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第52話 クコリの話
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化け狸のクコリが去って、人魂と鬼火がポツリポツリと姿を現す。
まだ深夜は肌寒いが、こいつらがいれば風邪を引く心配は無いだろう。
台所でクコリにもやったウイスキーのボトルとグラスを二つ持って縁側に戻ると、化け狐の隣にドカリと座る。
「とりあえず飲んで落ち着こうや」
『うむ』
何だか不満そうな返事だが、グラスに酒を注いでやると、ゴクリゴクリと一気に飲み干した。
こいつ狐なのに、何度見ても上手に飲むよな。
クコリも様になっていたが、あいつは人の形をしているから獣っぽいとは言え普通に手が使える。
化け狐の場合は、グラスの縁を咥えている様に見せて、実際は不思議な力で浮かせてグラスを傾けている。
それで一滴たりとも溢したのを見た事が無いのだから、見事としか言いようがない。
但し味わって飲むって事を知らないので味わい方はクコリの圧勝だが。
俺も空気に触れさせて香りを広げるだの、舌の上で転がすだの、ウイスキーを噛んで全ての風味を味わうだのはやらない。
長年俺と飲んでいるから、俺の飲み方に似たのかもしれないな。
「それで?さっきのあいつは何なんだよ?」
化け狐が間髪入れずに三杯飲んで、多少は機嫌が直ったので、クコリの話を聞いてみる。
別に話さなくても良いんだが、また来るみたいだから一応な。
『ふむ、あれは我の顔見知りの狸よ。
普段は山に籠っておるのだが、数十年に一度人里に下りては人を揶揄って遊ぶクズだ』
「クズってのはすげぇ辛辣な言い方だな。
迷惑系動画配信者みたいな事をやってるのかもしれんけど」
化け狐がここまで言うって事は、いわゆる犬猿の仲なのかもしれないな。
どっちも犬でも猿でもないけど。
実際は犬と猿って別に不仲ではないらしいけど。
「そう言えば、俺が起きた時に化け狐の姿が見えなかったんだが、どこかに行ってたのか?」
『いや?我はお主の傍にいたぞ。
あの狸は他者を騙す術を使うからな。
お主も化かされていたのではないか?』
「ああ、だったらあの夢もあいつの仕業か」
なるほど、合点がいった。
「五子が起きて来ないのもあいつの仕業か?」
『そうだな。朝になれば起きて来るだろう』
普段なら俺が起きると一緒に起きる五子は、幸せそうな顔をして仰向けで眠っている。
いつもは目を瞑って休んでいるだけなのだろうが、今は本当に寝ている様に見えるからそっとしておこう。
『あの狸とは昔喧嘩をしてな。
山一つを禿げ山に変えた事があるのだ』
「絶対にこの山でやりあうんじゃねぇぞ?
人生の最後を禿げ山で迎えるとか真っ平御免だからな」
さっき喧嘩になりかけてたのも危なかったんじゃねぇかよ。
元々心掛けてはいるのだが、化け狐を本気で怒らせないように気を付けようと、改めて心に刻んでおこう。
まだ深夜は肌寒いが、こいつらがいれば風邪を引く心配は無いだろう。
台所でクコリにもやったウイスキーのボトルとグラスを二つ持って縁側に戻ると、化け狐の隣にドカリと座る。
「とりあえず飲んで落ち着こうや」
『うむ』
何だか不満そうな返事だが、グラスに酒を注いでやると、ゴクリゴクリと一気に飲み干した。
こいつ狐なのに、何度見ても上手に飲むよな。
クコリも様になっていたが、あいつは人の形をしているから獣っぽいとは言え普通に手が使える。
化け狐の場合は、グラスの縁を咥えている様に見せて、実際は不思議な力で浮かせてグラスを傾けている。
それで一滴たりとも溢したのを見た事が無いのだから、見事としか言いようがない。
但し味わって飲むって事を知らないので味わい方はクコリの圧勝だが。
俺も空気に触れさせて香りを広げるだの、舌の上で転がすだの、ウイスキーを噛んで全ての風味を味わうだのはやらない。
長年俺と飲んでいるから、俺の飲み方に似たのかもしれないな。
「それで?さっきのあいつは何なんだよ?」
化け狐が間髪入れずに三杯飲んで、多少は機嫌が直ったので、クコリの話を聞いてみる。
別に話さなくても良いんだが、また来るみたいだから一応な。
『ふむ、あれは我の顔見知りの狸よ。
普段は山に籠っておるのだが、数十年に一度人里に下りては人を揶揄って遊ぶクズだ』
「クズってのはすげぇ辛辣な言い方だな。
迷惑系動画配信者みたいな事をやってるのかもしれんけど」
化け狐がここまで言うって事は、いわゆる犬猿の仲なのかもしれないな。
どっちも犬でも猿でもないけど。
実際は犬と猿って別に不仲ではないらしいけど。
「そう言えば、俺が起きた時に化け狐の姿が見えなかったんだが、どこかに行ってたのか?」
『いや?我はお主の傍にいたぞ。
あの狸は他者を騙す術を使うからな。
お主も化かされていたのではないか?』
「ああ、だったらあの夢もあいつの仕業か」
なるほど、合点がいった。
「五子が起きて来ないのもあいつの仕業か?」
『そうだな。朝になれば起きて来るだろう』
普段なら俺が起きると一緒に起きる五子は、幸せそうな顔をして仰向けで眠っている。
いつもは目を瞑って休んでいるだけなのだろうが、今は本当に寝ている様に見えるからそっとしておこう。
『あの狸とは昔喧嘩をしてな。
山一つを禿げ山に変えた事があるのだ』
「絶対にこの山でやりあうんじゃねぇぞ?
人生の最後を禿げ山で迎えるとか真っ平御免だからな」
さっき喧嘩になりかけてたのも危なかったんじゃねぇかよ。
元々心掛けてはいるのだが、化け狐を本気で怒らせないように気を付けようと、改めて心に刻んでおこう。
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