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第60話 帰り道はお気をつけて
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「親父さ、ちゃんと食ってるか?出てった時と比べて、随分と痩せてないか?」
息子が生意気にも俺の心配をしやがる。
そう言えば、爺にも同じ事を言われた気がするな。
「ちゃんと飲んでるぞ」
「答えになってねぇわ!何で食ってるか?の返しが飲んでるぞ、なんだよ!
真面目によ、親父ももう歳なんだから、少しは健康に気を使えよな」
「パパは元気だから安心しろ」
「きっも。親父のパパで鳥肌立ったわ。
いや、親父の場合は若い女の子にパパとか呼ばれてそうだけれども」
「俺はパパになった事は一度も無いぞ」
「知ってるよ。坊主やってたら無理だろあれは」
「お前、婚約者の前でパパ活の話なんてするなよ」
「その通りだよ!まさか親父に正論言われるなんてな!」
美香が微妙な表情を浮かべているのが見えなかったのかね。
そもそも、日は俺の話はどうでも良いわな。
それよりも二人の話をするべきだろう。
「結婚はいつにするんだ?俺も色々忙しいからな。
早めに知らせて貰わないと、予定が空けられないかもしれん」
「山に籠って生活してる親父に忙しいも何もあるか!」
「永空さん、幾ら何でもそれは失礼じゃない?」
ははは、言われてやんの。
実際ここに来てから一日たりとも予定は無かったから、息子の言ってる事が正しいんだがな。
しかし正論を言っているのは美香の方だろう。
引き籠りにどうせ予定なんて無いだろうと言ったら、事実だったとしても、決めつけるなと憤る奴もいるだろう。
つまりは、そういう事だ。
「うん、そうだったな。ごめん」
「私じゃなくって、お義父さんに謝りなさい」
「ああ、悪かった親父」
「気にするな息子。俺の心は海よりも狭いんだ」
「幅があり過ぎて具体的な広さがわかり辛ぇよ」
未来の嫁に怒られてしょんぼりしてるな。
「しょんぼり永空だな」
「しょんぼり永空って何だよ!そのちょっとムカつくネーミング止めろよ!」
随分と急激にキレが戻ったな。
「で?結婚式は?」
「あ、ああ。出来れば早めに式を上げたいと思ってるんだよ。
六月中には仏前結婚式を上げるから、親父は来てくれるだろ?」
なるほど六月か。
「坊主がジューンブライドを意識するのはどうなんだ?」
「生臭の親父にだけは言われたくないわ!
俺は坊主だから良いけどな、彼女はジューンブライドに特別な思いがあるんだよ」
「私、いつでも良いわよ?」
「いつでも良かったの!?」
今時絶対に六月じゃなきゃ嫌だって新婦は少ないと思うけどな。
「でも六月に式を上げるのは賛成よ。早く子供が欲しいし」
「そうだよな。そういう訳だから詳しい日取りが決まったら連絡するから。
親父もそのつもりでいてくれよ」
「考えとく」
「ここは即決しよう!?」
息子に心からの説得をされて、渋々参加を了承する事になった。
何せ新郎側の参列者って、下手しなくても俺一人って可能性すらあるからな。
想像しただけでも不憫過ぎて、それは流石の俺だって躊躇する。
いや、結果的には零の可能性はあるかもしれないけれども。
「それじゃあ、そろそろ帰るわ」
二人が来てから、もう三時間か四時間か。
外は既に暗くなっているので、泊っていくのかと思ったら、今日は寺に帰るそうだ。
懐中電灯でもあれば、暗い山の中でも問題は無いと思うが、俺には必要無いから用意が無い。
俺が送ってやってもいいんだが、どうするかな。
そうだ。
『本当に良いのか?』
ああ、頼む。
二人と共に外へ出ると、人魂と鬼火が庭を照らしながら道を作っている。
この光景は、見えない側の二人にも見えている筈だ。
息子も美香もあんぐりと口を開けて、驚いた様子だからな。
「明るくしておいたから、あの火の玉が作る道を進んで山から下りろ」
「あ、ああ。わかった」
「あと、これは土産な。十個入れといたから、仲良く分けて食え」
「ああ、ありがとう」
「あ、ありがとうございます」
宙に浮いた橙と青の火の玉が交互に並ぶ幻想的な光景は、単なるトリックと言うのは流石に無理があるだろう。
それでも息子はすんなりと受け入れると、美香の手を引いて歩き出した。
あいつは俺が時々独り言を言っているのなんかを聞いていたからな。
もしかしたら、超常的な存在が俺の傍にいることに感づいているのかもしれない。
途中で一度振り返った息子は、深々と頭を下げてから去っていった。
俺では無く、俺の隣に向かって頭を下げていた気がするのは、きっと気のせいだろう。
息子が生意気にも俺の心配をしやがる。
そう言えば、爺にも同じ事を言われた気がするな。
「ちゃんと飲んでるぞ」
「答えになってねぇわ!何で食ってるか?の返しが飲んでるぞ、なんだよ!
