【完結】追放住職の山暮らし~あやかしに愛され過ぎる生臭坊主は隠居して山でスローライフを送る

伊瀬カイト

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第74話 仏像のご利益が凄そうなんだが

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 クコリが夢に現れた日の朝、目を覚ますと俺の心はすっかり回復していた。
 もうすっかり良くなったと言って外に出ようとしたら、化け狐から『しばらくは安静にしていろ』と言われて囲炉裏の傍で寝かされた。
 座敷童の五人姉妹が見よう見まねで餅を焼いたり、キャベツを焼いたり、トマトを焼いたり、料理と呼べるかは微妙な所だが、食事の用意をまでしてくれるようになった。
 生でも食えるのを囲炉裏で香ばしく焼いただけの野菜は、味は正直に言って微妙だが、味より何より頑張って作ってくれる気持ちが嬉しかったな。

 いつもは外でフワフワ浮いている毛玉が俺の周りを飛んでいたり、普段は家に入って来ないあやかし達も時々様子を見に来たり。
 河童なんかは採れたてのキュウリを持ってきてくれたな。
 あれから、何だか皆が過保護になっている気がする。

 五月の中旬になって、ようやく皆の過保護期間が終わった。
 来月には息子の結婚式があるので、そろそろ本格的に贈り物の仏像を仕上げなければ拙い。
 時々は起き上がって仏像彫刻の練習をしていたから、初めたての頃よりは随分とマシになった気はしているが。

『くれぐれも無理はするなよ?』

「わかってるよ」

 化け狐が明らかに一番過保護だよな。
 そりゃあ付き合いの長さが段違いだし、立場が逆だったなら、俺も同じように過保護になるんだろうけどさ。

 まあ、何にせよ作らなきゃならない物だからな。
 別に誰からも求められてないし、いらねぇって言われたらそれまでなんだけどよ。
 とにかく息子に手作りの仏像を贈った時に、あいつがどんなリアクションをするのかが楽しみ過ぎるので絶対にやりたい。
 そんな訳で、俺は結婚式までに必ず仏像を完成させる。

 仏像には、色んな種類がある。
 代表的な如来なら釈迦如来に阿弥陀如来に薬師如来に大日如来。
 菩薩なら観音菩薩、弥勒菩薩、地蔵菩薩とかな。
 明王と天部は複雑過ぎて、素人が手を出しちゃいけないものなので除外する。

 この中で何を選ぶか。
 初めは釈迦如来を彫ろうと考えていたのだが、大して器用な訳でもない俺の腕では、結婚式までに間に合いそうになかったので諦めた。
 そして俺はシンプルな地蔵菩薩を選んだ。

 地蔵は小さい祠なんかにも置いてある身近な仏像だし、気は早いが安産や子供を守る意味もある。
 あまり着飾った格好はしていないし、錫杖しゃくじょうを彫るとなると一気に難易度が上がるが、手を合わせている地蔵にすれば、錫杖を作る必要も無い。

 そんな訳で、仏像彫刻を開始する。
 他にやる事も無いので無心になってトライをし続け、何日も跨いで十体彫った所で満足のいく仏像が出来上がった。

 十五センチぐらいの木彫りの正立像。
 袈裟を身に着けた可愛らしい見た目の地蔵菩薩になった。
 田舎の道端で見られるような、小柄な地蔵に近いかな。

「こんなもんで十分か」

『うむ、中々に良い出来だと思うぞ』

 化け狐からのお墨付きも出たので、これで完成とするかな。

 息子に贈る仏像が完成して達成感を味わっていると、外から金色の光る玉が家の中に入ってきた。
 あいつは鯱的な役割を任せて屋根の上にいる奴なんだが、どうしたのだろう?
 そんな疑問を抱いていたら、金の玉は俺の手元まで飛んで来て、そのまま仏像の中に入り込んでしまった。

「なんか、木彫りなのに金ピカになっちまったな」

 金の玉が入り込んで、俺の拙い地蔵菩薩が純金製の仏像みたいにギラギラ輝く。
 いや、きっと良かれと思ってやっているのだろうが、とんでもない仏像になってしまったな。

「ん?お前はどうしたんだ?」

 金ピカ仏像を見つめながら、どうしたもんかと考えていると、今度は外から毛玉が一匹入って来た。
 そいつは俺の手元まで来て、そのまま仏像の中に入り込んだ。
 何だろうなこれ、俺の作った仏像に後光が差しているように見えるんだが。

「よし、見なかった事にしよう」

 金ピカの、異常にご利益が凄そうな仏像は、仏具が置かれている机の上に飾っておく事にした。
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