13 / 44
プロローグ
⑬
しおりを挟む
「ただいま」
「おかえり。と言っても本当に一瞬なのだな」
昼食、柊と買い物、SNSでの情報収集。
これらを終えて1時間以上の間を開けてログインした。
なのにステータス画面に映る時間は進んでいないし、東雲鈴音も目の前にいる。
やはりNOT THE GAMEは現実離れした技術でもって、【どの現実時間にログインしてもログアウトしたNOT THE GAMEの時間からゲームが再開出来る仕様】になっているらしい。
一応東雲鈴音が虚言を吐いている可能性も完全に消えてはいないが、【この東雲鈴音が実はプレイヤーを偽装したNPCでした】ってオチでもない限り、可能性は高いのではと思われる。
おっと、自分一人で至高を巡らすよりも集めた情報を共有しておくかな。
NGワードに引っ掛かりまくるかと思ったが、どうやらNOT THE GAMEの仕様について口にするのは問題にならないみたいだった。
「フレンド機能か。早速私とフレンド登録してくれるかい?私達はほら、リアフレだからね」
「別に良いけどリアフレって…。まだリアルで友達になった覚えはないんだが?」
「そんな事を言わないでくれ!悲しくって泣いちゃうぞ…?」
端正な顔立ちで俺を見つめながら、黒金剛石の瞳を潤ませる東雲鈴音。
正気か…?
この程度の発言で泣いちゃうのか…?
「ごめん。意地の悪い事を言った。フレンド登録しよう。リアフレとして」
「ありがとう!これが私のプレイヤーIDだ!」
謝罪してから僅か3秒だ。
東雲鈴音の手にある名刺サイズの紙には、びっしりと英数字記号を使ったプレイヤーIDが書かれていた。
確かにこれを暗記して現実の方で伝えるのは難しそうではある。
伝えられた側も暗記しないと打ち込めないだろうし。
さっき俺がしておいた検証実験の結果によっては、伝えられた側の手間は省けるかもしれないが。
「立ち直り早っ!えっと、紙を受け取って、登録をタップ、っと。これでフレンド登録完了みたいだな」
「やった!リアフレとゲームでフレンドになるなんて、にゃんにゃん以外では初めてだ!にゃんにゃんとも是非フレンド登録したいな。成木原君ともフレンドになってくれたら最高だ」
「そんなに喜んでくれると、こっちとしても悪い気はしないけれど…。にゃんにゃん…招木さんは所属エリアが違うのか?」
見えない壁の向こう側に行けない仕様上、壁を跨いでしまうと直接手渡ししての登録は不可能。
もし同じエリアに所属しているなら、東雲鈴音と招木猫は一緒に行動していてもおかしくない。
そうなると、俺と東雲鈴音が友達になる世界線はなかったかもしれない。
「そうなのだ。にゃんにゃんは埼玉28エリアだった。本当ならにゃんにゃんも一緒に遊びたかった。にゃんにゃんも成木原君なら大歓迎と言っていたからね」
「招木猫さんもNOT THE GAMEに登録したんだな。そんな事より、大歓迎…?」
俺も招木猫と遊ぶのは嫌ではない。
嫌ではないのだが、大歓迎と言われる程の関係性ではないと思うのだが。
「にゃんにゃんはおもしれー人?を好むらくてね。私はおもしれー女と言われている。私には良く分からないけれど、にゃんにゃん曰く成木原君はおもしれー男なのだそうだ」
東雲鈴音がおもしれー女ってのは、一毛すら反論の余地なく同意する。
同意するが。
俺がおもしれー男と言われるのは理解が出来ないな。
まあ、あの奇天烈猫女の感性で何か感じるものがあるのだろう。
逆に平凡過ぎておもしれーとか、そういう何かが。
ところで。
「埼玉28エリアがこの埼玉30エリアと隣接してるなら、案外容易にフレンド登録出来るかもしれないな」
「本当かい?一体どんな方法で?」
東雲鈴音は見えない壁の向こうへは通れない仕様を知っていた。
槍投げの如く刀を投擲して、上空から通り抜け出来ないかと試しても不可能だったらしい。
ガチで何やってんだよ、この女…。
だが、例え通り抜け出来なくとも、隣接さえしていれば、プレイヤーIDを伝える抜け道はある訳で。
「プレイヤーIDの書かれた紙を見せて手入力すれば良いんじゃないか?これなら入力の手間は掛かるが、暗記して現実で伝えるよりも、よっぽど楽だし現実的だ」
