう。

 さて、震々も回収したし、ホームセンターにでも寄って、さっさと家に帰るとしよう。

_______

「悪いかったね。うちの親父、変なおっさんだっただろ?
 酒と女にだらしなくて、ろくでもない親父なんだよ」

「ふふ。謝る事じゃないわよ。
 血の繋がりは無いんだって言ってたわよね?」

「うん。それがどうかしたの?」

「貴方の前では、敢えてそうやって見せてるんじゃないかしら。
 私から見たら息子思いの立派な義父様だったわよ」

「え?親父に何言われたんだよ」

「秘密」

「教えてくれよ」

「駄目よ。秘密」

「えー、気になるじゃん教えろよ」

_______

「何だよ」

 寺から離れた所で、化け狐がくつくつと笑う。
 この笑い方は時々するのだが、小馬鹿にされてるみたいで少しだけ気になる。

『いやなに。良き父親をしていると思ってな』

「馬鹿にしてんな?」

 俺は馬鹿息子の言う通り、クソ親父だぜ?
 化け狐とは言い合いをしても、どうせ勝てない。
 なので、そこで話は終わりにして、近所のホームセンターへと向かった。

『種を買って行くのか?』

「おう。お前って玉ねぎとかにんにく食えないんだっけ?」

『食えるわ!我をそこらの狐と一緒にするな!』

「さっき馬鹿にした意趣返しだよ」

『む、別に馬鹿にしたつもりはないのだがな。
 不快にさせたならすまん』

「おう。こっちこそすまんな。
 夏野菜だけどトマトでも作ってみるか?」

『うむ、トマトは好きだ』

 ホームセンターには野菜の種も苗も売っている。
 普通の家庭菜園だったら苗を買った方が無難なんだろうが、うちの畑なら種からでも一、二ヶ月もすれば収穫出来るだろう。
 種なら嵩張らないので、売っているものを全て一袋ずつ買っていくか。

 ホームセンターでの買い物を済ませて車に乗り込み。

「あと必要な物はあれだけだな」

『うむ、あれは絶対に必要だ』

 帰り掛けにスーパーに寄って、和牛のステーキ肉とステーキソースを買った。
 冬の間は餅、魚、野菜みたいな食事ばっかりだったからな。
 化け狐と二人で、久々に牛肉を食うかと話していたのだ。

 坊主がステーキなんて食うのはどうなのかと言われそうだが、少なくとも俺の知ってる坊主には肉も魚も食わずに精進料理だけ食ってる奴はいない。
 表向きは食わないと言っていても、裏では結構堂々と食ってるもんだ。

 俺にはわからんが、普段抑圧されている中でコソコソ食う肉や魚ってのは、普通にそれらを食うより旨いのではなかろうか。
 俺は堂々と食ってるのでわからんが。

 そんな訳で囲炉裏ではなくガスコンロで焼いた和牛のステーキは、首元がヒヤッとするぐらいに旨かった。
 おい震々、人が飯食ってる時にくっ付いて来るのは止めてくれ。
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