NOT THE GAME~現実世界とリンクする

伊瀬カイト

文字の大きさ
32 / 44
プロローグ

しおりを挟む
『戻ったにゃ』

 扉の外に出た招木猫との回線が復帰。
 事後報告になってしまうが、オイラが仲間になったと伝えておく。

「実はオイラを仲間にしたんだ。貴重な治癒スキル持ちだから戦力になると思うんだが、構わないか?」

『大歓迎にゃ。オイラは気紛れな犬だからにゃ。あんまり言うこと聞かないかもだけどにゃ』

「可愛い可愛い!もふもふだぁ!」

「ヤバい人間、放すんだぞ!暑苦しいんだぞ!」

 世紀末が来る前ぐらいジタバタして東雲鈴音から逃れようとするオイラ。
 タシンと頬に肉球パンチを見舞うと、東雲鈴音は膝から崩れ落ちてオイラを手放した。

 まさか一撃で東雲鈴音の意識を刈り取ったのか…?
 だとしたら、オイラのステータスって一体どれほど高いって言うんだ…。

「ぷ…ぷにぷにだぁ…。成木原君…。私は今、猛烈に感動している」

 全然違った。
 単に肉球の魅力を知っただけの変態だった。

『何が起きているにゃ?』

「ああ、それはな…」

 招木猫に状況を説明する。
 エリア外だと仲間でも別々に行動しなきゃならないのは不便だな。
 安全性度外視で魔物を狩るなら、単独で動く方が効率が良いのはそうなのだが。

『リンリンは動物好きだからにゃ。動物には好かれないけどにゃ。オイラが普通に接してくれてるみたいで何よりにゃ』

 オイラへの対応を見ていると、東雲鈴音が動物に嫌われるってのは理解出来てしまう。
 ちょっと引く程のテンションだからな。
 その辺は動物の方が敏感だろうし。

「おいらの話をしているんだぞ?誰と話しているんだぞ」

「誰って…招木猫って女の子だ。あっちはオイラの事を知ってるみたいだけど、わかるか?背がこれぐらいで、猫みたいな髪型で」

 ジェスチャーを使って特徴を説明してやると、オイラは発情した犬みたいに俺の脚に掴まった。
 腰は振っていない。

「もしやそれはあねさんの事なんだぞ?」

「姉さん?」

 姉さんって、招木猫が?

「姉さんは、ここいら一体の野良動物を仕切ている姉さんなのだぞ」

「にゃんにゃんってそんな事やってんの?」

 話を聞くと、招木猫は月に一度市内に住む野良犬や野良猫を集めて集会を開いているそうだ。
 そこで行われるのは躾と配給に、必要であれば予防注射まで。
 招木猫が音頭を取り、胡散臭くない方の動物愛護者を集めているらしく。
 対象の野良犬野良猫は全員参加が基本、だそうだ。

 何してんの招木猫。
 そもそも動物の言葉がわかるの?
 そもそも動物に言葉が伝わるの?

『事実にゃ。けどそれは今は良いにゃ。それよりオイラに伝えて欲しいにゃ』

「にゃんにゃん…姉さんからオイラにありがたいお言葉があるってよ」

「何なのだぞ?早く教えるんだぞ」

 尻尾ブンブンブンじゃないか。
 招木猫の事が余程好きなんだな。
 まあ、ガッツリ動物向けの慈善活動やってるみたいだから理解は出来るけれども。

『成木原君の言う事を聞いて、我が儘は言うんじゃないにゃ』

「だってさ」

「何だぞ…?おいらがこの下僕の言う事を聞くんだぞ…?」

「今さらっと下僕って言ったな?主従の従の立場に俺を置いているな?」

『それからにゃ…』

 招木猫は回線の向こう側で、慎重に言葉を選ぶように、じっくりと時間を掛けて、続きの言葉を口にした。

『決して無茶はするんじゃないにゃ。あたしはオイラを心配してるにゃ』

「だってよ」

「姉さぁぁぁん、なんだぞぉぉぉ!」

 千切れるぐらいに尻尾を振りながら感動の涙を流すオイラ。
 こういう感動の場面って、当事者は良いけど傍観者ポジだと引いちゃうよね。

 東雲鈴音は泣きながら拍手してるけど。
 俺が薄情なだけなのかな?

 こうしてオイラは仲間になり、『おいらの下僕になるんだぞ』という正式オファーは拒絶した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

ミックスブラッドオンライン・リメイク

マルルン
ファンタジー
 ある日、幼馴染の琴音に『大学進学資金』の獲得にと勧められたのは、何と懸賞金付きのVRMMOの限定サーバへの参加だった。名前は『ミックスブラッドオンライン』と言って、混血がテーマの一風変わったシステムのゲームらしい。賞金の額は3億円と破格だが、ゲーム内には癖の強い振るい落としイベント&エリアが満載らしい。  たかがゲームにそんな賞金を懸ける新社長も変わっているが、俺の目的はどちらかと言えば沸点の低い幼馴染のご機嫌取り。そんな俺たちを待ち構えるのは、架空世界で巻き起こる破天荒な冒険の数々だった――。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

処理中です...