「なるほど、それは名案だ!」
矢鱈と長い…ぱっと見で100文字以上はある英数字記号の羅列を暗記する。
瞬間記憶を持っているとか一流大学にトップ合格する様な秀才だったらば可能だろう。
しかし少なくとも俺は、完璧に覚えるまでに少なく見積もっても7日は掛かると断言出来る。
そういった秀才達には厚底ブーツを履いて背伸びしたって届かない凡人は、躍起になって抜け道を探してやればいい。
凡人が秀才と並ぶには、小賢しく、狡賢くあるべきだと俺は考えている。
俺が提案した交換方法は正攻法ではないが、取れる手段としては最善に近いものだろう。
まあ、この方法だと一度ログアウトして待ち合わせをしなければならないから、今すぐのフレンド登録は不可能なんだけどな。
NOT THE GAMEの仕様上、やるとしても明日以降になるだろう。
「早速にゃんにゃんのところへ行こうか!」
「は…?いや、だから、壁の通り抜けは出来ないって…」
「大丈夫、私を信じてくれ!」
「ちょっと…引っ張るなって。ちょっと!」
東雲鈴音に強引に腕を引かれ、割合全速力で壁沿いを走る羽目になった。
東雲鈴音、招木猫ばりに行動が読めな過ぎて先が思いやられる―――。
「おかえり。と言っても本当に一瞬なのだな」
昼食、柊と買い物、SNSでの情報収集。
これらを終えて1時間以上の間を開けてログインした。
なのにステータス画面に映る時間は進んでいないし、東雲鈴音も目の前にいる。
やはりNOT THE GAMEは現実離れした技術でもって、【どの現実時間にログインしてもログアウトしたNOT THE GAMEの時間からゲームが再開出来る仕様】になっているらしい。
一応東雲鈴音が虚言を吐いている可能性も完全に消えてはいないが、【この東雲鈴音が実はプレイヤーを偽装したNPCでした】ってオチでもない限り、可能性は高いのではと思われる。
おっと、自分一人で至高を巡らすよりも集めた情報を共有しておくかな。
NGワードに引っ掛かりまくるかと思ったが、どうやらNOT THE GAMEの仕様について口にするのは問題にならないみたいだった。
「フレンド機能か。早速私とフレンド登録してくれるかい?私達はほら、リアフレだからね」
「別に良いけどリアフレって…。まだリアルで友達になった覚えはないんだが?」
「そんな事を言わないでくれ!悲しくって泣いちゃうぞ…?」
端正な顔立ちで俺を見つめながら、黒金剛石の瞳を潤ませる東雲鈴音。
正気か…?
この程度の発言で泣いちゃうのか…?
「ごめん。意地の悪い事を言った。フレンド登録しよう。リアフレとして」
「ありがとう!これが私のプレイヤーIDだ!」
謝罪してから僅か3秒だ。
東雲鈴音の手にある名刺サイズの紙には、びっしりと英数字記号を使ったプレイヤーIDが書かれていた。
確かにこれを暗記して現実の方で伝えるのは難しそうではある。
伝えられた側も暗記しないと打ち込めないだろうし。
さっき俺がしておいた検証実験の結果によっては、伝えられた側の手間は省けるかもしれないが。
「立ち直り早っ!えっと、紙を受け取って、登録をタップ、っと。これでフレンド登録完了みたいだな」
「やった!リアフレとゲームでフレンドになるなんて、にゃんにゃん以外では初めてだ!にゃんにゃんとも是非フレンド登録したいな。成木原君ともフレンドになってくれたら最高だ」
「そんなに喜んでくれると、こっちとしても悪い気はしないけれど…。にゃんにゃん…招木さんは所属エリアが違うのか?」
見えない壁の向こう側に行けない仕様上、壁を跨いでしまうと直接手渡ししての登録は不可能。
もし同じエリアに所属しているなら、東雲鈴音と招木猫は一緒に行動していてもおかしくない。
そうなると、俺と東雲鈴音が友達になる世界線はなかったかもしれない。
「そうなのだ。にゃんにゃんは埼玉28エリアだった。本当ならにゃんにゃんも一緒に遊びたかった。にゃんにゃんも成木原君なら大歓迎と言っていたからね」
「招木猫さんもNOT THE GAMEに登録したんだな。そんな事より、大歓迎…?」
