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閑話 山
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永海の葬儀は盛大に執り行われた。
永海は自他共に認める生臭坊主だが、周囲からの評判はすこぶる良い。
特に、遊び歩いていた店のお姉ちゃん達からの評判が良く、永海を偲んで涙を流す派手な化粧のお姉ちゃんが沢山集まった。
店の乗客にしてはハラスメントが少なく、どんな相談にも親身になって乗ってくれると評判だった生臭坊主は、きっとお姉ちゃん達に手を合わせて貰って、あの世でほくそ笑んでいる事だろうと永空は考えている。
葬儀が終わり数日後、永空は改めて山を訪れていた。
前回訪れた時、山小屋が随分と立派な家に変わっていたので、あれはきっと役所に届けなければ拙いだろうと考えての事だ。
そもそも、山をそのままにするのか手放すのかも、家族で相談しなければならない。
そんな風に考えて山の敷地内に入ろうとしたところ、不法侵入を防ぐためのフェンスの前で、着物を来た女性が山を見上げていた。
フェンスの入口に近付くと、その女性は永空の方に振り向いた。
「ほほほ。もしや、この山の持ち主かえ?」
この世の者とは思えない程に美しい顔をした女性は、口元を手で隠しながら永空に話掛けた。
「ええ、その予定ですかね。もしや、親父の知り合いですか?」
「ほほほ。そうじゃのぅ。酒を馳走になった仲よ。
妾はもう行く。この山は手放さない方が良いぞ」
女性は名を名乗る事も無く、永空の前から去って行った。
山に登ると、そこに前回見た池や畑は無く、立派だった家も元の山小屋に戻っていた。
首を傾げつつも、あの世に行った永海が何かやっていたのだろうと納得して、山小屋の中に入る。
「あんの親父!葬式の前に大量の遺影が送られてきたと思ったら、手紙まで五パターンも用意してんじゃねぇぞ!」
山小屋の中で見付かったのは遺書と、まだ元気だった頃に書いたと思われる手紙。
遺書は財産の全てを永空に残すといった内容だったが、手紙の方が、まあ酷い。
九割がツッコミ不在のボケで占められていて、普通だったら即座に破り捨てられている内容ばかりだ。
「山を残して管理してくれってのは一枚だけか。
けど、これが親父の本心な気がする」
永空は手紙を持って帰り、妻の美香と相談した。
山の所有を続ける事は反対されると、永空は考えていたが、美香はあっさりとその申し出に頷いた。
どうやら美香は、娘の命があるのは永海のお陰だと思っているらしい。
手術の最中に夢の中で金色の光を見たと言い、娘の中に何かが存在するのを感じている。
母娘だから感じ取れるそれは生命力のようなもので、命を落とす可能性の高かった娘を生かしてくれたのは、きっとそれがあったからだと。
海陽と名付けられた娘にも、何かしら永海と同じ様な力があるのかもしれない。
山の所有者は永空へと移り、永空と育三が時々様子を見に行く形で、今も管理されている。
古ぼけた山小屋には立派な仏壇が置かれていて、永空が来た時には仏具の音色と経を唱える声が聞こえる。
永海は自他共に認める生臭坊主だが、周囲からの評判はすこぶる良い。
特に、遊び歩いていた店のお姉ちゃん達からの評判が良く、永海を偲んで涙を流す派手な化粧のお姉ちゃんが沢山集まった。
店の乗客にしてはハラスメントが少なく、どんな相談にも親身になって乗ってくれると評判だった生臭坊主は、きっとお姉ちゃん達に手を合わせて貰って、あの世でほくそ笑んでいる事だろうと永空は考えている。
葬儀が終わり数日後、永空は改めて山を訪れていた。
前回訪れた時、山小屋が随分と立派な家に変わっていたので、あれはきっと役所に届けなければ拙いだろうと考えての事だ。
そもそも、山をそのままにするのか手放すのかも、家族で相談しなければならない。
そんな風に考えて山の敷地内に入ろうとしたところ、不法侵入を防ぐためのフェンスの前で、着物を来た女性が山を見上げていた。
フェンスの入口に近付くと、その女性は永空の方に振り向いた。
「ほほほ。もしや、この山の持ち主かえ?」
この世の者とは思えない程に美しい顔をした女性は、口元を手で隠しながら永空に話掛けた。
「ええ、その予定ですかね。もしや、親父の知り合いですか?」
「ほほほ。そうじゃのぅ。酒を馳走になった仲よ。
妾はもう行く。この山は手放さない方が良いぞ」
女性は名を名乗る事も無く、永空の前から去って行った。
山に登ると、そこに前回見た池や畑は無く、立派だった家も元の山小屋に戻っていた。
首を傾げつつも、あの世に行った永海が何かやっていたのだろうと納得して、山小屋の中に入る。
「あんの親父!葬式の前に大量の遺影が送られてきたと思ったら、手紙まで五パターンも用意してんじゃねぇぞ!」
山小屋の中で見付かったのは遺書と、まだ元気だった頃に書いたと思われる手紙。
遺書は財産の全てを永空に残すといった内容だったが、手紙の方が、まあ酷い。
九割がツッコミ不在のボケで占められていて、普通だったら即座に破り捨てられている内容ばかりだ。
「山を残して管理してくれってのは一枚だけか。
けど、これが親父の本心な気がする」
永空は手紙を持って帰り、妻の美香と相談した。
山の所有を続ける事は反対されると、永空は考えていたが、美香はあっさりとその申し出に頷いた。
どうやら美香は、娘の命があるのは永海のお陰だと思っているらしい。
手術の最中に夢の中で金色の光を見たと言い、娘の中に何かが存在するのを感じている。
母娘だから感じ取れるそれは生命力のようなもので、命を落とす可能性の高かった娘を生かしてくれたのは、きっとそれがあったからだと。
海陽と名付けられた娘にも、何かしら永海と同じ様な力があるのかもしれない。
山の所有者は永空へと移り、永空と育三が時々様子を見に行く形で、今も管理されている。
古ぼけた山小屋には立派な仏壇が置かれていて、永空が来た時には仏具の音色と経を唱える声が聞こえる。
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