真面目によ、親父ももう歳なんだから、少しは健康に気を使えよな」
「パパは元気だから安心しろ」
「きっも。親父のパパで鳥肌立ったわ。
いや、親父の場合は若い女の子にパパとか呼ばれてそうだけれども」
「俺はパパになった事は一度も無いぞ」
「知ってるよ。坊主やってたら無理だろあれは」
「お前、婚約者の前でパパ活の話なんてするなよ」
「その通りだよ!まさか親父に正論言われるなんてな!」
美香が微妙な表情を浮かべているのが見えなかったのかね。
そもそも、日は俺の話はどうでも良いわな。
それよりも二人の話をするべきだろう。
「結婚はいつにするんだ?俺も色々忙しいからな。
早めに知らせて貰わないと、予定が空けられないかもしれん」
「山に籠って生活してる親父に忙しいも何もあるか!」
「永空さん、幾ら何でもそれは失礼じゃない?」
ははは、言われてやんの。
実際ここに来てから一日たりとも予定は無かったから、息子の言ってる事が正しいんだがな。
しかし正論を言っているのは美香の方だろう。
引き籠りにどうせ予定なんて無いだろうと言ったら、事実だったとしても、決めつけるなと憤る奴もいるだろう。
つまりは、そういう事だ。
「うん、そうだったな。ごめん」
「私じゃなくって、お義父さんに謝りなさい」
「ああ、悪かった親父」
「気にするな息子。俺の心は海よりも狭いんだ」
「幅があり過ぎて具体的な広さがわかり辛ぇよ」
未来の嫁に怒られてしょんぼりしてるな。
「しょんぼり永空だな」
「しょんぼり永空って何だよ!そのちょっとムカつくネーミング止めろよ!」
随分と急激にキレが戻ったな。
「で?結婚式は?」
「あ、ああ。出来れば早めに式を上げたいと思ってるんだよ。
六月中には仏前結婚式を上げるから、親父は来てくれるだろ?」
なるほど六月か。
「坊主がジューンブライドを意識するのはどうなんだ?」
「生臭の親父にだけは言われたくないわ!
俺は坊主だから良いけどな、彼女はジューンブライドに特別な思いがあるんだよ」
「私、いつでも良いわよ?」
「いつでも良かったの!?」
今時絶対に六月じゃなきゃ嫌だって新婦は少ないと思うけどな。
「でも六月に式を上げるのは賛成よ。早く子供が欲しいし」
「そうだよな。そういう訳だから詳しい日取りが決まったら連絡するから。
親父もそのつもりでいてくれよ」
「考えとく」
「ここは即決しよう!?」
息子に心からの説得をされて、渋々参加を了承する事になった。
何せ新郎側の参列者って、下手しなくても俺一人って可能性すらあるからな。
想像しただけでも不憫過ぎて、それは流石の俺だって躊躇する。
いや、結果的には零の可能性はあるかもしれないけれども。
「それじゃあ、そろそろ帰るわ」
二人が来てから、もう三時間か四時間か。
外は既に暗くなっているので、泊っていくのかと思ったら、今日は寺に帰るそうだ。
懐中電灯でもあれば、暗い山の中でも問題は無いと思うが、俺には必要無いから用意が無い。
俺が送ってやってもいいんだが、どうするかな。
そうだ。
『本当に良いのか?』
ああ、頼む。
二人と共に外へ出ると、人魂と鬼火が庭を照らしながら道を作っている。
この光景は、見えない側の二人にも見えている筈だ。
息子も美香もあんぐりと口を開けて、驚いた様子だからな。
「明るくしておいたから、あの火の玉が作る道を進んで山から下りろ」
「あ、ああ。わかった」
「あと、これは土産な。十個入れといたから、仲良く分けて食え」
「ああ、ありがとう」
「あ、ありがとうございます」
宙に浮いた橙と青の火の玉が交互に並ぶ幻想的な光景は、単なるトリックと言うのは流石に無理があるだろう。
それでも息子はすんなりと受け入れると、美香の手を引いて歩き出した。
あいつは俺が時々独り言を言っているのなんかを聞いていたからな。
もしかしたら、超常的な存在が俺の傍にいることに感づいているのかもしれない。
途中で一度振り返った息子は、深々と頭を下げてから去っていった。
俺では無く、俺の隣に向かって頭を下げていた気がするのは、きっと気のせいだろう。
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