魂×魂 〜魔王が中学生になったら?そりゃやばいでしょ〜

日芽乃

文字の大きさ
6 / 56
第1章

トレーニング

しおりを挟む
 それからの俺は、ひたすら身体を鍛える特訓の日々を送った。
 朝にランニングと柔軟体操、そして筋トレをこなし、夜にもまた同じメニューを行う生活。

「だいぶ、たくましくなってきたな」

 鏡に映った優希の姿を見て、うんうんとうなずく。

 そして、2月ももう終わりにさしかかった、ある日の夕方。突然家のチャイムが鳴った。
 母親はパートという仕事に行っていて家にいない。仕方なく、俺は玄関の扉を開けた。
 そこには1人の女性が立っていて、俺の顔を見ると優しく微笑ほほえんだ。

ーー誰だコイツ?

 知り合いかもしれないと思い、脳内にたたきき込んだ優希の記憶を探る。

ーーあ、担任とかいう先生か!

 気づいた俺は、少し後ずさりした。

「あ、ごめんなさい、いきなり来てしまって」
「何か用か? ……ですか?」

 俺が精一杯の敬語で聞くと、その先生は目に涙を浮べた。

ーーげ、泣くのか!?

「こんなことになってしまった後で許してなんて言えないけれど、ごめんなさい。何にも気づいてあげられなくて」

ーー挙句あげくてに謝ってきやがった!

 どうしたら良い?この状況どうすりゃいい?

「あ、別に、平気だ。です」

 とりあえず俺がそう言うと、先生は涙をぬぐって俺の手をつかみやがった。

「学校、来れないかな?」

ーー気安くさわんじゃねぇ!

「あ、2年生になったら行く。です」
「ホントに!?」
「行くと言ったら行く。約束は守る」

ーーだから早く手を離しやがれ!

 おれが言った言葉を聞いて、先生は凄く嬉しそうな顔をして、なんか土産みやげを置いて帰って行った。

 その日の夜。帰宅した母親に、先生が来たこと、そして俺の決心を話した。
 最初は複雑ふくざつそうな顔をしていたが、俺の顔を見た母親は、目を見開き、そして優しい顔をしてうなずいた。

 この笑顔には、なんか逆らえないんだよな……。
 言葉は何も発しなかったが、恐らくこの母親には俺の考えてることが全て分かったんだ。

 その後、俺が病院で寝ている間にも何度か先生が見舞いに来てくれていたことを母親から聞いた。
 病院で食べた果物や、病室に飾ってあった花などは学校からだったということを俺は知った。

 この日から4月に向けて、体力をつけるために今までより過酷かこくな修行を始めた。

 そして3月。この頃には身体もだいぶきたえられ、  トレーニングメニューもかなりシビアなものになっていた。
 朝5時に起床。柔軟体操の後10キロ走って川沿いまで行き、そこで腕立て伏せ500回、腹筋500回。
 短距離走り込み100回。その後また10キロ走って家に帰ると、木刀を部屋から持ち出し素振り1000回。

 昼は女神に協力してもらい、学校の情報収集と、名ばかりの作戦会議。けれどこれは、あまりはかどらない。

『ちゃんと聞いてるの!?』

 なんて女神に怒られながら、いつもウトウトしながらやっている。

 そして、女神も1番驚いていたのが、俺がめちゃくちゃ勉強に熱心だったということ。
 実は俺にとって勉強することは楽しかった。新しいことを吸収し、どんどん覚えるのは凄く楽しい。だから暇さえあれば勉強した。
 数学も国語も、理科も社会も、技術も家庭科も音楽さえ、全ての教科を夢中になって勉強した。
 特に俺が夢中になったのが、英語だった。

 夢中に勉強しているうちに、いつしか俺は大学生の問題まで完璧に解けるようになっていた。
 そこで、自分がやりすぎたことにようやく気づく。

「あ、いけね。俺まだ中学1年だった」

 そしてきたる4月の始業式。
 俺はずっと着ていなかった制服に腕を通す。首元がキツかったため、少しゆるめて朝ごはんも食べずに家を出た。
 母親は心配そうに俺を見つめていたが、出来ることは全てやったんだ。
 誰にも負ける気がしなかった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
 ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...