俺も招木猫と遊ぶのは嫌ではない。
嫌ではないのだが、大歓迎と言われる程の関係性ではないと思うのだが。
「にゃんにゃんはおもしれー人?を好むらくてね。私はおもしれー女と言われている。私には良く分からないけれど、にゃんにゃん曰く成木原君はおもしれー男なのだそうだ」
東雲鈴音がおもしれー女ってのは、一毛すら反論の余地なく同意する。
同意するが。
俺がおもしれー男と言われるのは理解が出来ないな。
まあ、あの奇天烈猫女の感性で何か感じるものがあるのだろう。
逆に平凡過ぎておもしれーとか、そういう何かが。
ところで。
「埼玉28エリアがこの埼玉30エリアと隣接してるなら、案外容易にフレンド登録出来るかもしれないな」
「本当かい?一体どんな方法で?」
東雲鈴音は見えない壁の向こうへは通れない仕様を知っていた。
槍投げの如く刀を投擲して、上空から通り抜け出来ないかと試しても不可能だったらしい。
ガチで何やってんだよ、この女…。
だが、例え通り抜け出来なくとも、隣接さえしていれば、プレイヤーIDを伝える抜け道はある訳で。
「プレイヤーIDの書かれた紙を見せて手入力すれば良いんじゃないか?これなら入力の手間は掛かるが、暗記して現実で伝えるよりも、よっぽど楽だし現実的だ」
「なるほど、それは名案だ!」
矢鱈と長い…ぱっと見で100文字以上はある英数字記号の羅列を暗記する。
瞬間記憶を持っているとか一流大学にトップ合格する様な秀才だったらば可能だろう。
しかし少なくとも俺は、完璧に覚えるまでに少なく見積もっても7日は掛かると断言出来る。
そういった秀才達には厚底ブーツを履いて背伸びしたって届かない凡人は、躍起になって抜け道を探してやればいい。
凡人が秀才と並ぶには、小賢しく、狡賢くあるべきだと俺は考えている。
俺が提案した交換方法は正攻法ではないが、取れる手段としては最善に近いものだろう。
まあ、この方法だと一度ログアウトして待ち合わせをしなければならないから、今すぐのフレンド登録は不可能なんだけどな。
NOT THE GAMEの仕様上、やるとしても明日以降になるだろう。
「早速にゃんにゃんのところへ行こうか!」
「は…?いや、だから、壁の通り抜けは出来ないって…」
「大丈夫、私を信じてくれ!」
「ちょっと…引っ張るなって。ちょっと!」
東雲鈴音に強引に腕を引かれ、割合全速力で壁沿いを走る羽目になった。
東雲鈴音、招木猫ばりに行動が読めな過ぎて先が思いやられる―――。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ミックスブラッドオンライン・リメイク
マルルン
ファンタジー
ある日、幼馴染の琴音に『大学進学資金』の獲得にと勧められたのは、何と懸賞金付きのVRMMOの限定サーバへの参加だった。名前は『ミックスブラッドオンライン』と言って、混血がテーマの一風変わったシステムのゲームらしい。賞金の額は3億円と破格だが、ゲーム内には癖の強い振るい落としイベント&エリアが満載らしい。
たかがゲームにそんな賞金を懸ける新社長も変わっているが、俺の目的はどちらかと言えば沸点の低い幼馴染のご機嫌取り。そんな俺たちを待ち構えるのは、架空世界で巻き起こる破天荒な冒険の数々だった――。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
親がうるさいのでVRMMOでソロ成長します
miigumi
ファンタジー
VRが当たり前になった時代。大学生の瑞希は、親の干渉に息苦しさを感じながらも、特にやりたいことも見つからずにいた。
そんなある日、友人に誘われた話題のVRMMO《ルーンスフィア・オンライン》で目にしたのは――「あなたが求める自由を」という言葉。
軽い気持ちでログインしたはずが、気づけば彼女は“ソロ”で世界を駆けることになる。
誰にも縛られない場所で、瑞希は自分の力で強くなることを選んだ。これは、自由を求める彼女のソロ成長物語。
毎日22時投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる